ウルトラ怪獣擬人化計画 男だけど、怪獣娘やっています!? 作:断空我
「何か言い残すことはあるかしら?」
GIRLS日本本部。
その一室でコンクリートを膝の上に乗せられているザムシャーがいる。
監視役は冷たい瞳のエレキングと絶対零度の瞳のアギラ。
入り口には怯えているウィンダムとミクラス、ザンドリアスの姿がある。
星斬丸は奪われてエレキングが握り締めていた。
「誤解なんです」
冷たい視線にさらされながらザムシャーは口を開く。
「そう、初対面の女性に告白されて、婚約届に署名を求められることが誤解というのならそれはとても面白いことね」
エレキングの冷たい視線にザムシャーは目を合わせない。
「……ザムシャーさん、署名はしたんですか?」
「しておりません」
絶対零度のアギラ。
今にも冷凍光線を吐き出しそうだ。
ソウルライドしているからか二人の怪獣としての姿に周りは怯えている。
「あ、まだやってたんだ」
空気を読まずにチャールズが室内に入ってきた。
「例の超獣ちゃん。目を覚ましたよ?ザムシャーに話がしたいって」
ギロッと二人の視線が向けられながらもチャールズは平然としている。
「行かないの?何か、ザムシャーとしか話をしないとか言って聞かないんだけど?」
「行くしかないだろ……」
ある意味、大物だと残りのメンバーは思った。
「待っていたぞ。愛しい人……後ろの有象無象共はなんだ?」
「貴方が知るべきことではない。こちらも質問に答えてもらうわ」
拘束されているベロクロンの一室。
逃れられないように特殊合金で動きを封じ込まれている。
万一、脱走できないようにレッドキングが監視もしていた。
ベロクロンはザムシャーの姿を見て笑みを浮かべるもすぐにエレキングとジーンに気付いて視線を鋭くさせる。
冷たくエレキングが質問を投げかけた。
「貴方達はどうして彼を狙うの?」
「我々の育ての親からの指示だ」
「ノルバーグのことね。彼は非人道的なことをしていたのよ!」
「あぁ、脳みそを弄って思考能力を奪うという奴か?それがどうした?この世は弱肉強食、操られる奴らは所詮、弱い奴らなだけのこと」
「なっ!」
「じゃあ、貴方も敗者ね。だって負けたもの」
エレキングが挑発するようにベロクロンへ告げる。
「ああ、悔しいことに私は敗者だ。だから、この私のことをぐちょぐちょのぐちゃぐちゃにしていいのだぞ?愛しい人よ」
ベロクロンが熱い瞳をザムシャーへ向ける。
肝心のザムシャーはエレキングの尾によって視界をふさがれていた。
「おい!私と愛しい人の逢瀬を邪魔するな」
「知らないわ。敗者、こちらの質問に答えなさい」
ビリビリとした空気が漂う中、ジーンが問いかける。
「教えて、彼を狙う超獣は何体いるの?」
「私が負けたので後二体……だが、どちらにしろ、勝敗は見えている」
「貴方達の負けよ」
「いいや、違う。違うぞ。有象無象よ」
ベロクロンは不敵に笑う。
その姿にエレキングは不穏なものを感じ取る。
「私達姉妹には最恐の切り札がいる。お前達がどれほど強かろうとアイツにとっては赤子の手を捻るほどに造作もないことだ。そう、お前達は何もできずに敗北する。そういう未来しかないのさ」
「いいや」
ザムシャーが口を開く。
エレキングの尾をどかしながらベロクロンを見据える。
「相手がどれほどの強さを持っていようと、俺がそいつを倒す。怪獣娘達に危害は絶対に加えさせない」
先ほどまでの表情と違う。
どこまでも強く、そして固い覚悟を宿した瞳でザムシャーはベロクロンをみる。
「あぁ、素敵だ」
ベロクロンはうっとりした表情でザムシャーをみる。
「その姿はとても素敵で美しい。あぁ、触れ合いたいものだ。だが、愛しい人よ。お前でも妹には勝てまい。妹が完膚なきまでお前を破壊するだろう。だが、悲しむことはない。壊れた後はこの私が愛でてやろう。そうして――」
「話は終わりよ」
エレキングはザムシャーの首根っこを掴んで外へ出る。
後ろでベロクロンが何かを言っていたが彼女は振り返らずにドアを閉めた。
「超獣は二人……私が遭遇した相手以外にもう一人いることがわかった」
「エレキング」
「却下」
「まだ、何もいっていないぞ!」
「話は聞かない。彼を会議室へ……貴方もついてきて」
「え、いいのかよ?」
「監視カメラがあるわ」
レッドキングも来るように告げる。
星斬丸を持ったまま、エレキングは去っていく。
ジーンはザムシャーを連れて会議室へ向かう。
残されたベロクロン。
監視カメラによって彼女の動きは見張られている。
「時間か」
ベロクロンの目の前の空間が音を立てて割れた。
「おひさ~、大丈夫だったかしら?」
割れた赤い空間の中から姿を見せるのはバキシム。
愛用している日傘を折りたたんでベロクロンを拘束している手錠を壊す。
「すまんな」
「いいの、いいの、三人しかいない家族なんだから」
ニコリと微笑むバキシム。
「そうだな、必ずプロフェッサーの目的を果たさないとな」
「その割には、標的にデレデレしていたようだけど?」
「し、仕方ないだろう。惚れた弱みだ」
「軽いわね~、あの子に悪影響を与えないか心配だわ」
「問題ない。目的を果たして後はおいしく」
「欲望が丸見えよ」
涎を垂らし始めたベロクロンをバキシムが注意する。
「時間もないからさっさと行くわよ」
「まぁ、待て……提案がある」
ひそひそと二人は話し合う。
「仕方ないわねぇ、宛はあるの?」
「ない!」
「目つぶししてやろうかしら」
ブルブルと体を震わせるバキシム。
「だが――」
続けられたベロクロンの言葉にバキシムは呆れながらもその計画に賛同した。
「エレキング!」
会議室でザムシャーがエレキングを追いかける。
「貴方と話すことは何もないわ」
「俺はあるといっているんだ!」
話を聞こうとしないエレキングの肩を掴んで振り向かせようとした。
しかし、パシリと弾かれた。
「私はない。貴方は大人しくしていなさい」
「けれど!」
尚も話しかけようとするザムシャーをジーンが止める。
「貴方のやろうとしていることはわかる。自身を囮にすることで残りの超獣を捕まえようというんでしょう?でも、貴方も仲間なの。そんな無茶をみんなが認められるわけはないわ」
「だが、このまま何もせずにいられない……だったら」
「チャールズがノルバーグのアジトにあったデータを解析しているわ。それがわかれば超獣の対策だって立て」
「た、大変です!」
「アギちゃん!アギちゃんがぁああああああああ!」
ドアを開けてやってきたのは慌てた様子のウィンダムとミクラス。
ウィンダムの手には黒い端末が握られていた。
『あー、マイクテスマイクテス、聞こえているか?愛しい人。私はお前に負けた。お前に戦いを挑む権利は失われている。そのため、私の妹たちがお前の相手をしよう。ただし、相手をするといって愛しい人以外もくる可能性もある。そこで申し訳ないが人質を用意させてもらった。愛しい人以外が来れば、悲しいことだが、この人質は……最後まで言わせないでくれよ?愛しい人ならわかってくれると思っている。指定する場所へ愛しい人だけが来るように』
場所が表示されて画面がブラックアウトする。
「アギアギが攫われるなんて」
「すぐに助けに行かないと!」
「だが、オレ達がいけばアギラの命はない、か………こうなるとザムシャーに動いてもらうしかないみたいだな、エレキング」
レッドキングがエレキングをみる。
エレキングは何も言わずに立ち上がる。
「エレキングさん……」
「俺が行く」
追いかけようとしたウィンダムとミクラスを制してザムシャーが外へ出た。
すぐにエレキングの姿を見つける。
「おい、エレキング!」
追いかけたザムシャーはエレキングの肩を掴んで振り向かせた。
ザムシャーは息をのむ。
振り返った先のエレキングは泣いていた。
泣いていたのだ。
「お前、泣いて、いるのか」
「バカ!」
叫ぶと同時にエレキングが平手打ちする。
殴られたザムシャーは少し後ろへ下がった。
「エレキング、刀を渡してくれ」
「やっぱり、貴方はバカだわ」
「バカだ、なんだといわれても俺は自分の生き方を変えない。何よりアギラが攫われたんだ。このままにしておけない。俺のやったことに他の奴らを巻き込んでしまった。そのケリをつけないといけない」
だから、とザムシャーは手を伸ばす。
「刀を渡してくれ。俺のやり残したことにケリをつけさせてくれ」
「…………デート」
「え?」
「今度、私とデートをすること、それが条件よ」
「わかったよ、お姫様」
肩をすくめながらザムシャーは頷いた。
エレキングは星斬丸を差し出す。
受け取ったザムシャーは懐からソウルライザーを取り出した。
「アギラは必ず助ける。だから、任せろ」
――ソウルライド、ザムシャー。
「先に暴れているからな」
ソウルライドしたザムシャーはGIRLSのビルから飛び出した。
ザムシャーが飛び出した窓からエレキングは彼の後姿を見つめる。
「あちゃー、いっちゃったかぁ」
やってきたのはチャールズ。
彼の手にはパソコンが載っている。
「チャールズ」
「ノルバーグのデータの解析が終わったんだ。思った通り、超獣のデータがあった。いやぁ、超獣というのは厄介だね。怪獣にない技術が加えられていて、普通の怪獣ならすぐに倒せちゃうよ。何よりこのデータにある怪獣娘、とぉってもヤバイね、っと!?」
チャールズから端末を奪い取ってエレキングは内容をみる。
「これは……」
驚きで彼女は目を見開く。
「誰だ」
目的地の手前までやってきたザムシャーは動きを止める。
空間が割れて、そこからバキシムが姿を現す。
「あらあら、気付かれるとは驚きです」
「超獣だな」
「はい、バキシムと申します」
日傘を折りたたんでぺこりと会釈するバキシム。
「悪いが先を急いでいる。邪魔をするなら」
「するなら?」
「斬る」
「うふふふ、この私を舐めないでくださいね?」
微笑みながらバキシムが身構えた。