光の女神   作:うどん麺

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18.5話 スレイン法国への影響

 

 

 

あの指示をしてから暫く(大体一週間)経ったがスレイン法国ではある一つの噂が広まっていた。それは民衆レベルから既に法国の上層部までに及んでいた。

 

その噂とは勿論シエルがラファエルに命じて広めさせたエルフ国がリ・エスティーゼ王国と同盟を探っていると言う情報。勿論それはデマであるが、気乗りしたラファエルはついでにそこにバハルス帝国も加えていた。その為にいささか信憑性が低くなるものだが、そもそも帝国に関してはどうやってもエルフ国と同盟を結ぶには至らない。帝国でのエルフを含む亜人の地位は最低だしその為帝国に居るほぼ全ての亜人は奴隷と言う身分に落ち着いている。それに他に僅かに居る亜人も白い目で見られると言うのが帝国の日常だった。

 

だから法国の上層部ではその同盟と言うのを帝国に対しては多分従属だろうと決めていた。そうするならば帝国にも利益があるし、体裁も保てる。大方同盟(隷属)を盾にエルフ国から大量に奴隷を召し上げるのだろうと予測をつけている。

 

そも、法国ならば万が一にもエルフ国が王国と帝国の両方と同盟を結んでしまっても勝ちは揺るがない。少々面倒なだけで両方を相手にしても余裕で勝てる戦力はあるのだ。主に漆黒聖典のメンバーになる。ただ、彼等はその最強と言う称号と共にその存在を世界から秘匿している。なのでおいそれと戦争に駆り出すのには今までの秘匿してきたのを無にしなければならない。

 

今までは全てを闇の中に包んできたその存在を一度表にしてしまえば恐らく噂は広まるだろう。案外人と言うのは情報収集に長けている。それこそ、どこからともなく情報を持ってきては広めてあっという間に都市レベルに広まる。若しくは村だが。それからは国に広がる。そうなっては最早秘匿など出来る筈も無くなる。其れほどには表に出すリスクはある。

 

まあ、現時点で同盟は『もしも』の話でありそれが実現する確率は限りなく低いが······シエル達ならば3国の全面戦争に持っていきかねない。それこそ魔法で上層部を操ってしまえばどうとでもなる。王国に至っては既にラファエルの眷属が上層部にまで及んでいるがそれに気付ける王国ではないのだ。今のところどの貴族にも気付かれた様子はない。あの王女にも。

 

ともあれ、結果として法国はどちらにしろ情報収集に励むしかなく、警戒せざるを得ない状況と言うのに変わりはない。その為、最高神官長以下の高位役職のメンバーは一同に会して議論を重ねていた。

 

「やはり、その同盟と言う話がどこから出てきたのが気になる。同盟の話にしては出てくるのがいきなり過ぎる。どうも話に信憑性がないのだ。そのところ意見の有るものは?」

 

そう言ったのはスレイン法国での最高の地位にある最高神官長。

 

「それでは私から。その同盟の件ですが王国との同盟に関してはどうやら信憑性が高いですね。王国の八本指と繋がっている貴族の屋敷からその様な書類が出てきましたから。残念ながら現物はありませんがエルフ国が奴隷を提供すると言う条件で結ぶ様ですね。確かに今のエルフ国の状態ならば呑み込まざるを得ない状況ではありますが······」

 

「そうだな。王国がどういう考えかは分からんがその話を聞く限り私には一部の貴族の暴走としか思えんが?」

 

「ええ、ただその貴族が中々どうして国王に顔が利く様で全面戦争に持ち込まれかねないのですよ。全く、戦力比も読めない王国には困ったものです。」

 

「まあそれは仕方ない。王国はビーストマンとは直接対峙することなんて無いんだ。恐らく世界で一番平和な国だろう。まあ、治安は世界でも随一で悪いだろうがな。要するにそう言うことだ。平和な王国には戦争を知るすべが無い。毎年のカッツェ平野の戦いでは負け続きのようだがそれでも殆どの貴族がそれを敗北とも思っていないそうだ。そういう国なんだよ。王国とは。」

 

「まあ、確かにそうですが······と、王国の件はそれくらいでして、バハルス帝国ですがそちらに関しては今のところ何とも言えません。帝国がエルフ国を助けて利があることは恐らくエルフ国を隷属下に置けること、奴隷を今よりも安易に入手出来ることですが、はっきりいって帝国が我が国との戦力比を誤ることなど有りませんでしょう。まさか王国ほど酷い筈はありませんし。それに現在の皇帝はやり方がどうあれ間違いなく名君ですしね。周りも優秀だそうです。恐らくはデマでしょう。」

 

「うむ。それに関しては私もそう思うがな。まあ、どちらにしろ警戒するに越したことはない。恐らく王国の方は目先の利益に我々に喧嘩を売ってくるのは間違いないだろう。帝国はその確率は限りなく低いがまあ一応は情報収集を継続させる。」

 

「分かりました。後はもう噂程度の事なのですが天使を見たとの噂が。」

 

「天使?それならば陽光聖典が召喚出来ただろう。」

 

「いえ、そうではなく······あくまでも噂程度ですが神のごとき存在を見たとどこからかは分かりませんが情報が······」

 

「ふむ······まさか、『ぷれいやー』なのか?」

 

「い、いえ、流石にそれは分かりません。『ぷれいやー』の方ならばそのお力によりかなり目立たれると思うのですが······」

 

「そうだな、確率は低いだろうがそれに関しても情報を集めさせろ。私としては神と言う存在には会ってみたいが無論もしその様な存在が居られたとしても手出しは無用。神の怒りには触れぬように。その存在を消されたくなければな。天国にも昇れなくなる。では、今回はこれで解散とする。」

 

最高神官長のその一言で会議はお開きとなり、それぞれの持ち場に戻るのだった。

 

 


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