さて。
ザフィーラさんをデートにお誘いする、と決めたはいいものの。よくよく考えれば、今は平日のお昼時。暇を持て余して茶をしばいているようなシスターシャッハはともかく、ザフィーラさんはお仕事中かもしれません。急に電話をかけても、出れない可能性が高いでしょう。
けれど大丈夫。こういう時は、最近ミッドチルダで開発され、一気に普及するようになったコミュニケーションアプリ『Mine』……通称『ミイン』が役に立ちます。
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ふふ……恋人との何気ないやりとり。
なんだかもう、画面を見ているだけでニヤニヤしてきちゃいます。そこはかとない甘酸っぱさを感じます。ただのメッセージのやりとりでこんなに胸があったかくなるなんて……ああ、これが恋人というものなのですね。
どれどれ、もう少しからかってあげましょう。
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くっ……実に素っ気ないクールな態度ですね。
文面を見ているだけでも、ザフィーラさんの生真面目さが伝わってくるようですよ……はぁ、もう無理。めっちゃ好き。
とはいえ、用件をはぐらかすのはザフィーラさんに失礼ですね。本当は、
『ザフィーラさん』
『どうした?』
『ザフィーラさん』
『だからどうした?』
『ふふっ……呼んでみただけです』
『そうか……お前はかわいいな』
みたいな、超甘酸っぱい感じのダラダラしたやりとりを……キャー!もう想像しただけで半端なく胸キュンですね凄まじくキュンキュンですね一体どこまで行っちゃうんですかわたしたちは!
あ、やば鼻血出そう。ザフィーラさんへの愛が噴出しそうです。ティッシュどこでしたっけ?ティッシュ!
ポケットティッシュを鼻に詰め詰めしていると、見習いの子がぎょっとした顔で駆け寄ってきました。
「シ、シスターフィア!? どうされたんですか? なぜ、鼻にティッシュを詰めて……? もしかして体調が優れないのですか?」
「問題ありませんすこぶる快調です」
「え?」
「むしろ興奮で全身に活力が漲っています」
「はぁ……?」
「とにかく、わたしは大丈夫ですので。業務に戻ってください」
「は、はい」
キリっとしたデキる女スマイルでそう言うと、見習いの女の子はこっちを二度見しながら去っていきました。
客観的に考えてみれば、鼻にティッシュ突っ込んでニヤニヤしながら通信端末見てる女子とか、完全に女を捨てた超ヤバいやつ……というか端末でエロ動画見て興奮してる変態みたいですが、今はそれどころではありません。
いざ、お誘いするとなると緊張しますが……ためらっていても始まりません!
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キャ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
やりましたっ! やりましたよわたし!
人生初デートの約束をこんなにもスムーズに取り付けてしまいました……ふふっ、敗北が知りたい。
いやしかし、浮かれてばかりもいられません。わたしはまだ、デートの約束を取り付けただけ。スタートラインに立ったに過ぎません。重要なのは、ザフィーラさんとどんなデートをするか。どのような時間を過ごすか、です。
やりたいことはありますか?
行きたい場所はありますか?
お休みの予定はいつ分かりますか?
要点をきっちりまとめて三行。ザフィーラさんに送ってみました。
デキる女としてそつなく予定を詰めることができるわたしってば有能~と。ルンルンしていたのですが。
「あれ……?」
返事がきません。
おかしいですね……さっきまでは数分以内に返信がきていたのに。
お仕事に戻ったのかとも思いましたが、きちんと『既読』はついています。
「……まさか」
これは、俗に言う『既読スルー』というやつなのではっ!?
「しまったぁああああああああああああ!」
これは……これは、もしや!
ザフィーラさんに……ザフィーラさんに、ウザがられてしまったのでは!?
「し、シスターフィア!? どうしたのですか急に叫んで!?」
「あ、大丈夫です。ちょっと取り返しのつかないミスしただけなので」
「取り返しのつかない!? 本当に大丈夫ですか!?」
「大丈夫です無問題です。今から挽回します絶対にできます。そうでしょう?」
「え? あ、はい……はい?」
ふぅ……落ち着きなさい、フィア。クールになるのです、フィアメッタ・マジェスタ。通りすがりの見習いちゃんも「あなたならできます」と肯定してくれました。よし、元気出てきた。
まずそもそも、ザフィーラさんは既読スルーしているわけではなく、単純に何かしらの用事で手が離せなくなっただけかもしれません。急に戦闘が始まったりとか、急にガジェットドローンが飛び出してきたりとか、そういう何かしらのイベントがあった可能性は大いにあります。
しかしながら、わたしは空戦魔導師。大空を舞い、命をかけて戦う職種に就いている以上、常に予想される最悪の事態を前提に行動しなくてはなりません。
この場合の最悪の事態とは、ザフィーラさんにちょっと……本当にほんのちょっとだけウザがられてしまったかもしれない可能性を指します。
「うぅ……」
一体、どこでミスをしてしまったのでしょう?
最初にからかったのがまずかったのしょうか?
デート!デート!と食い気味にいったのがまずかったのでしょうか?
落ち着きのない、はしたない女性だと思われてしまったのでしょうか?
「あれ? シスターフィア? どうされたのですか、そんなところにうずくまって」
「ふふ……大丈夫です。ちょっと死にたくなっただけなので」
「死にたくなった!?」
この世のを終わりを迎える人ってこんな気分なのかなぁ……と。わたしは死んだ魚のような目で画面を見つめました。
どうしましょう、これ。もう一度メッセージ送るべきでしょうか?
でも、ここでまたメッセージを送って、嫌われてしまったら? 既読スルーされてしまったら?
いや……きっと大丈夫なはず。
大きく深呼吸をして、必死に文面をこねくり回しながら、わたしは文字を打ち込みました。
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あーっ! 返信きた! 長い!
いやほんとにめっちゃ長い! 長文!
「ザフィーラさん……一生懸命文面考えながらこれを打ってくれていたんですね……」
なんて誠実な方なんでしょう……最高です。
「シスターフィア!? どうしたんですか!? 大丈夫ですか!?」
「え? 何がですか? わたし、超元気ですよ」
「だって、泣いてらっしゃるじゃないですか! 何かあったのですか!?」
「ああ……大丈夫です。これは悲しみの涙ではありません。喜びの涙です。わたしは今、この世界の美しさと素晴らしさを噛み締めているのです」
「端末の画面見ながら!?」
世界は見る人によってその姿を変える、というのは本当ですね。
わたしの目には今、肩を怒らせながらこちらに向けて猛ダッシュしてくるシスターシャッハでさえ、かわいらしいキューピッドの天使に見えます。
「フィアメッタぁあ!」
とはいえ、あんなものに捕まっている暇はありません。わたしはザフィーラさんとの素晴らしいデートプランを練らなければならないのです。
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俺も!
楽しみに!
している!
勝ちましたねこれは。お風呂入りたくなるくらい勝ちましたね。パーフェクトですよ。つまり最高ってことです。
わたしは迫りくるシスターシャッハから逃れるべく猛ダッシュしながら、デートプランを頭の中でネリネリし始めました。
こういうデートの時、普通は男性がリードするものだとよく言いますが、わたしは逆でも全然構いません。ザフィーラさんは守護獣という立場もありますし、色々と苦労されているご様子。きっと休日もヴィヴィオちゃんにリード(物理)されてお散歩しているくらいで、ろくにお休みを楽しんでいないのでしょう。ならばわたしが責任を持って、全身全霊を賭して、ザフィーラさんが楽しめるデートプランをクリエイトしなければなりません。
これがわたしの全身全霊!と。胸を張れるくらいのデートプランを!
脳味噌をフル回転させながら、空間をえぐり込むようなシスターシャッハの鋭いパンチを避けます。
まるでゴリラですね。
ゴリラ……?
ゴリラ、か……
あ!
「シスターシャッハ! 動物園とかどうでしょう!?」
「何の話しているんですかあなたは!?」
◇◆◇◆
「我が主よ」
「ん~? どないしたん? ザフィーラ」
「デートにはどんな服を着ていけば良いのだろうか?」
「デッ……!?」
超個人的な三人娘のLi……Mineの使い方予想
なのは
業務連絡などで賢く利用している。スタンプを色々持っている。返信はそこそこ早いが、個人の会話では終わりにスタンプを押すことで、さっさと会話を終えている。あまりダラダラと会話はしない。文面はかわいいがわりと淡白
フェイト
めちゃくちゃ返信が早い。送ったメッセが読まれないとそわそわする。既読がついて返信がこないともっとそわそわする。短文を連射しがち。エリオやキャロにはオカンよろしく「おはよう」「今、休憩かな?」「今日はどうだった?」「おやすみ」と、メッセを連打する。とはいえ、こちらに関してはスタンプ一つ返ってくるだけで喜ぶため、そこまでエリオとキャロもニコニコしながら返している。フェイトさん家は仲良し
はやて
たぬき。返信があっても、あえて既読を付けずに時間を置いたり、時には機内モードで電波をシャットダウンし既読を付けずに文面をチェックする高等テクニックを利用しながら、返信のタイミングを調整して心理コントロールを行う。やはり腹黒タヌキ。しかし、八神家グループラインではめちゃくちゃはしゃぐ。グループでは真っ先にアルバムを作って写真あげるタイプ。かわいい