ちょっとした短編集   作:ミストラル0

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愛媛RTA後編です。


ゆゆゆい編⑤ 魔王と防人

その後も雪兎達と友奈(赤)は何度か交戦する事となったが、その度に返り討ちにして愛媛は順調に解放されていった。

 

「で、残すはバーテックスの巣となってるこの地点だけか」

 

その間に増えたメンバーもいる。

 

「先輩、準備完了しました」

 

「楠か」

 

それは神樹様より増援として召喚された楠芽吹(くすのきめぶき)ら防人達である。

何故彼女らがここにいるのかというと、召喚されたばかりの彼女らを友奈(赤)が防人の一人である弥勒夕海子(みろくゆみこ)の祖先である弥勒蓮華(みろくれんげ)と親友であった縁を利用し雪兎達にぶつけようとしたのだ。

しかし、彼女達が雪兎と同じ世界の人物であった事が災いして失敗、そのまま彼女達は雪兎達の戦力となってしまったのだ。

巫女である国土亜耶はおそらく勇者部の元に召喚されているとのことなので合流の為にも愛媛RTAには彼女達も賛成らしく、彼女達の装備もアップデートしてRTAを加速させた。

雪兎と防人達の関係は園子との面会の為に勇者アプリのアップデートプログラムを大赦に渡した頃からで、そのアップデートプログラムにより大赦は勇者量産プロジェクト・防人をスタートさせ、一度は勇者から落選した勇者候補生を再び招集して戦力としようとしたのだ。

その際に大赦が珍しく頭を下げて雪兎に防人への指導を依頼したという経緯だ。

その後、何度か指導はしたものの、結局雪兎と勇者部が天の神を退けた事で防人は外壁外調査活動部隊の一つとして在り方が変わり、その装備の調整として暫く雪兎が面倒を見ていた。

とはいえ、女子中学生を矢面に立たせる訳にはいかないのであくまで勇者適性があった防人達は装備のテスターという扱いであまり四国から離れたエリアの調査は任されていない。

 

「よし、雨宮から樹海化予定時間は聞いているな?それまでは待機だ」

 

「わかりました」

 

この神樹様の内部世界では僅かではあれ巫女と同じ適性を持っていた雨宮が樹海化予定時間を神託として聞く事が出来、それに合わせて雪兎達は愛媛攻略を進めてきた。

その際に判明したのは各県毎に結界のようなものが施されており、一つの県を解放し切らないと他県に渡れないという事実だった。しかも、自由に行き来するには両方が解放されていないと行けないとの事。

つまり、この愛媛RTAこそが他の勇者達と合流する最短ルートだったのだ。

 

「そろそろね」

 

「今回も頼りにしてるぞ、麻井」

 

「ええ、貴方から聞いたOSのやり方………甲縛式だったかしら?あれも安定して使えるようになったもの」

 

「大鬼の甲縛式OSとか普通にヤベーだろ………」

 

アンナの持ち霊は恐山にいた大鬼等の霊で、媒介としてその恐山の清水に浸した霊木から作られた木刀と百万遍数珠を使用しているのだが、雪兎が概要だけ教えただけで甲縛式OSを習得するレベルのシャーマンだった。

その甲縛式OS・鬼菩薩は単純な攻撃力なら雪兎の装備を遥かに上回るというのだから恐ろしい。

 

「っと、樹海化が始まったな」

 

吹いていた風が止み、揺れていた木々がそのままの形で静止した樹海化前の前兆に雪兎とアンナはそれぞれの得物を手にする。

 

「先輩!」

 

「さ、防人一同集合しました!」

 

「いつでもいけますわよ!」

 

「しずくも頑張る」

 

「よし、なら魔王軍出撃といこうか!」

 

そして、バーテックスの愛媛最後の拠点への攻略作戦が始まった。

 

***********************

 

愛媛最後の造反神の拠点は謂わばバーテックスの巣である。

どうも造反神にも使えるリソースに限りがあるようで無尽蔵にバーテックスを増やす事はできず、よくある都市開発もののゲームのように占拠した土地に生産プラントを設置しなければ数を増やせないようなのだ。

とはいえ、これは『即時に動かせる戦力として』のバーテックスであり、多少時間を掛ければ連れてくる事は可能のようだ*1

なので雪兎達は積極的にその巣を狙って攻略してきた。普通なら少数の彼らがそのような場所を狙うのは危険なのだが………彼らは普通ではなかった。

射程外からの高威力砲撃や広範囲攻撃等を容赦無く叩き込み、耐久力の高いバーテックスを用意すればアンナのOS等で粉砕するとかいうゴリ押しである。

芽吹達が加わってからは役割分担を決めてルーチンワークのように攻略され始め、友奈(赤)が泣いた。

 

「ここは絶対やらせないんだからね!」

 

今回も愛媛最後の拠点とあって友奈(赤)はいつもの数倍のバーテックスを従えて雪兎達を出迎える。

 

「彼女、いつも以上に気合が入っているわね」

 

「そりゃ、ここ落とされたらお終いだもの………」

 

必死な友奈(赤)様子にアンナが呟くと加賀城雀(かがじょうすずめ)は若干呆れ気味だ。

 

「楠、弥勒」

 

「はい」

 

「わかりましたわ!」

 

すると、雪兎は芽吹と夕海子に合図を出し、芽吹はストライクカノンを二刀流で構え、夕海子はビームキャノンとウォーハンマーを組み合わせたブラストハンマーをキャノンモードにして構える。

 

『FIRE!』

 

そして、雪兎と三人で放った砲撃で先遣部隊を撃ち落とす。

 

「よし、突撃!」

 

砲撃で数を減らしたところへストライクカノンをエッジモードにした芽吹、ブラストハンマーを戦鎚モードにした夕海子、チェーンソーのような刃を持つチェーンブレードを手にしたシズクの三人が切り込む。

 

「このぉ!」

 

「お前の相手は俺だ」

 

「くっ」

 

そんな芽吹達を止めようと友奈(赤)が出てくるが、複数の剣が組み合わさって一つの大剣となっているタイラントブレイドに武器を持ち換えた雪兎が友奈(赤)をブロックする。

 

「悪いが愛媛(ここ)は俺達が戴く!」

 

「させない!」

 

雪兎はタイラントブレイドを振るいながら変形分離合体させて変則的連続攻撃を仕掛ける。

友奈(赤)も自身の主装備である籠手や勇者としての力でガードしつつ反撃を放ってはいるが、タイラントブレイドの変則過ぎるギミックと雪兎の戦法に翻弄されている。

例えば上段からの大剣の振り下ろしで地面にその刃をめり込ませたかと思えばそこから長剣と小剣を分離させて連撃を放ち、小剣を投げつけてガードさせた隙に本体を回収して弾かれた小剣をキャッチしながら大剣に戻して一閃を放ち重い一撃でガードごと友奈(赤)を吹っ飛ばしたり。

または長剣二本に分離させてラッシュを放ったかと思えば更に小剣や短剣、投擲用と思われるくの字型の刃を分離させてブーメランのように投げつけ、それを弾いて無手にして拾いにいく隙を狙おうとしたら既に懐に飛び込まれて腹部に掌底をたたきこまれたり。

小剣と短剣で攻撃しながら散らばったパーツの場所まで誘導され、攻撃しながら次第に大剣へとパーツを戻していったり。

 

「何なのよその武器!それに体術まで出来るなんて聞いてない!」

 

「これでもお前と同じ顔したやつに武術叩き込んだりしてっからな。まあ、色んな流派のごった煮の我流ではあるが………そもそも武器がなかったら戦えねぇとか武芸者としては二流。一流の武芸者なら無手での戦い方も習得してて当然だ」

 

その友奈(結)も親から学んでいた武術に雪兎から教わった技、そして勇者としての戦闘経験が合わさってバグった強さに至っていたりするが………

 

「大鬼炎斬!」

 

「フレアバタフライ!」

 

「く、クリスタルエッジ!」

 

「せいっ!」

 

「粉砕ですわ!」

 

「邪魔!」

 

その間にも大型のバーテックスはアンナの甲縛式OSに叩き斬られ、残りのバーテックスは望や雀のアーツの援護を受けた芽吹達により殲滅されていく。

 

「さて、こっちもそろそろ終わらせるか」

 

「ま、まだ終わりじゃない!」

 

一度後方へと下がった友奈(赤)が指を鳴らすと、巣から新たな大型バーテックスが数十体出現する。

 

「ま、まだあんなにいるの!?」

 

「そうよ!この巣がある限りバーテックスなんていくらでもーー」

 

慄く雀に友奈(赤)が勝ち誇ったようにそう言うが、その間に集まった魔王軍に肝心の魔王(雪兎)の姿が見えない。

 

「あれ、あの魔王は!?」

 

「上よ」

 

アンナがそう言って頭上を指差し、友奈(赤)が上を見上げると………そこには再びストライクカノンに持ち換えた雪兎がストライクカノンの砲門の前に推定直径4m程の紫のエネルギーを集束させて浮かんでいた。

 

「えっ?………ちょっと待って!?」

 

「私も新技試しておこうかしら」

 

そして、アンナも自身の甲縛式OS・鬼菩薩が持つスピリット・オブ・ソード鬼蓮華に巫力を更に注いで刀身に炎を纏わせ、それを巣の大型バーテックス達に向かって振り抜く。

 

「大鬼炎斬・絶空………ってとこかしら?」

 

その場から飛ぶ斬撃の一閃により大型バーテックスの半数が天に還っていく。

 

「………」

 

一方、振り返って頭上を飛んでいった斬撃の結末を見た友奈(赤)は絶句している。

 

「なら仕上げといこうか………目標、バーテックスプラント中央、ターゲットロックオン」

 

その瞬間、友奈(赤)は本能的に巣から跳んで離れた。それが彼女の命運を分けた。

集束された球体は巣に向かってそのエネルギーを解き放ち、着弾と同時にその場にいた残りの大型バーテックス諸共巣を呑み込み凄まじい衝撃波で近くにいた星屑達も消滅させていく。

その余波はアンナや芽吹達の元にも吹き荒れ、皆は咄嗟に雀が展開したフローターシールドのバリアの後ろに退避していた。

 

「きゃああああああ!?」

 

友奈(赤)も跳んでいたため直撃こそは回避したものの衝撃波は避けられず、そのまま吹き飛ばされていってしまった。

 

「お〜、綺麗サッパリ吹き飛んだなぁ」

 

一方、撃った雪兎は自身のフローターストレージシールドでバリアを展開しており無事である。

 

「ちょっと、もう少し周辺への影響を考えなさいよ」

 

「悪い、思ったよりエネルギー集まって想定より出力上がっててな………流石に試し撃ち出来ないしな、コレ」

 

『確かに』

 

そうこうしている内に樹海化が解除され始める。

 

「よし、これで愛媛RTA完了だな」

 

「香川の勇者部の方はまだ掛かるようだ」

 

「なら暫くのんびり装備のアップデートでもしますか」

 

「えっ?まだ強化するんですか!?」

 

「何言ってんだ加賀城、最終的にはアプリも外壁外活動する標準装備にするつもりなんだから扱い易いように改良すんのは当然だろ?」

 

「………この先輩ならほんとにやってしまいそうだからなぁ」

 

「テストはどうせまた赤嶺のやつがちょっかい出しにくるだろうからやり放題だな」

 

「赤嶺さん………」

 

「南無」

 

「しずく、死んでないからね!?」

 

こうして愛媛を解放した魔王軍は勇者部が香川を解放して愛媛を訪れるまで時々来る友奈(赤)を返り討ちにしながらのんびり待っていたのであった。

*1
これは愛媛での快進撃に焦った友奈(赤)他所からバーテックスを率いてきた発言の推測である




赤嶺さん、後に紫の光と鬼の面がトラウマになったそうな………

防人達の装備
雪兎が使用している装備のデータを元に作成された武装………ぶっちゃけなのはシリーズのCW装備を想像してもらえばOK。

甲縛式OS・鬼菩薩
葉の白鵠をペルゼイン・リヒカイト風にしたものをイメージしてください。
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