明けましておめでとうございます!
っていつの話やねんって感じですね(笑)
とにかく仕事とプライベートがとても忙しく遅筆となってしまい誠に申し訳ありません。
あとは最終局面に向かってて考えるのに時間が掛かっていました!!
その分楽しんでいただければと思います!
では本編です!!
来る12月27日、いよいよNon Stop Emotion!!解散対バンライブ当日を迎えた。
香澄「見て見て有咲!スッゴく大きな会場!!」
有咲「ま、マジかよ……。こんなデカイ会場でやんのか……」
ライブ会場である有明アリーナの大きさに有咲は緊張と恐怖心を抱いていた。
たえ「あそこにいるのはテレビ局の人かな?」
たえが指差す先にはTKテレビと書かれたロケバスが停まっていた。
有咲「テレビ局までいんのかよ……」
沙綾「そういえばSNSで生中継するって言ってたもんね」
りみ「わ、私達……大丈夫かな……?」
香澄「大丈夫!!」
メンバー内の重いを空気を吹き飛ばすように力強い言葉を放った香澄に、有咲・りみ・たえ・沙綾は視線を向ける。
香澄「私達今までで一番練習したし!!おたえとりみりん、沙綾と有咲がいればきっと最高な演奏ができるよ!!」
沙綾「そうだねぇー」
りみ「そ、そうだよね!?私達なら最高の演奏ができるよね?」
有咲「だな。決戦の舞台を目の前にしてビクビクしてても仕方ないしな」
たえ「こんな大きなステージに立てる機会なんて滅多に無いんだから、目一杯楽しまないと!」
香澄「行こう!!」
たえ・りみ・沙綾「うん!」
有咲「おう!」
香澄を先頭に楽屋に入っていく。
楽屋入口付近は出演者の関係者が多く集まっていた。
その中にSPACEの元オーナーである都築詩船の姿があった。
香澄「オーナー!?お久しぶりです!お元気でしたか!?」
オーナー「あんたらか……。久しぶりだね。見ての通りまだくたばっちゃいないよ。……あんたらもこんな凄いライブに出演するなんて立派になったじゃないか」
香澄「いやぁ、それほどでもぉ」
有咲「自分で言うなよ……。私達が出演できんのは碧志のおかげっつーことを忘れんじゃねーぞ!」
オーナー「碧志?NSEの市ヶ谷碧志かい?」
りみ「はい、有咲ちゃんのお兄さんなんです。オーナーは碧志先生をご存知なんですか?」
オーナー「NSEの最初のライブはSPACEでやったからね。アタシが今回招待されたのもそれが理由さ」
楽屋から緋砂人が出てきた。
詰め寄る報道陣を抑えてオーナーのもとに歩み寄る。
緋砂人「お久しぶりですオーナー」
オーナー「久しぶりだね。こんな死にかけの老いぼれを招待するより、未来ある若者を招待した方が良かったんじゃないのかい?」
緋砂人「ははっ!お戯れを」
有咲「あの緋砂人さんが敬語を使ってる……」
りみ「やっぱり凄い人なんだね。オーナーさんって」
緋砂人「オーナーと出会っていなければ今頃俺達NSEが結成される事は無かったからな。そりゃ俺だって恩人に敬意くらい払うさ」
緋砂人に聞こえないように小声で話していたつもりだったが、緋砂人に聞こえていて驚いた有咲とりみは咄嗟に口を覆った。
オーナー「アンタ程の才能を音楽の神様が放っておくわけないさ。アタシに出会わなくてもきっとアンタはバンドを始めてたよ」
緋砂人「勿体ない御言葉です」
オーナー「それよりホントに辞めちまうのかい?」
緋砂人「はい、このライブを最後に音楽活動から手を引くつもりです」
オーナー「勿体ないねぇ。アンタの歌声なら引く手あまただろうに」
香澄が"うんうん"と数回力強く頷く。
緋砂人「あははっ、ありがとう香澄ちゃん」
オーナー「やりきったかい?」
オーナー言葉に一瞬だけ緋砂人の動きが固まる。
その数瞬後に緋砂人は少し残念そうに首を横に振った。
緋砂人「こんな形で退場ってのは少し不本意ですが、あとは後の時代に任せますよ」
緋砂人はオーナーから目を切るとポピパの5人に視線を向けた。
緋砂人「頼んだぞ、Poppin'Party」
緋砂人がウインクすると5人が嬉しそうに顔を見合わせた。
香澄「はいっ!任せてください!!」
嬉しそうに微笑む緋砂人は有咲がそわそわしている事に気がついた。
緋砂人「碧志を探してんのか?」
有咲「べ、別に探してるっつー訳じゃないですが、会えたらいいなーって……」
ここ数日、碧志は事前準備の為に学校も休んでいて自宅にもほぼ帰宅していない。
NSEの中で最も事務的作業や交渉事に強い碧志は多方面に動き回っていた。
ここ最近は当たり前のように家にいた碧志がいなくて有咲は寂しい。
そんな有咲の胸中を察して緋砂人は有咲の頭を軽く撫でた。
有咲は緋砂人のまさかの行動に体が完全に硬直してしまった。
緋砂人「止めておけ。今は同窓会中だ」
有咲「はぁ!?同窓会?」
緋砂人「アイツにも少し気持ちを落ち着かせる時間が必要って事。それよりPoppin'Partyも早く準備に取り掛かった方がいいんじゃないのか?今日はリハ無し一発勝負だそ?」
沙綾「ゲッ……もうこんな時間!!みんな急ごう!?」
たえ「そーだね」
りみ「楽屋行こっか?」
香澄「楽屋に沙綾パパからの差し入れあるってよー?」
りみ「チョココロネは!?」
沙綾「もっちろんあるよ♪」
有咲以外の4人が楽屋に向けて歩みだす。
有咲は少しばつが悪そうにしてから4人の後に続いた。
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一方その頃、小さな別室では碧志とまりながギターを弾いていた。
碧志「悪いな月島。音出しに付き合って貰って」
まりな「全然だよ♪それより体調はどう?」
碧志「体調は悪くない。ギターのセッティングもバッチリだ。これならいい演奏ができると思う」
碧志は強がって見せたが指先が震えている。
その仕草をまりなが見落とす事は無かった。
まりな「市ヶ谷君……指が震えてるよ?やっぱりこんな大きな会場だと緊張する?」
碧志「いや、緊張はしていない……大丈夫だ……」
それでも尚、碧志の指の震えは止まらない。
そんな碧志の手をそっとまりなの両手が握る。
まりな「私には強がらなくていいし、本音を隠さなくていいよ?市ヶ谷君のホントの気持ちを聞かせて?」
碧志「…………バンドを解散してからずっと思うようにギターが弾けなくて、最近やっと思う通りに弾けるようになったのに、今日またあの状態に戻ったらどうしようかと不安で仕方ない。実際、弾けなくなった理由は分からないままなんだ」
緋砂人は碧志が高いレベルの相手との演奏でなければ本領を発揮できない妙な癖の事を碧志本人には話していない。
それはどんな理由であれ、本人が乗り越えるしかないと理解しているからだ。
緋砂人は天才故に人の気持ちを汲むことに疎い。
だからこそ碧志が不安になっていることなど知るよしもない。
そんな緋砂人の足りない所を、昔からずっと碧志を見ているまりなの言葉が補っていく。
まりな「そっか……話してくれてありがとね。大丈夫!市ヶ谷君、この1ヶ月物凄く練習してたもん!練習は裏切らないよ!」
碧志「月島……」
まりな「それにNSEには凄いメンバーがいるんだから、市ヶ谷君がミスしたってそれを帳消しできる演奏をしてくれるって!」
まりなは『冗談だよ?』とはにかむ。
自然と指の震えは止まっていた。
まりなの笑顔に心落ち着かせた碧志も慈しむように微笑みかける。
まりなは少し目を見開くと、数回咳払いしてから話を続けた。
まりな「私の話を少しだけしてもいいかな?」
碧志「あぁ、聞かせてくれ」
まりな「私ね?中学卒業してから何度か市ヶ谷君を見てるんだ?」
碧志「そうなのか?だったら声を掛けてくれたら良かったのに」
まりなは少し寂しそうな表情を浮かべると再び話を続ける。
まりな「最初に見かけたのは友達に誘われて行った、市ヶ谷君の高校の文化祭の軽音部のライブでね?市ヶ谷君は中学の時からギターが巧かったけど、高校に入って更に巧くなってるなって感じたの。……それから三年間、毎年市ヶ谷君の高校の軽音部の文化祭ライブは観に行ったんだけど一度も出てなかったから、ギターを辞めたんだって思ってた」
碧志「高校の軽音部は、色々あって退部したんだ。ギターもその時に辞めようと思ってたんだが、あるキッカケでやる意味を見出だせたおかげでギターを辞めなかったけど、バンドに所属するのは抵抗があったからどこのバンドにも所属せず個人練習をメインにギターを続けていたんだ。月島が毎年文化祭に来てくれているとは知らなくて、挨拶もできなくてスマナイ……」
まりな「私が勝手に通ってたんだから、市ヶ谷君は謝らなくていいの♪」
まりなは碧志の顔の前で人差し指を立て、謝罪は不要と言わんばかりに人差し指を左右に振った。
まりな「その次に会ったのは大学生になってからかな?私も別のバンドでプロを目指しててね?SPACEでライブをする機会があったんだけど、それがちょうどNSEの初ライブだったの」
碧志「あのライブに月島も参加していたのか!?」
まりな「そうだよ~。市ヶ谷君全く気づかないんだもん」
碧志「だったら声を掛けてくれたら良かったのに」
まりな「ホントはね?ライブ後に感想を兼ねて声を掛けようと思ってたの。でもライブが終わってから声は掛けられなかった……」
碧志「???」
まりな「市ヶ谷君達、NSEの音楽は圧倒的過ぎたの。正直、こういう人達がプロになるんだなって痛感させられた。偶然だけどあの日のライブはプロを目指してるバンドが何組も出演してたけど、2.3組は自信喪失してプロを諦めたんだって」
碧志「…………」
碧志は言葉に詰まった。
実力が全ての厳しい世界だって分かってはいても、誰かが夢を諦める理由に自分達がなってしまった事実に罪悪感を覚えた。
まりな「私は別の理由でプロになるのは諦めちゃったけど、それからはずっと私は市ヶ谷君のファンなんだ!!…………えっと……つまり!私が言いたいのは!!」
まりなは胸を張って碧志と向き合う。
まりな「一番長く市ヶ谷君のギターを見ている私が保証します!!今日の市ヶ谷君は最高の演奏ができます!!」
碧志「月島……。ありがとう!!」
碧志は指の震えが完全に止まっている事をしっかり確認するように何度か手を開閉する。
まりな「……そうだ!!市ヶ谷君!!」
何かを思い付いたように両手を叩いたまりなは人差し指を立てて碧志に提案する。
まりな「リラックスできる体操しない?私が補助するから」
碧志「体操?構わないぞ?」
まりな「それじゃあ、立ってくださ~い♪」
碧志はまりなに言われるがままに立ち上がる。
まりな「まずは両手を広げて両足を肩幅より大きく広げて?」
碧志「こうか?」
まりな「あってるあってる!!…………そうしたら次は目を閉じてゆっくり深呼吸しようか?」
碧志「あぁ……」
碧志は瞳を閉じる。
視界は遮られ、自分の呼吸音とまりなの動く音、時計の針の音、自分の衣服が擦れる音以外は何も入ってこない。
まりなの両手が碧志の肩を掴んだ。
驚きで碧志は一瞬体を強張らせる。
まりな「転けたりしないように支えるね?」
碧志「あぁ、ありがとう……」
まりな「それじゃあ、深呼吸を続けて?」
碧志は深呼吸を繰り返す。
少しずつ筋肉の緊張が和らいでいき、体がリラックスしていくのを感じる。
どうやら体操に効果はあるようだ。
まりな「大きく息を吸ったら吐き出さずに一旦止めて……」
碧志は言われた通り息を大きく吸い、息を止めた。
碧志の唇に柔らかいゼリーのような物が重なった。
碧志は驚きのあまり目を開く。
目の前には瞳を閉じて自らの唇を重ねるまりなの顔があった。
「「…………」」
数分とも感じられる数瞬を過ぎ、そっと二人の唇は離れた。
「そ、それじゃあ、私行くね!!」
顔を真っ赤にしたまりなが部屋から駆け足で出ていった。
碧志は顔を真っ赤にして自らの唇を押さえる。
数分前までの不安は、思い出せないくらいの強い刺激で上書きされてしまった。
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稲葉緋砂人は緊張しない。
なぜ緊張しないのか?
彼は自らの才能を信じて疑わないからだ。
しかし彼は今緊張している。
なぜか?
それは視線の先に人生で最も憧れている男を捉えているからだ。
緋砂人は声を掛けたい気持ちと憧れの男を目の前にした緊張感との間で揺れ動いていた。
湊父「やぁ友希那、リサちゃん。調子はどうだい?」
リサ「お久しぶりでーす☆アタシは調子いいですよ!」
友希那「私も悪くないわ」
湊父「二人がこんな大きな会場でライブをするなんて、感動だよ」
湊父は腕を組み、何度か頷いた。
しかし友希那は逆に納得していない様子である。
友希那「この舞台は私達が用意した物では無いから……。それに……」
友希那の視線が鋭くなる。
友希那「私はあの人には借りがある。SMSのリハと本番での屈辱が……。そして……」
『大切な事に気づかせて貰った』という言葉は口には出さずに自らの胸の内に秘めておく。
友希那にとってRoseliaと向き合う答えを教えてくれた事が一番の借りであると思っている。
緋砂人「俺達はバンドマンだ。借りならステージで返してくれ。もっとも今日の俺の仕上がりは過去イチだからな。他のバンドは俺の引き立て役にしかならないだろう」
この不敵、この自信である。
自分達の会話が聞かれていた事に驚いたリサは咄嗟に頭を下げて謝罪した。
しかし緋砂人は手を横に振り『気にしてねーよ』と返した。
湊父「NSEのボーカルの人だよね?」
緋砂人「ひゃい!!」
友希那(ひゃい?)
リサ(噛んだ……)
緋砂人は咳払いをしてから軽く赤面した表情を整える。
緋砂人「そうです。稲葉緋砂人と申します」
湊父「SMSでの映像は見させて貰ったよ。凄い歌唱力だなって感心させられた。日本にもまだこんな凄い奴がいるのかって思ったよ。友希那にも発破をかけて貰ったみたいだしね?」
緋砂人「勿体無い御言葉です。湊様の御令嬢とは知らず、失礼の数々お許しください」
友希那(御令嬢?)
リサ(すっごい丁寧語!!)
先ほどまでの自信家の緋砂人と同じ人物とは思えぬ程の謙虚で礼儀正しい男がそこにはいた。
湊父「俺の事を知っているのかな?」
緋砂人「存じ上げております。何度かライブに通わせていただいております」
湊父「そうか……。俺達がFWFに出たのも知っているかな?」
緋砂人「存じ上げております。ですが結果は……」
湊父は自嘲すると首を横に振った。
湊父「君のような才能ある若者にあんな恥ずかしい音楽を聴かれたのかと思うと自分が情けないよ」
緋砂人「そんな事はありません!!」
珍しく声を張った緋砂人に三人は驚き自然と視線が集まる。
緋砂人「貴方は人の心を掴み動かせる最高のボーカルの一人です。そんな言葉は聞きたくありません!」
三人「・・・・・」
緋砂人はカッとなっていた事に気がつき、『スミマセン』と直ぐ様に謝罪した。
湊父「…………ありがとう。君のようなファンがいてくれて私は光栄だ。そうだ!」
湊父は左手の手のひらに右手の拳を乗せ、何か閃いたようなポーズをする。
湊父「このライブが終わったらどこか新しいバンドを紹介しようか?」
湊父は解散の理由を知らない。
知らぬが故のお節介というもの。
緋砂人は悲しそうに少しだけ俯いてから首を横に振った。
緋砂人「このライブが終われば、音楽活動を辞めるつもりですのでその御提案は御断りさせていただきます」
友希那「!!?」
友希那は驚きのあまり声が出ない。
以前それを匂わせる発言を耳にはしていたが、これだけの実力と才能を持ちながらそれはありえないと決めつけていた。
緋砂人「もし宜しければ御令嬢のついでで構いません。俺の歌をしっかり聴いていただけませんか?」
湊父「…………あぁ、分かったよ」
緋砂人「ありがとうございます」
『失礼します』と頭を下げて緋砂人は去ってゆく。
しかし友希那は声を掛ける事ができなかった。
リサ「いやぁ……驚いちゃったぁ。あの人、友希那にはライバル心剥き出しだからどんな事を言われるかと思ったよー」
友希那「…………あの人は自信家。そして性格も悪い。ただ音楽に関しては直向きで紳士的よ。だから心配しなくていいわ」
リサ「えぇ!?友希那!?あの人との間に何かあったの!?」
友希那「行くわよ」
『ちょっと友希那~』と回答を催促するリサの言葉を受け流し、友希那はリサと共にその場を後にした。
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そしていよいよ本番を迎える。
本番を前に、控え室に全バンドのメンバーが集まりNon Stop Emotion!!のリーダーである緋砂人を中心に円陣が組まれ緋砂人が挨拶を始める。
緋砂人「今日はみんな集まってくれてありがとう。この日の為に準備を進めてくれたみんなやスタッフの方には感謝してもし足りない。さて…………今の世の中はDTMやJ-POP、アイドルGの台頭でバンドブームはオワコンとまで言われ始めてる。そんな意見はくそ食らえだ!!」
緋砂人は強く地面を蹴る。
緋砂人「ステージに立てば国籍・人種・性別・年齢、全て関係ない!!ただ一つ、目の前の相手の心を奪うかどうかだ!!今日ここから再び日本のバンドブームに火を点けよう!!準備はいいか!?」
各々が緋砂人に答えるように頷く。
それを確認してから緋砂人は大声を上げた。
緋砂人「さぁ、楽しい音楽の時間だ!!行くぞ!!」
控え室内にけたたましい雄叫が響き渡った。
先陣を切るNSEが舞台袖にて準備を整えていた。
緋砂人「さぁ、観衆の度肝を抜いてやろうぜ」
碧志「………………」
紫乃「出だしからフルスロットルで行くぞ」
猶黄「あんまり走りすぎるなよ」
桃華「い、いつも通り行きゃましょ!!」
(噛み様降臨)
三人「・・・・・」
緋砂人「ぷっ!!アハハハ!!噛んでやんの!!」
碧志「………………」
緋砂人「碧志?」
NSEの演奏を間近で見ようと各バンドのメンバーが舞台袖に集まる。
その中にボランティアスタッフであるまりなを見つけた碧志は先程の事を思い出して顔を真っ赤にしながらまりなから視線を反らした。
そんな碧志の視線を知ってか知らずかまりなもまた碧志と視線を合わせられずにいた。
緋砂人(何かあったなこりゃ)
緋砂人は碧志の衣装の襟を引っ張り無理矢理引っ張って行く。
碧志「緋砂人!?何すんだよ!?」
緋砂人「煩わしい!男ならドンと行け!!」
緋砂人は碧志の尻を蹴り上げるとまりなの前に引き釣りだした。
緋砂人「んじゃ、ごゆっくり~」
緋砂人は右手をヒラヒラさせながらその場から去り、彼女である桃華のもとへ向かった。
まりな・碧志「「………………」」
まりな・碧志「「あのっ!!」」
まりな・碧志「「そちらからどうぞ!!」」
まりな・碧志「「…………ふふっ。アハハ」」
やっと視線を合わせた二人はなんだか可笑しくなって笑い合った。
まりな「頑張ってね市ヶ谷君。観客を驚かせてね?」
碧志「任せとけ。今日、この時の為に俺はギターを弾いてきた。今日ここでギターを辞めてもいいと思えるくらいの過去最高の演奏をしてくるよ」
『ギターを辞める』
この言葉がまりなの心に引っ掛かった。
『辞めて欲しくない』と言うのは簡単だろう。
しかしそれを今言うのは違う。
まりなは自身の気持ちを胸の内に閉まった。
まりな「うん♪ここで見てるから」
碧志「ありがとう。月島と出逢えなかったらきっとこの舞台には上がれなかった。月島には感謝しかない」
『大袈裟だよー』とまりなは受け答える。
碧志「最初から今まで沢山応援してくれてありがとう。最高に格好いいギタリストになってくるよ」
碧志はまりなに背を向けると相棒であるZODIACを担ぐとステージに向け歩み始める。
まりな「最高に格好いいギタリストになるかぁ……。もう無理だよ。それ以上格好良くなるのは」
まりなは呟くと碧志の背中に熱い視線を送った。
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緋砂人を先頭にNSEが闘いの舞台に上がる。
この時を今か今かと待ちわびた観客から大歓声が上がる。
緋砂人がマイクを握ると観客は緋砂人の一挙手一投足に集中した。
緋砂人「colors…」
NSEの代名詞とも言える『colors…』で舞台は幕を開ける。
余計な言葉はいらない。
今宵は音で語り合おうと言わんばかりの始まりだった。
「♪♪~♪~♪」
碧志のギターのカッティングから演奏が始まる。
それに続いてベース、キーボード、ドラムと続いて行く。
今日に向けて全員がとても練習したのだろう。
音は完璧に噛み合い、コンディションも最高である。
ボーカルである緋砂人は四人の音に背中を押され大きく羽ばたいた。
「♪~♪~♪♪♪」
輝く湧水の様に透き通った歌声は観客の細胞に染み渡っていく。
その歌声は芸術品の様に美しく、硝子細工の様に儚い。
神々しいまでの歌声に観客達は魅了されていく。
一曲目が終わると観客達は興奮するというよりは魅了されており、言葉を失っていた。
そんな中、緋砂人が二曲目の説明を始める。
緋砂人「元々俺達はカバー曲をメインに演奏するコピーバンドとしてデビューしました。なので次はカバー曲で行きたいと思います。…………今日この会場にいるあの方への敬意を込めて『LOUDER』」
友希那「!!!」
紗夜「なっ!?」
リサ「LOUDERって!?」
あこ「Roseliaの!?」
燐子「まさか?」
碧志のカッティングと猶黄のドラムから曲が始まる。
原曲であるRoseliaの『LOUDER』にアレンジがされた前奏が始まる。
特に違うのはキーボードによる伴奏である。
作曲家でもある小室桃華によって『LOUDER』がNon Stop Emotion!の曲に昇華されていた。
燐子「す、凄い……。これが本物のキーボードプレイヤー……」
音の架け橋を虹で作るように。
キーボードの音色で曲を彩っていく。
もはや原曲とはかけ離れた曲になっていた。
緋砂人『裏切りは暗いままfall down
崩れゆく世界は
心引き剥がして熱を失った』
LOUDERの原曲を歌っていた友希那の父でさえ驚きを隠せぬ歌唱力。
この曲は友希那の父が来なければ演奏する予定は無かった。
しかし準備だけはしっかりしていた。
緋砂人が思い残す事が無いように。
やりたいことは全てやる。
その為に、碧志・紫乃・猶黄・桃華がこのライブに全力を注いでいる。
LOUDERを歌う予定にしていたRoseliaにとっては思いもよらぬ先制パンチに言葉を失っていた。
緋砂人「Thank-you」
NSEが演奏を終えると地響きがするくらいの歓声に称えられながら舞台袖にはけていく。
次の出番に備えている有咲達、Poppin'Partyに向けて碧志はウインクを送る。
碧志「有咲!!」
有咲「お、おう!」
碧志「どうだった?」
有咲「いや、まさかRoseliaの曲をやるとは度肝を抜かれたよ」
碧志「緋砂人のご要望だからな」
有咲「緋砂人さんの?」
碧志「届けたい人がいるんだってさ……。それより次、任せたぞ!」
碧志は右手を上げる。
その右手に有咲の右手が重なりハイタッチとなった。
有咲「任せとけ!!」
碧志は舞台裏へと向かった。
それを確認してから有咲はそれを見守っていた四人に頷き、舞台への歩み始めた。
舞台裏への入口にて友希那と緋砂人の視線が交差する。
友希那としては思わぬ先制パンチにどう声を掛けるか決めかねていた。
緋砂人は友希那から視線を外すと人差し指を立て、二回指を動かした。
『かかってこいよ。俺達は全力だぜ?』
無言の圧力を掛けると緋砂人はほくそ笑みながら舞台裏へ消えて行った。
いかがでしょうか?
NSEのラストライブがいよいよ始まりバチバチって感じです。
ここからクライマックスまで少しずつ書いていきますので気長に次回をお待ちいただけると幸いです。
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ではまた次回、ほなっ!(^^)ノシ