暫く私はこの世界について、物思いに耽っていたらミカエルが調査を終えて帰ってきたようだ。
「只今帰還致しました。早速ですがご報告させていただきます。」
「頼んだわ。」
「先ず、周囲ですが少なくとも調査範囲の五キロ圏内は完全な草原でした。他に建造物もありません。ただ、私の索敵スキルでは更にその先に地上構造物を発見しましたが、生物が居るかは不明です。」
「続いて、生命体ですがこちらも五キロ以内では特筆した生物はおりません。居て小動物が少数でした。」
そうか・・・・・・と、なるとここはカッツェ平野の可能性が高いか。それに、その構造物というのがもしもナザリックだったならば今のところこちらから接触するのは控えたい。ま、やはり初手は情報収集に限る。
とは言え、これだけの距離なら直ぐに気付かれるだろうし、直ぐに向こうから接触してくるのは想像に難くない。その場合はこちらもそれ相応に対応するだけなのだが・・・・・・それよりもナザリックが転移してからの時間が気になる。もし、ナザリックが先に転移しているのなら少なくとも100年は経っている筈だ。もしかするともっと200年とか300年も後かも知れないが。私としては同時転移が一番望ましいのだけれど・・・・兎に角、ナザリックとの敵対は絶対に無しですね。未知の異世界なのだから敵対するよりは協力しないと。
「それで、他には?」
「はい。その、セバスと名乗る竜人と出合って、それで来て欲しいと頼まれたのですが・・・・流石に断りました。で、どちらにも創造主が居ることが分かりまして上奏した次第です。」
まさか!?もう会ったのか!!いや、いや、状況を考えればおかしくはない。それで、セバスか・・・・と言うことはナザリックも転移したばかりと考えるべきか?
「それで、相手の創造主の名前は分かったの?」
「いえ、そうかは分かりませんがアインズ・ウール・ゴウンと言ってはいました。」
ふむ、これで取り敢えず接触は確定だね。あとは、どちらから接触するかだけど、アポなんて取れやしないからな・・・・
「そうですか・・・・・・」
本当にどうしようか・・・・こちらから行って攻撃されるのはゴメンだからなぁ。まあ、モモンガも攻撃しないように言っている筈だが・・・・まあ、良い。こちらから行くとしますか。
「分かりました。こちらから接触しましょう。取り敢えずそのアインズ・ウール・ゴウンへの使者として下級天使にメッセージを届けさせますので用意してくださいね。」
「分かりました。直ぐに用意いたします。それでは失礼いたします。主よ。」
さて、私もモモンガ宛の書簡を書きますか・・・・
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ナザリック地下大墳墓
「以上になります。」
そう言い終えるセバス。
「ご苦労だった、セバス。」
それにしても他のプレイヤーか・・・・やっぱり転移していたのか・・・・それにしても、ミカエル。
まさか、あのミカエルなのか?あの
そうだな、やはり恐らく実力ではこちらより上だろうから、敵対は避けないとな。
「セバス、改めて命じる。そのミカエルと名乗った天使とその仲間への一切の敵対行動を禁止する。それを全ナザリック内部に通達せよ。もし、向こう側から接触があれば私の元まで直ぐに通すこと。」
「はい。モモンガ様。それでは私はこれにて。」
そうしてセバスは立ち去った。
「しかし、あの天使のギルドか・・・・確か、ギルド長だった“シエル”はワールドエネミーを単騎で倒した化け物だった筈だ。下手に敵対したらこちらが立ち直り不可能な打撃を被るかも知れない。さて、どうしたものか・・・・・」
モモンガもモモンガで悩んでいたようだった。
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私はミカエルの元に転移して書簡を渡した。
「ではこれを天使に持たせて向こうに渡してきてください。もし、攻撃されたなら別に下級天使ですから構わないですが、最大限の警戒体制を敷くようにしておいてください。まあ、万が一ですから。」
「分かりました。主よ。」
そうして転移するミカエル。
「これで、上手く行くと良いのだけれどね・・・・」
シエルの呟いたその声は誰もいない空間に溶けるのだった。