ウルトラ怪獣擬人化計画 男だけど、怪獣娘やっています!? 作:断空我
「ケーキセットです」
「あ、どう――」
「ボクが受け取ります」
俺が喫茶店でケーキを受け取ろうとすると横から手が伸びて、机の上へ置かれた。
「さ、ザムシャーさん。どうぞ」
「お、おう」
机に置かれたケーキをみて、フォークを取ろうとするがそれも奪われる。
「はい、あーん」
表情を変えずにフォークに突き刺したケーキを俺に差し出してくる少女。
彼女の名前はアギラ。
GIRLSに所属する怪獣娘だ。
いつもの表情に見えるが頬が少し赤く見えるのは気のせいだろう。
「おぉ~」
「ぐぐぐ!アギちゃんのアーンは私だけのものなのにぃ!」
反対側へ視線を向けると興味深そうにこちらをみているウィンダムとハンカチをぎしぎしと噛んでいるミクラスの姿がある。
どうしてこうなったのか。
事の始まりは俺の包帯で固定されている腕を見た時だった。
少し前。
「違和感があると思っていたがまさか、骨折していたとは」
「もう~!無茶しすぎなのです!ザムザムはぁ!ピグモンは気絶するかと思ったのですよぉお!」
「すまない、悪かったって」
「いいえ、許しません!罰として今度のオフの日の時間はピグモンがもらいますよ!」
「……わかったよ」
騒ぎあいながら通路を歩く二人。
ピグモンとザムシャー。
黒いスーツ姿のザムシャーとGIRLSの制服のピグモン。
ザムシャーはスーツの上着を羽織っているだけで片方の腕がギブスで固定されている。
「いやぁ、エースキラーと戦っている時から少し違和感があった。それからはれ上がって病院へみせたらこうなるとはなぁ……」
「しばらくはお休みです!」
ピグモンに言われて渋々、頷くザムシャー。
その時、曲がり角からアギラが姿を見せる。
「あ、ザム」
「よぉ、アギラ」
片手で挨拶をするザムシャー。
しかし、アギラは途中で固まる。
「どうしたのです?アギアギ」
固まったアギラにピグモンは不思議そうに尋ねる。
「その、腕の、包帯は?」
震える声でアギラが質問した。
その時の言葉が酷く気になったが俺は答える。
「あぁ、前の戦いで痛めていたみたいでな?念のため、固定しているんだよ」
「前の……戦い……」
ぶつぶつと呟いて俯いたアギラ。
その姿は少し怖く、後ろへ下がってしまう。
アギラはぐいっとやってきて、自由の方の腕を掴む。
「ザムシャーさん!」
「なんだ?」
「今日から腕が治るまでボクがザムシャーさんの介護をします!」
そして、現在に至る。
「なぁ、アギラ」
「ふぁに?」
モグモグとケーキを味わうアギラ。
既に俺の分は食べ終わって、今は彼女の分を味わっていた。
「無理して俺の介護なんてしなくていいんだぞ?」
「大丈夫、無理していないから!これから治るまで付き添いするから!」
握りこぶしを作ってやる気をみせるアギラ。
気持ちは嬉しいのだが。
「それとも、迷惑?」
一転して、不安そうな表情でこちらを見上げてくるアギラ。
「別に迷惑じゃないさ……ただ、女の子に看病みたいなことをされるのに慣れていないだけだ」
「そう、良かった」
アギラはホッと息を吐く。
「アギちゃん、名演技!?」
「いえ、あれは本心なのでは?」
「隣はうるさいぞ」
がやがやと騒ぐミクラスとウィンダムに注意を促す。
「はぁ」
俺はため息を吐きながら紅茶を飲もうとする。
「あ、ボクが」
「これくらいは俺で出来るよ」
カップを取ろうとするアギラを制して俺は紅茶を飲む。
それから少しして彼らは解散、それぞれのルートで帰宅する。
「明日も頑張ろう!」
家の自身の部屋。
そこでアギラは端末を見ている。
端末にはピグモンから送られてきたザムシャーの予定表が記されていた。
エースキラーとの戦いで自分を庇って負傷したザムシャー。そのお礼として彼の手助けをする。
ピグモンへ伝えたところあっさりと承認されて、彼の介護をすることになった。
幸いにもザムシャーは本部にしばらくいるということなので問題ないということ。
「そういえば」
ふと、アギラは思い出す。
――アギアギも気を付けてくださいね?
釘を刺すような言葉があった。
まるでピグモンの嫌な予想が起きてほしくないように思える。
「そういえば、ボク、ザムシャーさんのことを詳しく知らないなぁ」
明日、色々と聞いてみよう。
不思議と嬉しい気持ちになったアギラだった。
翌日。
アギラはザムシャーのことで気になっていたことを尋ねる。
「あの、ザムシャーさん」
「なんだ?」
「その、いつもサングラスをしているけれど、なんで?」
「あぁ、そのことなぁ……まぁ、アギラはこれからも一緒にいるわけだし、話しておいた方がいいのかなぁ」
近くに喫茶店にアギラと二人で入る。
メニューを頼んだところでザムシャーがサングラスを外した。
「前もチラッとみただろ?俺の目だ」
サングラスを外して、片方の目を開ける。
「赤い……」
アギラの目の前にいるザムシャーの片目は血のように真っ赤だった。
「俺がカイジューソウルに覚醒した時の代償……とでもいいかわからないが俺の目は宇宙剣豪ザムシャーという怪獣と同じ片目が真っ赤になったんだよ」
「そんなことが」
「詳しい原因は判明していない。まぁ、視力が落ちているわけじゃないんだ。ただ、日本人でオッドアイというのは偏見をもたれやすいからな。その理由でサングラスとかで目を隠しているんだよ」
「…………辛くないの?」
「全然、むしろ、嬉しいと思っている」
「嬉しい?」
「あぁ、こうして、守れる力があるからな」
ザムシャーはそういって刀袋に収まっている星斬丸へ触れた。
一瞬、表情が強張ったことをアギラは気づかなかった。
「そうだったんですか、その、ごめんなさい」
「どうして謝る?」
「だって、ぶしつけすぎたから」
苦笑しながらザムシャーはアギラの頭を撫でる。
「な、なに?」
「いや、アギラは優しいなぁって」
「そんなこと」
「皆がアギラを好きになる理由がわかるよ」
「す、好き!?」
顔を真っ赤にするアギラ。
首を傾げるザムシャー。自分は何かおかしなことをいったのだろうか?
疑問に抱きながらしばらく落ち着くまで待つことにした。
ひと段落ついたところで俺とアギラはGIRLSが管理している保護施設へきていた。
保護施設は力を制御できない怪獣娘のために作られた施設であり――。
「もう一つが意図的に力を破壊のために用いた怪獣娘を保護するための施設なんだよなぁ」
「そうなの?」
「本来は力が暴走した怪獣娘が訓練できるようにっていうことで作られたんだがなぁ、開発した人間がマッドすぎて、こうなったんだよ」
「誰がマッドだ。刀バカめ」
ザムシャーの言葉に白衣を纏った男が出迎える。
「俺が刀バカなら、お前は地球バカだよ。藤宮」
白髪交じりの青年は藤宮博也。
この施設の責任者である。
「本来の手続きで一週間は必要だ。それをお前は」
「文句は上へいってくれないか?俺は呼ばれたから来たに過ぎない」
「フン、来い」
藤宮はちらりとアギラを一瞥してから施設のカードキーをかざして中に入る。
「ザムシャーさん、知っている人?」
「藤宮博也だ。ここの施設の責任者で、科学者だ」
俺が答えようとしたら藤宮がすらすらと説明する。
「ちなみに、あぁみえて、恋人は実験用ハムスターだ」
「貴様を殺す」
「ぎぃ」
アギラが小さな悲鳴を漏らす。
「お前、自分の真顔がどれほど相手を怖がらせるか自覚するといい」
後ろへ隠れたアギラをみながら俺は笑う。
藤宮は基本的に笑わない。
過去に色々あり、俺と我夢、その他を巻き込みながら色々と起こり……最終的にGIRLSに所属することになる。
「色々あったなぁ、ホント」
「貴様を何回殺してやろうと思ったか」
「そろそろ、終わってくんない?後輩が怯えているから」
「フン。ここだ」
案内された部屋は強固な扉。
カードで機械を読み取り中に入る。
「!?」
ドアが開かれるとともに何かが飛びかかろうとした。
「危ない!」
アギラが叫ぶも藤宮はあっさりと横へずれて、前に踏み出した俺が襲撃者を地面へ叩きつける。
慈悲?
そんなものはいらない。
何せ。
「へぶぅ!」
相手が変態(ベロクロン)なのだから。
「ひ、ひどいぞ!愛しい人」
「黙れ、藤宮が避けなければ、お前、藤宮とキスしていたんだぞ?」
「そんなことはない。何せ、藤宮所長が避けることは事前打ち合わせ済みだ」
「おい?」
「知らないな」
藤宮へ問いかけるも相手はポーカーフェイスのまま。
この野郎、まだ根に持っているなぁ。
「……さて、アギラ、大丈夫か?」
「う、うん」
「愛しいひとぉ、いつまで私はこのままなんだぁ」
「永遠に地面とキスしてろ」
「ひどぃぃぃぃ、でも、感じちゃう」
この施設で保護されている三人の怪獣娘。
三人は自らを超獣シスターズと名乗っているらしい。
ミサイル超獣 ベロクロン。
一角超獣 バキシム。
異次元超人 エースキラー。
この三人は驚くことに血のつながった姉妹らしい。
姉妹で途方に暮れていたところをノルバーグに保護(本人談)されて、怪獣娘としての力を制御してもらったという。
「ザム、シャーさん、助けて」
話をしている間に移動したエースキラーによってアギラは抱き着かれていた。
念のため、ソウルライドしてもらっていたからアギラは無事だが、全力で抱きしめられていることで少し苦しそうである。
「おい、エースキラー、アギラから離れろ」
「え、嫌だ!モチモチしていて、素敵な抱き心地なんだもーん」
俺は無理やりエースキラーをアギラから引きはがす。
「すまないな。アギラとやら、この子は気に入った相手にとことん抱き着く癖があるのだ」
「お姉ちゃんも大好きだよ~」
謝罪するベロクロンにエースキラーが抱き着いた。
流石、超獣?同士、抱き合っても平然としているな。
実のところ、超獣シスターズと三人は名乗っているがエースキラーは超獣にカテゴライズされるのか怪しいところがある。
文献や過去の資料においてエースキラーの記述がみつからなかったということがある。
ただ、超獣出現時期にエースキラーらしきものが確認されたということで超獣の仲間としてカテゴライズされてはいるらしい。
「じゃれあうのはそこまでにしてくださいな。話が進みません」
飲んでいた紅茶のカップを机に置いて続きを促したのはバキシム。
次女ということらしいが、冷静のようだ。
「それで、私達が施設から解放されるのはいつですの?」
「解放というのは語弊があるな。一時的に外へ出歩けるだけだ。仮釈放のようなものだ」
ギロリと藤宮が睨むもバキシムは涼しい顔だ。
「GIRLSとして、キミ達は大人しく話を聞いてくれるなど、更生可能と判断しているから、外へ出て、色々なものと触れ合ってほしいと判断してくれている」
「あら、そうですか」
淡々とした態度をとるバキシム。
「愛しい人よ!愛しい人と一緒に外へデートというのも」
「いいなぁ~!あ、僕はキミとも一緒にいたいなぁ~!ね、ね!名前はアギラだったよね?」
「そうだよ」
「ハグさせて」
「ううぶ!」
返事を前にアギラへ抱き着いたエースキラー。
俺は間に割り込んで引きはがす。
「何するのさぁ~!」
「人の許可を取るようにしなさい。アギラが迷惑だろ?」
「そうなの?」
「少し、力が強い、かな」
「ふーん、難しいね」
あまり理解していない様子のエースキラーに俺は何とも言えない表情を浮かべているだろう。
三人は勉強があるということで席を外す。
「わかったか?」
「お前が来ているということで何かあると思っていたが……彼らの価値観の問題か?」
「そうだ」
俺の問いかけに藤宮は頷いた。
「最低限はあるといっていい、だが、今のように彼女達はソウルライド状態のままだ。自分達の力が人間とどの程度、違うかということをわかっていない」
「よくそれで外出許可の話がでたな」
「話が進まない。それだけだ」
「……まぁ、ノルバーグの下にいたらそうなるよなぁ」
「ともかく、あのまま外に出せば問題が起こる。ここぞとばかりに連中も食いついてくるだろう。そこで、お前や理解のある怪獣娘を呼ぶということになったわけだ」
「成程」
「絶望させるなよ?」
「わかっているよ」
藤宮の言葉に俺は頷いた。
施設を出た俺とアギラの間に会話はなかった。
電車に乗っている間も静かだ。
「ザムシャーさん」
「なんだ?」
「エースキラーちゃん達はどうなるんですか」
「地道にいくしかないな」
「大丈夫、かな?」
アギラ自身、エースキラーに対して思うところがあるのだろう。
実際に人質とされ、恐怖していたというのに……。
「他人のために心配できるアギラはとても優しいな」
「そう、かな」
「あぁ、普通の人はあんなことがあれば、相手を恐れるしかない。でも、歩み寄れるっていうのは勇気がいる。それが普通にできるアギラは優しいし、とても強い」
アギラは自覚がないだろう。
しかし、と素晴らしい才能だと俺は思った。
「アギラは強いさ。誇っていい……何より――素敵だと思う」
あれ?
待て、
待て待て、
俺はいま、何を言った!?
「あ、すまん!今のなし!わすれ――」
横のアギラをみて俺は言葉を失う。
顔を真っ赤にしてアギラは気絶していた。
「うぉうぅぅぅ」
伝わったか心配だわ。
翌日。
「どういうことかしら?」
本部へ足を踏み入れた途端、待機していたようにエレキングの尻尾で俺の体は拘束された。
「なんだ!?いきなり!」
「私の質問に答えなさい。どういうことかしら?」
「いや、何が!?」
ギリギリと締め付けられている。
「エレエレ、落ち着いてください」
聞こえてきたのはピグモンの声。
その声は慈愛に満ちている。彼女なら。
「話をするなら徹底的に、誰にもばれないように尋問すべきですぅ」
訂正、ピグモンも悪魔側だった。
「さ、会議室を抑えたからいくですぅ」
「行くわよ。キリキリ歩きなさい」
「いや、一体、なにが!?」
後になってわかったがGIRLSの怪獣娘(女性限定)のグループメッセでアギラがある発言をして、俺に疑惑が向けられたという。
内容は教えてもらえなかった。
「(教えられるわけがない)」
「(本当にピグモンの警戒していた通りになってしまいましたぁ!)」
俺は知らなかった。
――ボク、ザムシャーさんのこと、好き、かも。
その発言がなされたことに。
藤宮博也
ウルトラマンガイアに登場した人物。
科学者で天才、超高性能コンピュータを作ったりしている。
ちなみに本編でも恋人は実験用のハムスターだといわれています。
この世界では怪獣娘に対して偏見を持つ人間に対して、苛立ち、怒りなどをもち、小説にして五冊ほどの出来事があり、ザムシャーと我夢が主人公として頑張ったらしい。
尚、ザムシャーのことは嫌いである。