ガンダムビルドファイターズ-Sailing to the Sunshine-   作:陽@曜花推し

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第18話:いざ決戦の地へ(リメイク版)

 

 

静岡県・ヤジマスタジアム前

 

目の前にそびえ立つ、巨大なガラスドーム。ガンプラバトルの聖地、ヤジマスタジアム。

明日からここで、第14回全日本ガンプラバトル選手権・中高生の部(個人戦)の本選が幕を開ける。

 

「いよいよ、全国か……」

 

スタジアムを見上げる新堂陽哉の胸に、かつてない高揚感と、心地よい緊張感が突き上げていた。

 

いつもならプレッシャーに押し潰されそうになるところだが、今の陽哉の背中には、支えてくれるたくさんの人々の想いがあった。

 

恋人である梨子の笑顔、Aqoursのメンバーたちの激励、浦の星女学園の生徒たち、そして内浦の温かい人々。

 

背中のボックスに眠る、隆利と共に創り上げた『デスティニーガンダムインフィニティ』の重みが、陽哉に「大丈夫、やれるさ」という確信を与えてくれていた。

 

「どうした陽哉、圧倒されて足が止まったか?」

 

隣で大きなキャリーケースを引く志木城隆利が、不敵に微笑みながら声をかけてきた。アラン監督への直訴通り、彼は静岡代表である陽哉のセコンドとして、この決戦の地に同行していた。

 

「まさか。モチベーションは最高潮だよ。……さて、それじゃあまずは選手用の宿泊施設に向かいますかね」

 

二人が歩き出そうとしたその時。

 

「よぉ、陽! ――それに、志木城君も一緒か!」

 

背後から聞き覚えのある、芯の通った明るい声が響いた。

 

振り返った陽哉の目に飛び込んできたのは、見上げるような長身に、整った顔立ちをした青年だった。

 

「日向(ひゅうが)兄……!」

 

神宮司日向。幼稚園・小学校からの幼馴染であり、陽哉が唯一、本当の兄のように慕っている存在。そして――激戦区・東京予選を圧倒的な実力で勝ち抜いた、今大会の優勝候補筆頭のファイターである。

 

「元気そうで何よりだ。顔つきが変わったな、陽」

 

日向は優しく微笑み、陽哉の頭をくしゃりと撫でた。そして、隣に立つ隆利に向けてニッと笑いかける。

 

「噂は本当だったんだな、志木城君。まさか君が予選で敗れて、陽のセコンドに付くことになるなんてな」

 

「フッ、お久しぶりです、神宮司日向選手。昨年の全国大会以来ですね」

 

隆利はフッと不敵に笑い、日向の手とがっちりと握手を交わした。全国の頂点を争ってきた者同士、そこには確かなリスペクトがあった。

 

「突然静岡に引っ越すって聞いた時は心配したんだぞ? お前、昔から重度のコミュ障だしな。……朱莉(あかり)もめちゃくちゃ心配してたぞ。たまには連絡してやれよ」

 

「朱莉先輩か……」

 

陽哉は苦笑した。前の学校(暁高校)で、内向的な陽哉を無理やり生徒会に引っ張り込み、色々な人と関わるきっかけを作ってくれた張本人である。

 

「ま、地元のスクールアイドルの女子マネージャーをやってるって聞いた時は、耳を疑ったけどな。安心したわ」

 

日向の言葉に、陽哉は「それはまぁ、色々と縁があってさ……」と頭を掻いた。かつてのライバルと、昔からの兄貴分。二人の王者に挟まれながら、陽哉たちは賑やかに昔話に花を咲かせ、選手宿舎へと移動した。

 

 

 

カラン、とホテルのエントランスをくぐり、広大なロビーに入った瞬間。

それまでザワついていた空間が、一瞬にして静まり返った。ロビーにいた全国の猛者たちが、一斉に陽哉たちへと視線を注いだのだ。

 

(うわ……めちゃくちゃ見られてる……。視線が痛い……っ)

 

元来のコミュ障が頭をもたげ、陽哉は思わず日向の背中に隠れそうになった。

 

「さすが日向兄だね。優勝経験者で、今年も優勝候補だから、みんな注目してるよ」

 

陽哉が小声で呟くと、日向は首を横に振った。

 

「いやいや陽、違うぞ。奴らの視線の9割は、お前と志木城君に向いてる」

 

「えっ?」

 

「何せ、大会2連覇中の絶対王者『ガンプラ学園』のトップを破って、静岡代表をもぎ取ったダークホースだ。しかも、あのルーカス・ネメシスやキジマ・ウィルフリッドともバトルして勝ったことがあるっていう噂まで流れてる。おまけに、その破ったはずの志木城隆利をセコンドに従えてるんだ。注目されないわけがないだろ」

 

「マジっすか……。つーか、見ないで……恥ずかしい……!」

 

顔を真っ赤にしてうつむく陽哉の横で、隆利は腕を組み、「フッ、これくらいで怯むな、陽哉。お前はそれだけのことを成し遂げたんだ」と堂々としたものだった。

 

「――よぉ、去年ぶりだな、日向。……それと、志木城!」

 

ロビーのソファから立ち上がり、こちらへ歩いてくる背の高い男がいた。

日に焼けた健康的な肌に、屈屈のない弾けるような笑顔。

 

「大河(たいが)か。相変わらず元気そうだな」と日向が応じる。

 

鹿児島代表、湊大河。3年前の全国王者であり、一昨年の準決勝で――志木城隆利に敗れた男。だが、全国の常連同士、彼らもまた気心の知れた仲だった。

 

「おいおい志木城! てめえを倒してリベンジするのを楽しみにしてたってのに、セコンドってのはどういうことだ!」

 

大河がガシガシと頭を掻きながら隆利に突っ込む。

 

「俺を破った男がそこにいる。文句があるなら、こいつを倒してみせろ」

 

隆利が顎で陽哉を示すと、大河は極上の笑顔になって陽哉の肩にガシッと腕を回してきた。

 

「へぇ! 君が新堂陽哉くんかい! 俺は鹿児島代表の湊大河だ。よろしくな!」

 

「よ、よろしくおねがいします……っ」

 

いきなりの距離感の近さに陽哉は硬直する。

 

「緊張すんなって! 出会った奴はみんな友達さ! 仲良くしようぜ!」

 

大河は親指で自身の胸を指し、不敵に笑った。

 

「まぁ、今回勝つのはこの俺だけどな! 優勝トロフィーは鹿児島に持ち帰らせてもらうぜ!」

 

「おいおい、俺を目の前にしてよく言うよ。それはこっちのセリフだぜ?」日向が目を細める。

 

「あのさ……悪いけど、俺も負けるつもりでここに来たわけじゃない。今年は、俺とインフィニティが優勝する」

 

陽哉が大河の腕をすり抜け、二人の目を見据えて言い放つと、日向と大河は同時に吹き出した。

 

「ははは! 言うようになったじゃねぇか、陽!」

 

「いい顔するねぇ! ゾクゾクしちゃうよ。ま、俺と当たるまで負けるなよ、陽哉?」

 

「そういう大河さんこそ。俺の前にたどり着く前に負けないでくださいね」

 

「言ってくれるねぇ! あ、俺のことは大河でいいぜ。ほら、『ミナト』だと、心形流のサカイ・ミナトと被るからさ!」

 

大河は笑いながら、ふと真面目な顔になって陽哉に顔を近づけた。

 

「ところでさ……陽哉。……今日、ダイヤ様は一緒じゃないのか?」

 

「は? ……ダイヤ様?」

 

「決まってるだろ! Aqoursの黒澤ダイヤ様だよ!! お前、Aqoursのマネージャーなんだろ!? 俺、ネットで『未熟DREAMER』のライブ動画を見てから、もう完全に心を奪われちまったんだ! あの凛とした佇まい、圧倒的な大和撫子感……まさに俺の理想、俺のドリームそのものなんだよ!!」

 

大河のあまりの熱量に、陽哉は一歩引いた。

 

「え、えーと……つまり、ダイヤ姉さんに惚れてしまった、と……?」

 

「ダイヤ姉さん……!? おい陽哉、お前ダイヤ様とどういう関係だ!?」

 

大河が陽哉の両肩を掴んで激しく揺さぶる。

 

「ダイヤ姉さんは小さい頃からの幼馴染で、近所のお姉ちゃんみたいなもんで……」

 

「なん……だと……!? 幼馴染!? なんという圧倒的アドバンテージ……! まさか、お前が俺の最大の恋のライバルなのか!?」

 

「いやいやいやいや!!」陽哉は全力で手を振った。

 

「違います! 俺はダイヤ姉さんのことは文字通り姉貴としか思ってないし、そもそも俺、他にちゃんと付き合ってる彼女がいますから! 安心して下さい!」

 

この爆弾発言に、大河だけでなく、幼馴染の事情を知る日向までが「ぶっ!?」と目を見開いた。隆利は内浦での下宿生活を思い出し、「やはり桜内か」と静かに頷いている。

 

「お前に、彼女……!? 嘘だろ、あのウブでコミュ障の陽に!?」

 

日向が驚愕する。

 

「マジか……! じゃあ、障害は取り除かれたわけだな!? 陽哉、頼む! 俺とダイヤ様の架け橋になってくれ! 応援してくれたら、ガンプラバトル以外の事なら何でもお礼するからよ!」

 

「はぁ……まぁ、善処しますが……」

 

(あの堅物でプライドの高い生徒会長に、この熱血男が通用するんかなぁ……)と、陽哉は内心で冷や汗を流しつつ、これ以上ロビーにいると注目されすぎて胃が痛くなるため、逃げるように自分の部屋へと退散した。

 

 

 

 

選手宿舎・陽哉の部屋

 

「でさぁ、お前の彼女って誰なんだよ? ぶっちゃけ予想はついてるけど、幼馴染のお兄ちゃんとしては、敢えてお前の口から聞きたいなぁ?」

 

「そうよ、一体誰なの? 聞かせなさい、陽くん!」

 

部屋のベッドに勝手に腰掛け、ニヤニヤしている日向。そして、なぜかその隣には、日向と付き合っている高校の先輩・戸澤朱莉(とざわあかり)までがちゃっかり座っていた。

 

「はぁ……。日向兄も朱莉先輩も、なんで俺の部屋に上がり込んでるんですか。……梨子だよ。桜内梨子」

 

「やっぱりな!」

 

「引っ越し先が同じなんて運命だと思ってたのよ! うんうん、よかったよかった!」

 

ひとしきり二人に根掘り葉掘り経緯を聞かれ、ノロケ話を絞り出された陽哉は、精神的にクタクタになった。朱莉先輩をホテルまで送る時間になり、ようやく二人が帰っていった時、陽哉は深くベッドに沈み込んだ。

 

「災難だったな、陽哉」

 

パイプ椅子に座り、ノートPCで明日の対戦データをチェックしていた隆利が声をかけてくる。

 

「本当にね……。でも、いよいよ明日か」

 

明日は開会式の後、AブロックとBブロックの試合が行われる。陽哉の『デスティニーガンダムインフィニティ』が出陣するDブロックは明後日だ。

 

だが、明日のBブロック第二試合には、去年の全国準優勝者――北海道代表の鹿角星斗(かづのせいと)の試合が控えている。

 

「鹿角、か……。あいつの『アストレイシャドウフレームリヴァイ』は、一筋縄ではいかないぞ。俺も去年は決勝でギリギリまで追い詰められた」

 

隆利の眼光が鋭くなる。

 

「ああ。Saint Snowの二人(聖良・理亞)の従兄弟なんだろ。どんなバトルをするのか、しっかり見極めさせてもらうよ」

陽哉は静かに目を閉じ、明日の決戦へと想いを馳せた。

 

 

 

 

翌日、ヤジマスタジアムは超満員の観客の熱気に包まれていた。

 

ド派手な演出と共に始まった開会式。ゲストには、ガンプラ界の生ける伝説、三代目メイジン・カワグチが登壇していた。

 

『それでは最後に、メイジンから選手たちへ一言、お願いいたします!』

 

マイクを持ったメイジンが、サングラスの奥の鋭い視線でスタジアムを見渡す。

 

『この大会に参加しているファイター諸君。皆、実にいい顔をしているな。日頃、自らがガンプラに注いできた情熱と成果を、この聖地で思う存分に発揮し、大いに楽しんでくれ! ガンプラバトルは、自由だ!』

 

おおぉぉっ! と地鳴りのような歓声が上がる。

 

「素晴らしい激だ。胸が熱くなるな」

 

隆利が呟く。

 

「ああ。折角の全国の舞台だ。俺も思いっきり暴れてやるよ」

 

開会式が終了し、選手用の観覧席へ移動しようとした通路でのことだった。

 

「おい、お前が新堂陽哉か」

 

低く、どこか尖った声が陽哉を引き止めた。

振り返ると、そこには黒いジャケットを羽織り、特徴的な形状のサングラス――『FRAME ASTRAYS』バージョン――をかけた小柄な少年が立っていた。北海道代表、鹿角星斗。

 

星斗はサングラスの奥の目を細め、陽哉の隣にいる隆利を睨みつけた。

 

「志木城……。てめえに去年の雪辱を果たすために北海道の極寒の中で腕を磨いてきたってのに……まさか予選で負けてセコンドに回ってるとはな。拍子抜けだぜ」

 

「フッ、言わせておけば。だが、俺を破った新堂陽哉は、去年の俺よりも強いぞ。お前が勝てるかな?」

 

隆利が不敵に返す。星斗はチッと舌打ちし、視線を陽哉へと移した。

 

「そうかよ。なら話は別だ。俺の新たなターゲットはお前だ、新堂陽哉。今年も全国を楽しめそうだぜ」

 

「そうだな。俺もあんたのアストレイとは戦ってみたかった。当たるなら準決勝か。それまで誰にも負けるなよ」

 

「こっちのセリフだ。……あ、そうだ。お前、Aqoursのマネージャーだろ。聖良姉から伝言を頼まれてたんだったわ」

 

星斗がふと思い出したように言った。彼は「聖良の言うことは絶対順守」という家訓(?)の通り、普段は実家の甘味処でアルバイトをしながら、従姉妹の言うことには絶対に逆らえない。

 

「聖良さんから伝言?」

 

「ああ。『未熟DREAMERの動画を見た。こないだのイベントの時と比べて、見違えるほどレベルアップしている。……私たちがAqoursに対して言い放った無礼な言葉の数々、深く謝罪します』……だとさ。おい、聖良姉、あいつらに一体何言ったんだ?」

 

かつて、Saint SnowがAqoursに言い放った「ラブライブは遊びじゃない!」という痛烈な言葉。それを思い出し、陽哉は苦笑いするしかなかった。

 

「あー……それは、今度本人から直接聞いてくれ」

 

「ふん、まぁいい。伝言は伝えたからな。……じゃあな。俺の極限のビルド、特等席で見てな」

星斗はそう言って、自らの控室へと歩き出した。

 

(……っていうか、あの鹿角星斗って奴。サングラスで隠してるけど、さっき一瞬、俺のスマホの待受(Aqoursの集合写真)がチラッと見えた時、果南先輩と鞠莉先輩のところをめちゃくちゃ凝視してなかったか……? いや、まさかな……)

 

陽哉は、星斗が「大きいおっぱいには男のドリームが詰まっている」と信じる隠れファンであることなど知る由もなかった。

 

 

 

 

Aブロックの3試合が白熱のうちに終了し、いよいよBブロックの試合が始まった。

第二試合。ステージのプラフスキー粒子が輝きを増す。

 

 

《GUNPLA BATTLE Combatmode startup. Mode damage level set to B》

 

《Please set your GP-Base. Please set your gunpla》

 

「鹿角星斗、ガンダムアストレイシャドウフレームリヴァイ、出るぞ!!」

 

「菅原卓也、ガンダムエアマスター、行きます!!」

 

《Beginning [Plavsky Particle] dispersal. Field, City》

 

 

光が収まると、そこに現れたのは、廃ビルが立ち並ぶ広大な都市フィールド。

そして、星斗がセットしたガンプラが、大地を踏みしめた。

 

「あれが……シャドウフレームリヴァイ!」

 

観覧席から陽哉は身を乗り出した。

 

HGブルーフレームセカンドLをベースに、「幻の6体目のアストレイ」という俺設定でビルドされた機体。その最大の特徴は、全身のフレームが不気味なまでの「漆黒」で塗装されていることだ。

 

対する島根代表・菅原卓也のエアマスターは、即座にファイターモード(飛行形態)へと変形し、上空へと舞い上がった。可変機の機動性を活かした一撃離脱戦法。空を飛べないアストレイにとっては圧倒的不利に見えるが――。

 

「おらおらおらおら!!」

 

星斗は不敵に笑うと、背面にマウントされた巨大な兵装『タクティカルアームズⅡ』を瞬時に変形させ、両腕で保持した。――ガトリングフォーム!

 

 

凄まじい轟音と共に、ビームの弾幕が上空のエアマスターへ向けて掃射される。

 

「そんなものっ!!」

 

菅原は巧みなスラローム飛行で弾幕を回避する。星斗はそれを追うように撃ち続けるが、当たらない。

 

だが、隆利だけは星斗の「真の狙い」に気づき、目を見開いた。

 

「……いや、違う。あいつが狙っているのはエアマスターじゃない!」

 

「え?」

陽哉が凝視する。

 

エアマスターの飛行ルートの先――そこには、一本の巨大な古びた廃ビルがそびえ立っていた。星斗のガトリングは、そのビルの「1階部分の支柱」を正確に蜂の巣にしていたのだ。

 

「もらったァ!!」

 

ドガガガガァン!!

 

支柱を失った高層ビルが、自重に耐えかねて豪快に傾き、飛行中のエアマスターの頭上へと倒壊を始めた。

 

「なっ……させるかぁぁ!!」

 

菅原は慌てて機首をひねり、ビルの下敷きになるのを回避しようとする。だが、ビルの崩壊による爆風と視界不良、そして回避運動のせいで、エアマスターの動きが一瞬、完全に止まった。

 

「残念!!」

 

その隙を、星斗は見逃さなかった。

 

シャドウフレームの背部スラスターが火を噴き、ボクサーのような凄まじい瞬発力で跳躍。ビルの破片を蹴り飛ばしながら、エアマスターの懐へと肉薄する。

 

「なるほど……! ビルの倒壊は相手を潰すためじゃない、逃げ道を限定させて『隙』を作るためか!」

 

陽哉が叫ぶ。

 

「上がらせねぇよ!!」

 

星斗の声と共に、タクティカルアームズが巨大な両刃の剣――**ソードフォーム**へと一瞬で変形。

 

閃光が走った。シャドウフレームがすれ違いざまに放った一閃は、エアマスターの美しい主翼を根元から完璧に叩き切っていた。

 

「あ、足が……っ!?」

 

バランスを崩し、地上へと墜落するエアマスター。菅原も意地を見せ、手にしたバスターライフルで至近距離から連射する。だが、星斗のシャドウフレームは、肩部のフィンスラスターをミリ単位でマニュアル制御し、まるで踊るようにステップを踏んでビームをことごとく紙一重で回避してみせた。その超絶的な操縦技術は、まさに原作の「叢雲劾」を彷彿とさせる。

 

「終わりだ」

 

サングラスの奥の目をギラリと光らせ、星斗が吠える。

漆黒のフレームが躍動し、大剣が空間ごと引き裂くように振り下ろされた。

エアマスターの胴体が真っ二つに両断され、大爆発がフィールドを包み込む。

 

《BATTLE ENDED. WINNER: SEITO KAZUNO》

 

「強い……。あれが北海道の『北の皇帝』、鹿角星斗……!」

 

爆炎の中で静かに大剣を背中に回す漆黒のアストレイを見つめながら、陽哉の身体は、ゾクゾクとした歓喜で震えていた。拳が自然と強く握りしめられる。身体の奥底から、熱いマグマのような闘志がウズウズと湧き上がってくるのが分かった。

 

全国大会。そこは、想像を絶する怪物の巣窟だった。

 

圧倒的なお兄ちゃんオーラを放つ日向兄。

 

一瞬で距離を詰めてくる元王者・大河さん。

 

そして、執念と超絶技術の塊である星斗。

 

まだ見ぬ他ブロックの強豪たちも含め、この最高の舞台で彼らと刃を交えられると考えただけで、テンションが狂いそうになる。

 

「まずは、明日の俺の初戦だ。……派手に暴れてやるよ。なぁ、相棒」

 

陽哉は胸のケースにそっと手を当てた。

 

この『デスティニーガンダムインフィニティ』には、梨子の、隆利の、みんなの想いが詰まっている。絶対に負けられない。いや、負ける気がしない。

 

最高の仲間と最高のガンプラと共に、新堂陽哉の全国大会が、今、静かに幕を開けようとしていた。

 

 

 

続く

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