Dolls FrontLine - Missing link - 作:いろいろ
30話近くで一度恒例のギャグ回を入れてみたいところ。
side:アルケミスト
「・・・・テレポート完了。 では、お気をつけて」
「ありがとう代理人ちゃん」
これが私にできることですので、そう言って代理人は再びテレポートを起動し立ち去る。
本拠地を失い、各地にあった工場や拠点も次々と失った我々は、汚染区域ギリギリのゴーストタウンを仮の拠点としている。そこから各地へと赴くには、車両での移動では限界がある。当然、ヘリなんていう目立つ手段も使えない。
結果、代理人の最大出力テレポートで現地近くまで運び、そこから移動するというのが主な手段だ。
「毎度ながら、代理人には負担をかけるな。 誰が出撃することになっても、代理人が必要になる」
「それが、代理人の選択。 気を遣うのは失礼」
「・・・・・そうだね」
代理人はより遠くに、そしてより多くの人や物資を運ぶためにテレポート能力を強化した。チャージに必要な時間もエネルギーも大幅に減り、即時撤退も容易になった。
だがそれと引き換えに、代理人は戦う力を失った。サブアームの武装はもちろん、火器管制システムも切り捨て、四肢のパワーモジュールも低出力のものに切り替えた・・・・・今の代理人は、見せかけだけの
「選択、か・・・・・」
腰に巻いたベルトをさすりながら呟く。代理人は一真のためにこの道を選んだ。処刑人もハンターも、似たような理由でベルトを手にした。そして、それは私も同じだ。ただ代理人とは、選んだ選択肢が違うだけ。
「・・・・そうだな、私たちが選んだことだ」
「アルケミスト?」
「なんでもない。 それより一真、急がなくてもいいのか?」
ドリーマーの通信傍受を聞いた限り、例のグリフィンの部隊はかなりまずい状況だと聞くが。
「助けにいきたいのは山々だけど、あっちにはM4ちゃんたちが向かったみたいだからね。 だからあっちは任せる。 俺たちが向かうのは、
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同時刻
side:M4A1
走る、撃つ、走る、撃つ。
距離を話しすぎず、近づきすぎず。
積極的に攻撃しながら、深追いにならないように。
鉄血との戦いでも、これは変わらない。でも、ここまでの緊張感を持ったのは、初任務以来かもしれない。
「フッ・・・!」
「グゥッ!」
「っ!」
「グルゥ‼︎」
光弾が掠め、地面が爆ぜる。その一発はデストロイヤーやウロボロスの火力に匹敵し、その弾速はドリーマーのライフルに迫る。そしてハンターやアルケミストのように連射可能とくれば、まるで鉄血ハイエンドのキメラのようにも思える。遠近問わないあたりも処刑人やゲーガー思わせる。
そして何より、通常攻撃では大してダメージも与えられないその耐久力が厄介だ。
(でも、言ってしまえばそれだけね!)
トライアル・・・そしてその元となったアンデッドには、驚異的な自己再生能力が備わっている。実際に対峙したアンデッドは嶋さんと城さんとの模擬戦だけなのだが、少なくともこのトライアルを造った人間はその再生能力を最大の防御として考えているらしい。
要するに、回避動作がほとんどないのだ。
(実際、正規軍の対E.L.I.D装備くらいでないと効かないのでしょうけど・・・・・その傲りが命取りよ!)
銃撃の合間に一気に距離を詰める。振るわれた左腕を躱し、そのまま背後へと回る。同時にカードをラウズして、至近距離から叩き込む!
《 Drum・Cool 》
「喰らえっ!!!」
不安定な姿勢だけど、この距離なら外さない。通常の『M4A1』では想定されていないほどの弾数を吐き出し続け、その全てを受け続けたトライアルがついに膝をつく。
模造品とはいえラウズカードの連続使用は負担が大きいけど、このチャンスは逃さない。大きく後ろに飛び退き、ランチャーを起動させる。
「この距離なら・・・・これ!」
《 Slug・Magnum 》
カードをラウズするのと、トライアルが立ち上がるのはほぼ同時だった。振り返った青白い瞳と目が合い、一瞬恐怖を感じる。
でも、それを乗り越えるためにここにいるんだ!
「グオォァアアア‼︎」
「これで・・・・・終わりよ!!!」
トリガーを引き、二枚のカードで極限まで威力を上げた榴弾が放たれる。カードの影響で弾速も射程も大幅に落ちてしまっているが、これだけ近ければ関係ない。
それはトライアルの胸元に突き刺さり、次の瞬間一気に爆ぜた。
「くぅぅ・・・!!!!」
「きゃあああ!!!!????」
「な、なんだ!?」
想像以上に大きな爆発は、隠れていたグリフィンの部隊にも届いたらしい。それほどまでの一撃をもらったトライアルは、手足の先が千切れ飛んだ以外、跡形もなく消炭になっていた。
「や・・・・やった・・・?」
『・・・おいM4! 無事か!?』
「え? 姉さん?」
『こっちは今片付けたが・・・・なんかスゲー爆発だったぞ!?』
『ROです! こちらは少し手間取っていまして・・・・・終わったのなら合流できますか!? 』
「M4、了解です。 姉さんとAR-15はSOPとROの援護へ、私もすぐに向かいます」
とにかく、目の前の敵は倒せた。
今は残りのトライアルを始末することだけ考えよう。
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十数分後
side:アルケミスト
『くそっ! 3体目もやられた!』
『馬鹿な・・・・E.L.I.Dすら退けるトライアルだぞ!?』
『どうやらあのカードが関係しているらしい。 トライアルを失ったのは痛いが・・・・・とにかく、このデータを持ち帰るぞ!』
グリフィンの部隊とトライアルの交戦地域・・・・・そこから少し離れたこの場所にいたのは、戦場には不釣り合いのいかにも研究員といった白衣の連中だった。簡易のものだろうがデータ収集用の機材を並べ、トライアルの戦闘データを収集していたらしい。
連中の慌てる顔を見るのは愉快だが、そのデータを持ち帰られるのは面倒だ。
「ほぉ・・・・・さぞかし面白いデータが取れたようじゃないか」
「なっ!? 鉄血だと!?」
「一体どこから!?」
「そんなことはどうでもいい・・・・・今から貴様らを殺すが構わんな? 答えは聞いてない!」
護身用の銃を取り出したようだがもう遅い。両手のレーザー銃とスケアクロウのビットが火を吹き、生身の人間にはオーバーキルなダメージを与える。
終わった頃に一真が顔を出し、機材の方に近寄った。
「ごめんね2人とも・・・・人殺しなんてさせて」
「くくっ、相変わらず優しいな一真は」
「以前はこれが当たり前、一真が気に病む必要はない」
そうは言っても一真のことだ、帰ったらまた謝ってくるのだろう。
一真の事情を聞き、協力関係になってからは極力人を殺すことを避けていたが、今回ばかりは仕方がない・・・・・いや、むしろ
「奴らと本格的に対立することになれば、必然的にこうなるだろうね」
「あぁ・・・・だが、その役目は私たちだ。 一真、お前には人殺しなんてさせないさ」
「そのための、私たち」
「・・・・2人とも、ありがとう」
一真がそう言って、持ってきていたデバイスに記録データを移していく。
・・・・・ふむ、やはりM4の動きが頭一つ抜けているな。
「M4ちゃんは真面目だからね、きっとたくさん練習した・・・・・・スケアクロウちゃん! 後ろだ!」
「っ!?」
一真が叫び、スケアクロウがその場を飛び退くと同時にビットを向ける。だがそのビットも、直後に襲いかかった謎の衝撃波を受けて墜落、粉々に砕け散る・・・・・これは・・・石になっているのか!?
「この攻撃・・・・・トライアルBか」
現れたのは、全身目玉だらけの怪物。機械的な印象のトライアルEとは違い、不気味な印象を与える。そして右腕に絡まるように配置された蛇が、先ほどの石化攻撃の正体だろう・・・・メデューサとでもいうつもりだろうか。
一真はすぐさまベルトを取り出し、カードを差し込む・・・・・のを、私は片手で制した。
「一真、ここは私に任せてもらえないか?」
「・・・・・わかった。 でもあの石化攻撃には注意してね」
「わかっている」
そう言って一真とスケアクロウは離れる。今のうちにデータの吸い出しを続ける筈だ。その間に、私がこいつを倒す。
武器を捨て、ベルトに手をかざす。
「変・・・・・身ッ!」
《 Open Up 》
バックルを開き、その身にアンデッドの力を纏う。両腰のホルスターに吊るされた銃を抜き、呼吸を整える。
トライアルが腕を振り上げると同時に、私は地を蹴った。
「グルァッ‼︎」
「っ! はぁっ!!」
指先から放たれた電撃を躱し、銃弾を浴びせながら肉薄する。怯んだところを銃剣で切りつけ、確実にダメージを稼ぐ。それでも多少よろける程度なあたり、やはりトライアルの耐久力は化け物だと痛感した。
時間をかければ不利になる、そう思いさらに攻めようとした矢先、一瞬プログラムでは説明できないような感触が電脳を走る。ほとんど反射的に追撃をやめ、横に飛び退いた。
次の瞬間、奴の右腕の蛇が光った。同時に衝撃波が打ち出され、目の前の瓦礫をも石に変える。
(危なかった・・・・くそっ、予備動作もほとんどないのか!)
「グルル……グァッ‼︎」
「ちぃっ!」
奴もこちらが石化攻撃を警戒しているのを感づいたらしく、立て続けに衝撃波を飛ばしてくる。トライアルの中では性能が低い方なのだが、それを補って余りあるほどの厄介な技だ・・・・・っ!?
「グゥッ‼︎」
「しまっ・・・・ガアアアアアッッッ!!!???」
し、しくじった・・・・右腕に気を取られていたせいで、左手から放たれた電撃をモロに喰らうとは・・・!
ライダーシステムのおかげで激痛を感じる程度で済んでいるが、生身で食らっていれば今頃・・・・・
「グルァッ‼︎」
「くっ・・・・!」
クソッ・・・・考え込んでる場合じゃない!
またしつこく石化を放ちながら、まるで嬲るようにジワジワと距離を詰めてくる。さっきの電撃も連発してきて、私は思うように動けていない・・・・むしろさっきから、直撃ではないにせよ何発か喰らっている。
「はぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・」
(石化だけはなんとか躱せているが・・・・まずい、責めるタイミングが・・・・・)
「グォァアッ‼︎」
「っ! またかっ!!」
ダメだ・・・・警戒しすぎて踏み込めない。だがこのままでは遅かれ早かれ捕まる。
打開策はある、一真に救援を求めればいいだけだ。むしろそれが最も確実な手段だし、私1人で倒さなければならない理由なんてない。
・・・・・・だが!
(処刑人とハンターができたんだ・・・・・姉として、私が引くわけにはいかん!)
「グルァッ‼︎」
「くっ・・・・・うぉぉおおおおおお!!!!!」
放たれた電撃が脇腹を掠る。ライダーシステムでも抑えきれないダメージが私の体を蝕み、動きを鈍らせる。
だが、ここで立ち止まればもう次はない。そう自分に喝を入れ、銃剣をまっすぐと突き出し・・・・・奴の右腕を貫いた。
「グルゥ⁉︎」
「これで石化は狙えない・・・・一気に決めるっ!!!」
もう片方の銃剣をトライアルのバックルに突き立て、ねじ込む。そうはさせまいとトライアルも左手で私の首を掴み、力を込めてくる。その指先が徐々の熱くなり、またあの電撃を放とうとしているようだ。
「ぅぐっ・・・・だが・・・もう遅い!!!」
最後の一押しとばかりに銃剣を深く突き入れ、トリガーを目一杯引き絞る。傷口に埋もれた銃口からアンデッドのエネルギーが放たれ、バックル周辺・・・・トライアルの制御機関をズタズタにしていった。
「・・・・・・・はっ!?」
「あ、目が覚めたんだね」
気がつけば変身は解け、私は無駄に青い空を見上げていた。そこに覆いかぶさるようにして一真の顔が映り・・・・・どうやら彼の膝に頭を乗せているのだと判断する。いわゆる膝枕というやつか。
「一・・・真?」
「お疲れ様・・・・ごめんね、助けが遅れて」
一真が心底申し訳なさそうにする。
だが一真は悪くない。1人で戦うと言ったのも、救援を呼ばなかったのも、私の意地のせいだ。勝手に決めて、勝手にピンチになって・・・・・悪いのは私の方なのに。
ピンッ
「痛っ!?」
「あんまり無茶しちゃダメだよ、アルケミストちゃん。 多分、姉だからとか考えてたんだろうけどね」
「・・・・・なんだ、バレてたのか」
まったく・・・・これではなんのための意地だったのやら。
「・・・・本当はお説教くらいはしようかなって思ってたんだけど、今回はやめとくよ」
「ふっ、怪我人に同情のつもりか? それなら必要ないぞ」
優しさは嬉しいが、同情されるのは好きではないのでな。怒られるならはっきりと怒られる方がいいし、今回はその責任があると思っている。
「同情・・・・も、あるかな。 お説教は『
「・・・・・うん? 2人?」
「ふふふ、一真さんは優しいですね」
「その分、私たちが怒るけど」
一真の後ろからヌッと現れたのは、姉貴分の代理人と妹分のスケアクロウ・・・・・・片や笑顔のくせに目が笑っておらず、もう片方は無表情なのに怒っているのがよくわかる。
・・・・・一真、助けてくれ。
「「さて、覚悟はできてる(ますか)?」」
「あ、あははは・・・・・・・」
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同刻
side:???
・・・・トライアル4体の反応が消えたか。
馬鹿なっ! グリフィンの人形を始末するだけだぞ!? ・・・・まさか主任、不良品を差し向けたのではあるまいな!?
ひどい言い草ですねぇ、我々が保証する品質が信じられないと?
ではこの事実をどう説明する!?
他の勢力の介入があった、と考えるべきでしょう。 観測に出した人員からの連絡も絶えたのだからな。
鉄血か、16labの生き残り・・・はたまたその両方が、我々のトライアルシリーズに対抗しうる力を持っている、と?
おかしい話でもあるまい。 例のシステムは未だペルシカリアが持っていると考えるのが当然だろうし、鉄血の剣士もおそらくは同等の力を持っている。
・・・・・いずれは、ここに直接攻めてくるやもしれんな。
じ、冗談ではないぞ! そもそも将軍、貴様の部隊があの女を仕留め損なったからではないのか!?
問題ナイ.
つ!? 貴方は・・・・・!
とらいあるノ量産ハ順調ダ. ジキニ例ノモノモ完成スル.……ソウダナ,主任?
えぇ、もちろんですとも。 それに最近は糸の切れたマリオネットがゴロゴロと転がっていますからねぇ・・・・・そちらも有効活用させていただいてますよ。
期待シテイル.
コノ世ヲアルベキ姿二戻ス為二……
続く
トライアルが弱すぎるって?
確かに原作に比べればかなり弱体化していますが、ドルフロ準拠で言えば赤ゴリアテくらいの強さはあります(意:かなり特別な対策がない限り負ける)。
では今回もいくつか設定の紹介を。
AR小隊
M4はもちろん、他の4人にもラウズシステムを搭載済み。ROの方が手間取っているのは、単純にSMGなので火力が低いだけ。
擬似ラウズカード
『Drum』
ドラムマガジンの如き装弾数を得る。効果中はほぼ無限に近い弾を撃てるが、あくまで銃弾が増えるだけなのでこれだけではすぐにオーバーヒート、最悪の場合銃がダメになる。
『Cool』
銃弾を発射する際にかかる銃への負担を極めて大きく減らす。これだけで大きな効果を得る場面は少ないが、他のカードとの組み合わせで真価を発揮する。
『Slug』
ショットガン用の単発弾「スラッグ弾」をモデルにしたカード。Magnum以上の火力を得ることができる一方、弾速と射程が大きく低下し、どのタイプの銃でもフルオートやバースト射撃が不可となる。
MG、AR、SMGには恩恵が薄いが、RFやSG、HGには強力なカードとなる。また、グレネードランチャーや投擲系の武器にも適用される。
トライアルB
原作では広瀬パパのデータを使っていたが、今回はそんな要素はない。
一見武器を持たないように見えるが、指先からの放電と右腕から繰り出す石化攻撃が強力。一真や始の場合はジョーカーとしての能力ゆえに効かないが、人形たちからすれば一撃必殺技に等しい。
どうでもいいが、目玉が多いと閃光弾がかなり眩しそうである。
アルケミストのライダーシステム
見た目は次世代ライダーと同様で、色は紫。
ハンターと同様二丁拳銃だが、ギャレンの弱フォ・・・・ジャックフォームのような銃剣がついている。また、ハンターのものに比べて威力が高く連射性能が低い。