第二王子が聖女に会った、この言葉に静まりかえった広間、そして自分が注
目されていることに王子は内心、おかしくて笑いを堪えるのに必死だった。
「ご存じだったのでは、それに、この国は注目されている、神の怒り、断罪さ
れるのではないかと噂する者もいるくらいです」
「神の怒りが我が国にだと、馬鹿な事を」
「そうだ、我が国は聖女を」
「一体、何の根拠があって」
口々に騒ぎ立てる貴族や王の側近、臣下の様子に答えず、王座に視線を向け
た王子は失礼と頭を下げた。
「我が国にも魔道士や人の言葉を解する獣がいます、特に獣は正直です、森の
異変をいち早く感じ、教えてくれました、サイラン国は今のままでは、と」
最後まで口にしなかったのはわかるはずだと思ったからだ、王の顔色が良く
ないことが答えだ、だが、側にいた青年が叫ぶように無礼なと声を上げた。
「我が国を愚弄するのか、あなたの噂は聞いているが、あまりにも」
「心配しているのですよ、この国が亡くなれば、しわ寄せは近隣の国々を巻き
込むことになるかもしれないのですから」
「確かに、その通りだ、我が国はやりすぎた」
「認められるか、王よ」
苦渋の表情、その時まで黙っていた王が口を開くと、王子は笑った。
喧嘩をしにきたわけでも、この事態を楽しんでいる訳でもないのですと王子
は口元に笑いを浮かべた、そして自分の後ろに控えている男に声をかけた。
「私の信頼する騎士、クラウディスです、彼を第二王子の護衛にと思って今日
は参上したのです」
「なんだと」
「第二王子は城を出て、諸国を巡るたびに出るとか、その為の護衛に」
ふふふと含みのある笑いを漏らし、世界は動きだしのです、聖女の召喚によっ
てと言葉を続けた相手に王座の上に座っていた男は目を見開いた。
「ジャイル、側におるか」
王の言葉に声を上げたのは小柄な少年だった。
「旅に出るか」
元気よく答えた少年の顔を王は見た、一人では心許ない、我が国からも騎士を
一人使わすと言葉を続けるとライザンに頼んでいますと少年は言葉を続けた、
数日前に自分の言葉に騎士はいい返事をくれなかった、だが。
「頼むぞ、ライザン、守ってくれ」
王の言葉に騎士は深々と頭を下げた。
「父上、どういうことです」
第一王子のデュランは自分だけが、のけ者にされたような疎外感を感じた、
いや、無理もないだろう、だが、それはこの広間に集まっている貴族や家臣達
も同じたった。
「三年後には戻ってきます」
その言葉に王は首を振った、戻る必要はないと。
「サイラン国の第二王子の護衛ですか」
クラディウスは自分主である若い王子から話を聞かされたとき驚いた。
「獣たちが教えてくれた、聖女は、この世界を見て回るらしい、だが、一人で
はない、サイラン国の第二王子がと共にだ」
話を聞いても、正直さっぱりわからない、どういうことなのか、だか、理由
を聞きたくとも王子は答えないだろう。
「実のところ、僕自身、よくわかっていないんだ、昨夜、知らせてくれた人が
いたんだよ」
そういって王子は夢を見たんだよと笑った。
サイラン国の国境の側では一人の女が地面に座りこみ、自炊していた。
側には革袋が二つ、中には食料と調理器具と路銀が少々入っている。
ここにいれば少年がやってくる、それまで自分は待っていればいい。
この世界を自分の目で確かめる為の旅が始まるのだ、そのお膳立ては神がや
ってくれた。
他国の者達への通達、この旅に関して何故、サイラン国の第二王子が選ばれ
たのか、その理由を神は詳しくは話さなかった。
ただ、先代聖女達の意向だと言われて、はあっと頷いただけにした。
あまり、深く聞かない方がいいと思ったのだ、というのも神は聞いてくれる
なと言わんばかりの表情を見せたからだ。
「私の事はミヤと呼んで下さい」
第二王子、ジャイルズは聖女の姿を見て頷いた、私とあなたは姉と弟という
ことで、そしてこの二人は。
女は二人の騎士を見て難しい顔をした、お供の騎士達、二人は体もでかく、
筋肉も凄い、騎士と言われれば、そうですかと頷くしかない。
この旅は正体を隠して行くのがいいと神に言われいたのだ。
魔道士などに感づかれては面倒になると言われては頷くしかない。
そして二人の騎士はというと顔見知りだった、といっても親しい間柄とかと
いうものではない。
「どうかしたのか」
クラウディスは声をかけられて内心慌てた、自分が時折、盗み見していたこ
とを気づかれたかと思ったのだ。
「いや、この旅について考えていた、主君らは子細は聞かされていないので」
すると、それは自分もだとサイランは頷いた。
「ただ、用心するようにと言われているので、もしかして邪魔する輩がいるか
もしれない」
その言葉にライザンは、ああと頷いた。
クラウディスは自身に言い聞かせた、落ち着けと。
国境に行けと言われて、ここまで来たとき、自分たち三人を待っていた女の
姿を見て驚いた。
守ると、そう誓った、あの言葉を思い出す。
国一番の騎士と言われたが、そんな言葉は意味はない。
世界中で誰よりも愚かで弱い人間、男になってしまったのだ。
そう、あのときから。