「ええっと…何でこんなことになったのか説明してほしいな」
「こっちが知りたいわよ馬鹿!」
何故こんな朝っぱらから騒いでいるのには理由がある。何があったのかは数時間前に遡る。
☆
「ここは…」
「気がついたようね」
目が覚めて初めて知覚したのは見覚えのある天井と聞き覚えのある声だった。永琳の声だった。そしてこの赤い天井。これは紅魔館の部屋の天井だった。俺の腕には点滴のような管が通っている。そして結構整った医療設備。この幻想郷は外の世界のものと引けをとらないくらいのものが備わっている。どうやったらここまで流れ込んでくるんだろうか。起き上がろうとするが体が動かない。
「まだ休んでいなさい。あれだけ激しい動きをしたんだから」
記憶が曖昧で思い出せないがそこで永琳が話をしてくれた。俺は紅魔館が襲われて戦い、そして勝った。しかしなれない戦闘をしたせいで体に大きな負担がかかり倒れ込んでしまったのだという。名誉の負傷だ、的なことを言われたが正直なところその程度で倒れてしまった俺が情けない。慣れてればなんともなかったのに…。しかし永琳のいうとおり今は安静にしていた方が良さそうだ。
「起き上がりたいなら手伝うわ。でもしばらくはまともに動けないと思った方がいいわよ」
「起き上がるわ」
「了解」
永琳に手伝ってもらい、俺は起き上がる。寝ているベッドに大きなクッションのようなものを置いてそれに寄りかからせた。うんキツい。確かに永琳のいうとおりしばらく絶対安静は確実のようだ。筋肉痛もあるだろうがそれ以上に頭が痛い。何というかとてつもない疲労感が襲ってくる。久しぶりに感じた大きな疲労は俺の体にずっしりとした鉛のおもりをつけてくる。
「サンキューな永琳」
「私より霊夢に礼を言いなさい。私より長く見てたのよ」
「へ?」
ちょーど俺の足のあたりで腕を組んで、よだれを垂らしながらだらしなく寝ている。もう少しまともな寝方はできなかったのだろうか。布団は掛けられていない。霊夢が爆睡する時間ということはだいぶ深夜に近いのではないだろうか。時間を確認するため時計を見ると、すでに夜中の2時半あたりだった。まさか永琳はずっと起きていたのだろうか。
「そんなわけないでしょ。さすがに交代でやってたわよ。さっきまで鈴仙がやってくれてて今は私がやってるの。アリスとかにも手伝ってもらってなんとかなってるわ」
「そうか…異変早めに解決して謝礼を持って行かないとな」
「そんなものは望まないと思うけど…まあいいわ。とりあえず何か食べる?点滴だけじゃあ栄養は取れないわ」
「それじゃあ、普通に飯食わせてほしい。後は水さえあればいいや」
「わかったわ。ちょっと待ってなさい」
永琳は部屋を後にした。残された俺と睡眠中の霊夢。何をしようかと頭を悩ませる。しかし何か考えようと頭に力を入れると頭がクラクラするような感覚にさいなまれる。酔ったような感じだ。何というか気持ち悪い。吐きそうではないのでいいのだが気分はあまりよくない。仕方ないから横になろうかと思っていたとき。
「あら起きてたの?」
霊夢が目を覚ましたのである。口に手を置きあくびをしながらこちらを見る。いやいや眠いなら無理に起きる必要はないのだが…。
「起こしちゃったか?」
「別にいいのよ。逆に何であなたが起きているのか教えてほしいわね」
「俺は今起きたばっかりだよ」
「あ、そう…永琳は?」
「どっかいった。…飯作ってもらいに行った」
「なるほどね…それじゃあしばらく戻っては来ないかな?」
「まあ戻ってくるまでに時間はかかるだろうな」
「そう…」
霊夢がなんか口ごもっている。何かを言いたそうな感じだ。そして霊夢は俺が想像もしていなかった驚くべき行動に出る。少しづつではあるが俺に接近してきている霊夢。そして、俺の手を握る。その手からは『人を思うぬくもり』が感じられた。そのぬくもりは次第に温度を増していく。やがてその温度はとてもいい感じの温度へと変わっていくように感じた。そして…霊夢は手を握ったまま、俺に近づいてくる。もう彼女は俺の視界のすぐ前にいる。息をしているのがわかる距離までに接近している。ちょっとドキッとした。
「ありがとう…これはほんのお礼よ」
(!!!!!?????)
俺の頬にとても気持ちのいい感触が感じられた。何が当たったのかはすぐに分かった。そのせいで俺の顔が一瞬で干上がってしまう。
「おっ…おま!何してんの!?」
「だから少しのお礼だっていったじゃない…」
「心配させたな…すまん」
「気にしないで。その代わり異変終わらせて酒飲むのよ」
☆
…ということがあり今に至る。この後寝てしまった霊夢はそのことを完全に忘れており、俺のベッドで寝ていたのを『俺が夜這いした』なんて変な憶測で被害妄想を繰り広げたせいでこうなったのだ。これは明らかに俺が被害者のはずなのに永琳とかには「あなたが悪い」的な発言をされるのである。なんでこうも人から罪を押し付けられなければならないんだ。もう嫌だよ。
「まあとりあえず、もう朝ご飯だから食べましょう。航生に関しては、まだ病人だからちゃんとこっちで作ったものを食べてもらうわ」
「変なものは入ってないよな?」
「失敬ね。そんなことあるわけないでしょ。まあ、病人食職なのは我慢してよ」
「そりゃもちろん」
霊夢は俺に小さめに手を振り部屋を出て行った。永琳には見えていないようでよかった。まあもしみられてたらどうなってたのかと思うと正直怖い。永琳が持ってきた病人食をほおばる。割とおいしい、というか普通に美味い。何も変なものは入れていないというのが俺にはわかるのだがそれでもいつもと味が違い、それがまた舌をそそる。食べてて飽きない味の組み合わせだ。これを永琳が作ったのかと聞いたところそうらしい。まさかここまで料理がうまいとは思わなかった。いつもは変なもの混ぜて鈴仙に食わせているのだと思うと虫唾が走る。
「よかったわね。霊夢に気に入られて」
「嬉しいけど…何というか…その気持ちを裏切ることになりそうな気がする」
「…考えすぎよ。別にそんなことにはならないわ」
「そうだといいな」
☆
「心配かけたな」
「それじゃあ今日からまた異変解決のために動きましょう。まだ時間はかかるけど頑張って解決しましょう」
体の調子もよくなったので、俺は紅魔館の食堂にて会議を開いた。ある程度の人員がそろい、陣がくめるようになる程度にはなったので俺は防衛するときのことを考えた。しかしそれでは攻めることはできないのである。防衛と攻撃の二つの陣営が必要になる。それを決めるために俺は今ここにいるのである。今のところ決まっているのは、防衛側に龍哉。攻撃側に俺がいるということ。幻想郷の面々はどうしようかと思っている。能力が使えずまともに戦うことが難しい。唯一まともに戦えそうなのは武術とか剣術とかを普段から使っている妖夢や咲夜、美鈴だ。霊夢もできるらしいが少しかじっている程度なので正直心許ない。弾幕勝負なら明らかに最強であるとわかるのだが肉弾戦になるとどうなのかは知らない。肉弾戦をしているのを見たことがないからだ。そんなこともあり会議は長引いている。人里はすでに壊滅しており、わずかに生き残った人間(約100名)は河童の協力で妖怪の山に避難している。あの山に空洞を作りそこにこもっているらしい。妖怪の山の面々はそちらで防衛をしているそうだ。
「そうだな…とりあえず最優先は、人員分けだけど…確実に妖夢と美鈴は防衛側に回すべきだと思う。そうしないと戦力に偏りが出る」
「そうだな。妖夢たちは防衛側にいるってことで確定として…ほかの奴らだよ…」
今のところ決まってないのは、霊夢、咲夜、魔理沙。レミリアたちは防衛に回る。
「俺的には咲夜は攻める側にほしいな。俺一人はキツいし」
「それじゃあ私も…」
「だめだ」
「どうして!?」
「まともに剣を振ったことあるのか?しかもどういう状況になるかわからないのに博麗大結界の管理者がいなくなれば幻想郷は崩壊する。異変解決後に結界を直す役割があるからだめだ。魔理沙もだ。魔法使えないのに攻めに行ったらどうなるかわかったもんじゃない。防衛側についてくれ。機敏に動けるのが今のところ咲夜だけだしな」
「わかったわ…そういうことなら守るわよ。でも一つだけ条件」
「?」
「絶対死なないでよ」