Dolls FrontLine - Missing link - 作:いろいろ
ラウズシステムを手に入れて調子に乗った416が始にやられました
side:HK416
修復装置から出てきた私を待っていたのは、ペルシカからのキツイ説教だった。コンボは使うなと言われたのに使ってしまい、挙げ句の果てに体が動かなくなるほどの致命的なエラーを起こしてしまう。
始さんにも・・・・・
『お前にそれを使う資格はない!』
・・・・・あのとき、私はなにを考えていたのだろう。カードの力を手に入れて、それまで手も足も出なかった相手と戦う力を手に入れて、それで・・・それだけで、勝てると勝手に思い上がって・・・
「416、大丈夫?」
「・・・・G11」
いつも眠そうにしているG11が、本気で心配している。それほどまでに、私はどこかおかしかったのね。
「大丈夫よ、不具合の後遺症もない「そうじゃないよ」・・・・G11?」
「・・・あの時の416、すごく怖かった。 いつもの416じゃなくて・・・・・まるで、アンデッドが乗り憑ったみたいな・・・」
そう言うと、G11は私の袖を掴んで顔を押し付けてくる。本当、なにをやっているんだろう私は・・・いつも心配かける側のコイツにも心配されるなんて。
けど、おかげで少し落ち着いた気がした・・・・・でもコイツのおかげっていうのが少々気に食わないので、とりあえずそのほっぺをギュ〜っと伸ばしておく・・・・やっぱりよく伸びるわねコイツ。
「うぅ〜〜〜〜ひゃめへよ〜〜〜」
「ふん、私を心配するならまずはその寝坊助を治すことね」
「えぇ〜〜〜〜・・・・・」
さて、これは一度みんなの謝らないといけないわね。始さんにも、改めてちゃんと謝っとかないと。
「で、G11。 始さんはいまどこにいるの?」
「え? 始さんなら・・・・・あ、そうそう! M4が始さんと戦うんだって」
・・・・・・・は?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
side:ペルシカ
「・・・・はい、これでセッティングはOKよ。 あと、わかってると思うけどコンボの使用は厳禁ね」
「はい、分かっています」
「・・・・・まぁM4なら大丈夫だとは思うけど」
そう言って、私はシステムチェック用の端末を閉じる。あの416が突然無茶をしたのも驚きだけど、まさかM4がこれを使いたいなんて言うとは思ってもみなかった。臆病で、戦うことに前向きではない彼女が。
「終わったか?」
「ん? あぁ、始くん」
「はい、終わりました」
「わかった」
始くんはそう言うと、ポケットからカードの束を3つ取り出す。それぞれハート、ダイヤ、クラブのスートが描かれた、ラウズカードだ。
「まずラウズカードについての説明だ。 カードは1枚につき効果が1つ決まっている。 が、それは必ずしも同じ現象を引き起こすものではない」
そう、ラウズカードの特性を引き出す上で最も難しかったのがその部分だ。例えばカテゴリー6、『Fire』や『Tornado』の効果は属性の付与とそれだけだけど、例えばハートのカテゴリー5『Drill』は回転力を付与して威力を上げるもの。これはスクリューキックとして発動する他、銃撃の貫通力を上げる効果もある。
つまり、使用者の意思の応じて力が宿る先が変わるのだ。
「この3つの中から1つ選んでもらう。 選んだら、それについて説明しよう」
「・・・・・では、これで」
M4が選んだのは、クラブのスート。これは少し意外だった。
カードは、スートごとに大まかな傾向がある。ハートは遠近両用のものが多く、ダイヤは遠距離攻撃の補助が多い。逆にクラブは、接近戦向けの効果が多いからだ。
「・・・・いいのか?」
「はい、大丈夫です」
始くんも意外だと思ったらしいけど、とうのM4の表情に迷いはない。少し見ない間に、随分と成長したみたい。
『ちょっとM16、気が散るからじっとしてて』
『いや、でもな・・・・』
『M4がやるって言ったんだから見守りなさいよ』
『けど、もしM4が傷モノにされたら・・・』
『・・・・あんた、相川さんをなんだと思ってるのよ』
扉の奥から、M16とAR-15が言い合ってるのが聞こえる。前からその気はちょっとあったけど、M4が攫われてからM16は過保護気味だと思う。そりゃ大切な妹だし、世間知らずな箱入り娘感はあるけど。
「・・・・・これで全てだ。 わかっているとは思うが、コンボは」
「大丈夫です、ペルシカさんにも言われました」
ま、始くんもM4こう言ってるし大丈夫でしょ。それよりも・・・
(話に聞いた、剣崎一真・・・・彼からM4が何を学んだのか・・・)
もしそれが有益なモノならば、きっと彼女たちの力になるはず。私にできるのは、それまでに必要なものを揃えておくことだけ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
side:相川始
演習場で待っていると、扉が開きM4が出てくる・・・・・が、その姿は普段の彼女ではなかった。手足に即席のレガースをつけ、腰には大振りのナイフを備えている。そして彼女の愛銃には、416が落としていたナイフが銃剣のように取り付けられていた。
「お待たせしました」
「構わない・・・・
工夫を凝らすのは悪くない、だがアンデッドやトライアル相手には大した効果は得られないだろうし、何より付け焼き刃は身を滅ぼす。その意図を込めて少々脅すように言ったが、返ってきたのははっきりとした意思だった。
「はい・・・これで
「・・・・・・ふっ、そうか」
相変わらず、これで彼女たちが『人形』だというのだから不思議な話だ。人に作られ、その思考も電子演算の結果でしかないというのに、その目には確かな『決意』が見て取れる。416のものとも違う、力を理解し振るう覚悟を決めた目だ。
「いいだろう、それでどこまでできるか・・・・・試してやろう、お前の力を」
「はい・・・・お願いします」
『では、訓練開始!』
ペルシカの合図で、ハートのAをラウズしカリスへと変身する。よりアンデッドとしての神経を鋭敏化させ、
「来い!」
「いきます!」
M4が地を蹴り、走り出すと同時に引き金を引く。カードの力の乗っていないただの弾だが、正確に顔を狙うそれをカリスアローで振り払う。
「接近戦か・・・・・いいだろう」
「やっぱり効いてない・・・・なら!」
手始めに、こちらもカードを使わずに殴りかかる。ただのパンチとは言え俺はアンデッド、その威力も並大抵のものではない。
だがM4は臆することなくそれを受け流し、逆に肩越しにタックルを決める。
「くっ・・・やるな」
「やっぱり、接近戦の方が効果が・・・」
こちらも反撃しようとするも、M4は不用意に追撃しようとせずに距離を取る。そして何か考えを整理するようにブツブツと呟くと、再び武器を構える。
(・・・・・なるほど)
はっきり言えば、何故彼女がAR小隊の隊長なのかという疑問はあった。M16なら皆に信頼されているようにも見えるし、決断力であればAR-15の方が優れている。わざわざROのような補佐役を用意するならば、初めから向いている人形を使えばいいと思ってたが・・・・・
(俺との・・・いや、アンデッドとの戦い方を模索しているな)
今後もおそらく、彼女たちはトライアルと戦うことになるだろう。場合によっては、剣崎とも。
そのために必要なスキルを、彼女は見つけようとしている。隊長としてか、それとも個人の願いか・・・・いや、両方だな。
(ふっ・・・出会った頃の剣崎や睦月を思い出すな)
もっとも、あいつらの方が一癖も二癖も強かったが。
さて、次はどうする・・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
side:M4A1
手加減はしていない・・・不安定な姿勢だったから少し力が乗らなかったけど、それでも全力で殴った。多分、普通の人を殴ったら吹き飛んじゃうんじゃないかってくらいの力はあると思う。
けど、不意打ちでよろけたくらいで大したダメージにはなっていないみたい。
(けど、銃弾よりは効いてるみたい。 やっぱり接近戦に慣れる必要があるかな)
私が相川さんに戦いを申し込んだのにはいくつか理由がある。一つは、私が剣崎さんから教えてもらったことがどこまで役に立つかの確認。もう一つは、彼を通してアンデッドとの戦い方を学ぶこと。
そして最後は・・・・・・
(416さんは・・・・よかった、見てくれてる)
チラッと見た窓の先に、416さんが立っている。あの人のことは正直苦手だけど、でもさっきの彼女はなんというか、普通じゃなかった気がする。それにはきっと理由があって、だからあんな無茶をしたんだと思う。
勝手だけど、私はそんな彼女が放っとけなかった。
「戦いの最中によそ見か?」
「っ!」
視線を戻すと同時に、相川さんが凄い勢いで突っ込んでくる。さっきの攻防で、少し本気を出してくれたみたいだ。
まともに受けるわけにはいかないので、その場を急いで飛びのきつつ弾幕を張る。
「判断も悪くない・・・だがこのままではジリ貧だぞ」
「えぇ、わかっています!」
言いながら、私はカードを取り出します。絵柄を見られないようにしつつ右腕のラウザーに・・・・ではなく、そのまま相川さんの元に走り出します。
相川さんは弓のような武器を構えました。おそらく、私のカードが接近戦用のものであると予想してのことでしょう・・・・・けど!
「半分正解・・・・半分不正解です!」
《 Smog 》
「なに?」
ほぼゼロ距離で黒い煙幕が吹き出し、互いの視界を奪います。相川さんがどれくらい見えているのかは未知数ですが、アンデッドが出す煙幕なら効果ありのはず。
そして私は、あらかじめデータとして識別していた彼の位置をもとに背後へと回り込みます。
《 Screw 》
「っ! そこか!」
「ちっ!」
アンデッドの力を乗せたスクリューパンチは、驚くべき反応速度で振り返った相川さんに受け止められました。
ですが、それも予測済み!
「まだまだ!」
《 Gel 》
「っ!?」
『嘘ぉ!?』
観戦していたペルシカさんから驚愕の声が上がりました。私でもびっくりですが、体をゲル状に変えて再び背後へと回り込みます。けど、振り返るはず・・・・なら!
「次は・・・・これ!」
《 Blizzard 》
「ちっ! やるな」
振り返るよりも先に『Blizzard』のカードで足元を凍らせ、動きを封じます。一時的ではありますが、それで十分です。
《 Stab 》
「はぁああああ!!!」
『Stab』のカードで威力を上げ、足跡の銃剣を突き出します。これなら、アンデッドの体を貫けるはず・・・!
「・・・・・・・・合格だ」
《 Reflect 》
「えっ・・・・きゃぁ!?」
全力で突き出した銃剣は、しかし突き刺さることなく突然何かに弾き飛ばされました。突然のことに勢い余ってゴロゴロと転がり、その間に相川さんは氷を砕いて脱出してしまいます。
でも・・・・・・
「あれで・・・アンデッドが倒せると思うか?」
「・・・・いえ。 ですが、隙を作ることはできます」
「そうだ。 そしてお前は、それを一人で成し遂げた・・・・・誇っていい」
「あ、ありがとうございます!」
仮面で表情は見えないけど、その言い方からは少し優しさが見える。
だから、少し気を抜いてしまっていた。剣崎さんもそうだけど、この人もやっぱり厳しい人だった。
「・・・・・・だから、少しギアを上げるぞ」
「え・・・?」
「俺もカードを使う・・・・・予定の終了時間まで、耐え切ってみせろ」
《 Bullet 》
「っ!?」
相川さんがカードをラウズすると、弓を弾くような動作の後に高威力の矢が飛んできます。なんとか躱すことはできましたが、その威力は当たれば致命傷は免れません。
「どうした? 敵は待ってはくれないぞ」
《 Bio 》
「くっ!」
新たなカードがラウズされ、今度は植物のツタが数本飛んできます。それを撃ち落とし、近づくものはナイフで切り落としますが、これもアンデッドの力なのか、しつこく追ってきます。
そして最後の一本が、私の足に絡みつき、引き倒します。
「あっ!」
「どうした、もう終わりか?」
「くっ・・・・!」
《 Thief 》
銃を構え、引き金を引く・・・その前に、カードの力で銃が私の手を離れて相川さんの手へと飛んで行きました。
こんなことも可能だなんて・・・・・
「そうだ。 アンデッドの力は、たった一枚でも強力だ」
「・・・・コンボだと、さらに強くなるんですね」
「あぁ、到底人形では耐え切れないほどにな」
そう言うと、相川さんはカードを3枚もとりだし、順にラウズしていきます。
ハートの4、5、6・・・・その瞬間、膨大な力が集まるのを感じました。
「見ておくといい。 これが・・・・・アンデッドの力だ」
《 Spinning Dance 》
相川さんの体がフワッと浮き上がると、突風を纏い物凄い勢いで回転しながら真下に落ちました。
私が倒れている場所から少し離れていたのですが・・・・ぶつかった瞬間、凄まじい衝撃が襲い掛かりました。
「きゃああ!!! ・・・・・・うっ・・・っ!?」
目を開けると、あれだけ暴れても傷つかなかった床にクレーターができ、その中心で変身を解いた相川さんが佇んでいました。
先ほどまでの闘志は感じず、ゆっくりと歩いてくるとスッと手を貸してくれました。
「これが、お前たちが扱うアンデッドの力だ・・・・・使い方を間違えるなよ」
「! ・・・・・・はい!」
私はそう返事をすると、相川さんの手をグッと握り返しました。
続く
戦闘描写ってむずいなぁ(今更)
前回の後書き通り、次回は鉄血回です。
さて、叛逆小隊をどこで出そうかな・・・いっそ敵側とかありかな?