ガンダムビルドファイターズ-Sailing to the Sunshine- 作:陽@曜花推し
「ついに、準決勝か……」
振り返れば長かったような、あっという間だったような、不思議な感覚だった。
だが、目指す全国制覇の頂は、もう目の前まで迫っている。
「陽君、大丈夫?」
「あぁ、問題ないよ」
多忙な練習の合間を縫って、Aqoursのみんなが会場まで応援に駆けつけてくれていた。今日の試合を観客席で見届けてくれるらしい。控室に残った梨子以外のメンバーは、一足先にスタンドへと向かっていた。
李衣菜たちガンプラ心形流のメンバーが総出で修復してくれたおかげで、俺の相棒・デスティニーガンダムインフィニティは完璧なコンディションを取り戻している。
「陽君、がんばってね!」
「おう、任せとけ!」
梨子の温かい笑みに背中を押され、俺は静かにバトルステージへと足を踏み入れた。
ステージの反対側から歩み寄ってきたのは、北海道代表「北の黒い皇帝」――鹿角星斗だ。
「よぉ、ついにこの日が来たな」
「あぁ。最高の舞台だな」
「負けねぇぞ、陽哉」
「こちらのセリフだ。――じゃ、そろそろ始めるか」
「あぁ、決着をつけようぜ!」
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《GUNPLA BATTLE Combatmode startup. Mode damage level set to “A”》
《Press set your GP-Base》
《Press set your gunpla》
《Beginning [Plavsky Particle] dispersal. Field06, moon》
漆黒の宇宙と、白い静寂が広がる月面フィールド。
「新堂陽哉、デスティニーガンダムインフィニティ、出るぞ!」
月面に降着したインフィニティのセンサーが、直後に異常な速度で接近する高エネルギー反応を捉えた。
(……速い!? シャドウフレームリヴァイって、こんなスピードが出せたか!?)
まさか、新型か!?
モニターにズームインされた機体は、鋭角な装甲と背部の巨大なバインダーに身を包んでいた。
「あれは……マーズジャケット……!?」
「元々は志木城のゼルクガンダム……あのトランザム対策用に用意していた俺の切り札だ。その名も――ガンダムアストレイ シャドウフレーム ヴォワチュールジャケット!!」
通信越しに星斗の不敵な声が響く。
マーズジャケットのフレーム構造に、VL(ヴォワチュール・リュミエール)の推進用リングを組み込んだカスタム機。
「なるほどな……隆利の超加速に対抗するための機体ってわけか」
「そういうことだ。だから勝てると思うなよ! 速いのはお前だけじゃねぇんだよ!!」
星斗は即座にライフルを投げ捨て、バインダーから大型ビームソードを引き抜くと、赤黒い光の尾を引いて急降下してきた。
「ちっ……!」
間一髪で回避し、月面の砂を巻き込んで着地する。
ならばこちらも応戦するまで。背部ロングライフルをパージし、複合兵装防盾システムから高エネルギー長射程ビーム砲<レーヴァテインⅡ>を取り出した。
「なんだ? ライフルは使わないのか?」
シャドウフレームも月面へと降り立ち、ビームソードを悠然と構える。
「あぁ。お前相手じゃ、射撃なんてそうそう当たりそうにないからな!」
「ハッ、なるほどね。考えることは同じってわけか!」
「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」
月面の静寂を切り裂き、二条の閃光が激突した。
レーヴァテインⅡの重厚な刃と、大型ビームソードが火花を散らし、激しい衝撃波が周囲のクレーターを削り取る。
「はぁ……はぁ……相変わらず凄まじいな!」
「へっ、そういうお前こそな!」
鍔迫り合いから距離を取り、互いに距離を置く。
「速いのは俺だけじゃないって言ったな、星斗。……なら、試してみるか?」
「いいぜ……乗った!!」
互いに武器スロットからヴォワチュール・リュミエールを全開選択。機体背面の光の翼が、眩いばかりの粒子を噴射させた。
「「ヴォワチュール・リュミエール……全開(フルドライブ)!!」」
ドォンッ!!
一瞬で音速の壁を突き破り、月面を超高速で駆け抜ける2機。
残像だけを残し、星と月輪の光の下で幾度となく刃を交錯させる。
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観客席では、Aqoursのメンバーたちが言葉を失ってモニターを見つめていた。
「お、お月様がとんでもないことになってるずら……!」
「ピ、ピギィ……ッ!」
花丸とルビィが引きつった声を上げ、善子が目を丸くする。
「なによあれ……クレーターが勢いよく増えまくってるわね……」
「月面の観測施設も、あの2機が通り過ぎるたびに木っ端微塵になってるし……」
果南が苦笑いを浮かべると、ダイヤがふとモニターの地図データに目を留め、青ざめた。
「ちょっと待ちなさい……あの2機の現在進行方向にある都市は……まさかフォン・ブラウン市ではありませんこと!?」
「間違いないねぇ、一直線に向かってるよ♪」
鞠莉が楽しそうに指をさし、曜と千歌、梨子が顔を見合わせる。
「……もしかして」
「えっと……」
「都市……壊滅……?」
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2年生たちの嫌な予感は、見事に的中した。
フォン・ブラウン市街地へと雪崩れ込んだ2機は、高層ビルの間をぬうように超高速バトルを継続。
「おらぁぁぁ!!」
「やらせるかよ!!」
インフィニティのレーヴァテインⅡが一閃され、巨大な高層ビルが真っ二つに破壊される。
「お返しだぁぁぁ!!」
「当たるかよ!!」
追撃するシャドウフレームのビームソードが斜めに一閃、隣の複合ビル群が粉々に崩れ去る。
……そんな破壊劇を数分間繰り返した結果、月面都市フォン・ブラウンは、跡形もなく見事な更地へと変貌を遂げていた。
「や、やっちまったずら……」
「ピギィ……」
「ま、まあ、あくまでガンプラバトルだしね! 人はいないんだし……うん!」
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崩壊した都市の瓦礫の上で、2機は再び相対していた。
「このままじゃ埒があかねぇ……つーか、都市ひとつぶっ壊しちまったな」
「あぁ……盛大にやっちゃったよ」
一瞬だけ罪悪感が頭をよぎったが、まあAIのダミー都市だし人はいない。気を取り直すとしよう。
「そろそろ……決めるか」
「そうだな!」
星斗の目が、勝負師のそれに変わる。
「なら見せてやるよ……これが俺の全力だぁぁぁ!!」
シャドウフレームが2本のビームソードを直列に連結させると同時に、機体各部から抑えきれない高濃度粒子が噴出させた。連結されたソードの刀身から、月を覆わんばかりの超巨大なビームの刃が立ち昇る!
「そういや、技名考えてなかったな……ま、いいや! 行くぜ陽哉ぁぁぁ!!」
「マジかよ……ライザーソード並のサイズじゃねぇか! 直撃したら消し飛ぶぞ……!」
だが、引き下がる選択肢なんてない。
「いいぜ……受けて立つ!! シャイニングバースト!!」
「いけぇぇぇぇぇぇぇ!!」
星斗が全身の体重を乗せ、天を突く巨大な光の刃を振り下ろす!
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
インフィニティは両腕を掲げ、シャイニングバーストの粒子フィールドでその巨大な光刃を真っ正面から受け止めた!
「俺の渾身の攻撃を受け止めたあぁ!? だが――ッ!!」
圧倒的なエネルギー質量。インフィニティの足元が月面の岩盤を深く削り、ジリジリと押し込まれていく。
このままでは押し潰され、機体ごと消滅させられる。
だが――負けられない。
俺は一人でここまで来たんじゃない。隆利が、恵里菜が、李衣菜や心形流のみんなが、Aqoursのみんなが……そして梨子が! 俺を信じて支えてくれたみんながいる!
「ここで……折れてたまるかぁぁぁ!!」
全身の神経を鋭研させ、プラフスキー粒子との完全同調――アシムレイトを発動!
「俺とインフィニティを……舐めるなぁぁぁぁ!!」
緑の閃光が爆発的に膨れ上がり、押し込まれていた巨大な光刃を、両腕の力だけでジワジワと押し返し始める!
「なっ……押し返されているだと!? バカな!!」
「インフィニティは……伊達じゃないッ!!」
「ぐ、ぬおおぉぉぉぉぉ!!」
ついに押し戻された超光刃は限界を迎え、星斗の機体の粒子残量が底を突いた。大技のオーバーロードに耐えきれず、シャドウフレームの各部から連続爆発が巻き起こる。
「星斗……楽しかったぜ」
「……あぁ、俺もだ。粒子も空だ……俺の負けだ……」
「そっか。……俺も、ちょっと無理をさせすぎたな」
限界を超えた負荷により、インフィニティの両腕も爆発を起こして火花を散らす。
だが、先にシャドウフレームの粒子が途絶え、戦闘不能の判定が下されたのだった。
《BATTLE ENDED》
〈勝者、静岡代表 新堂陽哉選手!〉
「ったく……俺の大技をνガンダムばりに押し返してくれやがって」
ポッドから出てきた星斗が、頭を掻きながら呆れたように苦笑いを浮かべる。
「いやいや、まさかライザーソード並みにデカいビームの刃が飛んでくるとは思わないだろ。マジで焦ったぞ」
「ふっ、今回は負けを認めてやるよ。だが次はこうはいかねぇからな」
「言ってろ。俺だって負ける気なんてハナからないよ」
「ま、俺に勝ったんだ。絶対に優勝しろよ……とは、軽々しく言えねぇな。次の準決勝第2試合、どっちが勝ち上がってこようと厳しい戦いになるぞ」
「あぁ、分かってる。だけど、星斗の分まで暴れてきてやるよ」
「頼んだぜ。……だが、その前にまずお前のガンプラを直さねぇとな」
星斗の視線の先には、両腕が弾け飛び、全体的にボロボロになったインフィニティの姿があった。
「いいのか? お前、負けた直後だぞ」
「構わねぇよ。……ただし! ひとつ条件がある」
ニヤリと不敵に笑う星斗。嫌な予感がする。
「なんだよ、条件って?」
「果南さんと鞠莉さんに会わせてくれ!!」
「……は?」
思わず聞き返してしまった。まさかそんなお願いが飛んでくるとは。
そういえば、萩島の件の直後にAqoursのみんなと電話をつないだ時、星斗が『果南さんと鞠莉さんと……』ってモジモジ呟いていたのを思い出した。
「お前、もしかしてふたりのファンなのか? まぁ、確かにあのふたりは超絶美人だけどさ」
「そうだろう! 同じ高校3年生の聖良姉とはまた違った、あのお姉さん感がたまらんのだよ!」
「じゃあダイヤ姉さんは? 同じ3年生だろ?」
「いや……ダイヤさんはなんか、聖良姉と雰囲気が似てて身構えちゃうというか……」
あー……なんとなく分かる気がする。しっかり者で厳格な生徒会長タイプだからな。
「まぁいいや。会わせるくらいならお安い御用だ」
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俺の控室兼作業部屋へ移動し、修理の準備を進める。
ダイヤ姉さんはこの後行われる日向兄と大河さんの試合を観戦するためスタンドへ向かったが、それ以外のAqoursメンバーは俺の部屋に集まっていた。
「果南さん、鞠莉さん! サインありがとうございました!」
星斗は大事そうに色紙を抱え、満面の笑みを浮かべていた。
「ふたりとも、いきなり無理言ってごめんな」
「これくらい全然大丈夫だよー。応援してくれるファンがいるのは嬉しいしね!」
果南姉が爽やかに笑えば、鞠莉姉も楽しそうにウィンクする。
「そうそう♪ 大切なファンのためだもん、お安い御用よ! それじゃあ、私たちはダイヤたちと合流して次の試合を見るわね。千歌っちたちにはあまり遅くならないように言っておくわ」
「了解。気をつけてな」
星斗がブンブンと大きく手を振る中、ふたりは手を振りながら部屋を後にした。
「よし、星斗。鼻の下伸びてるぞ。さっそく手伝ってもらうからな」
「合点だ! バッチリ修復してやるぜ!」
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その頃、隣のメインアリーナでは準決勝第2試合――神宮司日向(東京代表) vs 湊大河(鹿児島代表)の激闘が繰り広げられていた。
「オラぁぁぁ!!」
「ちっ……!」
互いの機体はすでにボロボロ。大河のガンダムエクシアⅢが振るうGNソード改の一撃が、日向のガンダムレギルス改が構えるレギルスソードを真っ二つに砕き折る!
「こいつで決めるぜ! トランザム!!」
エクシアⅢの装甲が深紅に発光し、高濃度粒子を爆発させて超高速移動を開始する。
「悪いな大河……今回ばかりは、譲るわけにはいかないんだよ!」
日向はレギルス改のツインアイを鋭く発光させた。
「FXバースト!!」
レギルス改の全身から青いビーム刃が噴出し、FXバーストモードが発動。両腕と両膝のビット発生器がパージされ、機体が青き疾風と化す。
赤と青、極限の超高速バトル。
何度も刃を交錯させ、空間を切り裂く2機。
そして――交錯の瞬間。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
日向の鋭い膝蹴りが、エクシアⅢの右腕を根元から叩き斬った!
「しまった……!?」
「これで……終わりだぁぁぁ!!」
空中で体勢を崩したエクシアⅢの胸部を、レギルス改の右拳が深々と貫いた。
《BATTLE ENDED》
〈勝者、東京代表 神宮司日向選手!〉
「あーあ! 負けた負けたぁ!!」
バトルポッドが開くと同時に、大河が大きなため息をついて天を仰いだ。
「ギリギリの勝利だったよ……」
日向も冷や汗を拭いながら、胸を撫で下ろす。
「今年で高校最後だからな、有終の美を飾ろうと思ってたんだがなぁ」
「悪いな。それは俺も同じなんだ。勝ちを譲るわけにはいかなかった」
「あん? ってことは、お前もう陽哉に勝つ気満々か?」
「いや……あいつはもう、俺の知ってる『弟分』じゃない。最高のファイターだ。誰だって負けるつもりで決勝の舞台には立たないさ」
「違いないな! にしても……明日までに間に合うのか? その機体」
大河が画面に映る満身創痍のレギルス改を見上げる。
「ここまでボロボロだと、たとえ俺が手伝ったとしても明日に間に合うかどうか……」
「心配いらないよ。予備パーツはしっかり持ってきている。両腕と両脚はまるごと交換できるから、それ以外のフレームの補修を手伝ってくれると助かる」
「しゃーねぇな! バトルが終わればお前は俺の最高のダチだ! いいぜ、とことん付き合ってやる!」
「助かるよ、大河。よし、さっそく取りかかろう!」
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作業部屋でインフィニティの装甲を組み直していた俺のもとに、準決勝第2試合の結果が飛び込んできた。
「日向兄が勝ったか……」
昔から背中を追い続けてきた、頼れる日向兄。
実は、今まで何度かフリーバトルをやってきたが、俺が日向兄に勝てた回数は数えるほどしかない。圧倒的な発想力と操縦センスを持つ、最高の壁だ。
だけど――やるからには絶対に勝つ。
「いよいよ明日が最後だ……泣いても笑っても、すべてが決まる」
膝の上に置いたインフィニティの胸部パーツを、力強く撫でる。
「悔いの残らない最高のバトルにしようぜ、インフィニティ」
静かに佇む愛機が、まるで俺の言葉に応えるかのように、ツインアイを微かに光らせた気がした。
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次回に続く