光の女神   作:うどん麺

16 / 20
15話 冒険者

 

 

「やはりこんなものですか。」

 

彼女の目の前にはギガントバジリスクだった骸が転がっていた。

 

「大したことはありませんね。まぁ、高々30レベルの雑魚ですからね。これだけで昇格できるなんで冒険者組合も甘いですね。」

 

その美貌とは裏腹に少々毒舌な彼女はトゥワイライト・オブ・ゴッズ(神々の黄昏)のギルド長のシエルだった。

 

その傍らには供のアテナとヘカテーがいた。

 

「まあ、この世界のレベルに合わせればそれでも十分なんでしょうね。魔法で一撃だったけど。」

 

他の冒険者が居たら卒倒しそうな話の内容だが、そもそもギガントバジリスク自体の数が少なく、滅多な事では遭遇しないしそもそもギガントバジリスク自体を倒せる冒険者は多くない。少なくともこの世界のレベルに合わせると、だが。

 

そもそも、難度90程度の相手にシエルが手間取るはずもない。数日前、冒険者登録してからその日の内にミスリル級冒険者に到達するという偉業を成し遂げた彼女たちはエ・ランテルでは有名だ。そして、今に至っては既にオリハルコン級冒険者だった。しかし、それでは納得しないのが彼女たちで現在はアダマンタイト級冒険者に昇格するためにギガントバジリスクの単騎討伐という、この世界の住民なら到底できない、しかし彼女たちにとっては片手間以下で出来る雑事をしていた。

 

そして、それを見届けるためにわざわざ同行していた冒険者が居た。それは『蒼の薔薇』と呼ばれ、王国ではかなりの人気を博しているアダマンタイト級冒険者パーティーだった。

 

 

 

 

■■■■

 

 

 

 

「なぁ、ラキュース。あいつら一体何モンだ?俺にはただバジリスクと遊んでる様にしか見えねぇんだが?」

 

そうかなり男っぽい口調で話すのはガガーラン。彼女は蒼の薔薇の前衛タンクだ。

 

「生憎と私にもそういう風にしか見えないわ。少なくとも彼女たち。『聖光』はお遊び以下で相手してるんでしょうね。私には少なくともそう見えるわ。イビルアイはどうかしら?あんなこと出来る?」

 

そう言う彼女はこの蒼の薔薇のリーダーのラキュース。魔剣の保持者でアインドラ家の令嬢ということでも有名だ。

 

「少なくとも私には不可能だ。ギガントバジリスク相手に一対一で勝てはするがあんなに余裕をかまして勝つのは出来ないと言っておく。まして、連戦なんてとんでもないな。まあ、二体位ならば連戦しても大丈夫だろうがな。」

 

こう言った彼女はイビルアイ。常時仮面をつけていてその素顔を知るものは殆ど居ない。実は彼女は200年ほど前に『国堕とし』と呼ばれた吸血鬼なのだがそれを知るものはこの世界に僅かばかりしか存在しない。

 

「しかも、あの先程見た魔法は少なくとも第六位階は越えている。かの有名な帝国のフールーダ・パラダインに匹敵する、或いは越える実力者と見るべきだと私は思う。私があの人たちと戦っても勝ち目がないのが分かるくらいには。」

 

それを聞いた蒼の薔薇のメンバーはそれほどかと思った。

 

チーム内でもイビルアイの実力は飛び抜けており、そんな彼女にそこまで言わせた聖光。エル、アテナ、ヘカテーの3人を見た。既にそのギガントバジリスクも死に体でもはや動きすらしてない。よく見ないと一見只の死体のように見える。

 

「どうやら終わったようね。それで、どうかしら?彼女たち。」

 

「ああ、俺ぁ文句はねぇな。実力も恐らくこの世界でも最上位だろうし、品行も良い。」

 

「私も構わない。」

 

「私も良い。それよりもエルを押し倒したい。」

 

「私も。ショタが居ないのが残念。」

 

「はぁ、お前らなぁー。」

 

ガガーランが盛大なため息と共に向けた視線の先の双子。ティアとティナ。彼女たちはこの蒼の薔薇でも飛びっきりの変わり者と言うか変態で、ティアは極度のショタ。ティナは極度のレズというキャラがとても濃い双子であった。

 

しかも仲間入りした切っ掛けがラキュースを暗殺しに来たと言うのもそうだ。まあ、その時にティナがラキュースを襲おうとしたのは余談?だが。

 

「ティナ。ダメよ。彼女たちを襲っちゃ。いくら貴女の好みでもそれは私が許さないわ。」

 

「残念。」

 

と、一見すると別に残念がってはいなそうなティナだった。実は内心凄く悔しがっているがそれを知るのは仲間内のみである。

 

「それじゃあ全員一致ということで、組合には昇格を推薦しておくわ。皆の名前を出しても大丈夫よね?」

 

「問題ない。」

 

と、このようにシエル達の昇格は決まった。

 

 

 

■■■■

 

 

 

「ねぇ、アテナ、ヘカテー。あの子。確かイビルアイと言ったかしら?彼女、吸血鬼みたいだけど隠してるのかしらね。何よりこの世界では相当な実力者だしこちらに引き入れたいわね。何か案はある?」

 

「そうですね。やはり、彼女たちは硬い絆と言うもので結ばれている様なので普通に引き抜くのは不可能でしょう。それこそ深い絶望でも与えて心情的に此方に引き入れない限りは。彼女たちの場合、イビルアイが吸血鬼だと言うことを伝えても受け入れてしまいそうですから。」

 

そうやってヘカテーが答えるが、案外とエグい事を言うもんだ、と思ったシエルだった。

 

「ヘカテー、貴女、意外ととんでもないことをさらりと言うのね。まあ、良いわ。彼女が強いと言ってもあくまでもこの世界の基準に照らし合わせればだから、その程度ならギルドに沢山居るから別に無理して取り込む必要は無いわ。それよりも早く戻りましょうか。」

 

そうやって少々物騒な話を打ち切って蒼の薔薇の方に向かうシエル達だった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。