異常航路   作:犬上高一

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ずいぶん長い間お待たせしてしまいました。
それでは、第12話始まります。


第12話 内部分裂

 ゼー・グルフ級戦艦ドン・ディッジ。元ヤッハバッハの試作兵器試験艦だった彼女は、戦闘の末反乱分子に奪われその主を変えた。全長4キロの巨大な戦艦は、今は静かに廃宇宙港の中で身を潜めている。

 

 その艦の一室で1人の男と1人のアンドロイドが正座で座っていた。否、座らせられていた。2人の前には腕を組んで仁王立ちをする女性が立っている。

 

「・・・で、何故そんな事をしたんだ・」

「「・・・。」」

 

 仁王立ちしている女性ーー私ことシーガレットが聞くと、座っている2人ーーエドワードとアルタイトは俯いて黙り込む。

 

「もう一度聞く。何故、私の裸を盗撮したんだと聞いている。」

 

 理由は単純。2人で私そっくりのアンドロイドを作る際に、私の裸を盗撮してそれを基に作った事が私にバレたからだ。あの後どうやって私そっくりなアンドロイドを作ったのか気になって2人に聞いてみた所、エドワードが歯切れの悪い回答をしてきたので問い詰めたら盗撮した事が発覚した。

 

 そして今2人揃って尋問を受けている最中だ。

 

「私がエドワードに人間そっくりのボディを用意できないか尋ねた所、エドワードが艦長の盗撮映像を持ってきてそれを基に私を作りました。」

「!?」

「ほう・・・。」

「証拠の映像もあります。ご覧になられますか?」

「見よう。」

 

 端末に映像が送られてくる。そこにはエドワードがカメラらしきものを持ってシャワールームに入る所や、盗撮映像をチェックしている場面などが映し出されていた。

 

「これらの証拠からエドワードが盗撮を行なった事実は明らかです。」

「違う!」

 

 エドワードは勢いよく立ち上がって叫ぶとアルタイトに反論する。

 

「これらの映像は全て偽物だ!アルタイトならばこのように偽の映像を用意する事も簡単に出来ます!」

 

 さらにエドワードはアルタイトが人間の経験をしてより成長したいと考えた事、アルタイトが自分が廃宇宙港で手に入れたドロイドを修理しようとした事を知ってそれを利用し人間そっくりな体を手に入れようとした事。エドワードがそれを蹴った為アルタイトが脅すという手段を取った事とエドワードがそれに従った事を話した。

 

「これが真実です。俺は盗撮はしていません。」

「だそうだが、アルタイト。」

「映像証拠が示す通りエドワードが盗撮した事が事実です。」

 

 私はエドワードをじっと見つめる。エドワードも私の目を真っ直ぐに見つめ返す。その目は決して嘘を言っている様には見えない。私は小さく溜息をついた。

 

「そうか分かった。アルタイト、本当の事を話せ。」

「どういう意味か理解できません。」

「エドワードの盗撮が事実かどうか真実を話せと言っている。」

「私の提示した映像が真実です。」

「お前が嘘を言っているのは分かっている。艦長命令だ。事実の映像を見せろ。」

「・・・。」

 

 アルタイトは黙り込んでいたが、観念したのか少しすると私の端末に映像が届いた。それはエドワードが盗撮カメラを持ってシャワールームに入るのを捉えたカメラからの映像だが、時間は同じなのにその映像にはエドワードが入った所は映っていなかった。

 

「これは加工前の映像ですね。この映像を加工して偽の証拠を作り出したんです。」

 

 解説ありがとうエドワード。つまりアルタイトがエドワードを脅す為に作った偽映像の証拠がこれだ。これがあるという事はエドワードの言っていることが真実という結論になる。

 

「アルタイト。どうしてこんな事をしたんだ?」

「先程エドワードが説明した通り、私はより成長する為に人間としての経験が効率的だと結論付けました。その経験を入手する為にこのような手段をとりました。」

 

 このような手段とはエドワードを脅した事だろう。

 

「お前はそんなに経験が積みたいのか?」

「はい。」

 

 はっきりと答えるアルタイトに私は告げる。

 

「じゃあお前に人間としての経験を積ませてやる。貨物船アルタイトの船内をチリ一つ無いくらい綺麗にしろ。」

「掃除をすると人間としての経験が得られるのですか?」

 

 貨物船の方のアルタイトの掃除を命じられて疑問を投げかけるアルタイトに、私は説明する。

 

「これは懲罰だ。人にはやられて嫌な事がある。盗撮もその内の一つだ。そうした行為を働いた者には再発防止や見せしめなどの理由から懲罰を与えたりする。お前は今からその経験を積むんだ。」

「了解しました。」

「いいかアルタイト。いくら効率的なやり方とはいえやって良い手段と悪い手段がある。今回の盗撮や嘘は悪い手段になるな。そうした手段を取るとどうなるか分かるか?」

「分かりません。」

「この様な手段は他人からの信用を失い人間関係を悪化させる。そうなれば他人はお前と関わろうとしなくなり、結果としてその一度の経験しか得る事が出来ない。本来得るはずだったより多くの経験値を失う事になる。信用があれば得られたはずの経験を逃す事になってしまうんだ。」

「はい。」

「人間として経験が欲しいのは分かった。だから学べ。他人に害を与える行為や他人が嫌がる行為はしてはいけない。人間と共に過ごして“成長する”にはそれが必要だ。」

「了解しました艦長。」

「分かったら船内を掃除してくるんだ。」

 

 そう言ってアルタイトを立たせて船に向かわせる。部屋から出る直前にアルタイトはこちらへ振り返った。

 

「艦長、どうして私が嘘をついた事が分かったのですか?」

「人間を舐めるな。必死に正直に話す奴と嘘を付く奴の区別くらいつく。」

 

 実際エドワードが盗撮とかするような奴には思えないし、そんな度胸はあるとは思えない。嘘を付いているようにも見えなかった。エドワードの反論も筋が通ってたいたしな。

 

「それも経験により可能になる事ですか?」

「そうだ。だからお前も経験を積んで成長しろ。」

「分かりました。」

 

 そう言ってアルタイトは部屋から出て行った。

 

「所でエドワード。ちょっと聞きたい事がある。」

「な、何ですか?」

 

 話を振られたエドワードはぎこちなくそう答える。

 

「どうして脅された段階で私に相談しなかった?そうすれば盗撮の疑いも掛けられずに済んだだろう?」

「そ、それはその・・・えー・・・。」

 

 視線が彷徨い答えに詰まるエドワード。何故アルタイトが脅してきた時エドワードが私に相談しなかったのか。歯切れが悪くなりながらも当の本人は説明する。

 

「まぁその・・・研究出来なくなるのが怖かったといいますかその・・・あれだけの大金を出させておいてこんな問題起こすようならもう研究とか開発とかさせて貰えないんじゃないかと思いまして・・・。他所に行く当てもないので何とかしようと・・・。」

「なるほど、問題が発覚する前に自分の手で処理しようとしてああなった訳だ。」

 

 アルタイトに脅されている事が私に気付かれ無いようにする為に言いなりになっていたという訳だ。これはアレだ。新人船員がミスをして怒られないように自分で処理しようとして悪化したのと同じだ。エドワードという男、研究以外に関しては適切に対処できないのかもしれない

 

「いいかエドワード、私は艦長だ。クルーの命と船の責任を負っている。だが、部下がミスを隠していたのでは責任の果たしようが無い。だからミスしたら報告しろ。ペナルティが付くのは当然の事だが、ミスを隠した所為で死んだら元も子もない。研究は続けさせてやる。それがお前がこの船に乗ってきた理由だからな。だから問題が起きたらすぐに報告しろ。船が沈んだら話にならん。」

 

 新人船員に教える様にエドワードに告げる。新人はこういったミスの報告が出来ない者もいるのでこうして教育する必要がある。ちなみにこれから宇宙に出ようとする0Gドッグに様々な知識を授けてくれるヘルプGも、この様な報告・連絡・相談など社会的知識を教えてくれる。

 

「アルタイトは育てる必要があるAIだと言っていたな。優秀なAIになるならそれもいいが、育て方を間違えれば逆に船を危険に晒すぞ。他人や上長を脅して自分勝手な行動を始められたらかなわない。だからお前がきちんと教育するんだ。いいな。」

「分かりました!」

 

 アルタイトは艦内を統括するAIがモラル無視のクズに成り下がったらそこら辺のクズ船員よりもタチが悪い。それを避ける為にも私達はアルタイトを真っ当なAIに育てる必要がある。

人に説教した経験はあまり無かったので上手く言えたかどうか分からなかったが、エドワードの反応を見る限り大丈夫だろう。たぶん。

 

 

 

 

 

 

 

「で、もう一つ聞きたいんだが。」

「なんでしょう?」

「お前は見たのか?私の裸。」

「・・・・・・はい。」

「・・・そうか。」

 

 少しの間沈黙が流れた。

 

「・・・お前もアルタイトと一緒に掃除してこい。」

「・・・分かりました。」

 

 そう言ってエドワードも掃除に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「まだ生きていたようだな。」

「おかげさまで死なずにすんだよ。」

 

 ゼー・グルフのブリッジに行くと、大佐が1人椅子に座ってモニターを眺めていた。大佐の挨拶に適当に返しながら艦長席に座るってコンソールを操作し寝ていた間の情報を集める。

 

「で、話があるって?」

 

 ごく普通にコンソールを操作してブリッジの出入り口をロックする。今ブリッジ内にいるのは私と大佐だけだ。

 

「ドアは?」

「閉めたよ。」

 

 ドアが閉まった事を確認した大佐は、椅子から立ち上がり艦長席まで来た。

 

「例の話は聞いたな。」

「あぁ、エドワードからちゃんと聞いたよ。」

 

 例の話ーーアーミーズと協力してレジスタンスを追い出そうという話の事だ。

 

「一応それを提案した理由を聞いても?」

「・・・拠点を失った時点で我々がヤッハバッハに抵抗する事は困難になった。これ以上の活動は何ら意味をなさないだろう。私はこれ以上の活動はやめてどこかへ身を隠すべきだと思っている。その意見の相違だ。」

「確かにこれ以上反乱活動に付き合う事は出来ないな。意見の相違って事は、一応話し合いはしたのか?」

「あぁ。」

 

 先程の言葉と態度からそれが上手くいかなかったのがよく分かる。

 

 そこで一つ腑に落ちない点がある。話し合いが纏まらなかったにせよ、ギルバードの意見を無視して行動すればいいだけの話だ。アーミーズが独自に動いた所でレジスタンスにそれを止める権利などは無い。

 

「確かにその通りだ。だが、アイツらは恐れているのさ。」

「何を?」

「・・・裏切りを・・・だ。」

「まさか。」

 

あり得ないと笑う私に、大佐は真剣な目を向ける。それを見た私は笑うのを止めた。

 

「確かに今まで色々確執と呼べるものはあった。だが、流石にそんな味方を売るような真似はしないだろう?」

「私はそのつもりだ。だが、部下一人ひとりが全てそうだとは言えん。」

「本気で言っているのか?」

「仮にアーミーズが離脱すればそれに続く者が出てくるだろう。海賊連中なんかまさにそうだ。奴等なら金に困れば同士を売るくらいはするぞ。」

 

 そう言われてしまうと全く否定できない。宇宙のアウトロー、海賊にとって裏切りなんて日常茶飯事のようなものだろう。大佐の言う通り連中ならやりかねない。仮に首領のディエゴがやらないと言ったとしても、人間である以上必ず考えや感性には違いがある。部下全員が裏切らないという保証はどこにも無い。

 

 そしてこれはアーミーズにも言えることでもある。彼らとて大佐と一心同体という訳では無いのだ。個人的な憤りに身を任せる可能性だって十分にある。

 

「リベリアを裏切るような真似は許さないとブラスターを突きつけられたよ。」

「脅迫じゃないか。」

「あぁそうだ。」

 

 そこまでするか・・・。

 

「既に話し合いが出来るか微妙なラインだ。いつ暴発するか分からん。」

 

 思ったよりも事態は悪化しているようだ。

 

「そうなれば真っ先に狙われるのはお前だろうな。」

「私が?どうしてだ?」

「連中はお前の船を欲しがっている。この戦艦を万全に管理できるユニットだからな。手に入れれば強力な戦力になるだろう。それに個人的な恨みがある。」

「うっ・・・。」

 

 ギルバードを撃った事がここで響いている。実際艦内でレジスタンスに会った時、怒りと憎悪の篭った目で見据えられたのだ。ブラスターに手を伸ばそうとしていた者も居たから、決して勘違いでは無い。

 

「何だかんだ理由をつけて1人残させた所で捉えて私刑に処すか、自分達の主張に賛同しない連中と一緒に纏めてダークマターにされるか。お前の未来図としてはそんなとこだろう。」

「・・・つまりそれが嫌だったら協力しろと?」

「そう言う事だ。」

「はぁ・・・分かったよ。」

 

 私の答えに大佐は満足そうに頷く。要は大佐はこの船の管理ユニットの権限を持つ人間を、自分達の仲間に引き込みたかったのだ。だからこうして私に不利益な予想を示し、私がアーミーズに協力するよう誘導する。そしてその企みは見事成功した訳だ。

 

 大佐の思惑が分かっていて話に乗ったのも、残念な事に大佐の予想が現実のものとなる可能性がおおいにありえるからだ。下手な反骨心で提案を蹴れば、アーミーズから見捨てられて本当にレジスタンスに私刑にされかねない。その危険は話を聴く前から感じていた事だ。

 

「賢明な判断だな。」

 

 和かな笑顔を向ける大佐に、私はいささか口端を曲げる。

 

「所で大佐、今の私達が以前のリベリアと同じ状況だって気づいているのか?」

「あぁ、気づいている。だが、今度は同じ轍は踏まないつもりだ。」

 

 一体大佐はリベリアのどの轍を踏まないつもりなのだろうか。侵略者を前に身内の勢力争いで足を引っ張りあった事か。はたまた味方だと思っていた相手に裏切られて滅ぼされた事か。

 

「まぁ是非ともそうしてくれ。ヤッハバッハを目の前に同士討ちは御免だからな。」

「自分が真っ先に引き金を引いたくせに何を言ってる。」

「ああしなければ私達は今頃檻の中さ。」

 

 そうでなくてもヤッハバッハの攻撃を受けてダークマターに帰っていたかもしれない。一応無事に生きているから、今の所あの行動は正解だった訳だ。これからどうなのかは知らないが。

 

「で、これからどう動くんだ?」

 

 一応手を組む事になったが、これから先の具体的な行動は決まっていない。

 

「まずこの戦艦を確保する。」

「アーミーズでか?」

「そうだ、いまやこの船は重要な戦略拠点だ。これさえ確保しておけば仮に戦闘になったとしても優位に立てる。」

「それはそうだが・・・自分の船はどうするんだ?」

 

 アーミーズも巡洋艦や駆逐艦を所有している。タダでさえ人数が少ないのに他の船を確保する人的余裕があるのだろうか?

 

「我々の持つ艦船を全て無人艦にする。」

「何だって?」

「全員この船に乗ると言ったんだ。すでに部下にも話はつけてある。場合としてはクルーとして扱ってくれて構わない。」

 

 突然の申し出に私は驚く。いきなり数百人もの組織のトップが部下にしてくれなんて言い出したものだから当然だろう。いきなり部下が数百人増えたようなものだ。まぁ現状でもこの巨大艦の運用に各派閥から人員を借りているので、それがアーミーズに置き換わるだけだが。

 

「―――その話、俺も混ぜてもらおうか。」

 

 不意に背後から声が聞こえる。慌ててそこを見るとそこにはディエゴ海賊団の頭領――ディエゴが立っていた。

 

「いったいどうやって・・・。」

「昔から忍び込むにはダクトが一番ってな。」

 

 そういって近くにあったダクトの入り口を指さす。確かにドアはロックしたがダクトに関しては有毒ガス発生などの非常事態でもない限り閉鎖しないからな。

 

「で、混ぜてもらおうとはどういうことだ?」

「言葉通り、俺達も一緒に部下にしてくれってことさ。」

「・・・一応理由を聞いても?」

「簡単な話だ。海賊団はボロボロで、これ以上海賊稼業を続けられそうに無い。ここらが潮時って訳さ。んで、これからどうやって生き延びようかって時に、あんた等が内紛起こしそうにしているから俺達も味方させてもらおうって訳よ。」

「私は善良な航海者だ。内紛起こそうとしているのはこっち。」

「引き金を引いたのはお前だがな。」

 

 まったく適当な事をいう。私はただ止めただけだ。手段はあれだったかもしれないが。

 

「ま、拒否するっていうんならさっきの録音データを向こうに渡すだけだがな。」

「「な!?」」

 

 ディエゴの手に握られた端末から私達の先程の会話が流れてくる。いつの間にそんなものを・・・。

 

「協力するというのなら拒む理由は無いが・・・。」

「断れる状況でもないしな。」

 

 その録音データを流されたらこちらはたまったものではない。ここは大人しくディエゴの要求を呑むしかなさそうだ。ベルトラム大佐も反対はしなかった。

 

「で、どれくらい乗るんだ?」

「アーミーズは合わせて約200名というところだな。」

「海賊団は全部で150ってとこか。」

「合計350か・・・。」

 

 総員約900名のうち350名は味方になったといえる。が、依然として相手の方が数が多い。艦艇の方はアーミーズの巡洋艦が1隻、駆逐艦が2隻。海賊の魚雷艇が4隻。このうち駆逐艦1隻が大破、巡洋艦と魚雷艇1隻が中破だ。資材不足から最低限の補修のみしかされていない。

 

 それに対しレジスタンスは貨物船2隻、魚雷艇2隻。このうち貨物船1隻と魚雷艇1隻が中破だ。こちらも資材不足から修理は最低限に留められている。

 

 だが、問題は自陣営の艦の数では無く人員の数だ。確かフリーボヤージュが全部で100名程いたはずなので、レジスタンスの数は約450名だ。艦隊規模に対し人員が異常に少ないが、元々人員不足であったし戦闘によって少ない人員が更に失われた為である。

 

「で、この後はどうするんだ?早速襲撃するのか?」

「いきなり襲撃はしない。やるとすればレジスタンスが艦内各所に散った所で奇襲を仕掛けるべきだろうな。その為にも艦と相手の武器庫を抑えるべきだ。」

「艦の方はこちらで何とかしよう。優秀なAIがいるからな。」

「武器庫を抑えるっていうがどうしてだ?」

「武器を抑えれば要らぬ犠牲を出さずに済むからな。可能なら先手を打って連中の武器を抑え、戦闘を回避したい。」

「艦内の武器庫ならアルタイトが掌握できると思うが・・・。」

「おそらく自分達の艦に隠しているとみて間違いないだろうなぁ。」

 

 戦闘で相手を制圧するのでは無く、あらかじめ武器を奪っておく。そうすれば無駄な血を流さずに済む。レジスタンスの持つ武器は彼らが所有する4隻の中にあるだろう。

 

「そっちの制圧は俺達とアーミーズでやるしかねぇな。」

「強行突入か。4隻同時に突入し制圧しながら残ったレジスタンスを抑えるはこの人数では難しいぞ。」

「艦載機で吹き飛ばしちまえばいいんじゃねぇか?」

「やめてくれ、いくら何でも格納庫で爆発されたらこっちも大きな被害が出る。」

 

 ディエゴの案に私は反対する。現在格納庫内には海賊とレジスタンス達の船が全て格納されている。廃墟と化した宇宙港よりもそっちの方が修理や往来に便利だからだ。そんな状態で船を爆破されたらたまったものじゃない。艦載機用の弾薬だって置いているんだぞ。引火して大爆発間違い無しだ。

 

「突入して武器庫だけ爆破するか?」

「どうしても爆破にこだわるなお前は。」

 

 ディエゴは本当は裏切り者なんじゃないか?それとも単にレジスタンスが気に入らないからワザと被害が大きくなる方法を押してくるのか?

 

「それよりも頭を潰した方がいいだろう。」

「頭・・・あぁ、ギルバードの事か。」

「そうだ。奴を抑えれば少なくとも組織的な抵抗はできなくなるだろう。そうなれば制圧は容易だ。」

 

 現在レジスタンス内で組織を統率する事が出来るのはギルバードしかいない。ギルバードが倒れれば、レジスタンスは烏合の衆となり、制圧は容易になるーーらしい。少なくとも指揮官不在によって、組織的な抵抗は出来なくなるだろうとの事だ。

 

「それがいいか。」

「賛成。」

 

 大佐の意見に私達は賛成する。

 

「よし、では仕掛けて我々が頭を抑える。シーガレットはアルタイトと共にこの艦を確保してくれ。数人程人員を回そう。ディエゴ、お前達は相手の武器を奪うなりしろ。方法は任せるが今後の為にも出来るだけ多く確保したい。」

「任せとけってぇ。略奪は海賊の専売特許だぜ。」

「こちらも出来るだけ素早く確保しておこう。」

「よし、では各自準備だけはしておいてくれ。では、解散とする。」

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 レジスタンスが持つ輸送船の一隻。その中の一室でレジスタンス達が集まっていた。

 

「録音は以上です。連中は確実に我々を排除しようとしています。」

「チッ・・・あの裏切り者どもめッ!」

「このまま黙ってやられる訳にはいかない!先手を打つべきだ!」

「そうだそうだ!!」

 

 レジスタンス達は、対立する派閥の情報を集めるためにいくつか盗聴器を仕掛けていた。そのうちの一つゼー・グルフのブリッジに仕掛けてあったものから、シーガレット達の密談の内容を盗み聞きしたのだ。内容を聞いたレジスタンス達は憤り、やられる前にやるべきと口々に叫びたてる。

 

「リーダー。このままでは連中に先手を取られてしまいます。」

 

 レジスタンス幹部の一人がそう進言する。その進言をレジスタンスリーダーのギルバードは、腕を組み黙って聞いていた。

 

「リーダー!」

 

 幹部の声にギルバードは目を開ける。

 

「・・・残念だ。」

 

 ギルバードは一言呟くとゆっくりと椅子から立ち上がる。周りで騒いでいたレジスタンス達は、一瞬にして静まりギルバードを見つめる。そんな彼らを見渡すと彼は語り始める。

 

「俺は共にリベリアを開放する為に立ち上がった同士だと思っていた。だがそれは間違いだったようだ。奴らはリベリアと我々を裏切った卑怯者だ!!これを誠忠しリベリア解放への第一歩とする!母国リベリアの為に!!」

「「「おー!!」」」

 

 レジスタンス達は威勢のいい返事が貨物船の中に響き渡り、彼らは急ぎ準備を整え始めた。

 

 

 

 

 

――――――――

 

 方針が決定した後で、まずは足場を固めるのが先だと言った大佐以下アーミーズ達が艦内へ拠点を移している。それに合わせて海賊達も武器の手入れを始めていた。

 

そんな中で特にやる事も無い私は、ブリッジ内で適当にコンソールを操作していた。艦を掌握するにしても実際の作業はアルタイトに任せるしかないので、結構暇が出来る。それを利用して私は色々な情報を整理したりしていた。

 

 今コンソールを操作して見ていたのはこのゼー・グルフの諸データだ。ヤッハバッハ兵達がデータを消す暇もなく宇宙に吸い出されたので航海データなどが丸々残っている。むろん機密保持用にパスワードがかかっていたりするが、エドワードとアルタイトでほぼ解除済みである。

 

「ずいぶん長い間戦ってきたんだなお前は・・・。」

 

 そこで私はこのゼー・グルフの歴史を見ていた。

 

この艦は建造されて以降幾たびの戦闘と改修を受けてきた老齢艦なのだが、さすがに耐用年数も限界に近くなったのでついに廃艦処分になったらしい。廃艦前の最後の任務として例の試作兵器の試験艦になったようだ。

 

「最後の最後に敵に奪われるとは中々数奇な運命のようだな。」

 

 と、彼女の歴史に感心している時、アルタイトが話しかけてきた。

 

『艦長。先程レジスタンスの船から武装したレジスタンスが出てきました。』

「武装した?」

『はい。レジスタンスのほぼ全員が武器をもって船から出てきました。』

「一体何を・・・まさか!?」

 

 嫌な想像が頭の中を駆け巡りそれを確かめようとした瞬間、警報が艦内に鳴り響く。艦内発砲警報、つまり艦内で誰かが発砲したという事だ。それが示す場所は格納庫。

 

『艦長、レジスタンス達が格納庫内で発砲。現在アーミーズと交戦状態に入りました。』

「何をやっているんだ一体!!」

 

 唐突な戦闘状態に困惑しながらすぐにコンソールを操作し格納庫の映像を出す。そこには格納庫内でブラスターやメーザーライフルを撃ち合う場面が映し出されていた。

 

「ディエゴめ!裏切ったか!?」

 

 そう思いモニタを見ると海賊達が自分達の魚雷艇の周りで撃ち合っている様子が確認できた。だが撃ち合っているのはレジスタンス達に対してである。

 

「一体何が起きている?ディエゴが裏切ったのではないのか?」

 

 だが現に連中は撃ち合いをしている。となればディエゴが裏切ったのではないのだろうか?などと考えていたら自分の端末に通信が入る。

 

『シーガレットか!?』

「大佐!これはいったいどうなっているんだ!?」

『こちらにも何が何だか分からん!!いきなり発砲してきたんだ!とにかく格納庫の隔壁を閉鎖してくれ!!』

「アルタイト!すぐに隔壁を閉鎖するんだ!!」

 

 すぐに隔壁の閉鎖をアルタイトに命じる。だがアルタイトからの応答が無い。

 

「どうしたアルタイト!?返事をしろ!?」

 

 一向に返事がない。モニターで格納庫を確認するとアルタイト(船の方)にレジスタンスの一団が突入していた。アルタイトとゼー・グルフを接続していたケーブルも切断されている。これではアルタイトとは連絡が取れないし隔壁を閉鎖する事も出来ない。

 

「くそッ!」

 

 悪態を付きつつもコンソールを操作して急ぎ隔壁を閉鎖しようとする。だがその前に廊下から銃声が聞こえてきた。モニターを見ると数十人のレジスタンスと偶々通りかかったらしい数人のアーミーズが撃ち合いをしている。音声を拾うとレジスタンス側はこのブリッジを目指しているようだ。

 

 まずい状況になった・・・。あの人数差ではすぐに突破されるし加勢した所で多勢に無勢、ここは一度何処かへ逃げなくてはいけないが、ブリッジのすぐ外は戦闘状態だ。いったい何処へ逃げれば・・・。

 

「あ。」

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

ボンッ!!

 

小型爆弾の爆発する音が響きブリッジのドアが吹き飛ばされる。

 

 

「動くな!!」

 

 爆弾で吹き飛ばしたドアからレジスタンス達はブリッジへと突入する。しかし彼らが突入した時、ブリッジには誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

「そうか。ブリッジは無人だったんだな。」

 

 ブリッジの制圧に向かった部隊からの報告を受けたギルバードはそのまま無線機をしまう。

 

「状況は?」

「はっ!格納庫周辺で交戦していた連中の殆どは降伏、現在拘束しております。コントロールユニットの方は我々が確保。通信ケーブルを遮断してゼー・グルフから切り離しました。またシーガレット、エドワード両名の確保にも成功しました。」

「大佐やディエゴは?」

「いぜん捜索中です。」

「ふむ、捜索は続行。それと負傷者の手当を急げよ。」

「はッ!」

 

 報告を聞いたギルバードは、大佐達の捜索と戦闘で負傷した者の手当を命じて歩き出す。ギルバードが向かったのは格納庫内にある100m程度の小型貨物船アルタイトだ。その入り口から伸びていたAIユニットアルタイトとゼー・グルフを繋いでいたケーブルは途中でバッサリと切断された為アルタイトはゼー・グルフをコントロールする事が出来ない。

 

 ギルバード以下レジスタンス達は、準備が整え終わると直ちに行動を開始した。まずいくつかの部隊を艦内へ潜り込ませ、各重要施設へ向かわせる。次に、アーミーズに気付かれない場所として武装貨物船の中で残ったレジスタンスが武装して待機する。そして各部隊が配置に付いた後、時間を合わせ各所を同時に攻撃したのだ。

 

 皮肉にもそれは大佐達がやろうとしていた作戦そのものだった。

 

 

 その入り口の側に二人の男女が銃を突きつけられて座らされていた。

 

「ギルバード・・・一体何をしているのか分かっているのか。」

「その言葉そっくりそのまま返させてもらおうシーガレット艦長。」

 

 入り口に座らされている二人の男女とはエドワードとシーガレットである。アルタイトの艦内にいた二人は、レジスタンスによって真っ先に襲撃され拘束されてしまった。

 

「何を言っているのかさっぱりだな。」

「ふん・・・お前達が我々を排除しようとしているのは分かっているんだ。現に証拠もある。」

 

 そう言ってギルバードは自分の端末から例の秘密会議ーーーシーガレット、ベルトラム、ディエゴの3人がブリッジでした密談の内容を再生する。

 

「・・・私の船で盗聴とはな。」

「なに、偶々音声を拾っただけだ。お前達の方がもっと悪辣な事を考えていただろう?」

「・・・。」

「まぁいい。で、他の連中はどこへ行った?」

 

 ギルバードの質問にシーガレットは黙って睨みつける。ギルバードはブラスターの銃床でシーガレットの顔を殴りつけた。

 

「艦長!!」

 

 エドワードが叫びシーガレットに駆け寄ろうとするが、周りに銃を突き付けられ動けない。シーガレットは口内の何処かを切ったのか口の端から血が出ていた。

 

「もう一度聞く。大佐や海賊頭は何処に隠れた。」

「・・・知らない。お前達が襲ってきた時には別々に行動していた。二人が何処へ行ったかは知らない。」

 

ギルバードはシーガレットを見つめる。その目は嘘を言っているのか見極めようとしていたが、嘘ではなさそうだと感じた。

 

「・・・よし、コイツ等を拘束しておけ。逃げ出されんよう監視もつけてな。」

「はっ!」

 

 そう見張りに指示するとギルバードは、近くで指揮を取っていた2人の幹部を呼び出す。

 

「残った裏切り者を探し出して捕まえろ。場合によっては殺しても構わん。それぞれ2個小隊程連れて行け。人員の選出は任せる。」

「「はっ!」」




この4か月色々ありました。
執筆ソフトに不具合があったり、時間が取れなかったり、プロットに不具合見つけたり・・・。

こんな風に中々更新できなかったりしますが、これからもよろしくお願いします。

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