ウルトラ怪獣擬人化計画 男だけど、怪獣娘やっています!?   作:断空我

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次回からオリジナル展開になります!


第五話 ザムシャーとエレキング

「酷い目にあった」

 

 シャドウ襲撃の翌日。

 

 アギラがGIRLSの建物へ入ろうとすると中央階段の近くで悪態をついているザムシャーの姿があった。

 

 GIRLSの制服でサングラス姿だ。

 

「ザムシャーさん」

 

「よぉ、アギラ。一人か?」

 

「うん……」

 

 頷いたアギラはザムシャーの傍へやってくる。

 

「ザムシャーさん」

 

「何だ?」

 

 顎を手の上へのせているザムシャーへアギラは尋ねた。

 

「えっと、あれからエレキングさんとは」

 

「何にもない。俺は無事に逃げきったのさ」

 

 どこか遠い目をしながらザムシャーは答える。

 

 ウソである。

 

 アギラは知っていた。

 

 彼がボロボロの状態でGIRLSに戻ってきていることを。

 

「……エレキングさんと何かあったんですか?」

 

 前にエレキングと会ったがあそこまでおそろしい雰囲気ではなかった。よくて近寄りがたい程度。

 

 実際、ミクラスのいう苦手という感覚が正しいと思うのだが、ザムシャーに対してはどこか容赦ないように思える。

 

「別に~、昔から振り回されているだけだ」

 

「昔、から?」

 

「いわゆる幼馴染っていう奴さ。俺とエレキングは」

 

「幼馴染……」

 

 アギラをみて、ザムシャーは顔を近づける。

 

「お前、大丈夫か?」

 

「え?」

 

「いや、なんというか、元気がないというか……そんな感じがして」

 

「そうかな?」

 

 首をかしげるアギラ。

 

 しかし、チクリと何かが刺さった様な痛みがあった。

 

 その痛みが何なのか考えようとしてもモヤがかかってよくわからない。

 

「俺の気のせいだったかな?さて、俺は外にでも」

 

「させないわよ」

 

「ぐぇっ!?」

 

 背後から伸びてきた腕がザムシャーの首元を掴んだ。

 

 変な声を上げて後ろへ仰け反るザムシャー。そのまま、相手は歩き出す。

 

「貴方には調査部の手伝いをしてもらうわ。暇でしょう?」

 

「ぐぅえ!ぐぁ!ぐぉうわ!?」

 

「(首を絞められていて会話しているようにみえない)」

 

 アギラが戦慄している中、やってきたエレキングはザムシャーを捕まえて歩き出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ、怒っているのか?」

 

「口よりも手を動かして」

 

「(怒っているな)」

 

 GIRLS本部にいくつかある事務室。

 

 決して大きくない部屋にパソコンと大型プリンター一台。

 

 リフレッシュ用のお茶とお菓子はあるがそれ以外は何もない。

 

 集中して作業をするための仕事部屋。

 

 そこにザムシャーとエレキングはいる。

 

 彼らは明日、GIRLS上層部で行われる会議の資料作りをしていた。

 

「(資料の内容はシャドウについてか……上層部で話し合うということは事態は段々と深刻化してきているということか)」

 

 資料へ目を通しながらザムシャーは思案する。

 

 シャドウは神出鬼没、人や建物を破壊する謎の生命体。

 

 コンタクトを取ろうとするが今のところ成功例はない。

 

 科学者のホリイがコンタクトをとろうとしたが襲撃にあったことをザムシャーは思い出す。

 

「なぁ、エレキング」

 

「黙って、手を動かして、非合理的な作業に割く時間は一秒でも減らしたいの」

 

 質問しようとしたところでぴしゃりと言われてザムシャーは小さく唸る。

 

「非合理的……誰もやらないような仕事、断ろうと思えば断わることも出来た癖に昔からお前は真面目だよな」

 

 ピクッとエレキングの手が一瞬、止まる。

 

「貴方が言うのかしら?壁役を一手に引き受けている癖に」

 

 鋭い目線がザムシャーを見据える。

 

「何のことだ?」

 

「ゼットンほどでもないけれど、貴方は海外のシャドウ、怪獣娘を狙う犯罪集団と戦っている」

 

「流石は調査部だ」

 

「ふざけないで」

 

 メガネの位置を戻しながらエレキングは鋭い視線をむける。

 

 いつもよりも三割増し鋭い。

 

「いくら貴方が現時点で一人しかいない男の怪獣娘だからといって無茶をしていいわけではないわ」

 

「別に無茶はしていないさ。俺のやれるべきことをやっているだけだ」

 

「いいえ、違うわ。貴方は」

 

「――やめろ」

 

 先ほどよりも低い声でザムシャーがエレキングをみる。

 

 サングラス越しからの鋭い瞳を前にしてもエレキングは話を止めない。

 

「やめないわ。何年過ぎても、貴方が変わらない限り、私は言い続けるわ」

 

 対峙するように見合う二人。

 

「変わらないな。お前は」

 

「変わらないわ。私は何年、何百年経とうと、貴方に対する思いは変えない。絶対に」

 

沈黙が場を支配する。

 

 先に折れたのはザムシャーだった。

 

「平行線だ。この話はこれ以上やっても無駄だ」

 

「私は機会があれば続けるわ」

 

「お前は……」

 

「そういえば、タイムリミットが近づいているそうね」

 

 互いに作業の手を止めることなく会話が続く。

 

 仕返しという様に先制パンチを放ったのはエレキング。

 

 ザムシャーの手が止まる。

 

「何で、知っている?」

 

「お節介な人が教えてくれたのよ……罪深い男ね。貴方のことを好いている者が五人もいるなんてね」

 

 さらなる攻撃。

 

「ふーん、って、おい、ちょっと待て!五人ってなんだ?初耳だぞ!?」

 

「貴方が気付いていないだけよ。鈍感は罪ね」

 

 これ以上、話すと自分がドツボに嵌る。

 

 ザムシャーはそう考えて無言で作業を続けることにした。

 

 毒のある会話を続けながらも作業は二時間も経たずに終了。

 

 二人は荷物をまとめてGIRLSを後にする。

 

「じゃ、俺はこれで」

 

 ザムシャーは入り口で別れて帰ろうとした。

 

「待ちなさい。これからデートよ」

 

 去ろうとした彼の腕を掴んでそのまま歩き出す。

 

 身長の高い(ザムシャーより下だが)彼女に引っ張られてしまう。

 

「お、おい!?」

 

「何かしら?」

 

「俺は疲れているから」

 

 掴まれている腕に温もりと柔らかさを感じるも冷静にザムシャーは離れようとする。

 

「こんな可愛い女の子を放置するのかしら?夜道でR指定の漫画であるようなあんなことやこんなことに巻き込まれることになってしまったら――」

 

「おそろしいことを淡々と述べるな……わかったから!わかったから付き合うよ」

 

「はじめから素直になってほしいわね」

 

「あー、はいはい」

 

 エレキングに引っ張られる形でやってきたのはファミレス。

 

「ここで夕食をとりましょう」

 

「その手にあるチケットは?」

 

「割引券を持っていることを思い出したの」

 

「あ、そう」

 

 にこりとほほ笑むエレキングにザムシャーは苦笑する。

 

「じゃあ、メニューを」

 

「私が決めるわ」

 

 ザムシャーがメニューを取ろうとしたらエレキングが奪って店員を呼ぶ。

 

「おい、俺に選ぶ権利くらいあるだろ?」

 

「そういって格安で少量のものばかり選ぶんでしょ?相手のことを考えて、そんなことはしなくていいのよ」

 

「別に……」

 

 詰まったザムシャー。

 

 図星である。

 

 その間に料理が運ばれてくる。

 

 エレキングの好み、そしてザムシャーの好みのものばかりだった。

 

「ところで明日、おまピトのグッズが発売するのだけれど」

 

 おまピトとはお前にピットイン!というアニメの略称。

 

 男女問わず幅広く好まれているアニメだ。

 

 GIRLSの職員で視聴している者もいる。少し前にウィンダムがアギラとミクラスを連れて映写機を使ってみていた。

 

 かくいうザムシャーもエレキングに丸二日ほど拉致されてみせられたことがある。

 

 嫌いではない。

 

「……手伝いでもしろと?」

 

「そうね、人手が多い方が手に入るものも多いわ。お金の心配はしなくていいわ。出すから」

 

「金に困っていないぞ?」

 

「私のプライドの問題です」

 

「あ、そ」

 

 呆れながらザムシャーはエレキングの話を聞く。

 

 自分が海外にいる間の内容、彼女のオススメアニメなど。

 

「ちなみに今季、貴方が気に入りそうなのはSSSS.というアニメよ。刀を使う男がいるから気に入るかもしれないわね」

 

「お前、俺が刀使っているから言っているわけじゃないよな?」

 

「そんなことないわ」

 

「……怪しい」

 

「酷いわ。幼馴染の言葉を疑うなんて」

 

「ウソ泣きする素振りくらいみせるだろ……真顔で顔を近づけないでくれ」

 

 メガネ越しとはいえ、鋭い瞳にザムシャーは少しびびりそうになる。

 

 ファミレスで食事を終えて外に出た。

 

 薄暗い夜空の下、二人は歩いていく。

 

「送ってくれるわね?」

 

「あぁ、その前に」

 

 ザムシャーは鋭い瞳でエレキングを守るようにしながら暗闇を睨む。

 

「いい加減、出てきたらどうだ?」

 

 その言葉に柱の陰から一人の男が出てくる。

 

 ふらふらとおぼつかない足取りで手にはナイフを持っていた。

 

「へへへへ、お前が悪いんだ。俺の天使にぃ近づくからなぁ!」

 

 口の端にブクブクと涎が垂れている。

 

 明らかによくない薬をやっている感じだった。

 

 ザムシャーが身構えている前で男は奇声を上げてナイフで襲い掛かる。

 

 振るわれるナイフをザムシャーは刀袋で防ぐと同時に弾き飛ばして、そのまま拳で顔を殴った。

 

 殴られた男は口の端から唾液を零しながら地面に倒れる。

 

「弱いな……」

 

 ピクピクと痙攣している男の姿を見ながらザムシャーは端末で110番通報した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ストーカーに狙われているなら狙われていると正直に言えばどうだ?」

 

 男をやってきた警察へ引き渡す。

 

 GIRLSの身分証を見せたことで後日、事情聴取ということになりエレキングをザムシャーは家まで送り届ける。

 

 道中でわかったことだが、エレキングは少し前からストーカーに付け狙われていたらしい。

 

「言ったら貴方はすぐに飛び出していくでしょう?」

 

「当然だ。怪獣娘を守るのが俺の仕事だし」

 

「助けてと言えば迷わずに向かうことは良いことかもしれないけれど、私は嫌いだわ」

 

 エレキングはそういうとザムシャーの手を引く。

 

「おい、家の前まで送っただろ」

 

「終電、もうないわよ?」

 

「なぬ!?」

 

 端末を起動して時間を確認する。

 

「マジ、か!」

 

「今日は私の家に泊っていきなさい」

 

「はぁ、仕方ないか」

 

 

 ため息を零しながらザムシャーは家の中に入る。

 

「お邪魔します」

 

「ただいまは?」

 

「お前の家族になった覚えはない。お邪魔しますで十分だ」

 

「残念だわ」

 

 ため息を零すエレキング。

 

 ザムシャーはある部屋のドアを開けた。

 

 最低限の家具とベッド。

 

「この部屋、まだ残していたんだな」

 

「当然よ。貴方の部屋だもの」

 

 後ろからエレキングがザムシャーの肩へ頭を乗せる。

 

 ザムシャーの鼻をエレキングの髪がくすぐった。

 

「貴方と私の大事な思い出の部屋よ」

 

「……もう終わった話だろ」

 

「私は認めていないわ」

 

「悪いが俺はよりを戻すつもりはない。お前も忘れて新しい――」

 

「先に風呂に入って」

 

 顔にぺしゃりとタオルを叩きつけられる。

 

 少し痛いと感じながらザムシャーは風呂へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(本当に、女心がわからない相手ね)」

 

 エレキングは風呂へあっさりと向かったザムシャーのことを考えてため息を吐く。

 

「(いえ、わかっているから、あんな態度をとるのでしょう)」

 

 昔からあぁなのだ。

 

 自分よりも誰かを優先する。

 

 相手のことはしっかり評価する癖に自分のことに対しては評価が低い。違う、低すぎるのだ。

 

「(あんな環境に居れば当然かしら)」

 

 幼いころから彼を知っているからこそ、彼のことなどわかる。

 

 何より彼の家は色々と問題を抱えていたのだ。あんな環境でザムシャーのような人間が今のように育てられたのは奇跡だ。

 

 

「(とにかく、彼はしばらく日本にいる。ならば、その間に色々と調べましょう)」

 

 ザムシャーが海外で何をしていたのかは知っている。

 

 問題はザムシャーが何を隠しているのかだ。

 

「(彼の友好関係から調べるべきかしら……すべて調べて、彼ともう一度、ヨリを戻す)」

 

 一度、短い期間だがエレキングとザムシャーは恋人の関係にあった。

 

 どちらから告白したというわけではなく誤魔化すための偽装めいたものだったが、エレキングはそのまま外堀を埋めるつもりでいたのだ。

 

 だが、察知したのか、相手が上手だったのかザムシャーの手によってその関係は終わったものとされている。

 

 エレキングは諦めない。

 

 ザムシャー自身、はっきり自覚していないが彼に好意を寄せている者は多すぎる。

 

 エレキングは当然のことながらGIRLSに所属している者のほとんどは彼に好意を寄せているといってもいい。

 

「(私の中で強敵とみているのはピグモン、レッドキングといったところかしら)」

 

 好意を寄せている者の中にゼットンもいるが彼女の“好意”はどういったものなのかよくわからない。

 

「(それにしても)」

 

 アニメなどが趣味の自分がまさかアニメみたいな展開になるなど夢にも思っていなかった。

 

 これもすべて。

 

「おーい、風呂、終わったぞ」

 

 ドアを開けて寝間着姿の彼がやってくる。

 

 彼のために用意していた寝間着を使っているから当然のことながらサイズはぴったり。

 

 肩まで伸びている髪を解いているから後ろからみれば、女の子と間違えてしまうかもしれない。

 

「どうした?」

 

「別に、では、貴方の汁が入ったお風呂を満喫させてもらおうかしら」

 

「怖いことを言うな」

 

「冗談よ」

 

「……そうか」

 

 あの目は疑っている。

 

 エレキングは付き合いが長いから彼が何を考えているのか予想できる。

 

 安心してほしい。

 

 自分はそこまで変態ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多分……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に寝ましょうか」

 

「冗談は寝てからにしなさい」

 

「一緒に、寝るわ!」

 

「ソウルライザーを取り出すな!わかった……わかったから!」

 

 断らないことは正解だ。

 

 もし、拒絶すれば縛ってでも一緒に睡眠をとっただろう。

 

 ザムシャーが気付いているか知らないが。

 

 メガネを外して寝間着姿で互いにベッドの中に入る。

 

 距離をとろうとしていたザムシャーを背後から抱きしめた。

 

 一瞬、体を震わせたが抵抗は無駄だと知っているのか大人しくしている。

 

「(昔よりも彼の背中が大きい)」

 

 それは当然かとエレキングは考える。

 

 あれからかなりの月日が過ぎていた。

 

 成長するのは当然だ。

 

「(アピールしているのに反応がないというのは辛いわね。いっそのこと過ちを犯してやろうかしらと思ってしまう)」

 

 瞳を暗くしながらエレキングは衝動にかられそうになるのを堪える。

 

 おそらく、間違いなく、本気で実行したら彼は抵抗する。そして、嫌われてしまうだろう。

 

 未来がわかっているからこそ、エレキングは実行しない。

 

 アプローチを続けて、いつか、彼から襲ってもらえるようにするのだ。

 

 エレキングは胸を押し付けながらそんなことを考える。

 

 重たくて邪魔だと思っていたがこういう時は便利。

 

 そうエレキングは考えながら眠りについた。

 

 翌朝、寝がえりをうったザムシャーが自分に覆いかぶさっているところを見て、堪能するのは内緒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゴリラン航空206便をご利用いただきありがとうございます。当機はまもなく日本へ到着いたします』

 

 飛行機の機内。

 

 豪華なシートに腰かける女性が目を開ける。

 

「ようやく日本か」

 

「楽しみだね!」

 

「あぁ……何より、日本には奴がいる」

 

「お姉ちゃんたち!ボク、楽しみだよ!」

 

 話している女性二人の後ろから少女が顔を出す。

 

「楽しみだなぁ、お爺ちゃんには聞いているけれど、どれだけ強いのかなぁ、宇宙剣豪って!壊し甲斐があるよ!」

 

 ニコニコと純粋な笑顔で物騒な言葉を吐き出す少女。

 

「壊して、壊して、徹底的に壊して、ボクのものにするんだぁ!あぁ、楽しみだなぁ」

 

 ぽつりと呟きながら少女は思いを馳せる。

 

 これから自分が壊すべき相手のことを。

 

 




エレキングさんの話と次回の話のつなぎ。

ところどころ、ウルトラマンネタを挟んでいます。

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