ちょっとした短編集   作:ミストラル0

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手始めに雪兎が敵サイドだったらというお話。
時系列的にはクラス代表対抗戦になります。


もしも兎がダークサイドだったら ISー兎協奏曲ー

「はぁ、はぁ………」

 

「やっと、沈んだわね………」

 

一夏と鈴がアリーナの中央で沈黙する無人ISを見ながらそう呟く。

クラス代表戦の最中に乱入してきた"4本腕"の異形のISは一夏や鈴が総力と奇策を用いてなんとか沈黙させる事に成功した。だが、二人のISは既にボロボロで、エネルギーもほぼ尽きかけという酷い状態だった。

 

「しかし、このようなISを一体誰が?」

 

途中から援護に加わったセシリアのISもビットをいくつか失っており、これが如何に激戦だったかがわかる。

 

「そもそも無人機なんてどこの誰が……」

 

鈴がそう呟いたその時、突如パチパチパチと手を叩く音がアリーナに響く。

 

「だ、誰だ!?」

 

一夏達が慌てて辺りを見回すと、アリーナの上空、ゴーレムがアリーナのシールドを破った場所に黒いISと思われる機影があった。

 

「アレ(ゴーレム)を倒すなんてやるねぇ」

 

「えっ?男?」

 

バイザーで素顔は隠れているものの、その声から鈴はそのISの使い手が一夏と同じ男であると気付く。

 

「そ、そんなはずは!?男性でIS適性があったのは一夏さんだけだったはず!」

 

「"調べた男性の中では"ってオチじゃねぇのか?それ」

 

「くっ!」

 

先日セシリアが一夏に言われたセリフと酷似した言い回しでセシリアの言葉を否定する謎の男。そして、その男はゴーレムの側に降り立つと、その胸部に腕を突き刺しISコアを抉り出す。

 

「うんうん、コアは無事だな」

 

「そのISはお前が!?」

 

「ああ、そうさ。でも、3対1でやられちまったし、また改良しねぇとな」

 

そう言うと、男は黒い長身の大口径のライフルを展開しゴーレムへ向けて放つ。その一撃でゴーレムは跡形もなく消滅し、ゴーレムがいた場所にはクレーターの窪みが出来ているだけだった。

 

「なっ!?」

 

そのあまりの威力に一夏達は絶句する。だが、驚くのはまだ早かった。

 

「……それにしても随分と剣の腕が落ちたみたいだな?"一夏"」

 

「えっ?」

 

その一言で一夏の脳裏にとある可能性が過る。かつて、己や箒と共に道場に通っていた行方知れずの幼馴染の存在が……

 

「ま、まさか!?」

 

『お前は正体はっ!』

 

それは無断で管制室に入り込んだ箒や、一部始終を見守っていた千冬も同じだった。

そして、男はゆっくりとバイザーを外し、その素顔を明らかにした。

 

「久しぶりだな、一夏に箒……それと千冬さん」

 

「ゆ、雪兎……本当にお前なのか?」

 

「幼馴染の顔を見忘れたか?まあ、何年も会ってねぇし、判らんのも無理無いか」

 

謎の男の正体は天野雪兎……一夏達の幼馴染にして天災・篠ノ之束の弟子であった少年だった。

 

「な、何故お前がそこにいる!?それにそのISはーー」

 

「見りゃわかんだろ?……今さっきお前らと戦ってた無人IS・ゴーレムの試験運用の観察と後始末に来たんだよ」

 

その言葉に箒はゆっくりと崩れ落ちる。無理も無い。行方知れずとなっていた幼馴染と最悪の形で再会する事になったからだ。

 

「雪兎、お前は何考えてやがるんだ!試験運用?こんなのただのテロじゃないか!」

 

「……はぁ、何もわかっちゃいないんだな、お前はーー」

 

激昂する一夏に雪兎はやれやれとため息をつく。その仕草が一夏の怒りの火に更なる油を注ぐも、先に我慢の限界を超えたのは別の人間だった。

その人間とは鈴だ。せっかくの一夏との試合を台無しにされた挙げ句、まるで眼中に無いと言わんばかりの態度。そして自分の知らぬ一夏の幼馴染であるというのに、その一夏に対する先の言葉……彼女が激昂するには十分な理由だった。ゴーレムに壊された残った左の龍咆で雪兎に攻撃を仕掛けるも、それは雪兎の左手から発した障壁に阻まれ霧散する。

 

「……せっかく人が再会した幼馴染と話してるの途中だってのに割り込むとは、無粋なやつだな?」

 

「ふざけんじゃないわよっ!何が再会した幼馴染よ!その幼馴染を死なせ掛けた癖によくそんな口が聞けたわね!」

 

「……キャンキャンとうるさいチビだな。こんなのが代表候補生とは、中国はもう終いだな」

 

「こいつっ!」

 

「や、やめろ!鈴!」

 

雪兎の挑発に乗って鈴がブレードを手に仕掛ける。雪兎の実力を知る一夏の制止も虚しく、鈴の攻撃は空を切り、次の瞬間には腹部に強烈な衝撃を受け吹き飛ばされ、アリーナの壁に叩きつけられる。

 

「かはぁっ……」

 

「鈴!」

 

「……口程にも無いな」

 

「い、一体、何が……」

 

「わ、私にはあの方の姿がブレて、気付けば鈴さんの腹部を蹴り飛ばしたように見えましたわ……」

 

「へぇ、そこの巻き髪は見えて……いや、ハイパーセンサーか」

 

セシリアはハイパーセンサーの補助が無ければその動きを捉え切れない……いや、一部とはいえ捉え切れなかった雪兎の動きに戦慄する。

 

「雪兎ぉ!!」

 

流石に鈴を攻撃され怒りを露にする一夏だが、雪兎はその姿を見てもニヤリと笑み浮かべるだけで、今の会話の間にかき集めたエネルギーを使って放った一夏の瞬時加速からの一刀を左手に装備されたアームブレードで容易く受け止める。

 

「やれば出来んじゃんか、一夏」

 

一夏を脅威と認識していないようだった。

 

「でも、今回はただの顔見せだ……って訳で帰らせてもらうわ」

 

そんな一夏を弾き返し、雪兎は突入してきた時の穴から去っていってしまう。

 

「待てっ!!」

 

慌ててその後を追った一夏だが、一夏がアリーナを飛び出した頃には雪兎の姿はもう見えなくなってしまっていた。

 

「……くそっ!」

 

『……織斑、気持ちはわかるが一度戻れ』

 

その後、千冬に呼び戻されアリーナに戻った一夏は改めてその惨状を目の当たりにする。

 

「雪兎……お前に何があったんだよ………」

 

その頃には一夏は先程までの怒りではなく、幼馴染がどうしてああなってしまったのか?という疑念が込み上げていた。

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