SSSS.GRIDMAN The Another Episode   作:赤星 傑

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隠・蔽

1

眼が覚めると、そこは病室だった。裕太は体を起こし、周りを確認した。右には太陽の光を突き通す窓があり、左には内海が勉強していた。勉強の邪魔をしてはいけないと思った裕太は、窓の外を眺めていた。しかし、光景は何故か違った。昨日のことは夢だったのかと思うように、町は何故か直っていた。

内海は背伸びして、天井を見上げた。内海は裕太が眠っていたベッドを見た。裕太はすでに起きていた。内海は慌てて裕太に近寄った。

「大丈夫か!?」

内海は裕太に聞いた。裕太は素っ気ない声で返した。

「う、うん、大丈夫だけど……」

内海はホッとしていた。内海は椅子に座り、裕太に昨日のことを話した。

「お前、いきなり家の前で倒れやがって、心配したんだぞ!」

「家の前……?」

裕太は内海の言葉に引っ掛かった。「家の前で倒れた」、裕太は昨日の出来事を鮮明に憶えていた。町に怪獣が現れ、次々と建物を破壊し、町を歩いていった。そして、その怪獣を倒した巨人のことも。しかし、内海はそれを憶えていなかった。いや、無かったと言えるぐらい、内海は昨日の出来事を知らなかった。

内海は医者を呼びに行ってくると、病室を出た。裕太はまた窓の外を眺めた。やはり町は直っていた。裕太は、昨日の出来事は、全て夢だったのかと思った。

(裕太……、裕太……!)

あの声が聞こえた。裕太は病室の中を見たが、誰もいなかった。

すると、扉が開き、内海と医者が入って来た。医者は立っていた裕太に注意し、質問をした。名前、年齢、学校名などを聞かれ、裕太は全て答えた。

「異常は無いですね、もう帰っても大丈夫ですよ」

医者はペンをしまい、病室を出た。内海は「よかった」と呟き、裕太の着替えを出し、病室を出た。

しかし、裕太はまだ疑問に思っていた。まだ鮮明に憶えているあの昨日の出来事、だけど、何故か全てが直っている。内海も、医者も、そして町も。

私服に着替えた裕太は、病室を出て、内海が待つ待合室に向かった。他の患者を見たが、ほとんどがお年寄りや、怪我人などだった。待合室に着いた時、内海は携帯をいじっていた。裕太は内海に聞くと、内海は携帯を見せた。そこにはチャットが映ってあり、クラスメートと話し合ってたみたいだ。

「みんな、お前を心配してたぞ。特に新条は」

「え、新条さんも心配してたの?」

「当たり前だろ、お前、あの美少女の幼馴染なんて、羨ましいぜ」

内海は裕太に嫉妬してた。

新条アカネはツツジ台高校の人気者と言われ、「女神が生んだ少女」と言われていた。また宝田六花もツツジ台高校の人気者でもあり、「ツツジ高の華」と言われている。その人気者2人の幼馴染である裕太は、みんなから恨まれている。

裕太は困りながらも、内海と一緒に病院を出た。裕太は昨日のことを聞いた。怪獣のことを聞くと、内海は「お前、ほんとに大丈夫なんだよな?」と心配された。

どうやら本当に内海は昨日の出来事を憶えて無かった。「やっぱり夢だったのかな?」と裕太は思った。

内海は裕太を自宅まで送り、玄関で別れた。家の中は変わらず、怪獣によって壊された後もなかった。ようやく裕太は怪獣を夢だと確信しようとした。その時だった。

(夢じゃ無い)

またあの声がした。裕太は部屋を見渡したが、やはり居なかった。裕太は声の主に聞く。

「ねぇ、どこにいるの!?君は誰!?」

(私は、君の中にいる。さっきはたくさんの人が居た為、話が出来なかった、すまない。今ならゆっくり話せる)

「え、俺の中……? てか、どういう事!? 夢じゃ無い!? というか、君は誰なの!?」

困惑した裕太は謎の声に尋ね、声は裕太に頼みをした。

(なら、その部屋にあるあの巨大な箱みたいな物に手をかざしてくれる)

部屋とは自分の部屋であり、大きな箱は机に置いてある大きなパソコンだった。

裕太はアンティークが趣味の父が居て、裕太も似たようにアンティークの趣味を持った。そこで初めて買ったのは、この巨大パソコン、「ジャンク」だった。値段は高かったが、高校入学記念であったため、父親はご褒美として買った。今ではパソコンを使っている。古いパソコンではあるが、最近の機能を使えるよう、父親が改造した。

裕太はジャンクに近づき、画面に手をかざした。すると画面が眩しく光った。

裕太は目を瞑り、光が収まり目を開けた。そこに映ったのは、昨日現れた巨人だった。

「私はハイパー・エージェント、グリッドマン! この星を救いに来た!」

グリッドマンと名乗る巨人は自己紹介した。

裕太は困惑していた。昨日の出来事、グリッドマンと情報量が多く、頭の中がパンク寸前だった。グリッドマンはそんな事を関係なく、話を続けた。

「今、この星は昨日のような怪獣に崩されている! 君と私で、この星を守ろうではないか!」

グイグイ来るグリッドマンに対し、なんとか裕太は反論した。

「ちょっとまって! あのさ、どういう事なの!? 危機が迫ってるとか、星を守ろうとか、意味がわからないよ!」

それに対し、グリッドマンはゆっくりと話した。

「実は一昨日、この星に何者かが侵入した。私はそいつを逮捕するために昨日、この星に来た。その時に君を見つけ、勇敢な行動に感度した。そして、君を助けるために、私は君と融合した」

裕太はようやく理解出来たが、頭が痛くなってきた。話を流してしまい、本題に入った。

「とりあえず、なんで昨日のあの出来事があったのに、なんで元通りになっているの?」

「その事は、私にも分からない!」

堂々と言い放ったグリッドマンの言葉に、裕太はガクッとなった。グリッドマンはそれを誤魔化すように、話を変えた。

「とにかく、君に伝えられることはこれだけだ。次は明日話そう」

そう言うとジャンクの画面は消えた。

「ちょっと!? まだ話し終わってないんだけど!?」

と何回も電源を入れるが、ジャンクはつかなかった。

諦めた裕太は夕食をとるために、近くのコンビニに向かった。道中、グリッドマンの言葉と内海の言葉を思い出した。どちらも嘘を言ってない。なら、どれが本当で、今見ているのは現実なのか? と、裕太は考えながらも、弁当を買い、家に戻った。

 

2

オーブンの中なのかと疑う暑い朝、裕太は自転車に乗り、学校に向かっていた。1人でブツブツ喋りながら。

「なぁグリッドマン、本当にどうなっているの?」

(私にも分からない。もう少し、調べなければならない)

中にいるグリッドマンと喋っていた。周りから見れば独り言だが、裕太にはグリッドマンの声が聞こえる。2人は、学校の通学中に話し合っていた。

(裕太、君の学校の生徒にも聞いたらどうだろう。昨日について)

「そうだけどさ……」

グリッドマンは裕太に提案したが、裕太は自転車を止め、気づいたことを言った。

「てか、何で学校に着いて来てんの?」

グリッドマンは返事した。

(それは、君と私は一心同体なんだ。どんなことがあっても、離れる事は出来ない。何か不安か?)

「不安だらけだよ。グリッドマンの声が聞こえるのは俺だけだし、それに、話せるのも俺だけだよ。周りから見れば、独り言のヤバイ野郎だよ……」

裕太は不安がっていたが、グリッドマンは「安心しろ」と言った。

(今は裕太と話しているが、人前の時は、心の中で話してくれ)

「心の中?」

グリッドマンと裕太は一心同体、つまりはグリッドマンと裕太の心も一致しているため、テレパシーのような会話方法で話し合える。裕太は早速試してみた。

(どう、聞こえる?)

(あぁ、聞こえるとも)

通じ合ったことを理解した裕太は、感心した。

(便利だなこれ)

裕太は自転車を動かし、学校に向かった。

向かう最中に、内海と会った。内海はやはり一昨日の出来事を思い出しておらず、裕太の事をまだ心配していた。

「よお裕太、あれから異常は無かったか?」

「おはよう、内海。一応、大丈夫だった」

裕太は挨拶を返し、報告した。自転車から降り、内海と共に学校まで歩いた。道中、学校の時間割、愚痴などを話し合っていた。愚痴に関しては、グリッドマンが注意していた。

学校の教室に着くと、初めに裕太に話しかけたのはアカネだった。

「響くん! 大丈夫!? どこか悪くない!?」

アカネは焦りながらも裕太の事を心配していた。裕太はアカネに、「大丈夫」と返事し、アカネを落ち着かせた。

アカネはホッとしながらも、裕太に注意した。

「でも響くん、気持ち悪いと感じたら、すぐに保健室に行くんだよ!」

アカネはそう言い、六花の席に向かった。裕太はテレていて、内海と男子生徒は、そんな裕太に対し、嫉妬心を持っていた。

その様子を見たグリッドマンは、

(モテモテだな)と言い、裕太は否定した。

そんな時、違和感を感じた。教室が広く感じていた。辺りを見渡すと、バレー部の机が無かった。

「なぁ内海、なんか机、少なくなってない?」

裕太は内海に尋ねると、内海は疑問に思いながらも返答した。

「え、いや、いつも通りだけど?」

裕太はその言葉に驚いた。確かにバレー部は居たはずだ。なのに、内海はバレー部を憶えていない。裕太は質問を変え、「バレー部は居なかった?」と聞いた。内海は返答した。

「バレー部? 俺たちの高校にバレー部は無かったぞ」

「バレー部は無い」、裕太はその言葉に驚いた。内海はそんな裕太を心配した。授業が始まるチャイムが鳴り、教室に教師が入室した。裕太と内海は席に着き、裕太は、「何が起きているんだ?」と思いながらも、午前中の授業を受けた。

外で昼食を取ろうと、裕太は外に出た。購買部で買ったスペシャルドックとカレーを持ち、外に出た。先に内海に「今日は1人で食べる」と告げた。外にあった机に座り、食事をとった。

(ねぇ、グリッドマン)

(なんだ、裕太?)

裕太は食事しながら、グリッドマンと話し合った。

(なんで、こんなことが起きているの?)

(わからない、私も今考えているが、こんな事例は初めてだ)

(そうか……)

裕太は黙々とカレーを食べ、食事を終えようとした。その時、誰かに呼ばれた。アカネだった。

「新条さん?」

「響くん、大丈夫?」

心配したアカネは裕太に尋ねた。裕太は、「大丈夫」と言いたかったが、素直に答えた。

「ねぇ、新条さん、もし俺が死んでも、誰も悲しまないと思う?」

裕太は不可解な出来事を、「自分に来る」と推定して、アカネに話した。

「どう言うこと?」

アカネは聞き返し、裕太は続けて話した。

「いや、俺、病院にいたじゃん? それで、思ったことがあったんだ。俺が死んでもみんなは心配しないかな? と思っちゃって……」

聞いたアカネは黙っていたが、拳を握りしめていた。目からは涙が溢れそうになり、それでも声を出した。

「そんなわけないじゃん!」

アカネは裕太の肩を掴み、真剣な眼差しだったが、涙で潤っている目が、裕太を見ていた。

「響くんを忘れるなんて、私には出来ないよ! 大切な人でもあるから、死ぬとか、忘れるとか言わないでよ!」

裕太はアカネの声に驚きながらも、自分が質問したことを後悔した。「アカネをまた心配させた」、裕太はまたアカネに心配させないよう、謝った。

アカネは涙を拭き、また顔をニコッとして、裕太に言った。

「ねぇ、授業始まるから、早く戻らう?」

裕太は頷き、アカネと共に、校内に入った。入った途端に、偶然に教師とぶつかった。裕太は咄嗟に謝るが、教師はぶっきらぼうに、「あ、そう」と呟き、裕太から離れた。アカネは、教師にちゃんと謝らせろうと声を掛けようとするが、裕太に止められた。裕太は「大丈夫」と伝え、そのままアカネと一緒に教室に戻った。

その最中、アカネは裕太に聞こえない小さな声で呟いた。

「……殺す」

 

3

(結局、何も分からなかったねグリッドマン)

(うむ……)

自転車を漕ぎ、家に向かう裕太は、心の中でグリッドマンと話していた。一昨日は雨が降っていた為、自転車は無かったが、今日は自転車で帰ることができた。しかし、一昨日の出来事の証拠は何一つも掴めず、バレー部の存在が消えた事に困惑していた。

喉が渇いた裕太は、駄菓子屋の近くにあった自動販売機で飲み物を買った。すぐに蓋を開け、乾いていた喉を冷たい水が潤した。

「あ、裕太ー!」

と、誰かが呼んでいた。振り向くと、内海がいた。駄菓子屋の近くには内海の家があり、彼も帰っている途中だった。

裕太はペットボトルの蓋を閉じ、内海と話した。

「お前、今日はおかしかったぞ。本当に、頭大丈夫なのか?」

言い方には棘があったが、内海は裕太を心配していた。裕太は苦笑いしながらも、「異常はないよ」と誤魔化した。グリッドマンが裕太の中にいるのは内緒にしている。

内海は近づき、目を細めて裕太を睨んだ。裕太は内海の顔を両手で隠そうとしたが、内海は顔を見ようと、視点を変えようとしたが、裕太は防御していた。

「……何やってんの?」

2人が振り向くと、そこには耳にイヤホンをつけた六花がいた。六花は細い目で2人を睨み、さっきの様子を見て、引いたようなような感情をだしていた。

裕太は内海を突き飛ばし、違う違うと両腕を振った。内海は六花に聞いた。

「お前こそ、なんでここに居るんだ?」

六花は片方のイヤホンを外し、内海の質問に答えた。

「いや、私の家あっちだから、たまたまアンタ達がいたの」

内海は自分から聞いたが、ぶっきら棒に「あ、そう」と答えた。六花は内海を睨んだ。裕太はこの空気を変えようと、六花に言った

「ご、ごめんね宝田さん! 内海、謝って!」

裕太は内海に謝ることを頼んだ。しかし内海は、「なんで?」と聞いた。裕太は流石にまずいと思い、内海の頭を無理やり下げようとした。

六花は、「別にいいよ」と返した。すると六花は、思い出したかのように話した。

「あ、それと、アカネが響くんがちゃんと家に帰るのを見てきて、て頼まれたから、響くん、一緒に家に帰ろ」

裕太は顔を赤くして、声が高くなりながら、内海と六花と一緒に、自分の家に帰ろうとした。

すると、さっきまで黙っていたグリッドマンが話した。

(そうだ裕太、彼らにもこの事を話そう)

「え!?」

裕太は心の中で話す事を忘れてしまい、咄嗟に声を出してしまった。それに驚いた内海と六花は、体を構えていた。裕太は謝り、心の中でグリッドマンと話を続けた。

(どう言う事グリッドマン!? てか、君は俺にしか聞こえないはずだよ!?)

(裕太、忘れたのか? 私は誰とでも話せるぞ。君の家には、あれがある)

(あれ? ……あ!)

裕太は思い出した。昨日、グリッドマンと話す時、家にあったジャンクを使って話をした。その時、ジャンクの画面にはグリッドマンの姿が具現化されていた。

「じゃあ、一緒に家に行こう!それに話したいことがあるから!」

裕太は2人を家に誘い、2人は怪しみながらも、裕太について行った。

 

4

「ただいま」

「おじゃまします」

響家に着いた2人はかしこまりながら家に入った。バックをリビングの机に置き、六花が裕太に聞いた。

「で、話があるってなに?」

裕太は自室に入り、六花の質問に答えた。

「話があるのは俺じゃない」

答えに疑問を持った2人は、裕太を本気で心配した。手術した方がいいとも考えていた。裕太は2人を部屋の中に入らせた。2人用の席を用意して、六花と内海は座った。

裕太はジャンクの画面に手をかざした。するとジャンクの画面が光り、3人は目を瞑った。目を開けると、ジャンクの画面に、グリッドマンがいた。

「初めまして、内海と六花。私は、ハイパー・エージェント、グリッドマン」

自己紹介するグリッドマンだが、2人はそれどころじゃなかった。六花は口を押さえ、内海は目を大きく見開いていた。グリッドマンは困惑して、裕太は「だよねー」と言いたそうな顔をしていた。

先に動いたの内海で、裕太に焦った声で聞いた。

「え、裕太、これ本当か?」

裕太とグリッドマンは頷き、内海は再び、ジャンクを見つめた。すると、ジャンクに顔を近づけ、グリッドマンに聞いた。

「なぁ、アンタまさか宇宙人か!? それともウルトラマンの親戚なのか!? 」

熱く聞く内海に対し、グリッドマンは恐怖していた。質問攻めする内海をジャンクから離そうと、裕太は内海を引っ張り、ジャンクから離した。

ようやく六花も動き、「すごいAIだな……」と思っていたが、裕太は気づいたのか、顔を横に振った。

グリッドマンはすぐに話を戻した。

「と、とにかく、君たちに話がある。裕太と内海、座りなさい」

グリッドマンの指令により、裕太と内海は座った。

「私が君たちに話たいことは沢山あるが、その中でも3つの事を話そう」

そう言うと、グリッドマンは人差し指をあげた。

「一つ目は、裕太と私しかわからない事だが、一昨日、この星に怪獣が現れた」

グリッドマンは真っ先に怪獣の話をした。内海と六花は頭にハテナが出ていそうな顔をしていた。裕太は「やっぱり」といきなり話したグリッドマンに呆れたが、グリッドマンはまだ話を続けた。

「信じてないようだが、この街は一回、怪獣によって荒地になっていた。しかし、ここから二つ目だが、この街も人の記憶も、なぜか修復していた」

「修復?」

グリッドマンは「ウム」と頷いた。内海は興味を持ち、前のめりになるが、六花はまだ興味を持っていなかった。裕太は腕を組み、一昨日と昨日、今日の街を比べた。一昨日は修復するのが絶望的になっていたはずなのに、何故か昨日で街は修復されていた。

「それに、内海」

「はい?」

「君は昨日、裕太が「いきなり倒れた」と言っていたな。だが、本当は……」

「グリッドマン!!」

グリッドマンが裕太の真実を伝えようとしたが、裕太はその事を遮った。本当は、裕太は一昨日、ケガをした家族を救うために、ビルの下敷きになってしまった。しかしそれも改善され、裕太は内海の家の前に倒れたことにされている。それを裕太はグリッドマンとの秘密とした。内海は裕太を怪しんだが、グリッドマンの話に戻った。

「で、三つ目は何?」

「あぁ、そうだったな。三つ目は、怪獣に襲われた人は、この世から消えている」

「……え?」

内海と六花は困惑していたが、グリッドマンは三つ目の話を簡単に話した。

「つまり、修復されていなかった(死んだままになった)。そして、私たちの記憶は、修復させられた(彼らの存在を消した)。裕太が話したあのバレー部も、一昨日まで存在していた」

内海と六花は衝撃を受け、裕太は話を続けた。

「一昨日、確かにバレー部の子達の机もあった。でも、何故か無くなっていたんだ」

内海は「そんな……」と唖然したが、六花はグリッドマンに質問した。

「じゃあ、もし怪獣が現れて、私の友達や家族が死んだら、その人たちの存在も、忘れるの?」

「あぁ、間違いなく……」

六花は裕太に聞いた。

「ねぇ、響くん、そのバレー部の中で、私の友達いた?」

裕太は暗い顔を下に向け、低い声で話した。

「いたよ。「問川」ていう子。いつも六花と一緒に話していたよ」

六花は「そんな……」と呟き、スマホに着いていたキーホルダーを見た。ヤンバルクイナに似ている動物で、お腹にはハートのマークがあり、翼はガッツポーズをしていた。そのキーホルダーに付いていた紙には、「ガンバルクイナ」と書かれており、その裏には、ゆるゆるの線で文が書かれていた。

「ガンバレリッカ! トンカワ」

六花はキーホルダーを握り、歯を強く噛み締めていた。裕太はその様子を見ていた。

 

5

ある部屋で、1人の女が人形を完成させた。

「アレクシス、怪獣できたよ!」

パソコンの画面に映っている男に、作った怪獣を見せた。アレクシスは「素晴らしい!」と褒め、女は頼んだ。

「ねぇアレクシス、この怪獣を具現化してくれない?」

「いいけど、どうしてなんだい?」

アレクシスは疑問に思い、女はクスクスと笑った。

「ウチの学校にいた牧野ていう人、殺そうかなと思って♪」

アレクシスは興味を持ち、理由を聞いた。

「その牧野て人さ、響くんにぶつかったの。普通なら謝るはずなのに、あの人、全然謝ってくれなかったの。だから、殺そうかなと思って。じゃあ、よろしく〜♪」

女はアレクシスに頼み、アレクシスは目を光らせた。

「インスタンス、アブリアクション!」

人形は光だし、離れた場所で怪獣が現れた。

 

6

グリッドマンが突如窓の方に振り向いた。裕太は手に持っていたソーダを机に置いた。

「グリッドマン、どうしたの?」

「まずい、大変なことになったぞ!」

グリッドマンは焦っていた。内海はコーヒーカップを置き、裕太に聞いた。

「グリッドマン、どうしたんだ?」

「わからない」

裕太も分からなかったが、グリッドマンはすぐに話した。

「急ぐぞ裕太、また怪獣が現れたぞ!」

すると、突如部屋が揺れ、コーヒーカップとペットボトルが揺れた。地震かと思った裕太だが、明らかにリズムがおかしい。六花も立ち上がり、「何が起きたの!?」と聞いた。

裕太はカーテンを開き、外を見渡すと、頭にツノが生えて、体が赤く、肩が尖り、背びれがついた生物がいた。怪獣だった。怪獣は街を蹂躙し、次々とビルを破壊した。

「まずい、グリッドマン! 早く怪獣を止めないと!」

裕太はグリッドマンに頼んだが、グリッドマンは裕太に話した。

「ダメだ、私は体が無い生命体の状態で、一昨日の姿を出せない!」

今のグリッドマンは身体が無く、具現化するための力を持っていなかった。裕太も内海も諦めていたが、六花は違った。

「じゃあ、どうすればいいの!? アンタは一昨日、怪獣を倒せたんでしょ!? だったらその方法を使って怪獣を倒してよ!」

六花は声を大きく、口調も荒くなっていた。だがら彼女は友達を守りたいと、グリッドマンに頼んでいた。彼女自身にも、守りたいのがあった。

すると、グリッドマンは一昨日の出来事を思い出した。身体を具現化出来たのは、裕太と融合していたことだ。あの時、裕太は「人を救う」と信念を強く持ち、それが鍵となって、身体を具現化出来た。そしてグリッドマンは、裕太に頼んだ。

「裕太、ジャンクに手を入れてくれ!」

裕太は疑問に思ったが、グリッドマンは急かした。裕太はジャンクの画面に手を付けようとしたが、何故か左腕がジャンクの中に入った。

焦った裕太だが、すぐに左腕を取り出せた。腕を見ると、手首には手甲の様な物が装着されていた。腕に引っ付いていて、取ろうとするが取れなかった。

「それは、私が具現化するために使う「プライマルアクセプター」だ! それを使えば、怪獣と戦える! 裕太、君はどうしたい!?」

グリッドマンは裕太に聞くと、裕太はすぐに答えた。

「そんなの決まっている、あの怪獣を倒して、みんなを救う! それが、俺の使命だ!」

左腕を構え、右手でアクセプターを押した。

「アクセス、フラッシュ!!」

裕太は叫び、ジャンクの中に吸い込まれた。

 

6

怪獣がら暴れる街の中、足下には1人の男が虫の息になっていた。

「いやだ、死にたく無い! 死にたく無い!!」

足は動けず、体から血が流れていた。怪獣は男に向かって、光線を放とうとした。男は、「もうダメだ」と諦めた。

すると、怪獣の顔に蹴りが入り、怪獣は吹き飛んだ。蹴りを入れた正体は、鎧の様な装甲を着た巨人がいた。グリッドマンだった。

グリッドマンは構え、怪獣は立ち上がった。拳を顔面に直撃させ、膝を腹に強打させた。怪獣は仰け反ったが、すぐさまグリッドマンに光線を放った。しかし、グリッドマンは上に向かって飛び、怪獣の光線を避け、顔面に飛び蹴りを食らわした。怪獣は勢いよく身体を地面に打ち、ダメージを負った。グリッドマンは構え、怪獣が立ち上がるのを待った。

怪獣は立ち上がり、光線を放とうとした。グリッドマンは避ける準備をしたが、光線はグリッドマンとは別の方向に撃った。グリッドマンは「何故だ?」と、光線が撃たれた方向を見ると、そこには人がいた。

「あの怪獣、俺たちじゃなくて、あの人を狙っているんだ!」

裕太は気づき、怪獣を見た。すると怪獣は次の光線を放とうとしていた。グリッドマンは咄嗟に、光線が放つ場所に向かい、倒れていた人を庇った。光線はグリッドマンに直撃し、グリッドマンは吹き飛ばされた。ビルに身体を打たせ、ビルは崩壊した。

グリッドマンはすぐに立ち上がり、怪獣に向かっい、体当たりをした。しかし怪獣はグリッドマンの背を殴っていた。グリッドマンは膝を付け、怪獣はグリッドマンの顔を殴り、吹き飛ばされた。

その様子を、内海と六花はジャンクで見ていた。ジャンクには、グリッドマンと怪獣の戦いが映っていて、グリッドマンが吹き飛ばされる様子も見れた。

「グリッドマン! 裕太、どうしたんだ!?」

内海はグリッドマンの様子がおかしいことに気づき、裕太に聞くが、戦いに集中していて、聞こえなかった。しかし、六花は気づいていた。

「もしかして、さっき怪獣が放った光線の先に、人がいたんじゃ……」

「え!?」

「だって、そうじゃなきゃ、あの光線をワザと受けないし、だから……」

「マジかよ……」

内海は画面を見て、グリッドマンの戦いを見た。そこには、額のランプが点滅しているグリッドマンがいた。六花は困惑していたが、内海はすぐに気づけた。

「もしかして、あれ活動時間の限界なんじゃ……。だとしたら、早く怪獣を倒さないと!」

内海の説明に理解ができなかった六花は「詳しく説明して!」と頼むと、内海は説明した。

「ウルトラシリーズでよくあるんだ、ウルトラマンは地球では3分しか活動できなくて、3分過ぎると……」

「過ぎると……?」

「……死んでしまう」

六花は焦り、裕太に「響くん、早く戻って!」と頼むが、裕太には聞えていなかったら。

グリッドマンは立ち上がろうとするが、エネルギーが足りなくなり、立ち上がれなかった。怪獣は徐々に倒れている人に近づいていた。

「マズイ……!」

グリッドマンは焦るが、身体が動けなかった。裕太はその言葉を聞いて、ショックを受けた。

「そんな、じゃああの人は……」

グリッドマンは下を向き、守れなかったと諦めてしまった。しかし、裕太は違った。怒りで地面を握り閉めていた。

「そんなのダメだ……! 俺は決めたんだ、絶対に皆んなを守るって! だから、俺は!」

すると、さっきまで動けなかった身体が動けるようになり、身体能力も高まった。

怪獣が足下にいる人に光線を放とうとする。しかし、それをグリッドマンは尻尾を掴み、光線発射を阻止した。怪獣はグリッドマンを振り離そうとしたが、グリッドマンはしっかり捕まえていた。

「この野郎!!」

裕太は怪獣の尻尾を振り回して、人がいる逆の方向へと投げ飛ばした。怪獣はビルに直撃し、怪獣には大ダメージを受けた。怪獣は立ち上がると、グリッドマンが飛び蹴りした。顔面に受け、特徴の曲がった角も折れた。

グリッドマンは腕を交差し、力を溜め、左腕を構え、溜めた力を解き放った。

「グリッドビーム!!」

光線は怪獣に直撃して、怪獣は木っ端微塵に消し飛ばした。

グリッドマンの勝利だ。

それを見た内海は、「ヨッシャ!!」とガッツポーズを取った。六花は「良かった……!」と小さく呟いた。

すると、ジャンクの画面から、裕太が弾き出された。戻ってきた裕太は、辺りを見渡した。そこは間違いなく自分の部屋だった。内海は「大丈夫か!?」と聞くと、裕太は「大丈夫」と返した。

体を起こし、ジャンクの画面に映るグリッドマンと話をした。

「裕太、ありがとう。君のおかげで、私はまた戦うことが出来た」

「でも、またあの怪獣のせいで、守れなかった人は……」

グリッドマンが出現したのは、怪獣が出現して数分後、その間に怪獣は街を破壊して、多くの人間を殺した。裕太は守れなかった人たちに謝ることもできず、ただ拳を握っていた。

「あぁ。だからその為にも、私たちが守らなければいけないんだ。この街も、この星も」

「……そうだね。わかった、グリッドマン、一緒に戦ってくれ!」

「あぁ!」

2人は画面上でわあるが、お互い拳をくっつけ、街を守ることを共に誓った。

7

暗い部屋の中、女はカッターを突き立て、歯を食いしばっていた。アレクシスは嘲笑しながら、彼女と話していた。

「いやー、また負けてしまっね。でも、対策をとればいいじゃないか」

「わかってるけど、あの巨人のせいで牧野死ななかったし、もーマジ最悪!」

女は教師の牧野を殺せなかったことにイライラしていた。本来の彼女の目的は、裕太にぶつかった教師の殺人だったが、グリッドマンに邪魔され、牧野は死ななかったし。アレクシスは笑い、女は嫌気をさしていた。

「おっと、もうこんな時間じゃないか。明日も学校だし、今日は早く寝なければ」

「そうだね、わかった。おやすみ、アレクシス」

と、女は作業室の扉を開き、アレクシスに挨拶をして、部屋を出た。

アレクシスも彼女に挨拶して、画面を消した。

「おやすみ、アカネ君」

 

To Be Continued


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