ガンダムビルドファイターズ-Sailing to the Sunshine- 作:陽@曜花推し
こんにちは、桜内梨子です。
ついに待ちに待った夏休みがスタート!
……のはずなんだけど、私たちAqoursはラブライブ!予選に向けて、初日から練習に追われています。
そして今、私たちはなぜか学校の屋上に集められていて……。
「あつーーーい!!」
「ずらぁ……溶けるずら……」
「天の業火が闇の翼を灼き焦がすわ……」
千歌ちゃんも花丸ちゃんもヨハネちゃんも、すっかり干からびている。
ていうか、冷房の効いた部室じゃなくて、なんでわざわざカンカン照りの屋上に呼び出されなきゃいけないの……?
隣にいる陽君を見ると、半ば呆れ果てたような顔で、私たちを呼び出した張本人――ダイヤさんを見つめていた。
「はぁ……暑くて倒れそうだから、早く始めようよ……」
「ふふふ……さて! いよいよ今日から待ちに待った夏休みですわ!」
高らかに宣言するダイヤさんに続いて、鞠莉さんがビシッと指を立てる。
「サマーバケーションと言えば~!?」
「はい! あなたたち!」
「あ! え……やっぱり海……だよね?」
「夏休みはパパが遠洋漁業から帰ってくるんだ!」
「マルはおばあちゃんちに行くずら~」
「夏祭り!」
「夏コミ!!」
「夏といえばT.M.R(西川貴教)だろ?」
……ちょっと待って。ヨハネちゃんの「夏コミ」は百歩譲って共感できるとして、陽君の「T.M.R」って何なの? 貴教なの?
とにかく、この中にダイヤさんを満足させる回答はひとつもなかったみたいで――。
「ぶっぶーっ!! ですわ!!」
けたたましいブザー音が屋上に響き渡る。
「あなたたち、それでもスクールアイドルなのですか!? 片腹痛い、片腹痛いですわ!」
「だったら何だって言うんですか~!?」
「続きは部室で話しますわ。さすがに暑くなってきましたので」
……だったら最初から部室でやればいいじゃない!!
と、いつもなら容赦なくツッコミを入れるはずの陽君。
でも今日の陽君は……ううん、全国大会から内浦に戻ってきてからの彼は、どこかずっと元気がなかった。
「陽君……やっぱり、あの試合のこと……気にしてるの?」
「……気にしてないと言えば嘘になるけどな。だけど、俺も日向兄も持てるすべての力をぶつけ合ったんだ。俺はもう受け入れているよ。――俺の『負け』をさ」
そう言って、陽君は静かに目を伏せた。
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あの日――全国大会決勝の土壇場で、陽君が見せたインフィニティの新たなる姿。
9色の輝きを纏ったその力は、シャイニングバーストをも遥かに超える神速と破壊力を誇っていた。
「……インフィニティ……ブレイクぅぅぅぅ!!」
「まだだぁぁぁ!!」
私たちAqoursの誰もが、陽君の勝利を確信していた。
だけど――両者が激突した次の瞬間、インフィニティの全身から突如として輝きが消え失せ、光の翼も霧のように霧散したのだ。
そのまま動かなくなったインフィニティは、日向さんのレギルス改にもたれかかるようにして沈黙した。
『陽……君……?』
《BATTLE ENDED ―― Winner:神宮司日向!》
試合は、日向さんの勝利という形で幕を閉じた。
判定が下った時、陽君はすでにコクピットの中で意識を失っていたのだった。
急いで医務室へ駆けつけた私たちを迎えたのは、三代目メイジン・川口だった。
『あの土壇場で発動したモード……あれはアシムレイトを超えた超高次元のシンクロ状態だ。日向君に絶対に勝ちたいという執念、そして何より――勝利を信じて待つAqoursの想いに応えようとした彼の心が、プラフスキー粒子と奇跡的な反応を起こさせたのだろう』
『じゃあ、あの9色の輝きも……私たちのために……?』
『ああ。だが……限界を超えた粒子放出とダメージの蓄積により、機体内の粒子は完全に枯渇。さらに、過度なシンクロによって陽自身の精神力も底をついてしまった。それが、今回の敗因だ』
側にいた日向さんも、苦笑いを浮かべながら汗を拭った。
『もし陽の機体と体力が完璧な状態だったら、負けていたのは俺でしたね。……まったく、大した弟分ですよ。今回は……俺の勝ちってことにしておきます』
『納得いかない、といった顔だな』
『ええ、まあね。でも、リベンジの機会なんていくらでもありますから。俺もアシムレイトで限界ギリギリでしたし、少し休ませてもらいますよ』
後から目を覚ました陽君は、メイジンから敗因を聞かされると、素直に自分の負けを納得していた。
『ま、日向兄にリベンジする機会なんてこれからいくらでもあるからな!』
そうやって笑っていたはずなのに……内浦に帰ってきた陽君は、どう見てもどこか思い詰めているように見えたのだ。
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「本当に……どうしたの? 何か隠してない?」
私がじっと覗き込むと、陽君は気まずそうに視線を泳がせた。
「……隠し事っていうかさ。梨子、最初に謝っておく。……本当にごめん」
「え? どういうこと……?」
「……部室に行けばわかるよ」
ますます意味がわからないまま、私たちはゾロゾロと部室へ向かった。
部室に入り、みんなが席についた途端――黒澤姉妹の独壇場が始まった。
「みなさん! 夏と言えば!? はい、ルビィ!」
「たぶん……ラブライブ!」
「さすが我が妹! かわいすぎまちゅねぇぇ! よくできまちたねぇぇ!」
「がんばルビィ!」
「……何なのこの姉妹コント?」
ヨハネちゃんがナイスなツッコミを入れてくれる。というかダイヤさん、なんで急に赤ちゃん言葉なの!?
「コント言うな!! 夏と言えばラブライブ! 本選へと続く予選大会が開かれる季節なのです! 予選突破を目指し、Aqoursはこの特訓を行います!」
バッとダイヤさんがホワイトボードに貼り付けた紙を見て、私は絶句した。
「これは、私が独自のルートで手に入れた……μ'sの夏合宿スケジュールですわ!」
「すごいよお姉ちゃん!」
……遠泳10km!? ランニング15km!?
え、これを私たちがやるの!? 嘘でしょ、死んじゃうよこんなの……!!
青ざめる私隣で、陽君が悲痛な面持ちで頭を抱えていた。
「ごめん……止められなくて……本当にごめん……」
「……陽君?」
「止めたんや……俺は必死に止めたんや……! 『μ'sはこんな地獄のメニューやっとらん! 合宿に付き合わされた俺が全部知っとる!』って言ったのに……『そんなはずはありませんわ!!』って……全然話を聞いてくれへんくて……」
そっか……! 陽君が内浦に帰ってきてからずっと元気がないように見えたのは、ガンプラバトルに負けたからじゃなくて……ダイヤさんにμ'sの情報を強要されて、この地獄の特訓を止められなかったことを悔やんでいたからなんだ!
(……というか、陽君がμ'sと一緒に合宿に行った=他の女の子たちとお泊まりしたって事実は後でじっくり問い詰めるとして……)
スクールアイドルのことになると一瞬でポンコツ化するダイヤさんを止めるのは、さすがの陽君でも無理だったみたい。
「熱いハートがあれば何でもできますわ!」
「ふんばルビィ!」
「ずっと我慢していただけに、今までの思いがシャイニーしちゃったのかもね♪」
能天気な鞠莉さんの横で、ダイヤさんは「さあ! 外で特訓を始めますわよ!」と意気揚々とドアを開け――。
あまりの猛暑と直射日光の暴力に、一瞬で「戦略的撤退」を余儀なくされていた。
その時、陽君がポンと手を打った。
「あ……! そうだ、梨子、千歌! 俺たち今日の昼から『海の家』の手伝いがあるじゃん!」
「あ! そうだった! 自治会で出してる海の家のお手伝いを頼まれてたんだった!」
「そうであります!」
千歌ちゃんと曜ちゃんがピンと敬礼する。果南ちゃんも「あ、私もだ」と思い出したように頷いた。
これで地獄の特訓メニューを回避できる……! そう思った瞬間。
「そんな!? 特訓はどうするんですの!?」
「残念ながら、海の家をおろそかにはできず……」
「サボりたいわけでは決して……」
不敵な笑みを浮かべるダイヤさん。サボりたいのがバレバレだ。
「なら、昼間は全員で海の家を手伝って、涼しい朝と夕方に練習すればいいんじゃないかしら?」
鞠莉さんのナイスアイデアに、花丸ちゃんも「それ賛成ずら!」と乗っかる。
「ですが、それでは練習時間が……」
「じゃあさ、夏休みだし……うちで『合宿』にしない!?」
千歌ちゃんの提案に、陽君も大きく頷いた。
「それがいいかもな。海が目の前だし、移動時間をそのまま練習に当てられる」
これで決まり!……と思ったのも束の間、ダイヤさんがニヤリと笑った。
「決まりですわね。それでは明日の朝4時、海の家に集合ですわ!」
あ、朝の4時ぃぃぃ……!?
はーい、ここからは語り手を俺――新堂陽哉にバトンタッチだ。
まあね、全国大会で日向兄に勝てなかったのはそりゃ悔しいよ。だけどさ、持てる全ての力と粒子を出し切って戦った結果だ。悔いなんてこれっぽっちもない。
それに全国準優勝だぜ? 内浦に戻ってきたらAqoursのみんなも「すごかったよ!」「かっこよかったずら!」ってめちゃくちゃ労ってくれたしな。
ただね……問題はその後なんだよ。内浦に帰ってきた日の夜のことだ。
自室でくつろいでいたら、突然訪ねてきたダイヤ姉さんが、神妙な面持ちでこう切り出してきたんだ。
『陽……μ'sの夏合宿のメニューを入手していただけませんか?』
……は?
一瞬、耳を疑ったね。あの「ラブアロー園田」こと海未姉さんが考案した、あの伝説の地獄メニュー『ウミーズブートキャンプ』を……だと!?
『あの……ダイヤ姉さん、それを使って何をするつもりですか?』
『決まっていますわ。Aqoursの夏の特訓メニューに取り入れるのです!』
このポンコツ生徒会長は自分がどれほど恐ろしいことを言っているのか理解しているのか!?
あんなメニューをそのままAqoursにやらせたら、一日で死人が出るぞ!!
『いやいや! それは絶対にダメですって!』
『断るというのなら……千歌さんに「あなたが東京でμ'sのメンバーとどんなお泊まり生活を送っていたか」を、色付けしてバラしますわよ?』
っっっちくしょう!! ここで最強のジョーカーを切ってきやがった!!
そんな嘘八百を千歌や梨子に吹き込まれたら、俺の平和な日常が物理的に崩壊する!!
泣く泣く海未姉さんに連絡してトレーニングメニューのデータを送ってもらい、プリントアウトしてダイヤ姉さんに渡した。
その上で『μ'sも実際はこのメニューをやらずに普通に練習してたんですよ!』って必死に説得したんだが……。
『そんなはずはありませんわ!! この過酷な特訓をこなしたからこそ、μ'sはラブライブ!で優勝できたのですわ!!』
駄目だ……完全に耳を貸さない。
お願いだから、痛い方向にスイッチが入るのは海未姉さんだけにしてください……。
そんなわけで、俺なりに今日までダイヤ姉さんを説得しようと必死に戦っていたんだ。元気がなかったのはそのせい!
(まあ……切り札の『海の家のお手伝い』でなんとかブートキャンプを回避できたから、あとは俺が現実的な特訓メニューに差し替えれば大丈夫なはず……)
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と、安堵したのも束の間。さらに重大な問題が勃発した。
いつの間にかAqoursのたまり場と化した我が自室。そこでミーティングを行っていた時のことだった。
「ええぇぇっ!? 千歌の家が合宿に使えない!?」
千歌の実家である老舗旅館「十千万」に、急遽大きな団体客の予約が入ってしまい、部屋が全室埋まってしまったらしい。
「ごめんねみんなぁ……」
千歌が目に見えて落ち込んでいる。頭の上のアホ毛までシナシナに萎れていて、正直ちょっと面白い。……じゃなくて!
「部屋が空いてないなら仕方ないよ」
「そうだな。あんまりしつこく食い下がって無理させると、旅館の神様(美渡姉)が怒りのスーパーモードを発動させた上に、シャイニングフィンガーソードで尻子玉を抜きにくるかもしれんし」
「……陽君、美渡さんのことなんだと思ってるの?」
梨子が呆れ顔でツッコミを入れてくるが、世の中には絶対に怒らせちゃいけない人間が存在するんだよ。美渡姉とか美渡姉とか美渡姉とかな!
「じゃあ、合宿はどうするずら……?」
花丸が困り顔で首をかしげ、みんなが唸っていたその時――。
「ふふふ……お困りのようね。話は聞かせてもらったわ!」
扉が勢いよく開かれ、我が母・新堂茜が優雅にポーズを決めて立っていた。
「……うん、マミー。回れ右してどっか行って」
「ちょ!? 陽君冷たい!?」
ロクなことにならない未来が見えたので即座にお引き取り願おうとしたが、マミーは不敵な笑みを浮かべた。
「ママの話を聞きなさい。さもなければ……今日からの夕飯、ポテトサラダにリンゴ、酢豚にパイナップルを大量投入するわよ!」
「……ぜひともお話をお伺いさせてください」
「そんなに嫌なの!?」
おかずに甘い果物をぶち込む攻撃だけは勘弁してくれ! 俺の食卓の平穏がかかってるんだ!
「ふふ、よろしい。……実はね、うちは部屋も余ってるし広いじゃない? だからみんなで新堂家に泊まればいいのよ。パパとママ、明日から1週間夫婦旅行で家を空けるからね!」
そういえば言ってたわ!!
「なるほど……陽君の監視を兼ねて、ということですね」
梨子がニヤリと口角を上げる。
「さすが梨子ちゃん♪ 察しが良くて助かるわ~」
「ちょっと待て!! 監視って何だ監視って! 俺がいつ何か悪さをしたっていうんだよ!?」
「はー君、親がいないとすぐ楽をしようとするから……」
「あー……何でもかんでもコンビニのカップ麺とポテトチップスで済ませようとするんだよね」
千歌と曜がウンウンと頷く。
「それはいけませんわね! わかりましたわおばさま、私たちが責任を持って陽を監視させていただきますわ!」
「少しでも怪しい動きを見せたら……ハグ! だよ♪」
果南姉が爽やかな笑顔で恐ろしいことを言った。
あかん……あのハグはプロレス技の「鯖折り」だ。肋骨が何本か持っていかれるタイプのやつだ……!!
「陽? あきらめなさい♪」
鞠莉姉に肩をポンと叩かれ、俺はがっくりと頭を垂れた。
「……はい……」
(ううう……みんなが十千万で合宿してる間、一人でコーラとポテチをお供に、溜まってた深夜アニメを徹夜で一気見しようと思ってた俺の密かな野望が……!)
儚く散った俺のパラダイス。
だが、背に腹は代えられない。明日からの合宿、なんとしてもこのAqoursを地獄のメニューから守り抜き、最高の特訓にして見せるぜ!
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次回に続く