ナザリック地下大墳墓
ここ、第十階層の『玉座』には現在、ギルド長のモモンガを始め、第一~三階層守護者のシャルティア・ブラッドフォールン、第五階層守護者のコキュートス、第六階層守護者のアウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレ、第七階層守護者のデミウルゴス、守護者統括のアルベド、プレアデスのセバス・チャンを始め、ユリ・アルファ、ルプスレギナ・ベータ、ナーベラル・ガンマ、シズ・デルタ、ソリュシャン・イプシロン、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータと、ナザリックの主戦力が勢揃いだった。
そんな、迫力と圧力が頂点の中でモモンガがゆっくりと話し始めた。
「先程、セバスからあるものを受け取った。既にこの中には知っている者も居るかもしれないが、我々の他にここに転移してきた別のギルドから書簡が届いた。」
モモンガのその威厳たっぷり(魔王ロールプレイ)の発言にセバスを除いた守護者から驚きの声が漏れる。尤も、セバスも始めはたっぷりと驚いていたのだが、それを知るのは本人とモモンガの二人だけだ。
「うむ、驚くのも最もだが、ここにはそれ以上のことが書かれている。それは、もうひとつのギルド、『
守護者達はモモンガのその衝撃的な暴露に驚きの気配を隠そうともしない。特にアルベド等は強硬にそれを認めようとはしていないが・・・・・・
「落ち着け!!─────よし。皆のそのナザリックを思う気持ちはとても嬉しく思う。が、相手側の方の戦力がナザリックに伍するのもまた事実。しかも、相手が最上級天使、即ち熾天使クラスが少なくとも七体も居る。相手に回すのは得策ではない。それに、私としては同じく転移してきたプレイヤーとは事を構えたくないと思う。無論、相手が敵対するのならばその時はそれ相応の対応を取らせて貰うが・・・・この書簡を見た限りではそんなことはない。寧ろ我々にとっても歓迎すべき内容ではあった。そこで、皆に問いたい。相手側と義を結ぶか否か。」
モモンガのその意思表示に真っ先に反応を示したのは、ナザリックの頭脳でもあるデミウルゴス。
「意見具申宜しいでしょうか?」
「うむ、言ってみろ。」
「ありがとうございます。それでは、私としては義を結ぶのが宜しいかと思います。相手が熾天使なのも一応理由としては入りますが、現状、満足に情報も得ることが出来ません。それに、ナザリック内の資源にも限りが御座います。尤もこれはそうそう無くなることは無いですが。そして、相手方と義を結ぶに当たって有益なのは何よりも情報を共有できることです。もしかするとこちらの知り得ない情報を持っているやもしれません。私からは以上です。」
デミウルゴスからの説明を聞き終わると、モモンガは鷹揚に頷いた。
「うむ。他にはあるか?」
「では私からも。」
そう名乗りを上げたのはアルベドだった。
「私としても、デミウルゴスには賛成ですね。」
それを聞いて一番意外に思ったのはモモンガだった。何故なら、先程相手の戦力がこちらに匹敵すると言ったときに一番激昂したのがアルベドだったからだ。
「相手の戦力もそうですが、やはり情報が足りていません。転移したばかりで分かりませんが、相手も何かしら情報があるのではないでしょうか?こうして書簡を送ってくると言うことはそれなりに余裕のあるものだと考えます。」
「確かに。」
そう言い、モモンガはふと思い出す。それはユグドラシルでシエルがワールドエネミーの単騎討伐を成し遂げた事だった。その時のその情報は瞬く間にユグドラシルのみならず、その攻略サイトやネットに広まった。なんせ、ワールドエネミーの単騎討伐だ。あの、ワールドチャンピオンですら不可能といわしめるワールドエネミーの単騎討伐だ。それで、ニュースにならないわけがなかった。その時、モモンガはまだアインズ・ウール・ゴウン内でギルド武器作りに仲間と奔走していた。その合間にネット上にアップされた彼女の戦いを見て、魅了された。
その、プレイヤースキルの高さ。恐らく、アインズ・ウール・ゴウンに所属しているワールドチャンピオンのたっち・みーさんですら及ばないだろうと思えた。それと、その魔法一発一発の威力の高さ。超位魔法が炸裂する度にあのワールドエネミーが仰け反っている。AIですら仰け反るのだからその威力は想像を絶する。
兎に角、モモンガは心のどこかでこう思っていたのだ。
『シエルさんに会ってみたい。』
と。
「他には?」
と、モモンガは問いかけるが名乗りを上げるものは居ない。流石に、守護者トップ2が賛成に回ると意思決定になるらしい。それに、モモンガが義を結ぶと言っているのだ。
モモンガに対して絶対の忠誠を誓っている彼等が反対する筈もなかった。
これにより、ナザリックは全会一致で義を結ぶ事に決定したのだった。