評価つけてくださり、本当にありがとございます。
暗闇の中、人肌とほぼ同じぐらいの熱を持った風が俺の頬を撫でる。
その少し気持ち悪い感覚によって暗転していた俺の視界に、唐突に光が差し込んだ。
-?…ここは…一体…
そこは桜が異常なまでに多く生い茂る-この世-とは思えないほど美しい場所だった。
そんな状況の中さっきまでのことが、ふと頭に蘇る。
-そういや俺は屋上からあの生徒に突き落とされて…
-そっか…つまり俺は、-死んだのか-。
無慈悲な現実を前に何故か俺の心は奇妙なくらいに冷静だった。
表面上でなんとなくわかっていても、まだどこか死んだ実感が湧いていないのかもしれない。
「あら?貴方…-死んだのに-随分と冷静なのね」
艶やかな女性の声のする方に体と意識を向ける。
「フフッ、そう警戒しないで頂戴?私は貴方に危害を与えるつもりはないわ♪︎」
彼女は妖艶な笑を浮かべて俺にそう告げた。
どうやら無意識に目の前にいる彼女を睨みつけてしまっていたようだ。
冷静でいるつもりでも心の奥底ではやはり落ち着けることが出来ていないのだろう。
「じゃあまず貴方の名前から聞きたいところだけど…こういう場合は私の方から名乗るべきね」
-思ったよりも下から来たな…。
どうやら本当に俺に危害を加えるつもりは無いのかもしれない。
だが一応様子は注意深く見ておくことにした。
「私の名は-西行寺幽々子-。楽に、幽々子と呼んでくれても構わないわ」
-西行寺幽々子…随分と変わった名だな。
「じゃあ次に貴方の名前を教えて頂戴?」
-そう言われてもな…さて、どうしたものか…。
俺はとある諸事情により、自分の名を名乗ることすらままならない状況にある。
今まであれば何かしら紙に書いたりして言葉を伝えていたが、現状俺は書くものを持ち合わせていない。
「フフッ…ごめんなさい。少し意地悪し過ぎちゃったわ」
「?……」
何故か彼女は俺に対して謝罪した。
-意地悪し過ぎた…?どういうことだ…?
「実は私、貴方の名前も、貴方を縛り付けている-能力-も…貴方の事情は粗方もう知っているのよ」
-は…?今幽々子は何と言った…?
-俺の-能力-を知っている…?確かにそう言ったか…?
あまりに想定外過ぎる出来事に、思わず俺は唖然としてしまった。
そこにすかさず幽々子は言葉を挟む。
「私は貴方が生きている間、暇さえあれば貴方の生き様をここからずっと見守っていたのよ」
-俺を見守っていた?
-駄目だ…想定外のことばかりで頭が追いつかなくなってきた…
「あら…急に喋りすぎてしまったかしら、驚かせてしまってごめんなさいね」
幽々子は再び俺に謝罪した。
その謝罪と共に俺も1度頭の中を整理して、冷静になる。
「そうね…色々気になることがあるだろうから、はい。これ」
そう言って幽々子は俺に万年筆とメモ帳を差し出し、俺はそれを少し警戒しつつ受け取る。
「それを使って貴方が私に聞きたいことを書けばいいわ」
万年筆か…殆ど使った事はないが、今はこれを使うしかないな。
まだ慣れない万年筆を片手に、もう片方の手に持つメモ帳にぎこちなく文字を書いていく。
〈俺は何故ここにいる?〉
まずここに来て一番最初に思った疑問を幽々子に問いただしてみた。
「そうね、簡単に言ってしまえば貴方は-死んだ-から、というのが正しいわね。でもひとつ貴方は今までにはいなかった、身を持って限界した霊なのよ」
-そうだ、言われてみれば確かに俺には身体がある。さっきまで気づかなかったが、辺りには何か白玉のようなもやもやが漂っている。
推測するに恐らくこれは人の魂だろう。
「でも私にも何故貴方に身体があるかまでは分からないわ」
-いや、まずはこれを知れただけ良しとするか…
中途半端ですが、気力がなくなったので今回はここまでとさせて頂きました。
ここまで読んでくださりありがとうございました。