ウルトラ怪獣擬人化計画 男だけど、怪獣娘やっています!? 作:断空我
その後は番外編をやります。
「はい!大当たりぃ!温泉旅行が当たったよぉ!」
「……マジ?」
とある商店街の福引。
カランカランと鳴らされるベルの音に俺は戸惑いの声を漏らした。
GIRLS本部。
「さて、これ、どーすっかなぁ」
数多くある部屋の一つ、警備部。
仮だが、俺の所属している部署だ。
GIRLS日本本部の警備が本業である。
所属人員一人!という寂しいところ、しかし、誰かに邪魔されることがない部署でもある。
ため息を零しながらひらひらと手の中のチケットを眺めた。
ある有名旅館の温泉チケット。
入浴するだけでもかなりの金額になるらしいのだが、このチケットがあれば入浴だけで一泊二日食事付きという素晴らしいもの。
問題はチケットの内容。
「一枚につき、二人までだからなぁ」
この場合、妹のパズズといけばいいのだが、アイツは遠征でいない。
戻って来るのが来週で、チケットの期限を過ぎてしまうのだ。
そのため、他の人を誘うべきか考えないといけないのだが。
「ここは一人で行くか……」
誰かと行くとなったら色々と面倒なことになる。
例えば。
モヤモヤモヤ~。
ピグモンの場合。
「ザムザム、ピグモンは悲しいですぅ。ピグモンではなくて他の人と行ってしまうなんて、とても悲しくて皆さんへ風船を配る元気もないですぅ」
周りからの絶対零度の視線が突き刺さる。
ゴモラの場合。
「もう!なんで私を誘ってくれないのさぁ!もしかして胸の大きい人とお風呂に入りたかったのぉ?このスケベェ!」
大きな声で言われて俺の社会的地位が崩壊。
レッドキングの場合。
「ザムシャー、これからバトろうぜ?」
目からハイライトが消えた状態で拳を打ち鳴らす。
アギラの場合。
「ヒクッ!ひどい……ひどいよ、ザムシャーさん。ボクのことは遊びだったんだね。とても悲しいよ」
泣いているアギラの傍で怒りに染まっているミクラス、ウィンダムの姿。
エレキングの場合。
「やめよ、寒気がしてきた」
最悪の想像をしてしまった。
寒気がしたので湯飲みのお茶を飲み干す。
コトンと湯飲みを置いた。
エレキングのことは考えないようにしよう。そうしないと、体の震えが止まってしまう。
こういう場合は甘いものでも食べようっと。
「遊びに来たよぉ~」
冷蔵庫からケーキを取り出したタイミングでドアを開けて入って来る者がいた。
ゴモラだ。
「……」
「無言で口から涎を垂らすな!おそろしい!しかも、近づくな!!」
涎を垂らしながら近づいてくるゴモラに俺はケーキを遠ざける。
「わかった!半分くらいやるから!すぐに涎を拭け!」
「うわーい!大好きだよ!」
「現金すぎる……」
笑顔で両手をあげるゴモラの姿に折れはため息を零す。
まぁ、他の奴らがいなくて助かった。
「ところでさぁ、ザムシャーは行くの?」
「何の話だ」
ケーキをもぐもぐと味わっていたゴモラの質問に俺は首をかしげる。
「あれ?アギちゃんから聞いていないの?」
「いや、本当に何の話だ?」
「GIRLSのメンバーで温泉旅行にいくって――」
「ゴモたん!」
バキャンとドアを壊してやってきたのはアギラ。
怪獣娘としての姿で現れた彼女は信じられない速度でゴモラの体を揺らす。
「……ドア……」
「ごめんなさい、ザムシャーさんをのけ者にして」
「いや、チケットがないって話だろ?だったら仕方ないだろ……俺は留守番でいいよ」
「駄目だよ!ザムシャーさんだって仲間なんだから」
「……ありがとな」
アギラの言葉に嬉しく思って彼女の頭を撫でる。
嬉しそうに目を細めるアギラ。
「いいなぁ、アギちゃん……?」
ゴモラが何かに気付いたように俺のポケットへ手を伸ばす。
「あ、これ!」
「あぁ、福引で当てた奴だな」
「ここだよ?みんなで行こうって話していたの」
「「え?」」
数日後。
「ザムシャーさんのクジがあってよかったね!」
「はい、皆さんで旅行なんてすばらしいです」
バスの中でミクラスとウィンダムが楽しそうに話す。
どうやら俺が入手したチケットの旅館へGIRLSのメンバーは向かうことになっていた。
チケットは貰ったらしいのだが、人数的にいつものメンバーが行くことができないということで困っていたらしい。
喜べばいいのか、女子だらけの中に男子だけという状況を悲しむべきかわからない。
「ところで、ザンドリアス。静かだが、大丈夫か?」
「お願いです、お願いですから私のことはそっとしておいてください、お願いします」
いつもの砕けた口調ではなく敬語。
余計な発言をすれば自分の命はないかもしれない。そんな恐怖からくる行動だった。
「……わ、わかった」
ガタガタと体を震わせているザンドリアス。
乗り物酔いだろうか?
余談だが、俺の隣にいるのはザンドリアス。
さっきから体が震えていて様子がおかしい。
心配しているのだが窓からみえる景色をみていて、視線を合わせようとしなかった。
「(怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い!)」
ザンドリアスはザムシャーの隣で恐怖していた。
ちらりと気付かれないように後ろを見る。
ギロリ!とこちらをみている複数の視線に気づいた。
「(ひぃ!)」
小さな悲鳴をザンドリアスはあげそうになる。
口で手を抑えた。
「(私のクジ運は最低だ!)」
ザムシャーの隣。
誘惑、かつ魅力的な座席を取り合うために複数の怪獣娘が血眼になって当たりのくじを引こうとしていた。しかし、引き当てたのはザンドリアス。
――わかっているな?
――彼に手を出せば命はないわ。
――大丈夫だと思うけれど、念のためだよ?
――お願いします。
――ね?
自分から何かをするつもりはないのに、どうして、こんなことになっているのだろう。
怯えるザンドリアスの上から服がかけられる。
「え?」
「これから向かうところは少し寒いからな」
「え、でも」
「さっきからブルブル震えているのは寒いからだろう?あったかくしとけ」
「……お兄ちゃん」
「「「「「チッ!」」」」」
ザムシャーに上着をかけてもらったザンドリアスは温かい気持ちになった。
背後の舌打ちに気付かなかったのは幸せか、不幸なのかはわからない。
温泉旅館についた俺達は部屋に荷物を置く。
旅館側に俺からお願いしてもらったことで小さな部屋に一人だ。
女性陣は大きな部屋を使うことになっている。
「ザムシャーも一緒の部屋にすればよかったのに」
「冗談は寝てからにしろ。女子が沢山部屋にいる中で男子一人がどれだけ苦痛かわかるか?」
「全然!」
ゴモラの頬を左右に引っ張る。
「いふぁいよぉ!」
「笑顔でいったお前が悪い」
「もぉ~、傷物にされちゃったよぉ」
「安心しろ。その程度でお前に傷はつかない」
「酷い!」
騒ぐゴモラを無視して俺はお風呂セットを手に取る。
「あれ、お風呂に入るの?」
「夕飯前に入る。そういうものだろ?」
「えぇ~、外の散歩に行こうよ!」
「行ってこい」
「つれなさすぎる!」
ゴモラが騒ぐ横で俺は部屋を出る。
「お前も風呂に入るんだろ?」
「あ、バレてた?」
「堂々とお風呂セットをもっていたらなぁ」
俺と同じようにお風呂セットを持っているゴモラ。
二人でわいわいいいながら浴場にたどり着く。
「それで、それで!ザムシャーはどっちに入るのかな?」
「喧嘩売っているのか?男湯に決まっているだろ」
「ふーん、じゃ、後でね!」
あっさりと引き下がるゴモラ。
そのことに違和感を覚えつつも俺は浴場に入る。
皆は既に入浴しているという。
「やっぱり、温泉が楽しみだったんだろうな」
脱衣場で服を脱いでタオルを肩から下げて浴場へ足を踏み入れる。
ドアを開けてやってくる熱風のようなものを浴びながら周りを見た。
客が少ないこともあってほとんど貸し切りである。
風呂へ入る前にシャワーで頭や体を洗う。
「ふぅ、体の疲れがとれるなぁ」
体を伸ばしながら湯船につかる。
ほどよい温もりが日ごろの疲れをとってくれるような気分だ。
首を左右へ傾けるとバキバキと嫌な音がした。
「マジで疲れているのかもしれないなぁ」
しばらく満喫してから露天風呂へ向かう。
「……おぉ、誰もいない」
露天風呂は当然のことながら誰もいなかった。
「貸し切り気分を満喫かぁ、最高だ」
意外と俺は風呂好きである。
のんびりと浸かりながら天井を見上げることが好きだ。
ぼぉっとそんなことを考えていると塀の向こうが騒がしいことに気付く。
「……」
「放してよぉ、あっちにいきたいのにぃ」
「やめなさい、向こうに彼がいるとも限らないでしょ」
「大丈夫!一緒にやってきたから」
「ゴモたん、そういう話じゃないと思う」
「あのぉ、ザムシャーさん以外に人がいるかもしれませんよ?」
「あ、それもあるかぁ」
「ザムザムぅ~!入っていますかぁ?」
「おい!?ピグモン!」
「あれ?先輩、顔が赤くなっていないですか?」
「なっていない!なっていないからなぁ!」
向こう側は女湯のようだ。
ゴモラはともかく、エレキングやアギラ、ウィンダム、ピグモン、レッドキングの声が聞こえる。
ザンドリアスの声が聞こえないのは静かにしているのだろう。
「呼んだか?」
呼ばれたので正直に答える。
すると、女湯が静かになった。
「……気のせいだったかな?」
まぁいいや、今はこの温泉を満喫しよう。
そう考えた時。
「ザムザムゥ!そっちの塀に扉ないですかぁ?」
「あ?扉?」
ピグモンに言われて探す。
確かに扉らしきものがある。
「あるなぁ、何か書いて」
「あ!読まずにそこのドアを開けて中に入ってください?」
「うん~」
温泉に浸かっていることで少しばかり思考が回らないけれど、ピグモンに言われて俺は扉を開ける。
「開けたぞ?」
「確保!」
扉を開けた瞬間、俺は中に引きずり込まれた。
「どうして、こうなった?」
扉の向こうにはもう一つ露天風呂があった。
それだけなら問題はない。
しかし、俺の周り、温泉の中には女湯にいるはずのピグモンたちがいた。
「ここの温泉、混浴があるんだって!」
正面にいるゴモラがにこにこと告げる。
ちゃんと体にタオルを巻いてくれているが濡れて肌に張り付いていることで全員、そのスタイルが強調されていた。
ゴモラに凹凸はないけれど、綺麗な肌などが目に付く。
「どうしたの?あ、もしかして、私の魅力に」
「駄目ですぅ!ザムザムうぅ!」
横からピグモンが俺に抱き着いてきた。
「おい、抱き着くな」
「えへへへ、ザムザムの体はポカポカです!」
ぴったりと抱き着いてくるピグモン。
こういうスキンシップをとることはあった。しかし、肌と肌が触れ合っていることでいつもと違うドキドキが俺の中にある。
「こっちをみなさい」
「ぶべ!」
無理矢理、首を横に向けられる。
そこにいたのは幼馴染のエレキング。
当然のことながら彼女のスタイルは良い。
何より白い肌が温泉で少し赤くなっていることで。
「(ヤバイ、鼻に何かが集まってきている気分だ)」
「ザムシャー……おい、こっちをみろよ」
言われて後ろへ視線を向ける。
そこにいたのはレッドキング。
当然のことながら彼女は大怪獣ファイター。
鍛え抜かれた肉体がそこにある。
しかし、ただ筋肉があるというわけではない。出るところはでていて、引っ込んでいるところは引っ込んでいる。
日焼けしている肌が余計にその体を健康的に見せていた。
何より、頬を赤らめて、自分の体を抱きしめているために、大きな二つ。
――アカン、限界や。
言語までおかしくなりながら俺は空に赤い二つの噴水を解き放った。
「アギちゃん、行かなくてよかったの?」
ミクラスが女湯の露天風呂で寛いでいるアギラへ尋ねる。
「皆さん、いっちゃいましたけど」
「今はのんびりとウィンちゃんやミクちゃん達と温泉を満喫したい」
この時、アギラは友情を選ぶ。
ちなみにザンドリアスは露天風呂の景色を見ながらボケーとしていた。
「んぁ?」
何かに体が揺れて意識を取り戻す。
「あ、ザムシャーさん。起きた?」
自分を上から覗き込んでくるアギラと目が合う。
「アギラ?あれ……俺」
周りを見ると温泉ではなく大広間だった。
「凄いタフだよねぇ、ザムシャーさん」
「何が?」
「話によると鼻血を吹き出しながらも死ぬ物狂いで男湯へ帰還、体をふいて下半身を着替えた後に倒れたそうです」
「記憶にない……」
「それよりも床が真っ赤でまるで殺〇現場だったね!」
アギラ、ウィンダム、ミクラスという順番に俺の顔を覗き込んでくる。
体を起こした俺にザンドリアスが水の入ったペットボトルを差し出す。
「あぁ、すまない」
「無茶しないでよ!貴重なストッパーなんだから」
ぽつりとザンドリアスが漏らした言葉に苦笑する。
「ところで、他のメンバーは」
「師匠やエレキングさんは卓球」
「ゴモたんとピグモンはお土産をみにいくって、そろそろ戻ってくるんじゃないかな」
ふむふむ。
「ところで」
「「「「?」」」」
「お前達、顔を近づけすぎじゃないか?起き上がれないんだが」
俺に言われて離れる三人。
むしろ、アギラは近づいてきた。
「おい、アギラ」
「こういう時くらい、ザムシャーさんと触れ合っていたい」
「おうふ」
ストレートなセリフに俺は困る。
「ボクはザムシャーさんのこと、大好きだよ」
「前もいったけど、俺は」
「それでも」
いつもの目、けれど、とても強い瞳でアギラは俺を見てくる。
「それでも、ボクはザムシャーさんが好き、だよ?」
「おぉ!アギちゃんが告白!」
「ミクさん!?良い雰囲気なんですから邪魔しちゃ!」
「そもそも、私達の前で告白するというのがどうかと思うんだけれど」
ザンドリアスの指摘に俺とアギラは離れる。
その時。
音を立ててドアが開かれた。
「ちょっぉぉおっと待ったぁ!」
ドアを開けて姿を見せるのがゴモラ。
「私もザムシャーのことは好きだよ!あ、アギちゃんも同じかそれ以上だよ!」
続けてピグモン。
「ザムザム!ピグモンはザムザムのことがだぁいすきです!できれば、えへへへへ」
続けてエレキング。
「ザムシャー、私は諦めていないから」
最後にレッドキング。
「えっと、その、ほら、オレもお前のことが、す、すすすすすすすすすす、好きだぞ!」
「いや、これなんだ?いや、待て、一体なんだ?」
戸惑う俺。
ドアを開けてやってきたと思ったら告白の嵐。
落ち着ける暇もない。
「おぉ、告白の嵐だね」
「アギさん!頑張ってください!」
「うん、二人とも、頑張るよ」
「え、ナニコレ……わけわかんない」
頭を抱えているザンドリアスに激しく同意したい。
こんな告白の嵐の後、おいしい料理を味わうことになった。
俺は【宇宙剣豪ザムシャー】のカイジューソウルを宿している。
【ザムシャー】は宇宙で様々な相手と戦い、強くなっていた。
いつしか、宇宙最強と言われてもおかしくないくらいの強さを求めたがそれでも彼は強者と戦う道を選んだ。
しかし、俺はザムシャーであって、ザムシャーと同じ道を進むわけではない。どうして、男の俺がカイジューソウルを宿したのかいまだにわからない。
だが、もし、何か意味があるとするならば、俺は守ることにこの力を使いたいと思う。
彼女達、怪獣娘を害悪から守る。
そのことに力を使う。
それが今の俺の在り方。
「何か、カッコイイこといって終わらせようとしている?」
「そんなことはない。決して、だから、俺を部屋に戻せぇ!」
「駄目ですぅ!今日はいっぱい、いっぱぁい!ザムザムと過ごすんですぅ!」
「た、たまにはいいだろ!諦めろ!」
「ザムシャーさん、ゲームしょう」
「あぁ、まったく………………幸せなのかねぇ?」
この温泉騒動が五人目にばれて、のちにとんでこないことになるのは別のお話である。
次回、最後の一人が登場予定?