Dolls FrontLine - Missing link -   作:いろいろ

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後編。


第10話:思惑(後編)

「・・・何? 通信が?」

 

『えぇっ・・この距離で・・繋がりにく・・・わ・・戻ってちょうだい。』

 

「わかった。」

 

 

俺は追撃をやめ、合流地点に向かう。妙なことに鉄血の人形たちはあまり攻撃してこず、しばらくすると撤退しはじめた。それと同時に起こる電波障害・・・何かあるな?

 

そう考えていた矢先、合流地点付近で爆発音が鳴り響く。45たちがいるあたりから離れてはいるが、嫌な予感がする。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

撤退する鉄血部隊の一角を吹き飛ばしたそれは、目につく鉄血の人形を片っ端から撃ち抜きながら徐々にこっちに向かっていた。

見覚えのあるあの光弾は忘れもしない、私は震える手でグリップを握りなおし、会敵に備える。

 

 

「・・・辛いなら下がってもいいわよ11。」

 

 

416が心配そうな声でそう言ってくれる。本当なら今すぐ逃げ出したいけど、いつまでも逃げてはいられないから。

 

 

「大丈夫、私は戦うよ。」

 

「・・・わかった。」

 

「決まりね。 ・・・9も大丈夫?」

 

「もちろん! あの時の借りは返すよ!」

 

「・・・来る!」

 

 

それは自分の声だったか、誰かの声だったかは分からない。弾かれたように跳んだ後には、何発も光弾が飛んできた。

 

 

「アンブッシュを利用して! まずは足を止める!」

 

「始さんに比べたら、こんな奴!」

 

 

45と9が挟撃する。さすが姉妹銃というだけあって見事な連携だけど、威力不足は否めない。

 

 

「やっぱり私たちがダメージソースになるしかなさそうね、やるわよ!」

 

「・・・うん!」

 

 

恐らく私たちでは倒せない。だけど足止めなら、始さんが合流するまでの時間稼ぎなら出来るはず!

45と9に気を取られている間に狙いをつけ、フルオートで撃ち込む。多少ブレたけど頭部に連続して当たればさすがに仰け反るようで、そこに416のグレネードが飛べばさらに効果は上がる。

結果、体勢を崩したトライアルEは盛大に倒れてくれた。

 

 

「やったぁ! ナイスだよ416、11!」

 

「まだ終わってないわ、気を抜かないで!」

 

「これでちょっとは大人しくなってくれればいいんだけど・・・。」

 

「・・・そうもいかないみたい。」

 

 

一度倒れたトライアルEだけど、まるで何事もなかったかのように立ち上がり、こっちに突っ込んできた。

 

 

「ちっ、やっぱり11を狙ってる!」

 

「させないわよ!」

 

 

進路を塞ぐように416が立ちはだかり、フルオートとグレネードで弾幕を張る。

さすがにこれは辛いようで僅かに勢いが弱まったけど、代わりにろくに狙いもつけずに撃ってきた。

 

 

「くっ! 無茶苦茶な・・・!」

 

「・・・・・こっちだ!」

 

「11!?」

 

 

このままじゃ416を巻き込みかねない。そうなる前にこいつを引き離さないと!

だけどやっぱりトライアルの、アンデッドのことを理解していたわけではないようだ。・・・弾幕が止むと同時に跳躍して、私の目の前に降り立った。

 

 

「なっ!?」

 

「11逃げて!」

 

「ここからじゃ当たっちゃう!」

 

「っ!」

 

 

私は意を決して懐に入り込む。銃撃を封じればまだ勝機はあるはず、こっちも攻撃できないけど、時間稼ぎなら十分だ。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・くっ・・・」

 

 

身をよじりながら連撃を躱す。接近戦になると左腕のバトンのようなものを使ってきたけど、どうやら電磁ロッドみたいだ。

距離を詰めたのは失敗だったかもしれないけど、避けることだけを考えるならまだいける。

 

 

「もう少し・・・もう少し・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

『いや、もう十分だ。』

《 Float・Drill・Tornado・・・Spinning dance 》

 

 

あの声とシステムボイスが聞こえたと同時に、横合いから何かが突っ込んできた。

黒いボディに弓のような武器・・・来てくれたんだ。

 

 

「始さん!」

 

「よく持ちこたえた・・・下がっていろ。」

 

 

始さんはそう言ってトライアルと対峙する。トライアルも始さんのことを脅威だと思っているのか、右腕の銃と左腕のロッドを構える。

 

同時に地面を蹴った。そこからはまるで次元の違う戦いだった。

トライアルは銃を連射しながら突っ込んでくる。それを始さんは直撃弾だけを弾きながら距離を詰める。すれ違いざまにロッドと弓を一閃し、再び向き合って走り出す。

 

 

「!」

 

「ちっ!」

 

 

どちらも一歩も譲らない応酬が続く。始さんの武器はやや大ぶりで、格闘戦には向かないように見える。でもそれを感じさせず的確にダメージを与えていた。

トライアルの方も銃撃を諦めて肉弾戦へと移行する。そのスタイルは始さんとは真逆で、アンデッドのタフさを武器にしたカウンタースタイルだ。

 

 

《 Chop・Fire 》

 

 

攻防の合間にカードをラウズし、強力な手刀を叩き込む。流石に効いたみたいだけど、倒すには至らなかったようだ。

そこに、横合いからグレネードが撃ち込まれる。

 

 

「何っ!?」

 

「416はそのまま攻撃! 11は416と合流して!」

 

「私たちを忘れてもらっちゃ困るわよ!」

 

「11、動ける!?」

 

「う、うん!」

 

 

そうだ、私たちも戦わなきゃ!

銃を構え直して撃ち始める。でもやっぱり効いていないみたい。

 

 

「っ! 416危ない!」

 

「ちょっ!? 危なっ!?」

 

 

流石に無視できなくなったのか、右腕の銃で応戦し始める。アレをどうにかしたいけど、その強度は確認済み。

・・・いや、もしかしたら・・・

 

 

「・・・416、さっきのもう一回できる?」

 

「さっきのって・・・こっちに気をそらせるやつ? まぁできると思うけど。」

 

「何か良い案でもあるの11?」

 

 

賭けにはなるけどね。

私は手短に説明して、みんなはそれを了承してくれた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「・・・やはり決定打が無いな。」

 

 

わかってはいたことだが、相手はあのトライアルシリーズだ。生半可な攻撃やコンボでは到底倒せない。

やはり()()()()()を使うしかないか・・・だが、伏せられるなら伏せておきたいのも事実だが・・・。

 

 

「・・・やむを得んな。」

 

 

俺は()()()()()()()()()()()()()を取り出す。

だがそれを使う直前、ヤツの足元が爆ぜた。

 

 

「こっちを見なさいバケモノ!」

 

「本当に大丈夫なんでしょうね!? お姉ちゃんちょーっと怖いんだけど!」

 

「冗談言えるなら大丈夫だよ45姉!」

 

 

見れば45たちが一箇所に固まって集中砲火を浴びせている。だがアレではヤツの攻撃を躱しきれない!

案の定、トライアルEは銃撃を躱すことなく銃を構える。その銃口に光が溜まっていき・・・

 

 

「・・・11! 今よっ!」

 

「当たれっ!!!」

 

 

短い銃声が響いた。

以前聞いたことだが、G11という銃は他にない連射性能があるらしく、初弾三発程度なら点での攻撃が可能だという。

そして、アンデッドである俺の耳には、間違いなく三発分の銃声が聞こえていた。

 

 

「!?」

 

 

瞬間、トライアルEの右腕が爆ぜた。どうやら発射直前の銃口に狙撃したようだ。まったく、危なっかしいことをする。

だが結果としては良い方に出たようだ。ヤツは右腕の肘から先をなくし、ヤツの最大の武器である射撃能力を失った。

攻めるなら今だ。

 

 

《 Bite・Blizzard・Poison・・・Blizzard venom 》

 

 

まだ体制を立て直せていないうちに強力な蹴りを叩き込む。

 

 

「やった!?」

 

「・・・いや、まだだ。」

 

 

吹き飛ばされたトライアルは、しかしすぐに起き上がる。

追撃を加えようとしたが、それよりも先にヤツは逃げ出し、そのまま見失ってしまった。

 

 

「ちっ・・・逃しちゃったわね。」

 

「・・・すまん。」

 

「仕方ないわ。 あそこまでタフだとは思わなかったし、今回は全員無事だったしね。」

 

「はぁ〜〜〜〜疲れたぁ・・・もう帰って寝る。」

 

 

ヤツを取り逃がしたのは残念だが、皆無事でよかった。

11には何か礼をしなければな。

 

 

「じゃあコーヒーがいいなぁ。 無理なら一緒に寝てくれてもいいよ。」

 

「11ずるい! 私も始さんと一緒に寝る!」

 

「ちょっと9!? ダメよ男の人と二人で寝るなんてそんなのお姉ちゃん許しません!」

 

「あんたこそ何考えてるのよ。」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

ガサガサと何かが森を駆ける音がする。それは徐々に大きくなり、ついに私たちの目の前に姿を現した。

 

 

「!?」

 

「よぉ、待ってたぜ。」

 

「情報通り、右腕が潰されているな。」

 

「けど油断しないように。 相手はあのトライアルシリーズだよ。」

 

 

私は両手のハンドガンを構え、処刑人は大ぶりの刀を構える。そして側に立つ男・・・一真はカードをベルトに差し込み、腰に当てる。

 

 

「・・・変身。」

《 Turn Up 》

 

 

金色の壁が現れ、それを通過した一真は黄金の騎士のような姿に変わる。

 

 

「しゃあ! 行くぜ!」

 

「あくまで足止めだぞ処刑人。」

 

 

私と処刑人が先に仕掛ける。集中的に足元を狙い、意識がこっちに逸れたら処刑人が一撃離脱でダメージを与える。

・・・やはり近接武器ならまだ効果があるか。

数度の攻撃の後、頃合いを見て私たちは左右に飛び退く。あくまで私たちは()()()が目的だからな。

 

 

《 ♠︎10・J・Q・K・A・・・Royal Straight Flash 》

 

 

直後、横合いから放たれた光の濁流がトライアルを飲み込む。地面を削る勢いでそれが通った後には、ちりひとつ残らなかった。

 

 

「・・・すげー。」

 

「話には聞いていたが・・・正しく切り札だな。」

 

「じゃあ帰ろっか。 え〜っと、M4ちゃん?を乗せてくれるかな。」

 

 

いつのまにか変身を解いた一真の言葉に、私たちは顔を見合わせる。

今ここにあるのは一真の愛車の『ブルースペイダー』と、私と処刑人が乗ってきたサイドカー付きのバイクだけ。ちなみに私たちはどちらも運転できる。

 

 

「・・・なぁ兄貴、こいつ乗せるならサイドカーでいいんじゃねえか?」

 

「それには賛成だ。 振り落とされんだろうし、運転にも支障はない。」

 

「う〜〜ん・・・でもそうなると、どっちかは俺の後ろになるけどいいの?」

 

「「いい!」」

 

 

そう、行きは処刑人と二人でだが、帰りくらいは一真と帰りたいのだ。それは処刑人も同じようで、だからこそわざわざM()4()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

あとはどちらが一真の後ろに乗るかだ。

 

 

「・・・アイスで手を打たねえかハンター?」

 

「断る。 どんなものであってもここは譲れないな。」

 

「じゃあ・・・あれか?」

 

「しかないだろう。」

 

 

そう言って互いに向き合い、同時に拳を振り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「じゃんっ! けんっ!! ぽんっ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

あ〜〜〜一真の背中はあったかいなぁ。

 

 

「じゃ、帰ろっか。」

 

「あぁ。」

 

「グギギギ・・・・」

 

 

後ろで処刑人(負け犬)が唸っているがそんなことはどうでもいい。今はこの優越感と幸福感を噛みしめるのだ。

・・・しかしわざわざ()()()()()のに一向に気にせんとは。もしかして私には魅力がないのだろうか?

 

 

「それじゃあ、しっかりつかまっててね。」

 

「おう。」

 

 

一真がスロットルを回し、バイクを発進させる。荒野を走る振動と想い人の体温が心地いい。

・・・あぁ、これはまずいぞ。どんどん頬が緩んでしまう。

 

 

「えへへへ〜〜〜〜」

 

「? 何か楽しいことでもあったの?」

 

「くぅぅぅ〜〜〜覚えてろよハンター・・・」

 

 

もうこのまま二人で旅に出たい気分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「む? 来たか。」

 

「何の用かしらヘリア・・・あら?」

 

「・・・なんでコイツら(AR小隊)がいるのよ。」

 

 

数日後、本部へ帰投していた私たちに召集命令が下され、いつもの16labに集まる。そこにいたのはあのAR小隊だったけど、一人足りないようね。

 

 

「さて集まってもらったのは他でもない。 404小隊には、AR小隊とともにM4A1の奪還任務についてもらう。」

 

「・・・なんで私たちなのかしら?」

 

「理由はいくつかあるが・・・」

 

「お前たちが『コイツ』に詳しいって聞いてな。」

 

 

そう言って眼帯の人形・・・M16が手渡してきた写真を見る。

・・・へぇ。

 

 

「・・・確かに、コイツのことは知っている。」

 

「あら、てことはやっぱりアンデッド?」

 

「ん? でもアンデッドは封印されたんじゃ。」

 

 

いえ、例外が二人いるわね。

始さんとその親友・・・おそらくコイツはその彼のはず。

 

 

「なら決まりだな。」

 

「ちょっと、まだ受けると決めたわけじゃ・・・」

 

「命令だ。」

 

 

416は納得がいかない顔で引き下がる。まぁ気持ちがわからなくはないんだけどね。

ただそれ以上に問題なのは・・・

 

 

「ねぇヘリアン。」

 

「ん? なんだ?」

 

「目的はM4の奪還。 なら、コイツの対処は二の次でいいわよね?」

 

「・・・あぁ。」

 

「納得できないわ。」

 

 

ヘリアンからの同意は得られたけど、異議を唱えたのはAR小隊のピンク髪、AR-15だ。まぁそう言うとは思ってたけどね。

 

 

「私たちはコイツと戦ったから分かるわ、コイツを放っておくことはできないわよ。」

 

「倒せない相手と戦うだけ無駄よ。」

 

「・・・何ですって?」

 

「416ちょっと落ち着いて。・・・えっと、アンデッドを倒すのは不可能っていうか、なんというか・・・」

 

「でも、M4が捕まっちゃったんだよ!」

 

「だからM4の奪還のみに注力する、ってことでしょ?」

 

 

それでもAR小隊は納得できないようだけど、まぁ仕方ないわよね。

始さんがアンデッドであることを伏せつつ説明して、なんとかわかってもらうことになったけど、先行き不安だわ。

 

 

「話がまとまったな。 では明日から早速行動してもらうが、隊長不在のAR小隊には臨時隊長として一名配属される。 ・・・入れ。」

 

 

扉が開き、入ってきたのは小柄な人形。手に持ったそれから、私と同じSMGタイプのようね。

 

 

「RO635です。 よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

その後、簡単な歓迎会と自己紹介だけ済ませた私たちはM4の反応・・・鉄血工造の支配区域に向けて出発した。

 

 

 

 

続く




S09地区戦はこれにて終了。
連れ去られたM4、それを追うAR小隊と404小隊。鉄血と剣崎、トライアルシリーズ、ドロドロの陰謀・・・ちゃんと書けるかなこれ?


というわけで解説。

トライアルの耐久値等
原作では最強フォームでなければ倒せないような相手でしたが、ここではそういうわけでもありません。始も剣崎も長い年月の中で己の技術を上げ、通常フォームでも倒すことが可能です。
始がKのカードを使おうとしたのは、長引くと撤退→再びG11を狙ってくると考え、今仕留める必要があったからです。
剣崎も同じ理由。

開幕キングフォーム
ディケイドでお馴染みのアレ。
毎回これでいいじゃねと思われる方のために付け加えた設定で、剣崎はこの開幕Kをあまり使いたがりません。通常→Kのプロセスを踏むことが自身が『人』であるという証明だと思っているので。

RO635
元々はM4の補佐役として作られたという設定。そのため簡易ながら指揮モジュールがある。



以上!
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