ウルトラ怪獣擬人化計画 男だけど、怪獣娘やっています!?   作:断空我

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分割してもよかっただろうか?

今回、オリジナル色が強いです。


第十二話 ザムシャーの秘密

 

 

――お前など、生まれなければよかった。

 

 あぁ、これか。

 

 暗闇の中、どことなく響く声。

 

 もう何年も聞いてきた言葉だ。

 

 

――アンタなんか!いらない!

 

 

 これも聞いてきた。

 

 何度、面と向かって言われただろうか。

 

 最初は声を枯らして訴えていたかもしれない。

 

 だが、いつからかやめた。

 

 やめた理由は何だっただろう?

 

 最早、それすら思い出せなくなってきている。

 

 

 

――貴方なんか。

 

 

 あぁ、いつのまにかここまできたようだ。

 

 聞こえてくる声は自身への嘆きと激しい怒り、そして、底見えぬ激しい憎悪。

 

 

 

――貴方なんか産まなければよかった。

 

 

 俺に対しての憎悪だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝かぁ」

 

 窓からの光が目に差し込む。

 

 体を起こす。

 

「そういえば、治ったんだったか」

 

 折れていた腕をさする。

 

 手を閉じて開いてを繰り返して状態を確認した。

 

「やっぱり、あの日が近づいているからだろうな」

 

 俺はちらりとカレンダーをみる。

 

 もうすぐ、爺ちゃんの命日だ。

 

 顔を洗って、着替えを済ませたタイミングでソウルライザーに連絡が入る。

 

 連絡主はピグモン。

 

――本部へ来てください(絵文字)

 

 というメッセージ。

 

 少し下へずらしていくと。

 

 

 

――週末、デートしましよう!

 

 

 ハートマークの付いた一言。

 

 その内容をみて笑みを浮かべる。

 

 同時に申し訳ない気持ちになる。

 

 こんな俺にここまでの好意を寄せてくれるのに申し訳ないと。

 

「あぁ、ダメだ。こんな気分になっているのがばれたら怒られる」

 

 彼女達は鋭い。

 

 こういう方面に疎い俺だとすぐにばれてしまうだろう。

 

「行くか」

 

 星斬丸が入っている刀袋を掴んでドアを開ける。

 

 外に出た時。

 

「待っていたわ」

 

「おう?」

 

 ドアの向こうで端末を操作していたエレキングがいた。

 

 いつものように鋭い瞳でこちらをみてくる。

 

「ピグモンからの連絡よ。貴方と同行してくれと」

 

「おぉう?」

 

「さぁ、本部まで一緒に行くわよ」

 

 一緒にという言葉を強調してエレキングがこちらへやってくる。

 

「逃げるという選択肢はないから」

 

 こちらの考えを先読みしたような言葉に俺は両手を上げる。

 

「降参だ」

 

「いきましょう?」

 

 そういって俺の腕に抱き着いてきた。

 

「おい、何で抱き着く」

 

「人ごみを利用して逃げようという手段を封じるためよ」

 

「変な誤解を受けるぞ?」

 

「構わないな……………牽制にもなるし」

 

「何かいった?」

 

「行くわよ」

 

「ちょ、引っ張るな!転ぶ!マジで転ぶぅぅぅぅぅぅ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エレキングに引っ張られてGIRLS本部に到着する。

 

 逃げることはしなかった。

 

 まぁ、逃げたらその倍、おそろしいことが待っているのだが。

 

「さぁ、入るわよ」

 

「わかっている。もう逃げないから放せ、このままだと」

 

「あーーーーーー!」

 

 面倒なことになると言おうとした俺だが、それを遮るほどの大きな声が聞こえてきた。

 

 聞き覚えがあるなぁ。

 

 嫌な予感がして振り返る。

 

「愛しい人!これはどういうことだ!」

 

 指をさしていたベロクロンが物凄い勢いで俺の前にやってきて、エレキングと俺を交互にみる。

 

「浮気か!」

 

「お前と交際した記憶はない!」

 

「どういうことだ!私が閉じ込められている間に毒牙にかけられてしまったというのか!?あぁ、こうなることを恐れていたのに、おい、貴様!今すぐ離れろ!」

 

「嫌よ」

 

 そういってさらに抱き着いてくるエレキング。

 

 ベロクロンが歯ぎしりしている。

 

「てか、何でお前がいる?保護観察中だろ?」

 

「フッ、GIRLSの見学さ!運が良ければ愛しき人と出会えるだろうと思っていたが、まさか、こんなことになろうとはなぁ!」

 

「何かしら?ポッと出風情が何か」

 

 なんだろうか?

 

 二人の間にみえない火花のようなものが散っている気がする。

 

「こんなところで何をやっている?」

 

「藤宮か、助けてくれ」

 

「断る」

 

 俺の頼みをばっさりと切り捨てた藤宮。

 

「まだ保護観察だ。余計な騒ぎを起こすな」

 

 藤宮がベロクロンの腕を掴む。

 

「それに見学はまだ始まったばかりだ。行くぞ」

 

「うぅぅぅぅう!愛しい人!待っていろ!すぐに」

 

「行くぞ!」

 

「あの女……敵ではないわね」

 

「お前はなんで勝ち誇っているんだ?」

 

 フンスと勝利した表情のエレキングへ突っ込んだ俺は悪くない。

 

「女には負けられない戦いがあるのよ。貴方にはわからないでしょうけれど」

 

 エレキングは俺の手を引いて歩き出す。

 

「そういえば、お前、仕事は?」

 

「あるわよ」

 

「行かなくていいのか?」

 

「貴方をちゃんと会議室まで連れていく。それが今の仕事よ」

 

「逃げるわけないだろ?」

 

「今のあなたの信用度はゼロよ」

 

「何気に酷いことを言うな」

 

「私の約束、いくつ反故に」

 

「わかった、わかったから、行こう」

 

 あぁ、早く解放されたい。

 

 エレキングにほとんど抱きしめられながら俺はそんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようです。ザムザム」

 

 会議室へ到着するとあっさりとエレキングは俺を解放して去っていった。

 

「よぉ、ピグモン、やってくれたな」

 

「何のことです?ザムザムのことを待っていたんですよ」

 

 俺が少し睨むもピグモンは変わらず笑顔だ。

 

「ザムシャーさん、何かあったの?」

 

「いや、気にしないでくれ……ところで、アギラ、お前、右の頬どうしたんだ?」

 

 アギラの頬にはどういうわけかキスマークがついている。

 

「うえぇ、まだついていた?」

 

「アギちゃんは私のものぉ!」

 

「あははは」

 

 アギラはハンカチで頬を拭いていた。

 

「?」

 

「実は」

 

 ウィンダムの話によるとアギラ達と会議室へ向かっている最中にエースキラーと遭遇。

 

 マーキングと称してアギラにキスをしていったという。

 

「なんというか、百合百合しいな」

 

「えぇ、本当に、えへへへ」

 

 メガネを光らせながら微笑むウィンダム。

 

 あれ、この子もエレキングみたいな子?

 

 そんなことを思っている間にアギラは頬のキスマークをふき取る。

 

「こうなったのもザムシャーさんのせいだ」

 

「俺のせい!?」

 

「だって、ザムシャーさんがいればボク、こうならなかったもん」

 

「いや、俺がいても起こったんじゃないか?アギラは同姓に好かれそうだし」

 

「そんなこと……」

 

「アーギちゃーん!」

 

 その時、ゴモラが現れてアギラへ抱き着いた。

 

 嬉しそうにアギラの頬へ顔をすりすりしているゴモラ。

 

「確認しよう、同姓に好かれていない?」

 

「そう、思いたい」

 

 視線をさ迷わせるアギラ。

 

 まぁ、仕方ないよな。

 

「アギラは可愛いし」

 

「か、かわっ!?」

 

 俺の発言に顔を赤くするアギラ。

 

「アギちゃんは私のものぉ!」

 

「渡さないよぉ!」

 

 がおぉ!と叫び声をあげるゴモラとミクラス。

 

 なんだ?

 

「それで、話っていうのは」

 

「スルーするんですか!?」

 

 ウィンダムが驚いているが仕事の話が重要だろう。

 

 俺がそういうと微妙な表情をしている。

 

「今日は最近発生している壊れた機材の修理ですぅ」

 

 ピグモンの言葉に俺は頷いた。

 

「力仕事か、だったら俺だけでも」

 

「駄目ですよぉ!今日のザムザムはアギアギ達と行動してもらいますからぁ」

 

「いや、俺一人で」

 

「だ・めですぅ」

 

 有無をいわせぬピグモンに俺は頷く事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほへぇ、黒焦げ」

 

「うわぁ、黒焦げだねぇ!」

 

「落雷でもあったんでしょうか?」

 

「いや、最近の天気予報で雨はなかったな」

 

 俺達は壊れた看板の前に来ていた。

 

 アギラ達の言うとおり、看板は落雷か何かの影響で黒焦げになっている。

 

「ピグモンの指示だと看板を外して取り換えてほしいそうだ」

 

「え?この板を?」

 

「専門の業者が取り換えた板を上から塗るんだと」

 

「おーし!じゃあ、すぐにやろうよ!」

 

 ミクラスがソウルライザーを取り出す。

 

「うん」

 

「はい!」

 

 三人がソウルライザーを起動する。

 

 怪獣娘になったアギラ、ミクラス、ウィンダムの三人は黒焦げになっている看板へ手を伸ばす。

 

「そこの釘で手を刺さないように気をつけろよ」

 

 適度に俺が指示を出しながら三人の動きを見る。

 

 大きな問題もなく看板の取り換えは解決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また、取り換え!?」

 

「はいぃ、実は昨日、業者がやってくると黒焦げになっていたみたいで」

 

「おいおい、どうなっているんだ?」

 

 作業をして翌日に黒焦げっていうのはなぁ。

 

「そのことで話があるわ」

 

 ピグモンと話し込んでいるとエレキングがタブレットを片手にやって来る。

 

「計測したところ……この地域に反応が出ているわ」

 

「暴走している怪獣娘がいる?」

 

「その可能性がありうる。ただ、ステルスのような能力を持っているのか、反応が小さくて確証はできない。もしかしたら本当に落雷の可能性もありうるわ」

 

「……とにかく、注意しないといけないわけか」

 

「ザムザム、まさかと思いますが」

 

「張り込みをしてみる……まぁ、何もなければそれでいいんだ。看板交換もただというわけじゃない。それに黒焦げにしている犯人が怪獣娘で、暴走しているというなら保護しなければならない……だろ?」

 

 俺の言葉にピグモンは不安そうに、エレキングはいつもの表情だった。

 

 しかし。

 

「待ちなさい」

 

 俺が通路に出たところでエレキングがやってくる。

 

「なんだ?」

 

「今度、デートの約束があること忘れていないわね?」

 

「え?いや、そんな約束をした覚えは――」

 

「や・く・そ・く」

 

 ぐぃっと顔を近づけるエレキング。

 

 その目に俺は頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「看板、交換が終わったぁ~~!」

 

 ミクラスが拳を突き上げる。

 

 交換作業は一時間ほどだ。

 

 しかし、彼女達は疲れた様子はない。むしろやり切ったという表情だ。

 

「ご苦労様、ほら」

 

 俺は彼女達に買ってきたジュースを差し出す。

 

「うわぁ、ザムシャーさん!さっすがぁ!」

 

「ありがとうございます」

 

「……ありがとうございます」

 

 嬉しそうにするミクラス。

 

 感謝して受け取る二人。

 

「これから、どうするんですか?」

 

 ジュースを一口飲んで、ウィンダムが尋ねる。

 

「しばらく様子見……かなぁ?」

 

「つまり、張り込み!!」

 

「ミクちゃんが輝いている」

 

「やる気満々ですね……でも、私達、学生ですから勉強を」

 

「お前達は帰っていいぞ?俺が残るから」

 

「え、ザムシャーさんが?」

 

「ですが、独りにするというのは、その暴走した怪獣娘かもしれないんですよね?」

 

「そうだよ!ほら、ここは協力すべき!……勉強はその後、頑張るから、さ」

 

 三人は頑として帰る気配を見せない。

 

 こうなると四人で張り込みだなぁ。

 

「何か飲み物と一緒にパンでも買ってくるよ」

 

「じゃあ、アンパン!」

 

「刑事ドラマの見過ぎだよ」

 

「でも、定番ですよね!」

 

「はいはい、わかりましたよ。お姫様たち」

 

 ミクラスは遠慮しなくなったなぁ。ホント。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミクさん、少しは遠慮した方がいいですよ?」

 

「えぇ~、ザムシャーさんが奢ってくれるって言っているんだからいいじゃん」

 

「今度からミクちゃんだけ自腹にした方がいいかも……ザムシャーさんの財布が底をつくことになったらエレキングさんが黙っていないと思うよ」

 

「うぅ!?」

 

 アギラの指摘にミクラスは顔をしかめる。

 

 ミクラスは情報部にいるエレキングが苦手だ。

 

 ザムシャーとエレキングが親しいことをアギラは知っている。

 

 何度かデートの約束をしているところを目撃していた。もし、ザムシャーの財布に金がなくてデートができないと知ったら。

 

「無表情で攻撃してくるだろうね」

 

「うえぇぇ、それは嫌だなぁ」

 

「わかったら自粛しましょう。それがミクさんの為にもなります」

 

 項垂れるミクラスにアギラとウィンダムが説得する。

 

「おい」

 

 三人が仲良く話をしていた時、声をかける者がいた。

 

 アギラ達が振り返ると銀髪で首輪のようなものをつけている女性が睨んでいる。

 

 そう、睨んでいた。

 

 まるで敵をみているかのように鋭く黄色い瞳がみている。

 

「えっと、なんでしょうか?」

 

 戸惑いながらウィンダムは尋ねる。

 

 何か睨まれるようなことをしただろうか。

 

「匂う」

 

「え?ウィンちゃん、何か匂うの?」

 

「ウィンちゃん……」

 

「そ、そんなことないですよ!えっと、すいません、何が匂うんでしょう?」

 

 二人からの視線に逃げる様にしてウィンダムは目の前の女性へ問いかける。

 

 こっそりと自分の匂いを嗅いでみるも臭さなどは感じない。

 

「あぁ、やっぱり」

 

「え、あの?」

 

 何やらぶつぶつと呟き始めた相手にウィンダムは戸惑い始める。

 

 この人、もしかして、ヤバイ人なのでは?

 

 彼女が距離を置き始めた時、女性がカッと目を見開く。

 

「お前から匂う!!」

 

 叫びと共にバチバチと雷撃が起こった。

 

「きゃっ!」

 

「ウィンちゃん!」

 

 吹き飛んだウィンダムをミクラスが咄嗟に抱き留める。

 

「ミクさん、ありがとうございます……」

 

「あの人……」

 

 アギラの視線の先では女性の姿が変わっていた。

 

 銀髪の頭部に伸びる二本の山羊を連想させる角。尖った尻尾に細長い脚を覆う獣殻。

 

 口の端からは小さな火が漏れている。

 

「怪獣娘……」

 

「しかも、暴走しています」

 

「どうしょう、私達でなんとかするしかない、よね?」

 

 ザムシャーが異変に気付いて戻ってくるまでに時間がかかる。

 

 それまで自分達で目の前の暴走している怪獣娘と戦うしかない。

 

「グゥゥゥ!アァ!匂う!匂うぞぉっぉおおおお!」

 

「ミクちゃん!」

 

 叫ぶ怪獣娘の標的となったのはミクラス。

 

 彼女の前に近づいて拳を振るう。

 

「このぉ!」

 

 咄嗟に両方の拳を受け止める。

 

 しかし、相手の勢いは止まらず押され始めた。

 

「な、んて、力なんだよぉぉぉぉぉ!」

 

 ミクラスが力任せに押し返そうとした時、目の前の怪獣娘の姿が消える。

 

「え――」

 

 気付いた直後、ミクラスの体が宙に浮いた。

 

 一瞬で下に体を丸めるようにしていた怪獣娘の蹴りがミクラスの顎を狙ったのだ。

 

 攻撃を受けたミクラスは少し宙に浮いて、地面に倒れる。

 

「ミクさん!」

 

「ウィンちゃん!」

 

 駆け出そうとしたウィンダムをアギラが止めようとした。

 

「ザァアアアアアアアアアアアアア!」

 

 ウィンダムへ怪獣娘は火炎放射を放つ。

 

「っ!」

 

 咄嗟に横へ跳んだウィンダムだが、怪獣娘は既に回り込んでおり、彼女の頭に一撃が叩き込まれる。

 

「ウィンちゃん!!」

 

 アギラが駆け寄ろうとしたが目の前に怪獣娘が降り立つ。

 

「グゥゥゥ!グウゥゥァアアアアアア!」

 

 獣のような雄叫びにアギラは後ろへ下がってしまう。

 

 しかし、ここで逃げれば、ミクラスやウィンダム。

 

 自分の友達を見捨ててしまうことになる。

 

 そんなことはできない。

 

 アギラは目の前の怪獣娘をみる。

 

 相手は獣のように唸りながら駆け出す。

 

 鋭い拳がアギラに迫ろうとした時。

 

 横から銀色の光が降り注いだ。

 

「グゥアァァァ!」

 

 風を斬る音と悲鳴が聞こえてくる。

 

 アギラが瞬きした。

 

 暴走した怪獣娘のいたところ。

 

 そこに立っていた一人の男。

 

 手に刀を握り締めて、サングラスをかけているがその瞳は真っ直ぐに暴走している怪獣娘をみている。

 

「ザムシャーさん」

 

「すまない」

 

 アギラの頭に彼はポンと手を置く。

 

 一言、けれど、その言葉には大きな感情が込められていた。

 

「俺が遅くなったばっかりに」

 

 ザムシャーは倒れているミクラスとウィンダムへ視線を向ける。

 

「ここは俺に任せて、お前は二人を安全な場所へ運んでくれるか?」

 

「ザムシャー、さんは?」

 

「俺はアイツの相手をする」

 

 ザムシャーは星斬丸の剣先を暴走している怪獣娘へ向けた。

 

「暴走しているとはいえ、ここまでやるなんて随分と性格の荒いようだな」

 

「ウゥウゥゥゥ!この、匂い!!」

 

「あ?」

 

 動きを止めるとピクピクと鼻を動かした。

 

 直後、その体から膨大な殺気が吹きだす。

 

「見つけた!みつけた、みつけたみつけたみつけたみつけたぁ!!」

 

 大きな叫び声をあげてザムシャーへ襲い掛かる怪獣娘。

 

 その拳をザムシャーは回避する。

 

 振るわれた一撃は地面に巨大なクレーターを作った。

 

「うわっ、と」

 

 バランスを崩しそうになりながら刀を構えなおす。

 

「急に速度が増したな……なんだ、コイツ」

 

「お前ぇええええええええ!」

 

 正面から振るわれる拳を受け止める。

 

「なんだ、お前?」

 

「お前、お前、お前お前お前お前お前お前、お前!二宮レンだな?」

 

 最後の方はとても小さな声。

 

 けれど、ザムシャーの耳はそれを聞き逃さなかった。

 

「お前、なんで」

 

 今まで表情を変えなかったザムシャーに起こった小さな変化。

 

 

 戸惑い、そして驚愕。

 

 二つの感情が渦巻いてザムシャーの動きを止めさせてしまった。

 

 グィッと怪獣娘は星斬丸を握り締める。

 

 本来なら手を切ってしまうかもしれない行為だが、獣殻に覆われているおかげで皮膚を傷つけることはない。

 

 身を乗り出すようにしてザムシャーの耳元で暴走しているはずの怪獣娘は言葉をささやく。

 

「私は二宮マナ、貴様の妹だよ。お、に、い、ちゃ、ん」

 

「なっ!?」

 

「会いたかったよぉ」

 

「ふざけるな!」

 

 一瞬、動揺しながらもザムシャーは相手を蹴り飛ばして距離をとる。

 

「ウソじゃないよぉ!あぁ、この匂い!間違えるわけがない!よーやく見つけたぞぉぉぉおおお!」

 

「っ!」

 

 口から火炎を吐く。

 

 後ろに気付いたザムシャーが星斬丸を回転させながら炎を四散させる。

 

「見つけた、見つけたみつけたぁ!フハハハハハハ!」

 

「ぐっ!」

 

「ザムシャーさん」

 

 ザムシャーの後ろではアギラが二人を守るようにしていた。

 

 ここで退いてしまえば、アギラ達が炎でケガをしてしまうかもしれない。

 

 それはならない。

 

 そんなことは絶対にさせてはならない。

 

 ザムシャーは星斬丸を回転する速度を上げた。

 

 じりじりと怪獣娘との距離を詰めていく。

 

「そこだ!」

 

 炎が弱まったタイミングを突いて、ザムシャーの一撃が怪獣娘の肩に直撃する。

 

 攻撃を受けた怪獣娘は悲鳴を漏らす。

 

「ガアアアアッ!フフッハァ!」

 

「わらって……いる?」

 

 アギラは暴走している怪獣娘が笑顔を浮かべていることに気付く。

 

 ザムシャーの一撃を受けてダメージを負ったはず、なのに笑顔なのだ。

 

 流石のザムシャーも異変に気付いていたのだろう、表情が険しい。

 

「アァァ!最高だ。もっと、もっとぉぉおおおおおづぁあああ!?」

 

 笑顔で叫んでいた途端、怪獣娘が顔を歪めた。

 

「グッ、こんなときにぃぃぃい」

 

 忌々しいという表情で怪獣娘は自らの首に触れる。

 

 銀色のチョーカーのようなものを引きちぎろうとしていたがびくともしない。

 

 頑強な作りらしいものを触りながらザムシャーを睨む。

 

「逃がさない、お前をぉ」

 

「メガトンテール!」

 

「おらぁ!」

 

 暴走怪獣娘が何かをしようとした時、ザムシャー達を守るようにゴモラとレッドキングが現れた。

 

 二人の攻撃を受けて吹き飛ぶもすぐに踏ん張り、睨む。

 

「チィッ、待っていろ。私はまたお前の前に現れる!お前を絶対に許さない!お前を苦しめてやる!」

 

 ザムシャーを指さしながら暴走怪獣娘は飛び去る。

 

「ありゃ、難敵だな」

 

「暴走しているのにちゃんと意識あるみたいだもんねぇ」

 

 怪獣娘の姿が見えなくなったことで警戒を解く二人。

 

 ザムシャーは星斬丸を鞘へ戻した直後、膝をついた。

 

「ザムシャーさん!」

 

「大丈夫だ……それよりも二人をみてもらう必要がある。医療班へ連絡を」

 

「既にオレがしてある。お前も少し力を抜け」

 

「すまん、少し、休む」

 

 レッドキングにいってザムシャーは地面に座り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件から次の日。

 

 

 俺はいつものスーツ姿で墓地へ来ていた。

 

 あの後、アギラも含めた三人は救護班によって病院へ搬送される。

 

 アギラは大丈夫らしいが念のためだ。

 

 俺はGIRLSへ報告を済ませ、墓地へ向かうことにした。

 

 心の中の迷いを晴らすためということと、今日が命日であるからだ。

 

 目的地である墓の前で立ち止まる。

 

「久しぶり、爺ちゃん」

 

“風祭家之墓”

 

 そう刻まれている墓石の前で俺は笑みを浮かべた。

 

 この墓には俺を育ててくれた爺ちゃんとばあちゃんが眠っている。

 

 厳しくも正しく俺を育ててくれた爺ちゃん。

 

 最期は精一杯、生きたことを満足したように爺ちゃんは眠りにつく。

 

 愛しい人と同じ墓に入れることが救いだといっていた。

 

 花束を置いて、墓石に水をかけて、線香を差し替えた。

 

 両手を合わせて感謝の気持ちを込める。

 

 今の俺がいられるのは爺ちゃんのおかげだ。

 

「レン」

 

 聞こえた声に自然と体に力が入った。

 

 その方向へ視線を向けないようにしながら片付けて立ち上がる。

 

「レン!待ちなさい!」

 

 後ろから聞こえる声を無視する。

 

 最悪だ。

 

 なんで、このタイミングで!

 

「待ちなさいといっている」

 

「アンタ、誰だ?」

 

 肩を掴まれないように避けて振り返る。

 

 あぁ、ダメだ。

 

 視界に入れただけで、どうしょうもないほどの怒りが俺の中で叫ぶ。

 

「何を言っている。私はお前の父だ」

 

「知らない。俺に父はいない」

 

 俺の言葉に相手は顔をしかめる。

 

「確かに、我々はお前を捨てた。だが、頼む!お前にマナを救ってもらわなければならない!」

 

「マナ?」

 

「そうだ!お前の妹だ。お前が奴に奪われてから、生まれた子だ。お前と面識はない……だが、奴も突然、お前と同じようにおかしくなってしまった!」

 

 爺ちゃんに受けた修行がなければ今頃、カイジューソウルに飲み込まれて暴れていただろう。

 

 それほど、までに俺は怒りの感情に包まれ始めている。

 

「おかしくなってしまったアイツを戻せるのはお前しかいない!わかるだろう!すべてはお前からはじまったんだ!マナを家族として戻せるのは――」

 

「黙れ」

 

 拳を強く握りしめすぎて、血が流れる。しかし、痛みを感じない。

 

「家族?アンタの口から出る言葉はどれも軽すぎる。アンタの目的は知っている。だが、興味もないし、関わるつもりもない。はっきりって俺には迷惑でしかない。何かするなら勝手にしろ。だが、俺に迷惑をかけるなら、容赦しないからな」

 

「レン!待て!お前は」

 

「それと!」

 

 星斬丸を抜きそうになる衝動に駆られる。

 

「俺は風祭直人だ。てめぇらの知るレンじゃねぇよ!」

 

 最後に怒りの感情が口に乗りつつ、そのまま歩き去ろうとした。

 

「この、忌み子め!」

 

 気付けば刀袋から星斬丸を抜いて思いっきり振りぬく。

 

 斬撃が衝撃波となって相手のすぐ横を通過する。

 

「今度、俺の前に姿を見せたら……殺す」

 

 相手が腰を抜かしているが俺は手を差し伸べることもせずにそのまま、墓場を後にした。

 

「ごめん、爺ちゃん……」

 

 墓前で俺は最低なことをした。

 

 悔しさと怒りが俺の中でうずまいて気付けば拳を壁に叩きつけてしまう。

 

 壁に小さな凹みができる。

 

「くそっ、俺は」

 

「ザムシャーさん?」

 

 聞こえた声に俺は振り返った。

 

 そこにいたのはアギラ。

 

 彼女は驚いた目でこちらをみている。

 

「アギラ……どうして」

 

「えっと、退院許可をもらって、そのことを報告しようと……したら、ここだって」

 

 ちらちらと目をさ迷わせるようにしながらアギラは尋ねる。

 

「さっきの人は?」

 

「みていた、のか」

 

「ごめんなさい」

 

「謝らないでくれ、俺の未熟が招いたことだ……」

 

 俺はアギラをみる。

 

「場所を変えるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アギラと共に俺は喫茶店へ足を運ぶ。

 

 人が少なく、レトロな音楽が流れている店内。

 

 そこで俺はアギラの前でサングラスを外す。

 

「あ……」

 

 俺の目をアギラは真っ直ぐに見る。

 

「前に話したことだけど、少しウソがあるんだ」

 

「ウソ?」

 

「これ、生まれつきなんだよ」

 

 サングラスで隠していた片目。

 

 そこにあるのは深紅のように赤い瞳。

 

 本来ならありえない瞳だ。

 

「医者も全員、お手上げ、原因不明ってことで気味悪がられた。俺の家が裕福ってこともあってかなり荒れたんだよ」

 

 元々、名家であった生まれた場所はとにかく俺の目を忌み子として恐れ、遠ざけた。

 

 成長していくが、俺は家族の愛情を貰うことはなかった。

 

 普通なら荒れくれていただろう。

 

 しかし、ある人達が俺を引き取ってくれた。

 

「風祭誠……爺ちゃんだった」

 

 爺ちゃんは高齢だったが山で生活している変わり者だった。

 

 俺の実情を知った爺ちゃんは怒り、俺の両親にある約束を書かせるとそのまま引き取っていく。

 

「約束?」

 

「俺に近づかないこと……それが条件だった」

 

「どうして?」

 

「まぁ、有体にいえば、虐待を受けていたんだよ。俺は」

 

 服に隠れてみえないが俺の背中には火傷の跡が薄く残っている。

 

 この事実に偶然にも気づいた爺ちゃんたちは怒り、絶縁状を叩きつけるようにして俺を引き取ってくれた。

 

「まぁ、そこからが大変だったけれど」

 

 爺ちゃんは大自然の中を駆け回るほどにたくましい人。

 

 同じようにできるようになるまで厳しく、出来たら優しく褒めてくれた人だった。ばあちゃんは爺ちゃんと違って、いつも優しく笑顔を絶やさない。

 

 二人の愛情で俺は歪み、ねじれずに育ったんだと思う。

 

 だからこそ、俺は思った。

 

 俺にできることは何でもしょう。

 

 それが、俺に愛情を注いでくれた人たちにできる恩返し。

 

「だけど、俺は心のどこかで恨んでいるんだと思う」

 

「恨んで?」

 

「俺を生んだ人たちは俺を否定した。生まれなければよかったと面と向かって言われた……気にしていない、筈だったんだ。だが、前にした時、心の中にどうしょうもない激しい怒りが噴き出した。少しでも抑えきれなければ……暴走していたと思う」

 

「ザムシャーさん……」

 

「アギラ、教えてくれよ」

 

 縋るように、答えを求める様に俺はアギラへ問いかける。

 

「俺は、生まれてこなければよかったんだろうか?」

 

「そんなこと、ないよ」

 

 頬に温もりが伝わる。

 

 アギラが身を乗り出して両手で俺の頬を掴んでいた。

 

「ザムシャーさんがいたから救えた人達だっている。超獣シスターズだって、暴走したエースキラーも救えたのはザムシャーさんがいたからだよ?それに、ボクだって」

 

 笑顔でアギラが俺をみる。

 

 その目には連中のような蔑みや怒りはない。

 

 あるのはどこまでも澄み切った慈愛。

 

「アギラ……俺は、生きていいんだろうか?」

 

 気付けば、心の奥底、誰にも、もらしたことのない感情を吐き出していた。

 

「当たり前だよ。ボクはザムシャーさんに生きていてほしい……」

 

 アギラは優しく俺を抱きしめてくれた。

 

 気付けば、俺は泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後。

 

 

「大変、大変、見苦しいところを」

 

「そ、そんなことないよ」

 

 俺達は離れて互いに顔を真っ赤。

 

 喫茶店だが、人がいないということが幸いだった。

 

「ありがとう、アギラ」

 

「ううん、ボクだってザムシャーさんに感謝でいっぱいだから」

 

「そっか」

 

「………………ボク、ザムシャーさんのこと、好きだよ」

 

「あぁ、そう…………………うん!?」

 

 顔を真っ赤にして視線を逸らすアギラに俺は戸惑う。

 

「アギラ、今のって」

 

「告白だよ。恥ずかしいけれど」

 

「いや、その、嬉しいんだが」

 

「やっぱり、ボクみたいなのに告白されるのって迷惑かな?」

 

 しゅんと悲しそうな表情になるアギラ。

 

 ヤバイ、これはトニカクヤバイ。

 

「違うんだ。全く違う!えぇっと、実はさぁ」

 

 俺は白状することにした。

 

「五人に告白されて保留にしているんだよ」

 

「ふぇ?」

 

 ぽかんとした表情のアギラ。

 

「誰とはいえないんだが、それぞれに告白されて保留中なんだよ……だから、その、応えられないというか……こんな俺に告白してもアギラが悲しむだけで」

 

「そんなことないよ!むしろ、やる気がでた」

 

「へ?」

 

 アギラの言葉に困惑する。

 

「頑張ってザムシャーさんに振り向いてもらえるように頑張るから」

 

 フンス!といって握りこぶしを作るアギラ。

 

 その光景に俺は笑みを浮かべるしかなかった。

 

「なんで、女っていうのは」

 

 誰も強いのだろうか。

 

 そう俺は心の中で思った。

 

 

 

 

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