ガンダムビルドファイターズ-Sailing to the Sunshine-   作:陽@曜花推し

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第13話:0から1へ(リメイク版)

「はぁ……」

 

風呂上がり、瓶のコーヒー牛乳を傾けながら夜空を見上げる。

 

どうも、新堂陽哉です。

 

現在、俺たちは東京の宿泊先である旅館にいる。……まさかのAqoursの1・2年生メンバー全員と同じ大部屋で。

 

予約の段階では当然俺だけ別の部屋を取っていたはずなのだが、どこぞのシャイニーな金髪理事長が気を利かせた(というか面白がった)らしく、勝手に部屋割りを変更しやがったのだ。

 

東京の数少ない友人であるスドウ君の家に泊めてもらおうとも考えたのだが、女子陣から「別に一緒でいいじゃん」「マネージャーなんだから離れちゃダメ」と引き留められ、挙句の果てには梨子から「友達の家って言って、本当は女の人の家に泊まるんでしょ?」と謎の疑いをかけられる始末。

 

仕方なく同室を受け入れたはいいが……どうして風呂上がりの女子高生たちを見ると、こうもドキドキしてしまうのだろうか。

 

俺だって健康的な男子だ。理性という名のユニコーンガンダムが、NT-Dを発動してデストロイモードからアンチェインモードへと移行してしまいそうになる。しかもみんな、無防備な浴衣姿だし。鞄の中には、昼間に『穂むら』で回収してきたダイヤ姉さんへのお土産(絵里と花陽のサイン色紙)が眠っているが、ひとまずは厳重に保管しておこう。

 

俺がテーブルに飲みかけのコーヒー牛乳を置いた、その瞬間だった。

 

「ちょっと貰うよ!」

 

すかさず曜が、俺のコーヒー牛乳を手に取ってゴクッと飲んだ。

 

「えっ……ちょっ、それって間接キス……」

 

突然の行動に、隣にいた梨子が驚きの声を上げる。

 

「はい、梨子ちゃんも飲む?」

 

曜は悪びれる様子もなく、ナチュラルに瓶を差し出す。いや、待て待て。なんで俺の飲みかけを勧めてるんだお前は。

 

「陽君の……飲みかけ……」

 

瓶を受け取った梨子は、なぜか顔を真っ赤にしてフリーズしている。

 

「いや、それ俺の飲みかけだから。新しいやつ買ってきてやるよ」

 

「ううん!こ、これがいい!これがいいの!」

 

俺が止めようとするのを遮り、梨子は勢いよくコーヒー牛乳を飲み干した。……うん、後で自分の分は新しく買ってこよう。

 

てか、みんな浴衣って言ったけど、数名違うのがいるな。

 

「曜……お前、なんだそのバスガイドみたいな服。何故旅館でコスプレをしている?」

 

「えへへ、似合うでしょ?ヨーソロー!」

 

突っ込むのも面倒なので放置することにした。だが、そこのもう一人……てめーはダメだ。

 

「おい、善子!マント広げながら机の上に立つんじゃないよ!行ぎょう儀悪いだろ、さっさと風呂入ってこい!」

 

「ヨハネよ!もう、わかったわよリトルデーモンハリィ!」

 

不満げに口を尖らせながら、善子は風呂場へと向かっていった。

 

「マルのバックトゥザぴよこ万十がー!」

 

部屋の隅では、花丸が空箱を見て嘆いている。みんなさっきから美味そうにまんじゅうを食っていたが……それ、花丸のだったのか。

 

「花、泣くな。新しいの俺が買ってやるから」

 

「ほんとずら!?陽兄ちゃん大好きずら!」

 

ふと見ると、ルビィが押し入れから重そうな布団を引きずり出そうとしていた。

 

「ルビィ、危ないから俺がやっておくよ。あっちでゆっくりしてな」

 

「ルビィもやる。だって千歌さんがね、『はー君に任せたら、自分の布団だけ廊下に敷いて寝ちゃうかもしれない』って言ってたから」

 

あのみかん娘め……俺の思考を完全に読んでやがる。

 

「はー君」

 

背後から声をかけられ、ビクッと肩を揺らす。いつの間にか千歌が立っていた。

 

「ダメだよ、廊下で寝ちゃ。仲居さんとか他のお客さんの迷惑になっちゃうでしょ?」

 

ごもっともです。さすが旅館の娘、反論の余地がない。

 

「わかったよ。とりあえず、布団はみんなで敷こうぜ」

 

善子が風呂から上がり、曜もようやく普通の浴衣に着替えたところで、千歌が目を輝かせて提案した。

 

「ねえ、明日少し早起きして、音ノ木坂に行ってみない?この近くなんだって。一回行ってみたかったんだ!」

 

伝説のスクールアイドル、μ'sの母校。彼女たちの憧れの場所だ。

 

「私はいいや。みんなは行ってきていいよ」

 

だが、盛り上がる雰囲気の中、梨子だけが静かに首を振った。

 

……まあ、色々とあるんだろう。梨子にとってあの場所は、ただの憧れだけで済まされる場所じゃない。

 

「今日はやめておこう。明日も本番で早いし、そろそろ寝ぞ」

 

俺がそう言うと、曜も同意するように頷いた。

 

「それもそうだね」

 

「うん……やっぱ寝よっか」

 

明日の「東京スクールアイドルワールド」に向けて、俺たちは布団に入り、部屋の明かりを消した。

 

消灯からしばらく経ったものの、どうしても眠気が訪れず、俺はそっと布団を抜け出して窓際に腰かけ、夜の街を眺めていた。

 

「陽君、眠れないの?」

 

背後から衣擦れの音がして、梨子が起きてきた。

 

「ごめん、起こしちゃった?」

 

「ううん、私も目が冴えちゃって」

 

梨子は少しはにかみながら、俺の反対側にちょこんと腰かけた。東京時代、隣の家に住んでいた頃にも、こうして夜にベランダで話したことがあったなと思い出す。

 

「2人とも、起きてたんだね」

 

さらに、千歌までもがパタパタと足音を忍ばせて歩いてきた。静かな部屋に、3人の気配が並ぶ。

 

「さっきはごめんね。変な空気しちゃって」

 

梨子が申し訳なさそうに視線を落とす。音ノ木坂に行くのを断った件だ。

 

「ううん、私の方こそ強引に誘っちゃってごめんね」

 

千歌が首を振る。少しの間、静かな沈黙が流れた。やがて、梨子がぽつりぽつりと、心の奥にある重荷を吐き出すように語り始めた。

 

「音ノ木坂ってね、伝統的に音楽で有名な高校なの。私、中学の頃にピアノの全国大会に行けたせいか、高校に入ってからもすごく期待されていて。……でも、その期待に応えなきゃって思えば思うほど、空回りしちゃって。結局、高1の最後の大会では、プレッシャーに潰されて、鍵盤を引けなくなっちゃったの」

 

知っていた。前世の知識としても、そして当時、彼女の幼馴染として客観的に見ていた現実としても。あの時の梨子の絶望とスランプは、そう簡単に拭えるものではない。

 

「期待されるって、どんな気持ちなんだろうね?」

 

千歌が膝を抱えながら、呟くように言った。

 

「沼津を出る時、浦女のみんなが応援に見送りに来てくれたでしょ?すごく嬉しかったけど……実は、ちょっぴり怖かったんだ。期待に応えなくちゃ、絶対に失敗できないぞって」

 

スクールアイドルの輝きに憧れて走り出した千歌が、初めて背負った「期待」の重み。

 

「はー君はそういうの、無かった?世界大会や、海外の大きな大会に出る時とか」

 

不意に話を振られ、俺は夜空から千歌へと視線を戻した。

 

「うーん、俺はあんまりそういうプレッシャーは無かったな。だって、俺が大会に出るのを知ってるのなんて、基本的には両親くらいだったし」

 

本当は、あの頃から付き合いのあったμ'sのメンバーたちも俺の背中を押してくれていた。園田道場でしごかれた日々や、彼女たちが世界に向けて戦う俺を応援してくれた記憶が頭をよぎるが、今は胸の内に留めておく。

 

「親父たちからも『お前のやりたいように暴れてこい』って言われて送り出されただけだしさ。それに俺自身、世界中の強いやつらとガンプラバトルができるっていう楽しみの方が勝ってた。それに……ほら、勝てば賞金も出るしさ。あまり参考にならなくて悪いな」

 

「えっ、賞金って、いくらくらい出るの?」

 

千歌がガタッと身を乗り出してきた。そこ、そんなに食いつくところか?

 

「まあ、ジュニアの国際大会とはいえ、優勝すれば100万くらいは貰えたかな。上位に入れば最低でも10万とか。それを何度か積み重ねてたからな」

 

「そんなに……!じゃあ、今こうしてAqoursの活動に必要な経費とか、移動費を出してくれてるのって……」

 

梨子が驚いたように目を見張る。

 

「はー君、お金、本当に大丈夫なの?」

 

千歌が心配そうに覗き込んできた。小学生の頃から国内外の大会を荒らし回っていた貯蓄だ。旅費や機体のメンテナンス費用を差し引いても、まだ十分すぎるほど残っている。

 

「心配すんなって。マネージャーの財布にはまだ余裕があるから。それより、明日は本番当日だぞ。そろそろ寝ようぜ」

 

あくびを一つ噛み殺し、俺は布団へと戻った。2人も大人しく自分の布団へと潜り込んでいく。今度こそ、意識は深い眠りへと落ちていった。

 

 

 

そして翌朝。

 

どうしてこうなった。

 

目が覚めると、腕の中に信じられないほどの柔らかさと、甘い花の香りが収まっていた。

至近距離、まさにゼロ距離でスースーと息を立てて眠っているのは、梨子だった。

 

寝顔、めちゃくちゃ可愛いな……なんて見惚れている場合じゃない。なぜ俺の布団に潜り込んでいるんだ。

 

「う、うぅん……あ、陽君……?おはよう……」

 

俺が慌てて身を引いた拍子に、梨子がうっすらと目を開けた。

 

「おはよう。……で、なんでお前がここにいるんだ?」

 

「な、なんでだろうね……?(言えない……わざと入ったなんて絶対に言えない……)」

 

梨子は顔を真っ赤にしながら、もごもごと布団を頭まで被ってしまった。これ以上突っ込むと色々危険そうなので、他のメンバーが起きる前に俺はさっさと起き上がることにする。

 

それにしても、部屋の中を見渡すと、あるはずの姿が一つ足りない。

 

「おい、みんな起きろ!朝だぞ!」

 

声をかけると、曜や1年生たちが次々と眠そうな目をこすりながら布団から出てきた。

 

「あの、千歌さんがいないずら……」

 

「本当だ、どこ行っちゃったんだろ?」

 

花丸とルビィが首を傾げる。だが、彼女の行き先なら大体の見当はついていた。

 

「千歌にとって、スクールアイドルとしての『始まりの場所』だよ」

 

俺の言葉を聞いて、曜がハッとしたように顔を上げた。

 

「もしかして、千歌ちゃんがμ'sのPVを初めて見た場所……?」

 

「ご名答。そういうわけだから、みんな急いで着替えてくれ。俺は外で待ってる。……おい、そこの堕天使!いつまで寝てんだ、叩き起こすぞ!」

 

「ひゃんっ!?ヨハネよ!何よもう、朝からうるさいわねリトルデーモンハリィ!」

 

まだ布団の中で芋虫のようになっていた善子を引っぺがし、準備を急がせる。全員が身支度を整えたのを確認し、俺たちは目的の場所へと向かった。

 

秋葉原、UTX学院の巨大な街頭スクリーンが見える、あの歩行者デッキ。

朝日を浴びるその場所に、千歌は一人で佇んでいた。

 

「みんな……よくここが分かったね」

 

振り返った千歌の隣に、俺はそっと歩み寄る。

 

「ここだろ?お前がスクールアイドルをはじめようって、本気で決意したきっかけの場所は」

 

「うん、そうだよ。ここで初めて見たんだ。スクールアイドルを……μ'sを!」

 

まっすぐな瞳でスクリーンを見上げる千歌。一人の女子高生をここまで突き動かすスクールアイドルの影響力には、改めて凄まじいものがあると感じる。

 

「あ、あれ見て!」

 

ルビィが街頭スクリーンを指さした。映し出されたのは、今年の『ラブライブ!』開催を告げる華やかな映像。

Aqoursが目指すべき、眩いばかりの頂点だ。しかし、同時に胸を衝くのは言い知れぬ不安。今の彼女たちの実力が、この大都会で、そして全国の猛者たちの中でどこまで通用するのか。

 

「……感傷に浸るのはここまでだ。一旦旅館に戻るぞ。朝飯をしっかり食って、支度を済ませたら会場入りだ」

 

俺の言葉に、みんなが小さく頷いた。

 

 

 

会場に到着し、チェックアウトを済ませた荷物を預ける。

どうやらマネージャーなどのスタッフ陣は、本番直前の控室には入れない決まりらしい。さらに、関係者席の人間には投票権すら与えられないという徹底ぶりだった。

 

客席の熱気が高まる中、ステージにスポットライトが当たる。

 

「みんなーーー!はっちゃけてるかーーーい!?」

 

お馴染みのハイテンションな叫び声とともに、司会のお姉さんがステージに飛び出してきた。……あの人、5年前の大会の時から全く見た目が変わっていない気がするのだが、気のせいだろうか。もし別人だとしたら、あの規格外のテンションを引き継ぐ一族でもあるのかと疑いたくなる。

 

「さあ、東京スクールアイドルワールド!トップバッターを飾るのは、このグループ!北の大地が生んだ実力派姉妹ユニット――Saint Snow!!」

 

ステージに現れた鹿角聖良と鹿角理亞。

イントロが流れた瞬間、会場の空気が爆発するように跳ね上がった。

 

圧巻、その一言に尽きた。

これが『ラブライブ!』の本戦決勝まで勝ち進んだことのある者の実力。キレのあるダンス、姉妹ならではの完璧なシンクロ、そして天井を突き破るような歌唱力。

はっきりと言ってしまえば、今のAqoursとは基礎体力の段階から天と地ほどの差がある。

 

「続いてのエントリーは、人気急上昇中のフレッシュなスクールアイドル――Aqoursの皆さんです!」

 

司会のコールが響く。俺は祈るような気持ちで、ステージへと進む彼女たちの背中を見送った。

みんな……頑張れ。

 

 

 

イベントは全プログラムを終了した。

Aqoursは、自分たちの持てる力を振り絞り、最後まで見事に歌いきってみせた。それはマネージャーの目から見ても素晴らしいパフォーマンスだったと思う。

 

だが、ステージを降りた彼女たちを待っていたのは、他の参加グループに比べて明らかに寂しい、まばらな歓声という現実だった。

 

帰りの電車の時間まで、俺たちは心を落ち着かせるために都内を少し観光することにした。

 

「この街、1300万人も住んでいるのよね。……そう言われても、全然実感わかないんだけど」

 

梨子が街並みを見上げながら呟く。

 

「やっぱり違うのかな、そういうところで暮らしていると。空気とか、集まる人とか」

 

曜の言葉に、俺は小さく息を吐いた。内浦の静かな海と豊かな自然に囲まれて育った彼女たちにとって、この東京という魔境のエネルギーは、それだけで圧倒されるものがあるのだろう。

 

「はい、お待たせ!」

 

千歌が両手にアイスクリームを抱えて戻ってきた。

 

「わあ、ありがとう千歌ちゃん!」

 

「はー君の分もあるよ?はい!」

 

「あー……ごめん、今はちょっと甘いものの気分じゃないんだわ」

 

どちらかと言えば、こってりしたラーメンでもかっ込みたい気分だった。

 

「そっか、じゃあルビィちゃんたちどうぞ!」

 

千歌は努めて明るい声を出し、1年生たちにアイスを配っていく。その姿を見て、俺は隣の曜と梨子に目を向けた。

 

「……千歌のやつ、無理してないか?」

 

「うん。なんか、無理に明るく振る舞ってる感じがする」

 

「やっぱり、Saint Snowさんのパフォーマンスを見てからだよね。本当に凄かったから……」

 

姉妹の完璧なコンビネーション、一分の隙もないダンス、そして圧倒的な歌唱力。どれを取っても、今のAqoursを遥かに凌駕する完成度だった。

 

「千歌、ちょっといいか」

 

俺はアイスを食べ終えた千歌に声をかけた。

 

「ん?なぁに、はー君。私なら大丈夫だよ!今日のライブ、今までの中で一番出来が良かったって思うもん!声もちゃんと出てたし、ダンスのミスも一番少なかったし!」

 

確かに、それは事実だ。彼女たちは間違いなく過去最高のパフォーマンスをした。

 

「それにさ、周りはみんなラブライブの本戦に出場しているような凄い人たちばかりでしょ?入賞できなくたって、当たり前だよ!」

 

千歌は笑ってみせる。だが、その言葉に俺は敢えて厳しい現実を突きつけなければならなかった。

 

「いいか、千歌。Aqoursはラブライブの決勝に行きたいんだろ?だったら、今日ここに出ていた連中を全員ぶち抜いて、それ以上のパフォーマンスをしなきゃいけないってことだ。それは分かってるな?」

 

「それは……そう、だけど……」

 

千歌の笑顔が微かに曇る。見かねた曜が、絞り出すように言葉を重ねた。

 

「私ね、Saint Snowを見た時に思ったの。これがトップレベルのスクールアイドルなんだって。このくらい出来なきゃ、あのステージには立てないんだって」

 

「……そんな彼女たちですら、今日のイベントでは入賞すらしていなかった。あのレベルの人たちですら、届かない世界なんだって……」

 

梨子の言葉が、その場の空気を重く沈めさせた。

善子がいつものように堕天使のキャラクターで空気を変えようとしたが、花丸がそっとその袖を引いて首を振る。

 

「あはは……もう、そんなこと考えても始まらないよ!せっかく東京に来たんだし、みんなでもっと楽しもうよ!」

 

千歌はなおも、自分の心を偽るように笑おうとする。そんな彼女に、どんな言葉をかければいいのか。俺が己の不甲斐なさに歯噛みしたその時、ポケットの中でスマホが震えた。画面には表示されていない、見知らぬ番号。

 

「はい、新堂です。……え?東京スクールアイドルワールドの実行委員会?」

 

電話の内容は、マネージャーである俺に「至急、会場のバックステージまで戻ってきてほしい」というものだった。手渡したい書類がある、と。

 

 

 

急ぎ足で会場へと戻ると、ステージ裏で先ほどの司会のお姉さんが待っていた。

 

「やあやあ、君がAqoursのマネージャーくんね。わざわざ戻らせちゃってごめんね」

 

「いえ、構いません。それで、渡したいものというのは?」

 

問いかけると、お姉さんは少し痛ましそうな、複雑な表情を浮かべながら、一枚のプリントを手渡してきた。

 

「これ、今回の全グループの投票結果の最終集計表。一応、参加してくれたお礼として全グループに配っているんだけど……正直、君に渡すのは少し迷ったんだよね」

 

その様子だけで、結果がどうであったかは容易に想像がついた。

 

「……ありがとうございます」

 

「ううん。厳しい世界だけど、頑張ってね」

 

お姉さんを見送った後、俺はその紙に目を落とした。そこに並ぶ数字は、残酷な現実そのものだった。

背後から、心配そうに付いてきていた千歌たちが覗き込んでくる。

 

「はー君……どうだったの?」

 

この結果を伝えるのは、本当に胸が痛む。だが、マネージャーとして、彼女たちの現実を支える者として、誤魔化すわけにはいかない。

 

「みんな……これを見てくれ」

 

俺は覚悟を決め、集計表の紙を全員に見えるように提示した。

 

「30組中……30位……」

 

「最下位ってことずらか……」

 

梨子と花丸の声が震える。だが、本当の絶望はその順位の横にある数字だった。

 

「得票数……0……」

 

ルビィが言葉を失う。

そう、誰一人として、Aqoursに票を投じた者はいなかったのだ。

 

「先輩……」

 

善子が、すがるような目で俺を見上げてくる。もしかして、お前が他のグループに入れたんじゃないのか、とでも言いたげな視線。

 

「俺は関係者席だからな。さっき言った通り、最初から投票権は無いんだ」

 

「そう、よね……」

 

善子が力なく視線を落とした。その時、コツコツと静かな足音が近づいてきた。

 

「お疲れ様でした」

 

現れたのは、Saint Snowの2人。姉の聖良は穏やかな、しかしどこか憐れむような目を、妹の理亞は不機嫌極まりない目をこちらに向けている。

 

「素敵な歌で、とても良いパフォーマンスだったと思います。……でも、もしあなた方が、μ'sのようにラブライブの頂点を目指しているのだとしたら、もう諦めた方がいいかもしれません」

 

聖良の静かな勧告が、Aqoursのメンバーの胸を深く抉る。さらに、理亞が我慢しきれないといった様子で、激しい怒りをぶつけてきた。

 

「バカにしないで!ラブライブは遊びじゃない!!」

 

その言葉の重みに、誰も言い返すことができなかった。圧倒的な実力差を見せつけられ、数字でも完璧に叩きのめされた今、彼女たちの言葉を否定する資格など、今のAqoursには無かった。

 

去っていくSaint Snowの背中を、俺たちはただ、黙って見送ることしかできなかった。

 

 

 

帰りの新幹線の中、車窓を流れる夜景を眺めながら、曜がぽつりと呟いた。

 

「Saint Snowでも9位か……」

 

あそこまでの圧倒的なパフォーマンスを見せつけた彼女たちですら、入賞にすら届かない。東京、そしてラブライブという世界の壁の厚さに、車内の空気は重く沈み込んでいた。

 

「陽君、どうしたの?」

 

隣に座る梨子が、俺の顔を覗き込んできた。さっきからずっと黙り込んでいるのを心配してくれているのだろう。

 

「大丈夫だ。ただ……色々とな」

 

「陽兄ちゃん、マルのバックトゥザぴよこ万十食べて元気出すずら」

 

通路を挟んで反対側の席から、花丸がそっとお菓子の箱を差し出してきた。こんな状況でも食欲が衰えないのは流石というべきか。一体何箱買い込んだんだ、それ。

 

「ありがとう、花」

 

ひよこ型のまんじゅうを一つ受け取る。

 

それにしても、最悪の結果だ。30組中30位、得票数0。アニメのストーリーを知っていたとはいえ、いざ目の前で彼女たちが完璧に叩きのめされる現実を見るのは、胸が締め付けられるように苦しい。俺がマネージャーとして関わることで、少しでも未来が変わるんじゃないかと淡い期待を抱いていた自分が馬鹿みたいだ。こんな時まで、原作の過酷な展開に忠実にならなくてもいいだろうに。

 

「ごめん……こんなことになるなら、東京のイベントなんて参加させるべきじゃなかった。完全に俺の判断ミスだ」

 

彼女たちが出場を望んだとはいえ、最終的なゴーサインを出したのはマネージャーである俺だ。もっと実力をつけてからにするべきだったと、己の不甲斐なさを責める言葉が口を突いて出た。

 

「そんなことない!」

 

強い声が響いた。驚いて顔を上げると、千歌が真っ直ぐに俺を見つめていた。

 

「わたしは、出て良かったって思ってるよ!精一杯やって、努力して頑張って、だから東京に呼ばれたんだもん!それだけでも、すっごいことだと思う!でしょ?」

 

千歌は、折れそうなみんなの心を繋ぎ止めるように、必死に声を張り上げた。

 

「だから、胸を張っていいと思う!今の私たちの、精一杯ができたんだから!」

 

……千歌。リーダーとして、みんなを励まそうと健気に明るく振る舞っている。だけど、その瞳の奥にある痛みを、俺は見逃さなかった。

 

「千歌ちゃんは……悔しくないの?」

 

俺の気持ちを代弁するかのように、曜が静かに、しかし重い問いを投げかけた。あんなに一生懸命練習して、最高の出来だったのに、結果は0票だ。悔しくないはずがない。

 

「そ、それはちょっとはね。でも満足だよ!みんなであのステージに立てて、わたし、本当に嬉しかったんだもん」

 

「そう……」

 

曜はそれ以上何も言わず、視線を落とした。再び、重苦しい沈黙が車内を支配し、そのまま電車は沼津駅へと到着した。

 

改札を出ると、そこには浦の星の生徒たちが大勢出迎えてくれていた。さらに、その人だかりの中に、見覚えのある派手な姿を見つける。

 

「ギャル……なんでお前がここにいるんだよ」

 

「てかギャルって言うな!あたしもAqoursのファンなんだからね!」

 

神代恵里菜が、相変わらずの派手なメイクと格好で膨れてみせた。わざわざ出迎えに来てくれたことには感謝するべきだろう。

 

「で、結果はどうだったの?」

 

「それは……」

 

俺が言葉を濁した瞬間、背後からわっと激しい泣き声が響いた。

振り返ると、ルビィが出迎えに来ていたダイヤ姉さんの胸に飛び込み、子供のように大粒の涙を流して泣きじゃくっていた。その姿を見ただけで、恵里菜も全てを察したようだ。

 

「……そういうこと、ね」

 

泣き続けるルビィの肩を優しく抱きしめながら、ダイヤ姉さんが静かに口を開いた。

 

「やっぱり、そういうことになってしまいましたのね。今のスクールアイドルの世界では……」

 

俺と恵里菜は、少し離れた位置からその会話に耳を傾ける。

 

「先に言っておきますけれど、あなたたちは決して駄目だったわけではないのです。スクールアイドルとして十分な練習を積み、見てくれる人を楽しませるに足りるだけのパフォーマンスもしていましたわ。でも……それだけでは駄目なのです。もう、それだけでは……」

 

「どういうことですか?」

 

曜が、すがるような声を出す。

 

「7236。この数字が何の数字か分かりますの?」

 

ダイヤ姉さんの問いかけに、俺が答えようとした瞬間、隣の恵里菜が遮るように答えた。

 

「去年、最終的にラブライブにエントリーしたスクールアイドルの数……よね?」

 

「ええ、あなたの言う通りですわ。しかも、第一回大会の10倍以上の数です」

 

ダイヤ姉さんが恵里菜に向けて小さく頷く。

 

「そんなに……」

 

千歌が息を呑む。

 

「スクールアイドルは確かに以前から人気がありましたわ。しかし、ラブライブの大会の開催によって、それは爆発的なものになった。A-RISEとμ'sによってその人気は揺るぎないものになり、秋葉原ドームで決勝が行われるまでになった。そして、それが全体のレベルの爆発的な向上を生んだのですわ」

 

今回のイベントに参加したグループは、そんな群雄割拠の時代を生き抜いてきた強豪ばかりだ。それぞれに固定のファンがついており、地力が違う。そこに飛び込んだばかりのAqoursが、簡単に爪痕を残せるほど甘い世界ではない。

 

「そう、あなたたちが誰にも支持されなかったのも……私たちが、あの時歌えなかったのも、仕方のないことなのですわ」

 

ダイヤ姉さんの口から、ついにその言葉が出た。2年前の真実。

 

「2年前、すでに浦の星には統合になるかもしれないという噂がありましてね。それを阻止するべく、私と果南さんと鞠莉さんで、スクールアイドルをやっていたのですわ」

 

「果南ちゃんと、鞠莉さんと一緒に……?」

 

初めて聞く事実に、千歌と曜が目を見開く。活動期間が短すぎたため、幼馴染の彼女たちですら知らなかった歴史だ。

 

「やっぱり……あの時のメンバーだったんですね」

 

恵里菜がポツリと呟いた。

 

「あんた、知ってたのか?」

 

「私、2年前に沼津に遊びに来た時、駅の近くのイベントでライブを見たの。すっごく綺麗だったから覚えてる」

 

「ええ、沼津駅の近くのイベントでしたわね。あなたも見ていてくれたのですか。……その後ですわ。あなたたちが今日出たイベントに、私たちが呼ばれたのは」

 

ダイヤ姉さんの言葉に、梨子が尋ねる。

 

「ダイヤさんたちも、あのイベントに出ていたんですか?」

 

「そうだよ。ダイヤ姉さんたちも、あの東京のステージに立ったんだ」

 

俺が横から言葉を挟むと、千歌が驚いたようにこちらを見た。

 

「はー君、知ってるの?」

 

「ああ。当時、知り合いに誘われてイベントを観に行ったらさ、見覚えのある3人がスクールアイドルとしてステージに立ってたから、ぶったまげたよ」

 

「で、どうだったの……?」

 

曜の問いに、俺は一度ダイヤ姉さんの顔を見た。彼女は静かに目を閉じ、小さく頷いた。話しても良い、という合図だ。

 

「かな姉が……歌えなかったんだ」

 

「歌えなかったって、どういうこと……?」

 

善子が眉をひそめる。

 

「言葉通りの意味さ。歌い出しはかな姉のパートだったんだろう。だけど、巨大な会場の空気と、周りの圧倒的なパフォーマンスに呑まれて、緊張で声が出なくなっちまった。そのまま曲が終わるまで、一歩も動けずに終わんだ」

 

本当の理由は、果南が鞠莉の怪我を察して敢えて歌わなかったから。だが、今の彼女たちにその複雑な事情まで話す必要はない。ダイヤ姉さんがあの時抱えた悔しさを共有するだけで十分だ。

 

「ええ、陽哉さんの言う通りですわ。会場の空気に圧倒され、何も歌えなかった。……あなたたちは、最後まで歌い切れた。それだけでも立派ですわ」

 

「じゃあ、私たちの東京行きを反対してたのって……」

 

「いつかこうなると思っていたからですわ。……さあ、もう話はこれくらいにしましょう。夜も遅いですし、解散ですわよ」

 

ダイヤ姉さんの号令で、その場は解散となった。恵里菜も「またね」と言い残し、用事のために去っていった。

 

千歌たちは十千万旅館の送迎車で先に帰路につき、俺はすっかり眠り込んでしまったルビィを背中におんぶして、ダイヤ姉さんと共に黒澤家の車が待つ駐車場へと歩いていた。夜の静寂が、2人の足音だけを響かせる。

 

「……ごめん、ダイヤ姉さん。俺がもっと慎重に判断していれば、みんなにこんな思いをさせずに済んだのに」

 

「あなたのせいではありませんわ、陽。最終的に行くことを承認したのは私たち3年生なのですから。……それよりも、これからが大変ですわよ」

 

ダイヤ姉さんが、ルビィの寝顔を見つめながらため息をつく。分かっている。この圧倒的な挫折が原因で、Aqoursが解散の危機に瀕するかもしれない。現実の壁はそれほどに厚い。

だが、ここで終わらせるつもりは毛頭ない。

 

「俺は諦めないよ。千歌だって……こんなことでへこたれて終わるような奴じゃない。俺が全力で、あいつらを支えてみせる」

 

俺の言葉に、ダイヤ姉さんは少し驚いたように目を見張り、それからフッと柔らかく微笑んだ。

 

「ええ、そうですわね。期待していますわ、陽」

 

車が去っていくのを見送った後、俺は仕事終わりの親父と合流し、帰路についた。

 

 

 

 

次の日の早朝。

 

まだ周囲は薄暗く、夜明前の冷たい空気が張り詰めている。

悔しさと今後のことで頭が冴えてしまい、早くに目が覚めてしまった俺は、少し頭を冷やそうと浜辺へ向かうことにした。大通りまで出た、その時だった。

 

「千歌ちゃんーーーっ!!」

 

静まり返った早朝の街に、梨子の悲痛な叫び声が響き渡った。

 

「梨子、どうしたっ!?」

 

慌てて声のする方へと駆けつけると、梨子が防波堤の近くで青ざめた顔をして立ち尽くしていた。

 

「陽君!千歌ちゃんが、千歌ちゃんが海に……!」

 

「何だって……!?千歌ーーーっ!!」

 

最悪の事態が頭をよぎり、俺は声を限りに海に向かって叫んだ。すると、少し離れた海面から、ザパァッと激しい水音を立てて人影が顔を出した。

 

「はー君……?梨子ちゃん……?」

 

濡れそべった髪をかき上げながら、キョトンとした顔でこちらを見ているのは、紛れもない千歌だった。……普通怪獣ちかちー、早朝の内浦湾に上陸。って、バカ!

 

「服着たまま海に潜るやつがあるか!!何考えてんだお前は!」

 

「何してたの……?」

 

呆れる俺の横で、梨子がホッとしたように胸をなでおろしながら尋ねる。

 

「何か見えないかなって。ほら、梨子ちゃんは海の音を探して海に潜ってたでしょ?だから、私も何か見えないかなって思って」

 

「それで……何か見えた?」

 

「何も見えなかった。……でもね、だから思ったの。続けなきゃって!私、まだ何も見えてないんだって。この先にあるものが何なのか。このまま続けても、0のままなのか、それとも1になるのか、10になるのか……ここでやめちゃったら、全部分からないままだって」

 

千歌は濡れた体を震わせながら、防波堤に手をかけてまっすぐに俺たちを見つめた。

 

「で、答えは出たのか?」

 

俺の問いかけに、千歌の唇が微かに震える。

 

「うん。続けるよ、スクールアイドル。だって……まだ0だもん!0だもん……0なんだよ……!あれだけみんなで一生懸命練習して、みんなで歌を作って、衣装も作って、PVも作って……頑張って、頑張って、みんなにいい歌を聴いてほしいって……スクールアイドルとして輝きたいって、そう願って……!」

 

千歌の大きな瞳から、大粒の涙がぽろぽろと溢れ出し、頬を伝って海へと落ちていく。

 

「なのに、0だったんだよ……!悔しいじゃん!差がすごいあるとか、昔とは違うとか、そんなのどうでもいい!悔しい!やっぱり私、すっごく悔しいんだよ!!」

 

ついに吐き出された、リーダーとしての仮面の裏にあった本音。

梨子がたまらず海へと飛び込み、千歌の体を強く抱きしめた。俺もまた、2人のそばへと歩み寄る。靴やズボンが海水に濡れることなど、今の俺にはどうでもよかった。

 

「やっと、素直になれたね……」

 

梨子が優しい声で囁く。

 

「だって……私が泣いたら、みんな落ち込んじゃうでしょ?今まで頑張ってきたのに、せっかくスクールアイドルをやってくれたのに、悲しくなっちゃうでしょ?だから……だから……!」

 

自分の気持ちを押し殺してまで、みんなの前で無理に明るく振る舞っていた千歌。どこまでも不器用で、どこまでも優しいリーダーだ。

 

「バカね。みんな、千歌ちゃんのためにスクールアイドルをやってるんじゃないの。自分で決めて、ここにいるのよ。私も、そうなの」

 

「そうだぞ、千歌。曜だって、花丸だって、ルビィだって、善子だって……みんなスクールアイドルが好きだから、自分でやりたいって思ったから頑張ってるんだ」

 

俺は2人を見下ろしながら、胸の内にあった熱い感情を言葉に変えた。

最初は、前世の記憶を持つ俺がこの世界に関わることで、彼女たちの未来を変えてしまうことを恐れていた。だが、そんな保身はもうどうでもいい。ガンプラバトルの世界とスクールアイドルの世界、2つの異なる物語が混じり合ったその瞬間から、運命なんてとっくに変わっているんだ。だったら、俺のすべきことは一つしかない。

 

「俺だってそうだ。マネージャーとして、お前たちが輝く姿を特等席で見届けるって決めたんだ。リーダーだからって、1人で何もかも抱え込んで我慢すんじゃねぇよ。嬉しい時も、悔しい時も、全部を共有し合えるのが仲間だろ。……ほら、お前を待ってる仲間がそこにもいるぞ」

 

俺が砂浜の方を指さすと、そこにはいつの間にか、4人の人影が立っていた。

 

「千歌ちゃん!」

 

曜を先頭に、1年生トリオが朝日が昇り始めた砂浜を駆けてくる。朝早くから本当にご苦労なことだ。特に善子あたりは、絶対に眠いだろうに。

 

「ルビィ……これで終わりたくない!Aqoursのみんなで、絶対にラブライブに出たい!」

 

「そうずら。こんな気持ちのままで終わっちゃったら、一生悔いが残るずら!」

 

「くっくっく……この堕天使ヨハネの真の力を発揮すれば……って、私もね、悔しいのよ!遊びだって言われて……遊んでなんかないんだから!絶対にラブライブに出てやるんだから!」

 

曜もまた、制服のまま海へと飛び込み、千歌と梨子の輪の中に飛び込んでいった。

 

「だから、1人で抱え込まないで。私たちは、仲間なんだから!」

 

「曜ちゃん、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん、梨子ちゃん……うん、ごめんね……っ!」

 

5人に抱きしめられながら、千歌は子供のように声を上げて泣いた。その涙は、昨日までの悔しさを洗い流し、新しい一歩を踏み出すための心の燃料になるはずだ。

 

「さぁて……湿っぽいのはここまでだ。ほら、3人とも風邪をひく前に海から上がれ」

 

俺の言葉に、苦笑しながら海から上がってくるメンバーたち。全員が揃ったところで、俺はマネージャーとして、彼女たちの前に立ちはだかるようにして告げた。

 

「いいか。今からいきなり0を100にするのは無理だ。だけどな、0を1にすることはできる。その1を、これからみんなで少しずつ、2に、10に、そして100に増やしていけばいいんだ。みんななら絶対にできる。俺はそれを信じてる。だから、もう一度ここから這い上がるぞ。俺たちの……Aqoursの輝きってやつを、世界に見せつけてやろうぜ!」

 

千歌が濡れた顔を拭い、力強く拳を握りしめて微笑んだ。その瞳には、昨日までの迷いは一切ない。

 

「0から1へ……うん!みんな、やろう!私たちの輝きを、みんなに見せよう!」

 

「「「「「おーーーっ!!」」」」」

 

内浦の静かな海に、6人の、いや、マネージャーも含めた7人の決意の咆哮が響き渡った。

よし、これでもう大丈夫だ。どんな壁が立ち塞がろうとも、このメンバーなら何度でも立ち上がれる。

あとは……あの3年生組をどうにかするだけだ。

 

それはまた、次のお話。

とりあえず、今回はこれでおしまい。

 

 

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