ウルトラ怪獣擬人化計画 男だけど、怪獣娘やっています!? 作:断空我
「ザムザム、暇ですか?」
「ご覧の通り、三人の報告書を確認中……もう少ししたら終わるから待ってくれるか?」
「はーい」
GIRLSの一室。
ピグモンの向かい側の机で作業をしているザムシャーは書類をチェックしていた。
先日の暴走した怪獣娘に関するレポート。
学生である三人が作成したものを修正、手直しして上層部などが確認できるものとして仕上げる最終段階だった。
「ウィンダムとアギラはともかく、ミクラスは誤字脱字が多いなぁ……変換ミスなのか、意図的なのか怪しいところがあるが」
「……ミクミクはピグモンがしっかりと指導します」
「そこは頼む。よし、チェック完了。メールも送信した。それで、話ってなんだ?」
書類を片付けてザムシャーは顔を上げる。
「その前にザムザム、室内ではサングラスを外してください」
「悪い、癖でな」
ピグモンに言われてザムシャーはサングラスを外す。
外したことで鋭い赤と黒の瞳がピグモンの前に晒される。
「まだ、慣れないですか?」
「無理だろうな。きっと、何年過ぎても、俺はこの目を好きになれないと思う」
サングラスを懐へ仕舞いながらザムシャーは小さな笑みを浮かべた。
「ピグモンは綺麗な瞳だと思いますよ」
「……ありがとう」
手で顔を隠しながらザムシャーは呟いた。
その言葉はピグモンに届いていて笑みを浮かべる。
「さぁ、お仕事頑張りましょう~!」
ピグモンの言葉にザムシャーは意識を向ける。
先ほどよりも、ほんの少しだけ作業の手は進んだ。
昼過ぎ、ザムシャーはGIRLSの所有する研究施設へ向かっていた。
GIRLSのスーツではなく黒いスーツのザムシャーはゲートの前で警備員に呼びかける。
しばらくして、ザムシャーは奥の研究施設へ向かう。
「よぉ、我夢」
「ザムシャー!久しぶり!」
ドアの向こうにいたのは白衣を着た青年。
彼の名前は高山我夢。
GIRLSに所属する天才科学者で、ザムシャーの少ない友人である。
彼は19歳という若さでありながら様々な特許を取得している。
そして――。
「俺のソウルライザーの調子はどうだ?」
「無事に修理できたよ。これだ」
ザムシャーのソウルライザーの整備担当でもある。
「あれ、助手は?」
「あぁ、友也は久しぶりに休みを取っているよ。なんでも仲間と会うんだって」
「そっか、アイツとも会いたかったんだがなぁ」
我夢には助手の一条寺友也がいる。
彼に負けず劣らずの天才で、彼は怪獣についての研究をしていた。
ザムシャーは我夢から受け取ったソウルライザーを眺める。
「外部フレームは問題なかったんだけど、内部、基盤とかがショートしていた。何か電波か電撃でも受けた?」
「……両方受けたな」
「成程!一応、基盤を取り換えて特殊コーティングを施したよ」
「いつもすまないな」
「いいや、ザムシャーが頑張っている証拠だよ」
我夢はにこりとほほ笑む。
彼は知っている。海外でザムシャーがどんな任務をしてきたか。
報告書を見たというのもあるが彼の人となりを知っているので予想はできた。
何より、海外の科学者仲間から彼のことを聞かされていたのである。
「大学はどうなんだ?」
「そうだ!聞いてよ!この前話していた粒子加速機が形になったんだ!」
「あぁ、前に話していた……機材が揃わないと嘆いていたんじゃ?」
「そうなんだけど、ジャンク屋でよいパーツが手に入ったは……良いんだけど、最後の段階で部品のパワーが足りなくて」
「楽しそうだな」
「え?」
ザムシャーに言われて我夢はポカンとなる。
「とても楽しそうにしているぞ」
「そうかも、研究している時がとても楽しいかなぁ~」
笑みを浮かべる親友の姿にザムシャーも自然と笑みを浮かべる。
「僕の話もそうだけど、ザムシャーのソウルライザーの調子もみないと、仮想訓練室へ行こうか」
「あぁ」
二人は研究室から少しだけ離れた場所にある仮想訓練室へ足を運ぶ。
仮想訓練室はザムシャーのデータ収集などを目的として作られた施設である。
他にも暴走した怪獣娘の力を安定させるための装置の開発のためにも使われていた。
『それじゃあ、はじめてくれ!』
スピーカーから我夢の言葉が響く。
「ソウルライド!ザムシャー!」
ソウルライザーを起動して体を獣殻が覆う。
刀袋から星斬丸を取り出して、何度か素振りを行う。
「前よりも体に馴染んでいる気がするな」
『仮想敵を出すよ!準備はいいかい?』
「頼む!」
――仮想敵。
それはこの訓練室のみシミュレーションで生み出すことができる特別な敵。
目の前に現れるのは過去に存在していたと言われる怪獣。
ただし、あくまで過去の文献などを基にした存在にすぎない。
星斬丸を構えて駆け出すザムシャー。
目の前の敵の攻撃をいなしながら次々と倒す。
しばらくして仮想敵の姿が消えた。
『終了!体の調子はどう?』
「問題ない……いや、前よりも適応している感覚だな」
星斬丸を鞘へ納めてザムシャーは手をにぎにぎと動かす。
前よりも思うとおりに体が動く。
ソウルライザーを解除して人の姿へ戻る。
「どうだった!?」
「体に問題はない。むしろ前よりも動ける感覚だ」
「データを見る限りカイジューソウルとうまく同調できている。もう大丈夫だ」
「長かったな」
「イレギュラーなことだったから仕方ない……って、ごめん」
「事実だから気にしていない」
謝る我夢にザムシャーは首を振る。
もともと、男であるザムシャーが怪獣娘になれたということで様々な問題があった。
覚醒当初にうまくカイジューソウルと同調できなかったザムシャーは酷く不安定な状態で我夢達に何度か迷惑をかけてしまったことがある。
そのことを思い出した我夢へ気にするなとザムシャーは言う。
「同調できたんだ。後は“元”に戻る方法を探そう」
「……」
励ますような我夢の言葉にザムシャーは答えなかった。
「そうだ!大学の友達と夕飯を食べるんだけど。ザムシャーも一緒に来ない?」
「俺も?」
「うん!きっと仲良くなれると思うんだ!」
「……そうだな、どうせだ。行ってみる」
「ようし!じゃあ、すぐに行こう!」
我夢とザムシャーが歩き出そうとした時、施設内が大きく揺れて警報が鳴り出す。
「警報!?」
「我夢はここにいろ。俺がみてくる」
応答を待たずにザムシャーは爆発の音が聞こえた方向へ走る。
走り出したザムシャーの目の前の隔壁が爆発を起こした。
「っ!」
手で顔を防いだザムシャーの前にはシャドウがいた。
しかし、ザムシャーの知るぶよぶよしたシャドウではない、騎士甲冑のようなものを纏い、赤い瞳のようなものが顔についている黒いシャドウ。
「……シャドウビースト」
シャドウの上位種がそこにいた。
「ソウルライド!ザムシャー!」
ソウルライザーを起動してザムシャーは星斬丸を構える。
騎士型のシャドウは腕を槍のようなものへ変えるとザムシャーへ突貫してきた。
振るわれる槍をザムシャーは星斬丸で受け流す。
受け流すと同時にがら空きになっている胴体へ刃を振るう。
「一閃!」
がら空きになった体へ放った星斬丸の一撃でシャドウビーストの体は斬られる。
「チッ」
ザムシャーはシャドウビーストから距離をとった。
「固いな」
星斬丸は確実に目の前のシャドウビーストの体を切り裂いた。
しかし、表面だけで肝心の内部に至っていない。
「とてつもない固さか」
ブンと星斬丸を振りながら構えなおす。
「ギギギギギ!」
不気味な声を出しながらザムシャーへ迫るシャドウビーストだが、目の前に現れたバリアーの壁に正面から激突した。
「これは」
「ザムシャー……」
後ろから聞こえた声に振り返ると一人の怪獣娘が立っていた。
腰まで届く長い髪、頭部の触覚。
全体的に黒い姿。
「久しぶりだな、ゼットン」
宇宙恐竜 ゼットンのカイジューソウルを宿した少女、ゼットンが表情を変えずに立っていた。
「久しぶり」
「少し手伝ってもらえるか」
「ン」
頷いたゼットンは目の前で火球を生み出してシャドウビーストへ放つ。
シャドウビーストの体は一兆度の火炎によってその体が黒焦げにされてしまう。
「星斬丸!」
叫びと共にザムシャーが高速で鞘から刃を振りぬく。
ゼットンの火球とザムシャーの一撃によってシャドウビーストの本体、そして核を切り裂いた。
体を両断されたシャドウビーストは不気味な笑いをあげながら消滅する。
シャドウビーストが消えたことを確認してザムシャーは星斬丸を鞘へ納めた。
「すまないな。ゼットン、助かった」
フルフルとゼットンは首を横へ降る。
「いつ、戻ってきたの」
「連絡を入れたはずだぞ?」
「文字化け」
「……あぁ、すまないな。調整が終わってから連絡を入れるつもりだったんだがな」
「そう」
「怒っているか?」
「……少し」
「すまん」
謝罪するザムシャーの前でゼットンはテレポートする。
「ザムシャー!」
肩をすくめていたところで我夢がやってきた。
「我夢」
「大丈夫だったかい?」
「あぁ、助っ人もいたしな」
「助っ人?」
「それよりシャドウの襲撃だったが施設は大丈夫だったか」
「隔壁のいくつかが壊されていたけれど、大丈夫だった」
「そうか、この調子だと夕飯は無理そうだな。俺は帰るよ」
事後処理や施設の状況を確認しなければならない。おそらく我夢は動けないだろう。
「あぁ、またの機会に!」
手を振ってザムシャーは我夢と別れる。
ちらりと施設内を見渡してから彼は歩き出した。
今回、ウルトラマンガイアの高山我夢と名前だけですがウルトラマンギンガの一条寺友也が登場しました。
二人とも並行世界の人物なので、ウルトラマンになったり、ジャンナインに搭乗はしていませんが天才的な頭脳は健在です。