夢と、幻想と、儚さと。   作:カラメル

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前回に引き続き駄文でありながら一応書きました。



episode1

 

俺は、いつものように重い足を無理やり動かして極力人目につかないルートを歩いていた。

 

今更考えてもしょうがないことが何故かふと頭に登った。

多分俺だけなのかもしれないが、能力というのは、誰しもが思う程良いものでは無いのだ。

いや、もしかしたら例外なんて事もあるかもしれない。

ただ、俺の中では能力なんて存在は自分の人生を狂わせるだけの、

異物だ…。

 

考えに耽っていると気づけば校門前に突っ立っていた。

周りから人間ではない…化け物をでも見るかのような目で見られていた。

 

-今更気にしたってどうにもならねぇだろ…

 

確かに入学した時に比べ、周りからの視線は気にならなくなったが目が合うと確実に逸らされる。

 

そんな事とうに慣れてしまったが、僅かな希望を抱いて登校したあの入学初日に周りにあの目で見られていた時にはやはり心に来るものがあった。

どうやら俺の噂は思ったよりもずっと早くこの学校に、ここにいる周りの奴らの耳に届いていたようだった。

 

教室の中に入り、自分の席に着いて文庫本を取り出し、できるだけ周りの目につかないよう静かに読み始める。

-あぁ…ようやく落ち着ける…

 

本というのはかなり俺の助けになっている。

本を読んでいる間は物語の中に意識を投げ込んで現実を忘れていられるからだ。

最早俺の中で文庫本読むという事は生活する上で欠かせないものになっていた。

だが唐突に俺の意識は物語の中から引きずり出された。

 

「おはよ!織田君!」

 

「……?」

 

面倒ではあるが一応元気そうな挨拶のする方を見やる。

そこから無視をする訳にもいかないから仕方なく軽く会釈する。

 

彼女はそれだけでも満足したようで、少し俺に微笑んでから席に着いた。

 

この子誰にでも優しい顔を向ける女の子だ。

この子は俺の能力を知りつつ、俺を恐れたり、疎んだりしない。

何かこの子の中で考えがあるのか。

いや、もしかしたらこの子は単純に天然なのかもしれない。

まぁどちらであろうとも構わない。

 

だが正直なことを言ってしまえば得意か苦手かで言えば苦手の部類に入る。

 

この子は折角纏っている俺の人を寄せ付けないオーラをまるで最初から何も無かったかのようにくぐり抜け、俺の心を棒でぐちゃぐちゃにかき回すかのように揺さぶる…

本当に何も考えているのか、心の奥底に何を隠しているのか、だが当然俺には到底分かりもしないことだ。分かりたいとも思わない。

でもそんな彼女の優しさに知らず知らずのうちに甘え、突き放すことが出来なくなっていた自身にも吐き気を覚えていた。

 

-まぁ本人はそんなことほぼ確実に意識なんてしてはいないんだろうけどな。馬鹿馬鹿しい…

 

こんなこと考えてる自分に嫌気がさしたので、また文庫本に目を戻し、しばらく読み耽っているとHRの予鈴が鳴った。

そこから何が起きるでも無く、ただいつも通りに時間は過ぎていった。

 

 

昼休み。彼女はクラス外の友達に呼ばれて、いつも通り元気に返事を返して席を立ちこの教室を後にした。

だが何故かその時たまたま視界に入った彼女の笑顔が俺にはどこかぎこちなく見えたような気がした。

 

昼食をとるためカバンを開き弁当を探す。

 

……?弁当が無い。

俺はなぜ弁当がないのか今朝の記憶を辿ってみる。

そしてひとつの解を導き出した。

恐らく台所に置き忘れたのであろう。

 

-久しぶりにこんなヘマやらかしたな

と自嘲した後大きく溜息をつき脱力する。

 

ただこうして悲しみに浸っていても仕方が無いので、渋々教室を出て購買に昼食を買いに行く。

 

普段は極力人の目に触れたくないのと、普通に弁当の方が美味しいと感じるということから弁当を作って食べることにしている、

 

購買へと向かう道の途中、普段一般生徒の立ち入りが禁止されている物置部屋からガタッと物音が聞こえたような気がした。

-…?

いつもなら気の所為だと自身を誤魔化し、何事も無かったかのように素通りするところだったが、何故か素通りしてはいけないような何か嫌な予感がし、部屋の前まで近づく。

そのままバレないよう扉を少し開け、部屋の中を覗き見る。

 

-……は?

俺はその時の光景に目を見開き、唖然としてしまった。

 

中には先程教室を出ていった彼女とその他見知らぬ生徒数人が居た。

 

ただし居るだけという訳では無かった。

確かにあの生徒は彼女に対して暴力を働いているように見える。

 

-何故だ…?

-何故彼女があのような仕打ちを受ける?

頭の中に焦燥感が勢いよく過ぎる。

 

-いやそれよりもだ…どうすればいい?

-このまま止めに入ったところで俺一人に出来ることはほぼないだろう。

-ならば助けを呼ぶか?いや、俺が助けを呼んだところで誰もそれに応じはしないであろう。

自分の周りからの評価に呆れていた中、ひとつの考えがふと頭に浮かんだ…

 

-こいつを使えば-

 

-…いやそれだけは絶対にダメだ。こいつだけには頼らないと決めたはずだ。

 

こんな考えが頭の中に浮かんでしまうほど、どうやら俺は焦っているらしい。

まずそもそも今の俺はどこかおかしい。

普段の俺ならこの光景を見たところで、面倒ごとを避けてこのまま見て見ぬふりをして立ち去るであろう。

だがこうして彼女を助けんと必死に頭の中を巡らせているのも事実。

 

その時不意に耳に入ってきた誰かの言葉で俺の頭の中は真っ白になってしまった。

 

「あんたさぁ…私らと一緒にいるのにあんな化け物に関わられると私らまで被害を受けかねないんですけど…」

 

その直後、俺はふつふつと込み上げてくる怒りを感じて、それを歯を食いしばって必死に抑える。

当然俺が怒りを覚えているのは彼女でも声を発した本人でもない。

俺自身にだ。

確かにあの生徒が言っていることはあながち間違ってない、俺がその立場だとしても同じことを考えると思う。

でも本当はいずれ…こうなることが俺は分かっていたのかもしれないのに、まぁ一方的に俺に関わってきたのは彼女であることに間違いはない。だけどそんな彼女に分かっていながらもどこか甘えていたのも揺るぎない事実。

その甘えが、その怠惰が、他でもない彼女をこうして傷つけてしまっていたのだ。

 

-こいつがあれば彼女を助けられる-

 

…こんな時こいつは俺の怒りの心に漬け込むかのように自分を使うように誘いかける。

 

-やめろ…やめろ…っ…

 

この程度の怒りに簡単に決意が揺らぐ。

本当に単純な性格をしているのは彼女ではなく、俺自身なのかもしれないな。

ほんとこいつはいい性格していると思う。ほろりと氷菓が溶けるかのようにそのまま決意は消えゆく…

 

「-エアガンを俺の右手に-」

 

久しぶりに出した震えた声、その言葉同時に右手に確かな感触が現れる。

とうとうやってしまった。でも今はそんな後悔に浸っている場合ではない。

エアガン。倒すという上ではやはり攻撃力が圧倒的に足りない。

-だが奴らをこの場から退かす上ではこれで十分だ

 

あくまでも冷静に、普通に扉を開け、部屋の中に中に入る。

 

「…ッ!?誰!?」

 

当然彼女を取り囲む生徒達は俺の存在に気付く。

そのまま俺は露骨に右手に握るエアガンの銃口を生徒達に向けた。

勿論エアガンといえ撃つつもりは毛頭ない。

 

「ヒィッ…ば、化け物っ…」

 

生徒達は俺の握るエアガンを焦って-本物の拳銃-だと勘違いし、その場から騒々しく立ち去って行った。

それから少し時間が経ってから右手に握っていたエアガンは桜色の粒子となって儚く消えていった。

静寂が訪れた部屋に俺と怯えた彼女が取り残される。

 

「…織田…くん?」

 

彼女は助かって嬉しいような、俺に対して怯えているかのような複雑そうな目を俺に向ける。

-やはり彼女も俺の事が怖かったのだろうな

-でも彼女は優しい人だ、だから誰にだって、独りでいる奴には声をかける。だが今はそんな優しさがとても痛くてしょうがなかった。

 

「……」

 

何も言わずに俺は振り返りそのまま部屋を出ていく。

俺には彼女に向ける顔などもう既にない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

気づけば俺は購買で昼食を買うことも忘れて屋上に突っ立っていた。

今日は晴れとも曇りともどちらとも取れないようななんとも微妙な天気である。

それは今の俺の心境を表しているかのようでなんとも皮肉のようにに思えた。

 

キーンコーンカー…

 

昼休みを終える予鈴が鳴る。

普段の俺は予鈴がなる前には席に着くようにしていたが、何だか今はとても教室に戻る気にはなれなかった。

 

ガチャ…ギィィ…

「…?」

 

後ろから扉の開く音が響いた。

反射的に後ろを振り返る。

それはさっきまで物置部屋にいた彼女だった。

その瞬間胸の奥が飛び上がったような気がした。

 

「織田くん…その…さっきは助けてくれて…ありが、とう」

「っ…」

 

-恐れるくらいなら俺の前に現れるなよ…馬鹿かこいつは…

 

彼女は足を震わせて、か細くも儚い声を精一杯に振り絞り俺に礼を伝えた。

どう反応してあげるべきなのか俺には分からなかった。

俺は別に彼女を助けた訳では無い、単純に自分に対する怒りを沈めるため、せめてもの罪滅ぼしという逃げ道。

そんな汚らしく醜いものにしか過ぎない行為だった。

自分が情けなくてしょうがない。いっその事死ねたら楽なんじゃないかとも思う。

俺の存在は自分にとっても…周りにとっても、何より彼女にとっても害悪な存在でしかない。

最初から死ねたら楽って、そう思えたなら、そう-言えたなら-どれだけ楽だったんだろうって…。

-そもそも何を理由に俺は生きてきたんだろう。

-何が俺を生きる気力を与えていたのか。

-あぁ…もう何も考えられなくなってきた。

 

無意識に俺の足は1歩、また1歩と少しずつ屋上の外側に足を運んでいた。

そして柵に手にかけ、乗り越える。

あと一歩踏み出せば俺も、周りも楽になる。

しかし最後の1歩を踏み出す瞬間後ろからの声に一瞬意識を現実に引き戻される。

 

「それが…それが織田くんの答えなの…?」

「……」

 

-またか…またそうやって…俺は何度この子に心を掻き乱されたんだろう。

-もう…俺を楽にさせてくれ…

途端にあと一歩踏み出すのに多少の恐怖を覚える。

 

「そうやって死ぬ事で逃げることが織田くんの答えなら、あなたの今まで必死に生きていた人生はなんだったの…?」

 

-そんなことが分かるなら俺はこんなに苦労してねぇよ!

彼女に対して苛立ちを覚えたが、すぐ冷静になれた。

-いや違う、その答えを探すことがもしかしたら生きていくための気力だったのやもしれないな

 

ガチャッ!!ダッダッダ!!

 

急に勢いよく扉が開き、そのままの勢いで何者かが俺の背に向かってくる。

思わず振り返るとそれと同時に俺の体はその何者かに柵越しに突き飛ばされた。

当然俺はその場に留まることが出来ずに宙に投げ出された。

-っ!声が…でねぇ…っ!

いきなりの事で俺は混乱し、咄嗟に声を出すことが出来なかった。

だが最後の最後で俺を突き飛ばした者の顔を確認することには成功した。

それは先程彼女を取り囲んでいた奴らの一部のメンバーだった。

 

-はっ…生きる希望を与えておきながらすぐに落とすとか、この世界の神様は随分いい趣味してるらしいな…

 

もう生きることは諦めてただ俺は笑った。

それ以上は何をすることも出来ずにそのまま頭から地面まで無慈悲に急降下していく。

彼女の言葉にまた揺り動かされた心はこの世界でなんの意味を成すことも無く、そのまま俺の意識は暗闇の中へと沈んで行った…

 

 

 

 




なんか気力なくなったんで暫くおやすみなさい
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