指揮官が代理人になりまして   作:スツーカ

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友人と話してて思い付いたネタです。思い立ったら更新するので基本続かないと思ってください。鉄血人形の中で代理人が一番好き。二番目はデストロイヤー


第1話

「ここは私が食い止めるから早く撤退して!」

 

「ダメだ! お前を置いて逃げるなんて出来ない!」

 

「早く! 私のことなんかどうでも……きゃっ!」

 

 軽い衝撃と共に地面に叩きつけられ、直後に私の体に重たい何かがのしかかった。視界に写るのは赤いベレー帽と厚手のコート、そして溢れ出るドス黒く生暖かい液体……

 

「し、指揮……かん……?」

 

 私の声に返事は返ってこない。あの声の代わりに生暖かい人間の血がドクドクと流れ出て私の服を、半身である銃を、体を赤く染め上げる。指揮官の体を揺すっても、声を上げても、返ってくるのは赤い血潮と徐々に弱くなる心臓の鼓動。認めない。認めたくない。どうして私なんかを庇ったのか。どうして、どうしてと繰り返し、繰り返し問い続け電脳がエラーを吐き出しまくる。視界と体がガタガタと震えて、腕が吹き飛び銃弾で穴だらけになった指揮官を抱きしめる。

 

「45! 退路確保できたわ! 今すぐ撤退するわよ! ……45!」

 

 416の怒鳴り声も私に届かない。ただ私を庇い、指揮官が死にかけ、それを否定し、元に戻ってと懇願するループが電脳を支配する。

 

「UMP45!」

 

 パシンッ

 

「っ!」

 

 銃声と爆発音の中、416の平手打ちの音だけがやけに大きく響いた気がした。416は私の胸倉を掴むと今まで見たこと無い剣幕で迫った。

 

「よく聞きなさいUMP45、あなたは部隊を生かして帰す気は無いの? こんな状態になった指揮官を一刻も早く連れて脱出する気は無いの? こんなところでエラー吐いて悲劇のヒロイン気取って死ぬ気なの?! さあ答えなさい! 今すぐ引きずってでも指揮官を連れてヘリに乗るか、それともここで何もせず死ぬか? さぁ!」

 

 416の言葉にエラーはピタリと止まった。そうだ、こんなところで死んでられない。腕が吹き飛んで銃創で大量出血しているけど指揮官はまだ生きている。いつの間にか出てた涙を拭って徐々に軽く冷たくなる指揮官を担いで走った。銃も発煙手榴弾も強化外骨格も、全部かなぐり捨てて、今までに無い速さでヘリに転がり込む。そして急いでゴムバンドや止血剤をかき集めて止血し、傷を塞ぎ、意識のない指揮官に話しかけながら心臓マッサージして弱りゆく鼓動を必死に繋ぎとめて、いつの間にか担架に乗せられた指揮官の手を繋ぎ、そして集中治療室の前で泣きながら指揮官が帰ってくるのを祈った。

 

 

 

 ……なんだか暖かくて気持ちいい。ふと目を覚ますと9と目が合った。どうやら泣き疲れて眠ってしまったらしい。いつもは私が膝枕しているのに、こんな時に限って逆の立場。すこし恥ずかしいけど、たまにはいいかもと思った。お姉ちゃんおはよう。いつも通りの言葉のはずなのに、その表情は暗く悲しそうだった。

 

「……そうだ、指揮官。指揮官は? もう手術は終わったの?」

 

 起き上がって9に問う。しかし9の表情は悲しく険しいものだった。

 

「45姉、よく聞いてね。指揮官の手術は成功したの。けどね……」

 

 

 

指揮官、植物状態になっちゃったみたい

 

 

 植物状態、つまり心臓だけは動いてるけど意識は無い状態。嘘だ。あれだけ必死に応急処置したのに。最後の最後に私の名前を呼んでくれたのに。「必ず戻ってくる」って言ったのに。嘘だ、嘘だと9の肩を掴み揺さぶる。

 

「お、落ち着いて45姉、指揮官のことでペルシカさんから話があるってさっき416が言ってたから。話だけでも聞いてみたらどうかな?」

 

「……ペルシカが?」

 

 自律人形の研究開発において知らない者はいない天才科学者。けど人間は専門ではなかったはず。私は416からペルシカの場所を聞き、建物の隅にある彼女の個室のドアをノックした。

 

「UMP45かい? あいてるよ、入って」

 

「失礼します」

 

 ペルシカに割り当てられた部屋に入ると、書類やノートパソコン、電子機器の山々と中央のソファに座る不健康そうな白衣姿の女性がいた。天才と言われる人は皆こうなのか。若干頭が痛くなりそうになりながら言われるがまま対面する椅子に腰掛けた。

 

「まず、指揮官君について残念だったね。いや、医師たちを恨まないでおいて。彼らは全力を尽くしたんだ。進歩した医学でもどうしようも出来ない事はある。それに辛うじて心臓が動いてるだけでも奇跡に近い。君がヘリの中で必死に止血や心臓マッサージをしたおかげだよ。よくやった」

 

「その、ありがとうございます」

 

 ペルシカの言葉はまるで母の言葉のように沁み込んでくる。けど、その言葉を言うためにわざわざ呼んだわけではないどだろう。

 

「まぁ、単刀直入に聞いた方が早いね。君は、UMP45は指揮官君がどんな姿になっても帰ってきて欲しいと思うかい?」

 

 

 

「……本当に可能なんですか?」

 

「理論上は可能だよ。ただ生物の記憶となると不確定要素が多いから、絶対は無い。……よし、こんなもんかな」

 

 あの日から半月経ち、私たち404小隊はペルシカのいるI.O.Pの研究所16Labに来ていた。通された部屋は巨大な実験室とも、工場の生産室とも思えるものだった。そしてその部屋に鎮座するのは液体が入り様々な計器や管が繋がれた2つのカプセル。その片方には手術痕が残る痛ましい姿の指揮官、もう片方には鉄血の人形、代理人が管に繋がれ入っていた。

 

「それじゃあ改めて説明するよ。指揮官君は植物状態で回復の見込みはなく、このままでは遠くない将来に亡くなる可能性が高い。そこで彼の脳の中身、要は記憶を一度データベースに移し、そこからこの代理人の電脳に直接書き込む。質問は?」

 

 ペルシカが一通り説明し終わると振り返った。事前に説明は受けていたけど、やはり納得は行かない部分がある。

 

「いくつかいいかしら。なぜ鉄血のハイエンドモデルがここに? そしてなぜ指揮官の記憶をあれに移す必要があるのかしら? 人形なら他にもいるでしょう」

 

「皆が聞きたいこと全部聞いてくれたね416.まぁそう焦らずに1つずつ答えよう。1つ目の質問だけれど、あれはAR小隊が交戦した時に偶然にも中身が傷ついていない綺麗な状態で鹵獲できたものだよ。これほど綺麗な状態で鹵獲される鉄血製人形はそうそうない。2つ目に、人間の脳の中身を丸ごと移すとなると、そこら辺の人形とは比べものにならない容量の電脳が必要になる。そして解析し終わったばかりの代理人の電脳は指揮官君の記憶をなんとか収めれる容量だった。3つ目は新たに人の脳と同じスペックの電脳と、それを載せる人形を作ってる時間と費用が無い。以上だ、理解してもらえたかな?」

 

 理解はできる、けど理解したくない。確かに指揮官がどんな姿になってもいいから帰ってきて欲しいと思った。けれど、まさか鉄血のクズだとは思わなかった。そんなことになるなら、指揮官はそのままでいいと思った。でもこのままでは生命維持装置で生かしてもいずれ死んでしまう。ホルマリン漬けにしても生き返らせる技術ができる保証も、それまで私が生きてる保障もない。……これしかないのかな。

 

「彼は手術直前のまだ意識がある時、"君が承諾したら"という条件付きで了承を得てる。あとは君の判断次第だよ。考える時間は残り少ないけど、始めたらやっぱ無しには出来ない。よーく考えて」

 

 指揮官は"私"に判断を委ねた。それはつまり私にそれだけ信用と信頼を置いていて、私が帰ってきて欲しいと願うと思ったから、判断を委ねた。ならば私の指揮官の思いに応えなきゃ。

 

「ペルシカさん。どうか、よろしくお願いします」

 

 

 

 〇

 

 

 

 Start up system Now Loding...

 

 Start up system download complete...

 

 Set up sequence start...

 

 Electronic brain scan start...

 

 Sensor connection:Confirm

 

 Image recognition system all clear...

 

 Vision sensor, Tactile sensor, Auditory sensor, Taste sensor, Olfactory sensor, operate correctly

 

 I.O.P 16Lab - Remodeling Ringleader System ver Agent

 

 START

 

 

 

『改良型ハイエンドモデルシステム、起動シーケンス開始。モデル名"代理人"起動』

 

 ゆっくりと目が開き、視界によくわからない文字と緑色の景色が映る。コポコポと気泡が上がっていき、その先に歪んだ風景が広がっている。どうやらSF映画にあるような液体で満たされたカプセルの中のようだ。

 

『起きたかい指揮官君。調子はどうだい?』

 

 ヘッドホンから流れる音楽のように聞こえる聞き慣れた声。だが返事をしたくても口にチューブのようなものがはめられ、うめき声も出せない。

 

『あぁ、失敬失敬、今から液体と管を抜くからちょっとまってて』

 

 湾曲したガラス越しに映る科学者が視界の端にある隣の計器を操作すると、液体が抜けて体中に重力を感じる。管やケーブルが引き抜かれ枷が外され、手足は自由になったが上手く力が入らない。……それに胸のあたりがやけに違和感を感じる。

 

「電脳は正常、各種センサーは問題なし。今は最適化の最中だけどすぐ動けるようになるさ。生まれ変わった気分はどうだい?」

 

 見慣れた顔が覗き込む。ぼんやりと覚えがある光景だ。確かUMP45を庇って死にかけながら手術室に運ばれた時、やけに笑顔なペルシカ女史が覗き込んできて、「君は十中八九植物状態になるから、その時に脳を人形に移し替えるかい?」と聞いてきたんだ。UMP45が良いと言ったらと答えたところで記憶は途切れてる。……自分が目覚めたという事は、まぁそういう事なんだろう。

 カプセルの縁を掴んで起き上がろうとすると、不健康なほど色白な肌の細い手と黒く長い髪。そして、豊満な胸が視界に映った。

 

「えっ……えぇぇぇええ!!??」

 

 アイエエエエ! オンナ!? オンナナンデ!?

 いやなんでだよ! 普通男性モデルの自律人形に移し替えるでしょ! なんで女性モデルなんだよ! てかこの顔と髪型は鉄血人形のハイエンドモデルの代理人じゃないか! なんでこうなった!

 

「あーっはっはっはっは!男が女の体になって困惑する姿。これが見たかったんだよ!いひひひひっ!久しぶりに大笑いさせてもらったよ指揮官くん。ふふっ、あははははっ!」

 

 人の困惑した姿をダシにしやがってこのマッドサイエンティストめ……だがこれをやらなければそのまま意識は回復せず、いずれ死んでたと言うのだから強く言えない。クソッタレ……とりあえずなにも着ていないから、体に慣れるために着替えることになった。個人的には一刻も早くUMP45に会いたいんだが、ペルシカがいる間に最適化を済ませてデータを収集し様子を見たいとのことで目の前で着替えさせられた。

 

「あの……物凄く恥ずかしいんで、出てけとは言いませんが向こう向いててもらえませんか?」

 

「君は女性の服を補助なしに着られるのかい? それに体と電脳の最適化が済んでないから動きもぎこちないじゃないか。さっ、変なことしないからこれを着たまえ」

 

 そう言って差し出したるは黒色の大人な下着とガーターベルト。待って、ちょっと前まで男だった奴が着る下着じゃない。

 

「ほらほら、これ以外下着は無いから早く着ないと直で服着ることになるよ? 手取り足取り教えて上げるから羞恥心は今のうちに捨てなさい♪」

 

 なんでこいつそんな笑顔で機嫌良いの? 俺なんかペルシカに酷いことしたっけ? しかし言われたことやるしかない。それになぜか抵抗できず、言われた通りに下着を付けていく。次はガーターベルトとパンツだ。

 

「パンツは先に穿くかい? 後に穿くかい?」

 

「えっと、先で」

 

「先に穿くとトイレ大変だよ?」

 

「なら後で」

 

「後に穿くそう言いうのが好きな人に見られるよ」

 

「どっちにすりゃいいんだよ!」

 

 結局先に穿いた。だって股間がスースーするの早く何とかしたかったんだ。あと嫌でも息子が無いことが実感させられた。心が折れそう。もう無心で着替えようと思ったが差し出されたのは代理人のメイド服。おい待てやG&Kの制服はどうした。なーにがその身体にはメイド服一択じゃ、絶対に着ないからな。わかった、わかったよ全く。着ればいいんだろ着れば。まぁ、他のハイエンドモデルの鉄血人形よりはまともな服なのでまだマシである。あとは髪型を整えてもらい完成。ついでに視界に最適化完了の文字が浮かび上がる。実感はないが、考えた通りに体が動くようになったんだろう。

 

「これで十分でしょう。それじゃ、感動の再会といこう。あぁ、一つ言い忘れてた。君はちゃんとI.O.P製人形として登録されてるから、味方から撃たれる心配はないよ。安心して」

 

 それはよかった。前線で指揮してて敵に間違われましたじゃ話にならないからな。

 

「それから……万が一のことを考えて、君はI.O.PとG&Kの人間と人形には逆らえないようになってるからね」

 

 

 

 ……え?

 




逆らえなくて好きにされるっていいですよね。ってわけで代理人と電子戦に強い45の百合を目指します(続くとは言っていない)




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