ガンダムビルドファイターズ-Sailing to the Sunshine- 作:陽@曜花推し
「おい……今すぐにその金髪刈り取ってやろうか(怒)」
……どうも、新堂陽哉です。
現在、絶賛「激おこぷんぷん丸」モードを演出中でございます。
「ちょ、陽!? 落ち着いて!!」
「これが落ち着いていられるかァ!! 1杯10万円の煮込み料理だと!? そんなふざけた価格設定があるかァ!!」
ドガンッと机を叩く俺。
――あ、先に言っておきますけど、これ全部演技ですからね?
昨日の海の家ミーティングで、鞠莉姉が「シャイ煮(10万円)」、善子が「ヨハネの涙(タバスコ地獄)」という悪魔の発想を持ち出してきたので、事前に力づくで潰すための「ブチ切れ作戦」です。
だけど……迫真すぎる演技のせいに、ルビィが涙目になって俺の陰に隠れている。……なんかごめん、後でアイス買ってあげるからね。
「で、ですが! 去年の海の家は隣の店舗に売り上げで敗北しているのですわよ!? ここは都会のお客様にも負けないようなインパクトと高級感を――」
「1杯10万円の謎料理を買いにくる客が内浦のどこにいるんだよ!! そもそもタバスコを一本丸ごとぶち込んだような罰ゲーム料理に人が来るわけねぇだろ! 評判が落ちて客が遠のくだけだわ!!」
「ピギャアァァァッ!?」
よし、ダイヤ姉さん論破!
「この内浦に、普段から10万円札をポンポン持ち歩いてるセレブなんて鞠莉姉くらいしかいねぇよ! それに善子!」
「ヨハネよ!!」
「みんながお前みたいに激辛耐性マックスの闇の眷属(仮)だと思うな! ただ……」
「ただ……?」
恐る恐る尋ねてくる善子に、俺はすっとトーンを落として語りかける。
「……タバスコの量を大幅に減らして、ピリ辛レベルにしなさい。あとタコも入れて『ピリ辛ディープシーたこ焼き』として売れば、普通に名物としてバカ売れする。」
「……た、確かに。全員が私みたいに地獄の業火(タバスコ)に耐えられるわけじゃないものね……分かったわ、採用してあげる!」
「じゃあ、マリーのシャイ煮は……?」
鞠莉姉が捨てられた子犬のような目で見つめてくる。うっ、そんな目で見ないで……罪悪感がすごいから。
「……高級食材を普通の良質な地獄(高級)じゃない食材に変えて。みんなが気軽に買えて、ちゃんとこっちに利益が出る適正価格にするなら許可する。」
「陽ぃぃぃ!! ありがとう!! 愛してるわーっ!!」
「そんな軽い愛してるはいらん。俺には梨子がいるので。」
「……さらっと惚気を入れてこないでよ」
隣で呆れつつも、嬉しそうに頬を緩める梨子。
ふふん、真実を述べたまでよ。
こうして激闘の末、海の家の役割分担が決定した。
〇厨房担当:俺、曜、鞠莉姉、善子
〇ホール担当:ダイヤ姉さん、ルビィ、花丸、恵里菜
〇宣伝・呼び込み担当:千歌、梨子、果南姉
とりあえず、海の家のメニュー壊滅危機は去った。
……問題はここからだ。地獄の『ウミーズブートキャンプ』の阻止作戦へ移行する!
「さて、明日からの練習メニューだが――」
「それはもう決まりましたでしょう? μ'sの伝統たるあのメニューを――」
「おだまらっしゃーーーーーーい!!」
「ピギャアァァァァッ!?」
本日二度目のダイヤ姉さん撃沈。
「いいか……何度も言ってるが、μ'sはあんな人間卒業メニューなんてやってない!!」
「そんなはずありませんわ! あの特訓をこなしたからこそ、μ'sはラブライブ!で優勝できたのですわ!」
「やってないと言ったらやってない!!」
「どうしてそこまで言い切れるのですか! 証拠でもあるとおっしゃるのですか!?」
「……あぁ、あるぜ。今からこの人が説明してくれる。」
俺は無言で、着信中の自分のスマホをダイヤ姉さんに手渡した。
「え……もしもし……? ――え……えええええええっ!?!?」
画面に表示された名前と、受話器から聞こえる声に、ダイヤ姉さんの顔がみるみるうちに真っ青になっていくのだった。
『初めまして、絢瀬絵里です。黒澤さん……話は陽から聞きました。あの練習メニュー……海未がノリで書いたあの練習表のことよね?』
電話越しに聞こえる絵里姉の優しくも威厳のある声。
『ハッキリ言わせてもらうけど、あれは私たちも途中で挫折した……というか、やったら死人が出るから即没になった幻のネタメニューなの。あんなものを後輩のあなたたちが真に受けたら本当に危険よ? 練習の指揮は、全て陽に任せなさい』
「は、はいぃぃぃっ! 恐縮ですわ!!」
直立不動で電話を切ったダイヤ姉さんは、魂が口から抜けかけたような顔で俺にスマホを返してきた。
「……わかりましたわ。合宿の特訓メニューは……全て陽にお任せします……」
「よしっ! 全問題クリア!!」
あまりの急展開に、周りのメンバーが呆然と俺を見つめる。
「ねぇ陽……一体どんな手を使ったの?」
果南姉が目を丸くして尋ねてくるが、俺は口元に人さし指を立ててニヤリと笑った。
「企業秘密。」
「なによそれー! 気になるんだけど!」
恵里菜のツッコミを背に受けながら、俺は「ちょっと電話」と言って部室の外へ出た。
改めて、通話履歴から絵里姉にかけ直す。
「もしもし、絵里姉。助かったよ、グッジョブ!」
『ふふ、効果覿面だったみたいね。……私達のせいで、可愛い後輩たちが酷い目に遭うのは嫌だもの。気にしないで』
電話の向こうで、絵里姉が可憐に微笑む気配がした。
『それにしても……海未みたいな子が、内浦にもいたなんてねぇ』
「いたんだよ……重症な奴がさ。ごめんね、俺が不甲斐ないせいで巻き込んじゃって」
『まぁ仕方ないわよ。あなたと私達の関係を、いとこの子(千歌ちゃん)にバラすって脅されたんでしょう?……ていうか陽、別にバラしてもいいんじゃないの? すでに何人かにはバレてるんでしょう?』
「……返す言葉もございません」
『ふふっ。まぁ、あなたにもいろいろ考えがあるんだろうから、これ以上は言わないわ。とにかく、夏合宿がんばりなさいね』
「うん、ありがとう絵里姉。また連絡するよ」
電話を切り、深呼吸をして部室に戻る。
すると、入口の近くで待っていた梨子がそっと寄り添ってきた。
「陽君……絵里さん、なんて?」
「あー……『千歌にバラしてもいいんじゃない?』って呆れられた。けどさ……まぁ、言うなら最高のタイミングで言いたいし、今はまだ秘密って感じかな」
「そっか。私は陽君の判断でいいと思うよ。……でも陽君、うっかり者だから気をつけなさいね?」
「……重ね重ね、返す言葉もございません(汗)」
実際、黒澤姉妹にバレたのも俺がうっかり口を滑らせたのが原因だからな……反省、猛省である。
「――あ、そうだ梨子。ピアノコンクールの件、どうするんだ?」
俺が不意に切り出すと、梨子は「えっ……!?」と目を見開いた。
「な、なんで陽君がそれを……!?」
「真姫姉から電話があったんだよ。『梨子ちゃん、コンクールの案内届いてるはずだけど大丈夫かしら』って心配してた。同じピアノを愛する後輩として、ずっと気にかけてくれてたんだろ」
「真姫さんが……」
梨子は少し驚いたように視線を落とし、それから寂しげな、けれど決意を込めたような笑みを浮かべた。
「……出ないよ。今は……Aqoursの活動に集中したいから」
やっぱり、そう言うか。
「……梨子がそう決めたなら俺は何も言わない。だけど……後悔しないか?」
「しないよ。さ、明日からいよいよ合宿なんだから! 早く帰って準備しなきゃ」
無理に明るく振る舞い、みんなの輪に戻っていく梨子。
だが……その横顔には、ほんの少しだけ未練と寂しさが滲み出ていたのを、俺は見逃さなかった。
(……絶対に後悔する顔だ、あれは。……よし、ここはあの『太陽』の力を借りるとするか)
千歌なら、きっと梨子の背中を一番良い形で押してくれるはずだ。
「さてと……明日は朝4時集合か。その前に、みんなを迎えるために新堂家の大掃除をしなきゃな!」
俺は腕をまくり、気合いを入れ直したのだった。
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次回に続く