神の後悔、聖女再生   作:木桜 春雨

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壁が崩れること

「聖女召還、一人で決断したのは許せんな」

 責められているわけではないとわかっている、だから、返事に困ってしまっ

たのは無理もないだろう。

 「そこで我らは、ある結論を出した」

 一人の神が口を日にいた、サイラン国には人間自身で結果を出してもらう、

その為に壁を取り払う事にしたと、その言葉は神は驚いた。

 神々たちの出した結論、壁を取り払うという言葉に聖女を召還した神が困惑

したのも無理はない。

 考えなかったわけではない、だが、それは自分一人だけでは無理なことだ

し、他の神達のことを考えると口には出せなかったからだ。

 壁は取り払う、それは世界が一つになるということだ、そして人は自分たち

以外にも世界には人以外の生き物、人種がいることを知るだろう。

 「壁が崩れる事により何が起こるかわからない、だから我々は守護天使を送

り出すことにした、聖女の元に」

 自分一人が反対したところでどうなる訳でもない、神は頷くと手紙を出そう

と呟いた。

 

 

 「思い切ったことをするわね」

 宿屋の一室、机の上に置かれた一通の手紙を最初に見つけたのはジョンだっ

た。

 差出人の名前も宛名もない、真っ白な封筒だ、不思議そうな顔をしている

と、続いて部屋に入ってきたミヤがそれに気づき、読んでみてと声をかけた。

 だが、中を確認しようとすると封筒が中に浮いた、此には部屋の中にいた全

員、二人の騎士も驚いた。

 「壁を崩すことが決まった」

 人の姿、幻のような透ける影、男の声に部屋の中がしんとなった。 

 「ガーディアンを向かわせた、だが、今ならあなたをこちらに戻せる、どう

する」

 「旅が始まったばかりだというのに」

 「人々は多少、混乱するかもしれない、人間は自分たちだけではないと知れ

ば混乱が起きるだろう」

 

 地面が揺れていることに人々は驚いた、それだけではない、湖が、海岸沿い

では海の水がまるで竜巻のよう強風と共に空に舞い、地面を水浸しにした。

 海の生き物が地面に打ち上げられたが、誰も近寄ろうする人はいなかった、

何故なら、それは自分たちが知っている、普段、口にしている魚ではなかった

からだ。

 最初は何なのか、誰も分からず遠巻きに見ているだけだった。

 だが、それは立ち上がった。 

 全身がきらきらと光る鱗のようなものに包まれた、二本の足で歩き出したの

だ、遠くから長い髪もあり人のように見えた。

 

 「海の民だ、伝説と思われていたが、本当にいたのか」

 サイラン国の貴族達は驚いた、言葉は通じるのか、一体何故、海から現れた

のか、地震や湖、海が荒れたのは彼らのせいなのか。

 答えを知るために騎士達を連れて数人の学者、賢者達が城を出た、用心の為

に魔法使いも連れてだ。

 

 

 壁が崩れたという言葉に彼女は王子と声をかけた。

 サイランは壁に近い湖や海に近い、混乱が起きているかもしれないと言われ

て王子は驚いた。

 「父上が心配です、戻りましょう」

 彼女は頷いた。

 「絶対に」

 真剣な顔で言われて騎士と少年は頷いた。

 「約束して」

 

 「突然だけど予定を変更して国に帰る事になりました」

 宿屋の女主人に女が説明をし、金を渡し、どこでもいい馬車を借りることが

できないかと尋ねた。

 「馬車ですか」

 女主人は考えた、この客達は金払いもいい、それに急いでいるようだ。

 

 「もし、よろしければ」

 そのとき、会話に割り込んできたのは、ほんの少し前、この宿二を尋ねてき

た貴族の男だった。

 

 

 


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