Dolls FrontLine - Missing link -   作:いろいろ

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ただでさえ難しい戦闘描写に複数視点を設けるという愚行。


第9話:思惑(前編)

端末が鳴る。呼び出し人はヘリアントス、となれば恐らく任務だろう。

それもそこそこ面倒な。

 

 

「・・・緊急任務?」

 

『あぁ。 S09地区に大規模な鉄血の部隊が複数集結している。 周辺の地区から部隊を集めているが到底足りん。』

 

「で、私たちは何をすれば?」

 

『話が早い。 404小隊はヘリで移動、集結中の鉄血に対しヒットアンドアウェイでもって奴らの注意をそらせ。』

 

「あら、それだけ?」

 

『404の存在は極力漏らしたくはない。 加えて今そちらには始もいる。 奴らに見つからないようにしろ。』

 

「了解。 補給はどこで?」

 

『迎えのヘリに積んである。 他には?』

 

「いえ、もうないわ。」

 

『よし、では頼んだぞ。』

 

「・・・みんな、聞いての通りよ。」

 

 

通信を切り、隊員を見る。先ほどまで少数の鉄血部隊を相手にしていたが、特に疲れはないようだ。

 

 

「まぁ、アレに比べたらね。」

 

「同感、鉄血が優しく見えるわ。」

 

「もうあんなのに会いたくないよ・・・帰って寝ていい?」

 

「そしたら枕元にアイツが・・・」

 

「ヒィッ!?」

 

「脅かしてやるな9。」

 

 

冗談を言い合いながら、各自弾薬のチェックを済ませる。

ランディングゾーンまで少し距離があるから、鉄血と遭遇したら始さんにも手伝ってもらおう。

 

準備を終え、私たちは目的地に向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

S09地区。

そこはグリフィンと鉄血の激戦区の一つで、常に一進一退の攻防を続けています。。性能で勝る戦術人形と、数で勝る鉄血人形はまさに互角と言えるでしょう。

ですが、その均衡が崩れるのも時間の問題です。S09地区に集結しているのはノーマル人形に加えて装甲人形、さらにハイエンドモデルも複数確認され、これは未確認だがあの代理人が直接指揮をとっているという情報すらあります。

 

 

「こちらAR小隊、配置につきました。」

 

『こちら第一部隊、隊長のスプリングフィールドです。 よろしくお願いしますね。』

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

『挨拶は済んだようだな。』

 

 

指揮官から通信が入ります。

もう間も無くと言ったところでしょうか。

 

 

『マップに表示してある通り、敵はかつてないほどの規模だ。 加えて後方にまだ戦力を備えていると思われる。 他地区からの応援があるとはいえ厳しい戦いになるだろう、だがここが落とされるわけにはいかん。 頼んだぞ。』

 

 

通信が終わり、他の部隊も動き出しました。

・・・我々も行きましょう。

 

 

「AR小隊、出ます。 作戦開始!」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

陽動部隊と離れた場所で待機してると、仲間から通信が入った。

デスちゃんからだ。

 

 

『・・・あーあー、こちらデストロイヤー、AR小隊が動いたわよ。』

 

「そろそろかな。」

 

『・・・本当にいいの? 私たちは敵だからいいけど、カズマは・・・』

 

「大丈夫だよデスちゃん。 心配してくれてありがとう。」

 

『デスちゃん言うな! ・・・無理しないでね。』

 

 

通信機越しに銃声と爆発音が聞こえてきた。

・・・始まったな。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

同地区、戦闘区域の外縁部。

 

「9、閃光弾!」

 

「OK!」

 

「私が注意をそらすわ、11は確実に仕留めて。」

 

「了解。」

 

 

待機していたと思われる鉄血の部隊に奇襲を仕掛けた404は相手に見つかるまでもなく仕留めていく。

が、数が多いな。

 

 

「・・・俺も出よう。」

 

「いいの? 見つかると面倒よ。」

 

「俺だと分からなければいい、手はある。」

 

 

俺はベルトを出現させ、いつもとは違うカードをかざす。

 

 

「変身。」

《 Fusion 》

 

 

ハートのカテゴリJ、ウルフアンデッドの姿を借りる。機動性もあるし、単純にパワーも強い。

 

 

「えええぇぇぇぇ!!!」

 

「狼になった・・・。」

 

「・・・もうなんでもありね。」

 

「ちょっと怖いんだけど。」

 

 

初めて見せたこの姿に驚く彼女たち。・・・と言うよりも、怖いのかこの姿・・・。

 

 

「・・・さて、行くか。 怪しまれないよう、こちらにもある程度攻撃するそぶりを見せてくれ。」

 

「ん、了解よ。」

 

 

返事を聞くと、俺は地面を蹴って戦場に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

『全く、面倒なことになったものだ。』

 

『して、いかが致しましょうか?』

 

『やむを得まい、トライアルEを向かわせろ。 ハイエンドといえど敵ではない。』

 

『では直ちに。 ですが、またあの人形を襲うかもしれませんが?』

 

『知ったことか。』

 

『了解しました。』

 

 

 

 

 

 

「聞いての通りです、トライアルが来ます。」

 

 

通信を傍受したイントゥルーダーが報告する。

ついに、ですね。

 

 

「分かりました。 全部隊へ、トライアル遭遇の可能性あり、各員注意を。」

 

「・・・彼には?」

 

「至急連絡を。 あれを相手にできるのは一真さんだけです。」

 

 

指示を出し、戦況図を見る。前線は早くも膠着状態となり、こちらにも少なくない被害が出ている。

持てる演算能力をフルに使い、目的の完遂に注力する。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらおらぁ! 死にたい奴から出てこい!」

 

 

ハンドガンで牽制しつつ、距離を詰めてトレードマークの剣で切りつける。

・・・極力殺すなって言われてるからな。加減が難しいぜ。

 

 

「って危なっ!?」

 

「退がれ処刑人!」

 

 

ハンターの援護でなんとか遮蔽物まで退がる。 さすがだぜ相棒!

 

 

「言ってる場合か。 それより中央から伝達だ、トライアルが来るぞ!」

 

「うげっ! マジかよ。」

 

「乱入されたら撤退は難しい、今のうちに退路を確保する。」

 

「しゃーねぇな。 おいお前ら! 合図と同時に総攻撃、敵の足を止めて後退だ!」

 

『了解!』

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

S09地区 司令部

 

「何? それは本当か?」

 

『はい、敵が後退していきます。 間違いありません。』

 

 

前線からもたらされたその情報に私は驚きを隠せなかった。だがレーダー上でも鉄血が退がっていくのが確認できる。

罠か?いや、僅かではあったが敵が優勢だったはずだ。指揮をとる代理人がそれに気がつかないはずがない。

 

 

『・・・いかがなさいます?』

 

「敵の動きが読めん以上、下手に動くな。 こちらも後退し、消耗が激しい部隊は補給しろ。」

 

 

 

 

 

『すみ・・・・・・揮官・・がよく・・・・電・・妨害・・・・』

 

「っ!? スプリングフィールド、応答しろ!」

 

 

ジャミングだと!?他の部隊も同様に通じなくなり、カリーナからも戦況レーダーが更新されなくなったと連絡が来た。

 

 

「クソッ!」

 

 

何が、何が起きているんだ・・・

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・SOP、グレネードは!?」

 

「残り一発!」

 

 

部隊間の相互通信が効かなくなり、指揮官とも連絡が取れなくなって僅か数分。たった数分で状況は一変した。

なぜか撤退し始めた鉄血の部隊、それと入れ違うかのように現れた緑のバケモノによって、私たちの部隊はすでに壊滅状態だった。

まず追撃のために前に出ていたAR-15が足元に攻撃を受けて負傷、援護に入ったM16姉さんも接近戦で無力化された。

幸い二人とも破壊されたわけではないし、SOPも私もまだ戦える。・・・だけど、このままじゃ・・・

 

 

「っ!? うわぁっ!!」

 

「SOP!?」

 

 

ほんの一瞬、銃撃が途切れた。その一瞬で距離を詰めてきたバケモノは、あろうことかSOPの放ったグレネードを掴み、投げ返してきた。幸い少し離れたところで爆発したおかげで被害はないけど、その隙にさらに接近を許す。

 

 

「このっ・・・がはっ!?」

 

 

SOPのお腹に一撃を加え、頭を掴んで盾にしてきた。そのまま一歩ずつ近づき、私は一歩ずつ後退る。

背中に木が当たったのと、バケモノが駆け出したのは同時だった。SOPを投げ捨てて走るそいつにありったけの弾を撃ち込むも、まるで無意味だと言うかのように距離を詰める。

そして・・・

 

 

「ぐあっ!?」

 

「グルルル・・・」

 

 

何もできないまま首を掴まれ、木に押し当てるように締め付けられる。後頭部に走る衝撃と息苦しさから、私は銃を落としてしまった。

 

 

「くっ・・・M4!」

 

「このっ、離しなさい!」

 

「ゲホッ、ゴホッ・・・コイツッ!!」

 

 

撃たれることすら意に介さず、徐々に首を絞める力を強められる。私は目の前にいる、バイザーのようなものの奥に見える目を睨みつけるが、表示され続けるアラートに押しつぶされるように意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ! M4を離せ!」

 

 

バケモノに捕まったM4の手が力なく下がる。恐らく一時的にシャットダウンしただけだから、今ならまだ助かる!

 

 

「AR-15!」

 

「動けないから狙撃するわ!」

 

「ここからじゃM4に当たっちゃう!」

 

「足だ! 足を狙え!」

 

 

言いつつ引き金を引き絞る。動かない目標を外すことはないが、問題は奴に効いている気配がないことだった。

M4の抵抗がなくなったと認識したのか、手を離す。殺すつもりがないのか?

 

 

「ともかくチャンスだ、AR-15! SOP!」

 

「了解!」

 

「行くよ!」

 

 

私とSOPが同時に走り出し、AR-15がそれを援護する。

至近距離で撃てば、とも思っていたがやはり効果が薄い。だがそれでいい。私かSOPに意識が向けば、もう片方が救出できる。

 

 

「っ! 来いっ!」

 

 

奴が反応したのは私の方だった。銃を両手で構えて格闘戦に備える。はっきり言えば無茶なことだが、やるしかない。

 

 

「ぐぅっ!」

 

 

拳を銃で受け止める。私たち戦術人形は対応する銃とスティグマを結んでいる。その銃に衝撃が加われば、少なからず私たち(本体)にもダメージが入る。これが、私たちが格闘戦に向かない理由だ。

 

 

「くっ・・・がぁっ!?」

 

 

結局、僅かな拮抗の末に押し切られる。視線を向ければ、SOPがあと少しでM4の元にたどり着くといったところだった。

あと少し、時間を稼ぐ。そのために立ち上がったが、奴は思わぬ行動に出た。

 

 

「ぐっ! なにを・・・うわっ!?」

 

 

胸倉を掴まれた私は次の瞬間には投げ捨てられる。その先にいたのは、SOPだった。

 

 

「うぐっ!?」

 

「かはっ!?」

 

 

勢いよくぶつかった私たちは地面に転がる。当たった時に嫌な音がしたが、私もSOPも動けないのはそのせいだろう。AR-15も弾切れのようで、なす術なく見ているしかなかった。

障害がなくなったと考えたのか、奴は再びM4を抱えると、戦場を去っていく。

 

 

 

私たちが救助されたのは、その数時間後だった。

 

 

続く




ハイエンド総出の侵攻作戦とかいう無理ゲー。

ここまで長くなったうえに前後編の二部構成という形になってしまいました。



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