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〈幽々子side〉
私が今見ているのはとある能力に囚われている1人の青年。
彼は言葉を発することができない。相手にモノを伝える時、一番大事とされる言葉を使うことができない。これまでだって周りから否定されることも決して少なくなかった。
私には分からなかった。何故彼はそんな不自由な中こんなに生きようとしているのか。なんたって臆病者の私ごときではとても耐えられたものではないから、私には到底理解できなかった。
「そっかぁ...彼、死んじゃったのか」
曇った空を見上げて少し感慨にふける。
彼は女子生徒に学校の屋上から突き落とされてその人生に幕を下ろした。
何と儚く呆気ないのだろう。ここまで自分の能力を全力で否定し、懸命に生きていた彼はその人生に何を見出すわけでもなく、終わってしまったのだ。
その悲しみはきっと計り知れない。
もうじき彼はこの白玉楼に降りてくるだろう。
これからこのー幻想郷ーで過ごす彼は、この世界に何を見るのか。
能力を使うことが許されたこの世界に何を思うのか。
死んでしまった魂に「貴方は死んだのよ」と伝えるのが私の仕事。
と言ってもそれも結局は私がただ興味本位で始めたことに過ぎない。
これまで何度も何度も何度も同じことを異なる魂に伝えてきたけど、こんなに緊張するのは初めての事である。
「妖夢、少し散歩してくるわね。昼食の時にはもどるから」
「分かりました、幽々子様」
妖夢にそう告げて私は屋敷の外へ出て、先程のように空を見上げる。
曇った空が私の心をそのまま写しているような気がして少し気持ち悪くなった。
霊魂の集う場所への道をゆっくりと歩きながら心の準備をする。
今更ながら私は少し、少しだけ、彼と会うことが怖くなってしまっていた。
恐れられたらどうしようか、敵として見られてしまったらどうしようかと、いらない心配が頭の中を駆け巡る。
「ふふっ...何だか私らしくないわね」
笑って誤魔化してみてもやっぱり怖いものは怖かった。結局臆病者に変わりなかった。
いつもそうだ、周りには陽気で余裕があるように振舞っているが、所詮はひとつのものに縋って、その他全ての物を捨てた臆病者。
だけど大丈夫。きっと彼はこの幻想郷のことを受け入れてくれるはず。
とりあえず今はそう信じ込むことしかできなかった。
そうこう考えているうちに、目的の場所へと辿り着く。
とりあえずは1度何も知らない風を装うことにした。理由としては彼の警戒を最大限取り除くためだ。
そして彼は降りてきた。何も知らない彼は立ち上がり周りを見渡している。
そこに私は静かに近づき、深呼吸してからこう告げる。
「あら?貴方ー死んだのにー随分冷静なのね」
今回はここまでにしておきます。
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次書くのもいつになるかは分かりません。
次回またお会いしましょう。