ガンダムビルドファイターズ-Sailing to the Sunshine- 作:陽@曜花推し
ついに、この日がやってきた。
第14回全日本ガンプラバトル選手権・中高生の部 個人戦 決勝戦。
幾多の強豪を薙ぎ払い、死闘をくぐり抜けて辿り着いた、夢にまで見た最高の舞台。
だが……高鳴る鼓動と共に、強烈な緊張が胸を締め付けていた。
相手は――神宮司日向。東京代表であり、幼い頃から俺の目標であり続けた兄貴分だ。
これまで幾度となくフリーバトルを挑んできたが、勝率は散々たるもの。正直に言って、全国王者の志木城隆利や、世界レベルのカリスマたちに匹敵するか、それ以上の圧倒的な強さを誇るファイターだ。
けれど……俺だって立ち止まっていたわけじゃない。
この大会を通して、仲間たちと共に日々進化し続けてきたんだ。
「ここまで来て……負けるつもりなんて、ハナからないぜ。やってやる……!」
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一方、観客席では――。
試合開始まであと10分。Aqoursのメンバーたちは、落ち着かない様子でモニターを見つめていた。
「陽君……大丈夫かな」
梨子が祈るように胸の前で手を握りしめる。
「対戦相手の神宮司選手は、あなたと陽哉さんの幼馴染だと伺いましたけれど?」
ダイヤの問いかけに、梨子は小さく頷いた。
「うん。私たちが幼稚園の頃からの付き合いで……陽君にとっては、本当の本当の『お兄ちゃん』みたいな存在なの。昔の陽君は、ずっと日向さんの後ろを追いかけてたんだよ」
「強いの……?」
千歌が身を乗り出すと、梨子は複雑な表情で「うん……勝った数より、負けた数の方がずっと多いわ」と答えた。
「陽兄ちゃんより強いの……!?」
ルビィをはじめ、曜や花丸までもが不安げに眉をひそめる。
「ちょっと、みんなそんな顔をしないの! 陽が言ってたでしょ? 『ファイターはバトルの中で進化し続ける』って♪」
鞠莉が明るく励ますが、善子が腕を組んで溜息をつく。
「でも、それは相手も一緒でしょう? 神宮司日向って、過去に優勝経験もあって全国ベスト8の常連よ? 怪物じゃない……」
重苦しい空気が漂いかけたその時、果南が静かに、だが力強い声で言葉を紡いだ。
「信じようよ、陽を。陽だって、相手がどれだけ凄いか一番よくわかってる。でもね、最初から負けるつもりであのステージに立つような男じゃないよ!」
「そうだよ! 信じよう! はー君は絶対に勝ってくれるって!」
曜が破顔し、花丸も力強く頷く。
「そうずら! マル達がこんな弱気じゃダメずらよ!」
「うん! 精一杯応援しよう! はー君、ここまでいっぱい努力してきたんだから!」
千歌が笑うと、隣に座る恵里菜も口元を緩めた。
「そうよ。この私を倒して全国に来たんだから……簡単に負けたら承知しないわ」
みんなの温かい言葉に、梨子の心もフッと軽くなる。
「みんな……そうだよね。私たちが信じてあげなきゃ――」
「あらあら、陽の周りにはこんなに可愛い子たちが勢揃いしてたのねぇ。友達を作るどころか、ハーレム築いちゃって……あいつ、やるじゃないの」
「っ!? あ、朱莉先輩!?」
突如背後からかかった聞き覚えのある声に、梨子は目を丸くした。
暁高校生徒会長・戸澤朱莉が、悪戯っぽく微笑みながら立っていたのだ。
「初めまして、 Aqoursのみなさん。暁高校生徒会長の戸澤朱莉です。よろしくね」
「梨子ちゃん、お知り合い……?」
鞠莉の問いに、梨子は「ええ、私と陽君が東京にいた頃のお姉さん的存在なんです」と答えた。
「お久しぶりです、朱莉先輩。陽君の応援ですか?」
「ええ。日向とは幼馴染で、付き合ってるのよ。……でもね、この戦い、どちらが勝つか本当に分からないわ。今までは日向の実力が遥かに上だったけれど、陽だって想像を絶する努力で強くなってきた。大会2連覇の志木城君を破り、あの鹿角君すら倒してここに立ったのよ」
朱莉はステージ中央を見つめ、凛とした表情を浮かべた。
「だから……私はただ、ふたりの戦いを見守るわ。だからあなたたちは、全力で陽を応援してあげて。あなたたちの大切な仲間をね」
「……! はいっ!」
「じゃ、私は友達のところへ行くわね。がんばりなさい」
ひらひらと手を振り去っていく朱莉の後姿を見送り、梨子たちは再びステージへ視線を戻す。
「陽君……がんばって……!」
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ステージ中央。
「よぉ、ついにここまで来たな」
爽やかな笑みを浮かべる日向に、俺は拳を強く握りしめて応える。
「日向兄……」
「泣いても笑ってもこれで最後だ。お前に勝って、有終の美を飾らせてもらうよ」
「俺だって、日向兄を倒して……あの優勝トロフィーを内浦へ持ち帰る!」
「……ふっ、いい顔になったな。全力で行くぞ、陽!」
「ああ!!」
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選手席の別エリアでは、敗れ去ったライバルたちが顔を揃えていた。
「……なんだろうな。俺まで心臓が口から出そうぜ」
星斗がポリポリと頬を掻くと、大河も腕を組んで深く頷く。
「同感だ。星斗、お前昨日陽哉の機体を修理するの手伝ったんだろ?」
「そういう大河さんこそ、神宮司さんの手伝いをしてたじゃねぇか」
「まあな! 決勝はお互い万全の状態でぶつかり合ってほしいだろ? ダチだしな!」
「へっ……違いない」
ふと、ふたりの背後から静かな声がかけられた。
「難しい勝負になるな。神宮司殿の強さは本物だ。だが、陽哉とて極限の死闘をくぐり抜けてきた」
「「うおぁぁっ!? 志木城!?」」
いつの間にか背後に立っていた隆利に、星斗と大河が同時に飛び上がる。
「お前いつからいたんだよ! 全然気づかなかったぞ……!」
「先ほどからだ。……静かに見守ろう。どちらが勝とうと、歴史に残る一戦になる」
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《GUNPLA BATTLE Combatmode startup. Mode damage level set to “A”》
《Press set your GP-Base》
《Press set your gunpla》
《Beginning [Plavsky Particle] dispersal. Field14, debris belt》
無数の宇宙ゴミと崩壊したコロニーの残骸が漂う、デブリ帯。
「新堂陽哉、デスティニーガンダムインフィニティ、出るぞ!」
フィールドに降着したインフィニティの眼前に、日向の愛機・ガンダムレギルス改が姿を現した。背部には大型の漆黒の翼――黒き巨大MA「シド」の翼が移植されている。
「へぇ……改修してきたんだな、日向兄」
『まあね。世界大会用に準備していたカスタムパーツなんだが、急遽組み込んだよ。おしゃべりはここまでだ……始めるぞ、陽!』
「あぁ……来いッ!!」
インフィニティがレーヴァテインⅡを構えると同時に、レギルス改の全身から無数のビームビットが射出された。
『ビット連動展開!!』
自動追尾のビット群に混ざり、日向自身が超高度なマニュアル操縦で制御するビットが交錯する。
「相変わらずの波状攻撃……っ!!」
スラスターを全開にし、デブリの陰をぬうように急回避するインフィニティ。だが、多角的な射線から放たれるビームの網を掻い潜るのは容易ではない。
(このまま逃げ回ってちゃ拉致があかない……! あそこだ!)
漂う巨大なコロニー外壁の陰へ急降下!
追従してきたビット群が制御しきれず、次々と外壁に激突して爆散していく。
「ふぅ……これで少しは減った――」
『甘いよ、陽!』
「なっ……!?」
外壁を抜けた瞬間、俺の進行方向を予測していたかのように、新たなビット群が先回りして円陣を組んでいた!
『マニュアル操作のビットを潜ませるのは読まれているからね。あえて先回りさせておいたのさ!』
「くっ……回避が追いつかない……!?」
さらに、レギルス改のウイングから射出されたのは、フェザーミサイルをファンネル化した独自の誘導兵器――ファンネルミサイル!
直撃を避けるため咄嗟に旋回したものの、至近距離での爆風に煽られ、インフィニティの右脚装甲が粉砕された。
「しまっ……右足が!」
(まずい……このままだと一方的に削られる……何か、打開策は……!)
焦る俺の視界の端に、打ち捨てられた宇宙戦艦の巨大エネルギータンクが映った。
「そこだぁぁぁッ!!」
レーヴァテインⅡを一閃! ビームがタンクを貫き、超巨大な誘爆がデブリ帯を飲み込んだ!
『ビットバリア!!』
日向は即座に全ビットを呼び戻し、機体の周囲に強力な粒子バリアを展開して爆風を完璧に防ぎ切る。
『タンクを狙って攻撃を中断させるとは見事だ。だが――その後の行動も、とっくに読んでいるんだよ!』
爆風の煙を破り、背後から砲撃を仕込もうとしたインフィニティに対し、日向はバリア展開の一瞬の隙にファンネルミサイルを放っていた!
「なっ……読まれていた!?」
間一髪、ライフルから手を離してビームシールドを展開! 激しい衝撃が腕を痺れさせる。
「はは……さすがだな日向兄。まったく隙がない……!」
『ふっ……陽、そろそろ本気(全力)を出そうか』
「……あぁ! 望むところだ!!」
お互いに間合いを突き放し、機体の出力を限界まで解放する!
「シャイニングバースト!!」
『FXバーストモード!!』
緑の光の翼と、全身から噴出する青きビームの刃。
ふたつの限界突破システムが起動し、静寂の宇宙を眩い光で満たした!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
青きビーム刃を纏ったレギルス改と、緑の光の翼を羽ばたかせるインフィニティが、デブリの海で超高速の交錯を繰り返す。
日向もまた、高次元の意識同調――アシムレイトに目覚めていた。
全身から噴き出すレギルス改のビーム刃が、至近距離に肉薄するインフィニティの装甲を容赦なく切り刻む。
「貰ったぁぁぁ!!」
「舐めるな!!」
限界を超えた速度の衝突。
レーヴァテインⅡとレギルスブレードが真っ正面から激突し、互いの高エネルギーに耐えきれず、激しい火花とともに同時にへし折れた!
「悪いな陽……勝たせてもらうぞ!!」
レギルス改がさらに加速する。速い! 武器を失った焦りも与えず、機体各部のビーム刃を振るって怒涛の追撃を仕掛けてくる。
何とかシールドで防ぎ、最小限の旋回で回避を試みるが、蓄積したダメージによってインフィニティの反応速度が落ちていく。
ドォンッ!!
「ぐあぁぁっ……!」
装甲の破壊限界を超え、インフィニティの全身から緑の粒子が霧散する。シャイニングバーストが、ダメージの蓄積により強制終了してしまったのだ。
対するレギルス改の全身には、未だ青く輝くFXバーストのビーム刃が眩いばかりに揺らめいている。
「くっ……ここまで、か……!」
アシムレイトの反動で身体中に激痛が走り、視界がグラグラと揺れる。絶望的な状況だった。
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観客席のモニターに、満身創痍で膝をつきかけるインフィニティの姿が映し出された。
「シャイニングバーストが解けた!?」
「これって……嘘でしょ、ヤバいじゃないの!」
曜と善子があまりの光景に悲鳴を上げる。ダイヤも扇子を握りしめたまま息を呑んだ。
「あちらはまだFXバーストを維持していますわ……! このままでは……!」
誰もが敗北を予感し、息を詰まらせたその瞬間――。
「まだよ……! 陽君は、まだ諦めてなんかいない!」
梨子の叫びにも似た声が響いた。果南も強く頷き、モニターを指さす。
「そうだよ、みんな見て!」
画面の中。片腕と右脚の装甲を砕かれ、全身から煙を吹き出しながらも……インフィニティは残されたレーヴァテインⅡの柄を強く握り直し、ゆっくりと眼前の敵を見据えて立ち上がっていた。
「陽は、まだ諦めていないよ♪」
「そうずら! 陽兄ちゃんを信じるずら!」
「うん! 陽兄ちゃんが諦めてないのに、ルビィたちが諦めたらダメだよ!」
「はー君はきっとやってくれる! 絶対に奇跡を起こしてくれる! だから……最後まで信じよう!!」
千歌の言葉に呼応するように、Aqours全員の想いがひとつになる。
「陽君……いっちゃえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
梨子の魂の叫びが、宙(そら)へと届いた。
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『この状況でも諦めないか。……それでこそだ。強くなったよ、陽。……だが、この圧倒的な差はどうしようもない。悪いが――勝たせてもらう!』
折れたレギルスブレードを構え、レギルス改が青い光の尾を引いて一気に突撃してくる。
(……これで、終わるのか……?)
意識が薄れそうになる頭の中で、一瞬そんな弱音が過った。
日向兄相手にここまで戦えたんだ、全国初出場で準優勝なら上出来じゃないか、と。
(……ふざけるな!!)
俺は歯を食いしばり、自分の弱気を打ち砕いた。
俺は一人でここに立っているんじゃない! 応援してくれる千歌、曜、花丸、ルビィ、善子、果南姉、鞠莉姉、ダイヤ姉さん……そして、誰よりも俺を信じてくれた梨子!
たくさんの人たちの想いと温かさを背負って、俺はここにいるんだ!
ここで終わってたまるかぁぁぁぁぁぁッ!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺の覚悟と叫びに同調するように――インフィニティの胸部から、見たこともない凄まじい光が溢れ出した!
『な……なんだ!?』
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「な、何ですのあれは!?」
ダイヤが立ち上がり、目を見開く。
「すごく綺麗……!」
「クリアパーツだけじゃない……背中の光の翼まで……!」
曜とルビィが言葉を失う。
インフィニティの全身を覆う粒子と装甲のクリアパーツが、鮮烈なカラーシフトを起こしていた。
みかん色(オレンジ)から、サクラピンクへ。
エメラルドグリーン、レッド、ライトブルー、ホワイト、イエロー、ヴァイオレット、そして鮮やかなピンクへ――。
Aqoursの9人のイメージカラーが、幾重もの奇跡のグラデーションとなってインフィニティを包み込んでいく!
「奇跡……だよ……!」
「千歌っち?」
「奇跡だよ!! はー君が諦めなかったから……奇跡が起きたんだ!!」
「そうだね。陽の絶対に折れない強い気持ちが生み出した……僕たちの奇跡だ!」
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(なんなんだ……この温かいエネルギーは……!?)
搭乗している俺自身すら驚愕していた。
機体が軽い。全身の痛みが吹き飛ぶほどの、圧倒的なプラフスキー粒子が高次元で巡っている。みんなの想いが、インフィニティに奇跡の命を吹き込んでくれたんだ!
「今の俺なら……行ける!!」
ドォォォォンッ!!
爆発的な超加速! シャイニングバーストをも遥かに凌駕する光の尾を引き、インフィニティが瞬く間に空間を切り裂く!
『な、何だこの速さはぁぁぁ!?』
日向の焦燥の声。機影すら捉えさせない神速の機動でレギルス改の背後に回り込み、まずは邪魔なシドの巨大な翼を根元から粉砕!
『しまった……ッ!?』
その瞬間、アシムレイトの限界を超えた負荷が脳を揺さぶり、急激に意識が遠のき始めた。視界が白くかすみ、時間が引き延ばされる。
もう時間がない。これが本当に――最後の、一撃だ!
「インフィニティ……ブレイクぅぅぅぅ!!」
右手に集束できるすべての粒子、みんなの想いのすべてを凝縮させる!
『させるかあぁぁぁ!!』
日向が全ビットを射出させ、蜂の巣にせんと集中砲火を浴びせてくる。
だが、そんなものはもう痛くも痒くもない! 砕け散る装甲を無視し、ただ一直線に突き進む!
ボロボロになりながらも、ついにレギルス改の胸部を正面から完璧に捉えた!
「これで……決めるぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
『陽ぃぃぃぃぃぃっ!!』
輝く右拳が、レギルス改のコクピットブロックを深々と撃ち抜いた――。
その瞬間、俺の意識は深い闇へと落ちていった。
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次回に続く