神の後悔、聖女再生   作:木桜 春雨

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自由気ままにして良いと言われた聖女の異国漫遊の旅
のほほん、スローに生きていきます。


始まり

 神は後悔した、世界をよくする為にと思ってしたことが、裏目に出たから

だ、困っている人を、貧しい国を、助ける為に手を差し出した事、その時は何

も知らなかったのだ、神なのに。

 結果として戦が、貧富の差が、人が死んだ、これは全て自分のせいだと神は

自身を責めたが、神は死ぬことがない、いや、できない。

 悩んだ神は女神、自分の化身となる存在を自分とは違う別の国から呼び寄せ

た、自身の代行をさせる為にだ。

 困った時には助言をして、手を貸したが、それでも全てがうまくいくとは限

らない、聖女といえど間違いを犯す、そして違う世界から呼び寄せたせいなの

か、聖女の寿命は長くはない。

 長い時を経て神は考えた、結局のところ、間違いはどんな生き物にでもある

と、神である自分でさえも、間違いを犯す。

 その為に国が滅びるのも、人が死ぬのも仕方のないことなのだと、そう考え

ると少し気が楽になった。

 

 長く代行者を立てていた為、自分が人を導き、見守ることはしたくなかっ

た、その為に異界から代弁者、いや代行人を召喚していたが、神は考えた。

 寿命のない者、すなわち、亡くなった者を代行者にすればいいのではないか

と考えた。

 非常に良い案に思えたが、男にするか、女にするか、色々と思案している最

中神は声をかけられた、他の上鏡と省する者達にだ。

 そして結論が出た。

 

「で、あたしが選ばれた訳ですか」

ふーんと頷きながら水鏡に写った世界を見下ろした彼女は溜息をついた。

「先代の女神は早死にした、私のせいだ」

神だと名乗る存在の言葉を女は、時折、頷きそうですかと、半分他人事の様に

聞いていた、正直、疲れるのは内容のせいだ。

 後悔と懺悔ばかりなのだ。

 自分の知っている世界では神という存在は決して万能ではない、本や映画の

中でモデルになっているは傍若無人で我が儘で間違いを犯しても平気だ。

 はっきりいって善人ではないのだ。

「私に何を期待しているんです」

少し考えた後、神は首を振り、何もと答えた。

「もっと我が儘になってもいいかと思ったのだ、今まで代行人達、聖女に私は

難儀な事ばかりを押しつけていた様な気がする、だから」

「疲れましたか」

言われて神は驚いた、そんな言葉を聞くとは思わなかったのだ。

「サイラン国が少し前に召喚の儀式を行っている、扉が開かれたので送り出す

が、あの国に行けば、あなたは教会に保護される」

保護という言葉に女は目を閉じた、異世界召喚、教会、国、ここに来て色々な

ことを聞いて、教えて貰った。

 保護という言葉の意味もだ、遠慮したいですねというと神は頷いた。

「サイラン国は今まで聖女を二人保護した」

「聖女達は幸せでしたか」

「不満はないと言っていたが、本当のところはわからない、だから、サイラン

国に近い森に、あなたを送り出す、そこから先は」

 好きにさせてもらいます、胸の中で呟きながら女は笑いかけた、しばらく前

から神の姿が時折透けて見えるような気がしていたが、口にはしなかった。

 

 

 潰れるな、サイランは、男は楽しそうに笑った、聖女召喚の儀式を行った、

あの国、王は今頃、どんな顔をしているだろうか、見物に行くべきか、そして

忠告してやるべきだろうか、この国は、もう、終わりだと。

 聖女のお陰で国は発展した、飢饉や災害に見舞われたが、その何を逃れたの

は聖女のお陰だと言われている。

 その功績のせいか、サイラン国は聖女を教会、聖堂に保護という名目で閉じ

込めた、最も、あの国はそんな事は認めない。

 聖女は異界からやってきたので危ない目に遭ってはいけない、大切に守って

いるのだと言ったが、他国の者は信じてはいない。

 儀式が行われたのは一ヶ月ほど前、だが、あの国に変わったことはない。

 だが、その代わりに。

 

「ルナンの森で何があった」

「サイラン国の第二王子が行方不明になったと」

 あの森には王直属の騎士でさえ手こずる妖魔や怪物がいる、そんな森に王子

が数人の友を連れて入るなど無謀にもほどがある、いや、王子は、まだ成人も

していなかったはずではないか、すると。

「跡継ぎには向かないと言われていたな、では、森に入ったというのは」

確か数年前に会ったときは十四の少年ではなかったかと思いながら、男は死ん

だのかと側近に尋ねた。

「いいえ、王子は無事だったとか、聖女に会ったのではと噂が流れています」

「噂だと、それはどういう、いや、確かめに行こうか」

「直接ですか」

「国を継ぐ前だ、いいだろう」

そうですねと側近は頷いた、もし、あの国で何か事が起こるとしたら、自分の

主、目の前の男性が、一度、見ておくのもいいのかもしれないと考えた。

 それに自分も、あの国、サイラン国の事は好意的には見れないのだ。

 

「ライザン、今、いいかな」

 自分に声をかけ、近づいてきた少年の姿を見ると、ほっとすると同時に周り

を見た、周りには誰もいない。

「あの話、考えてくれたかな」

「そのことですが」

 騎士の表情が曇った、本気だったのかと今更の様に数日前の少年の言葉を思

い出した。

 自分は国を出る、このまま、第二王子という地位のまま死ぬまで国に居るつ

もりはないと聞いたときは驚いた、大人しくて気の弱い少年だと思っていたの

だから、旅、自分に同行して欲しいと言われたときには驚いた。

「僕は世間知らずだし、腕っ節だって強くはない、でも君が一緒だと心強い、

なんたって国一番の剣士だからね」

「王子、自分より強い騎士は他にもいます、それに」

「悪魔のウルフハウンドに剣を向ける騎士なんて君ぐらいだよ」

「それは、あなた様を守る為に」

「お願いだ、勿論、給金だって」

 騎士は苦笑した、自分は、もうすぐ騎士をやめる、どこかの田舎で行き遅れ

の女でもいれば嫁にしてのんびりと畑でも耕して暮らすつもりだった。

 この国には居たくなかったからだ。

 

 【この国を守るから約束を聞いてくれる】

 

 聖女の約束とは何だったのか、今更の様に後悔しかない。

 

 

 

「突然の訪問を快く迎えて下さるとは、流石です。サイラスの王よ」

 感謝の言葉がどことなく、皮肉めいたものに聞こえるのは決して気のせいで

はないはずだ。

 青年の容姿、微笑み、だが、その見かけに騙されてはいけない、自分の息子

など簡単に喰われてしまうだろうと王は思った。

「わざわざ、この様なところまで何用かな」

「国をあげて、聖女召喚の儀式を行ったと聞きまして」

「噂をお聞きになったか」

それで一目会いたいと思ったのですよ、その言葉に王は何か言いかけて言葉を

飲み込んだ。

 失敗したなどといえるわけがない、ところが相手はにっこりと笑った。

「第二王子はお会いになったのでしょう」

 

 その言葉に広間にいた貴族達だけでなく、王の臣下達の顔色が変わったのは

いうまでもない。

 

 

 

  

 

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