ちょっとした短編集   作:ミストラル0

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大分期間が空きましたが、続きです。


ゆゆゆい編⑥ 魔王と勇者と防人と

時は戻って香川が攻略された翌日。

勇者達は新しく使えるようになった転送術で愛媛へとやってきた。

とは言っても、巫女がマーカーとなる関係から愛媛にやってきたのは風達と亜耶の並行世界組、それと雪兎の前世の妹である時雨にその義妹となった千影にその親友たる高嶋友奈、そして千影の子孫の雨月というメンバーだ。

 

「反応があるのは石鎚神社の辺りのようですが………」

 

「神社って………あいつ、神社まで改造拠点にしてないでしょうね?」

 

「あの魔王は拠点を与えると改造し始めるものね………」

 

「姉さんのお兄さんは一体何をしたの?」

 

「実は雪兎義兄さんの家、一部屋丸っと工房に改造されてたんですよ」

 

何故樹がそんな事を知っていたり雪兎を義兄さんと呼ぶのかというと、実は雪兎や風が讃州中学を卒業後に犬吠埼姉妹は大赦から援助を受けて借りていたマンションから雪兎の家に引っ越しており、半ば同棲のような暮らしをしているのだ。

これは雪兎が今後は壁外調査に注力せねばならない大赦からの援助金を姉妹それぞれの将来の為に貯蓄に回して、万が一に援助金が減額となっても生活できるようにという配慮だった。

ちなみに雪兎の家は両親が既に事故で他界しているが、その両親が遺したお金と雪兎自身があれこれして稼いでいるお金で風と樹を迎え入れても余裕で三人が成人するまで保つ金額があるんだとか。

立地も讃州中学と二人が進学した高校の間くらいの場所にあったのも良かった。

他の勇者部も面々も引っ越しの手伝いで一度訪れており、それ以降は学校外の溜まり場のような扱いになっている。

その為、一緒に暮らしている姉の彼氏という事でいつまでも先輩というのは変だからと樹は義兄さんと呼ぶようになったのだ。

 

「他にもサーバールームみたいな部屋もあったからそこから大赦にハッキングしてたんでしょうね」

 

「そういえば防人への指導の為にタワーの一フロアが先輩の管轄フロアになって完全に作り変えられてましたね」

 

「うわぁ………」

 

「本当に好き放題ね………兄妹と言われても納得だわ」

 

「ぐんちゃんも十分そっちに染まってると思うよ」

 

一方の千影も時雨に引き取られてから色々と変化したようで、ゲーマー気質なところや率直な物言いに毒舌な部分こそ変わらぬものの、時雨や友奈以外とも交流が増えた。

また、時雨が衣装を自作する程のコスプレ趣味やその元ネタのアニメやゲームに詳しかったのもあって千影の戦闘スタイルが格ゲーのハメ技やアニメのえげつない技等も再現し始めるに至ってしまった。

尚、戦術オーブメントのクォーツ構成も誰に聞いたわけでもないのに風達にトラウマを刻み込んだ雪兎と同じ構成にしているのを見て並行世界組の顔が引き攣った表情になったと補足しておく。

 

「あら、ここに人が来るなんて珍しいわね」

 

そんな風達を出迎えたのはトレードマークのバンダナを外して何故か巫女服を着たアンナだった。

 

「珍しい?」

 

「神暦とやらでは神様は神樹様に一本化されてこういう個々の神様を祀る神社は少なくなったらしいわね。それにここが神樹様の中に再現された空間とあって私が来た時から無人で参拝者もいなかったわ」

 

「えっ………」

 

「貴女は一体………」

 

「私も貴女達と似たようなものよ。私はイタコのアンナ。貴女達風に言えば西暦からきた青森の勇者ってとこね」

 

「青森………イタコのアンナ………もしかして恐山?」

 

「正解。他にもここに喚ばれた子達もいるし、多分貴女達の探し人もここにいるわよ、讃州中学勇者部」

 

「って事は………」

 

「やっぱここにいたのね、あの魔王………」

 

アンナに連れられて石鎚神社の奥へと向かう。

しばらく進むと、神社の一角に神社に似つかわしくないドーム状の小屋が建っていた。

 

「何これ………」

 

「持ち運び式の工房だそうよ。彼も『再現された世界とはいえ一応人様の土地だからな。これ?キャンピングカーみたいなもんだからセーフ』とか言ってたわね」

 

「相変わらず妙な線引きを………」

 

そんな話をしていると工房の扉が開いて二人の男女が出てくる。

 

「あら?そこにいるのは夏凜に………亜耶!」

 

「芽吹さん!」

 

一人は防人チームのリーダーの芽吹。

離れ離れになり、一人讃州中学にいた亜耶はやっと再会出来た芽吹に飛びついて再会を喜ぶ。

 

「やっときたか」

 

「やっときたか、じゃないわよ!無事だったんなら連絡くらい寄越しなさいよ!」

 

「と言われても、結界のせいでこっちからはそっちにアクション起こせなかったんだから仕方ねぇだろ………というか心配してたのか?」

 

「して悪いか!」

 

「お、おう………悪かった、風」

 

一方、雪兎と風はいつも通りのやり取りに見えるが、風は若干涙目で雪兎も声は優しめである。

 

「で、そっちの見慣れない面々は別枠で召喚された勇者か?って、ちょっと待て!?何でお前がいんだよ時雨!?」

 

「やっほ〜」

 

「いや、ほんと何でお前いんの!?」

 

「いや〜、私、こっちの西暦時代に召喚されちゃって」

 

「よりにもよって西暦時代かよ!?」

 

「神暦時代に転生して好き勝手してたお兄ちゃんに言われたくない」

 

「というか何で俺って判った?」

 

「風さん達に聞いた」

 

そして、雪兎と時雨の兄妹の再会は再会した直後から割と濃かった。

そこからお互いのエピソードを語ったのだが………

 

「………長野に跳ばされてそこで白鳥歌野達と仲良くなって四国に逃がして、そんで郡千影の実家乗り込んで親権ぶんどった?お前何してんの?」

 

「そういうお兄ちゃんは勇者アプリコピーして改良して風さん達強くして大赦脅して天の神ブッ飛ばしたって聞いたけど?」

 

「トドメは友奈がやったから俺じゃない」

 

「どっちもどっちじゃない」

 

「「うぐっ」」

 

「改めて聞いてもやっぱやってること兄妹だわ」

 

こうして再会を果たした魔王と勇者と防人。

雪兎達も拠点を讃州中学に移す事になり、荷物をまとめて転移し、既に合流していた西暦の勇者達や神樹館の小学生組に自己紹介をする。

 

「村上時雨の兄の転生者で神暦の魔王って呼ばれてる天野雪兎だ。今の勇者アプリは俺が改造したものだからわからない事があったら聞いてくれ」

 

「彼が噂の………」

 

「時雨のお兄さんですか」

 

「ということは千影の義理の兄でもあるんだな」

 

「それに魔王、ですか………」

 

「しぐしぐのブラザーならベリーストロングね!」

 

「ちょっと手合わせしてもらったけど、すっごく強いんだよ!結城ちゃんの師匠ってのもわかるなぁ」

 

「私はオーブメントの組み合わせのアドバイスを貰ったわ」

 

「まだ強くなるつもりなんだ………あっ、そういやしぐしぐの衣装作りも手伝ってたって聞いたなぁ」

 

「結城と高嶋の話を聞いて私も手合わせしてみたくなったな」

 

「また濃い人が増えましたね」

 

「このアプリ改造した兄ちゃんか、なら私もアドバイスもらいにいこ」

 

「なんかわからないけど面白そうなお兄さんだね!」

 

「時雨様のお兄様で転生者ということは………雪兎様の神様?」

 

「うーちゃんは少しクールダウンしよっか」

 

その後、アンナも自己紹介したが、雪花が北海道出身で青森出身のアンナとは面識があったという意外な事実も判明した。

 

「まさか麻倉さんも来てたなんて」

 

「私は秋原さんが来てるとは思ってなかったわ」

 

「この調子で今後も勇者が増えるのかな?」

 

「勇者といえばもう一人友奈っぽいやつに会ったぞ」

 

「えっ!?」

 

「確か赤嶺友奈とか名乗ってたな」

 

「昔、とある反乱を鎮めた対人戦闘に慣れた赤嶺家の出身だが、肌は少し色黒ではあれど結城や高嶋にそっくりだったな」

 

「あ〜、あの毎回雪兎にいいようにやられて帰るあの子ね」

 

「そういえば愛媛開放の一戦から姿を見てないわね」

 

「………多分、先輩のやらかしたあの一撃がトラウマになってるんじゃ………」

 

雀、正解。

実は愛媛開放の後から赤嶺友奈はすっかり出てこなくなり、雪兎達は張り合いがないなぁ〜、と残念がっていたりする。

 

「さて、自己紹介も済んだ事だし、再会と香川、愛媛の開放祝いでもするか」

 

「はいは〜い!なら久しぶりお兄ちゃんの料理が食べたい!」

 

「そういえば時雨の料理スキルはお兄さん仕込みでしたね」

 

「と言われても急だからそこまで材料あるかどうか………」

 

「これだけ人数いるんだからどのみち買い出し行かないといけないわね」

 

そこで夏凜はある事に気付く。

 

「そういや芽吹達はしばらく魔王と一緒に活動してたのよね?」

 

「………女としてのプライドがズタボロにされたわ」

 

「それ以上にすっかり先輩の料理のファンにされました」

 

「鰹料理で負ける事があるだなんて………」

 

「先輩の料理、美味しい」

 

「既にやられていたか」

 

その日は結局人数が多いと言う事でBBQとなり、大いに盛り上がった。




魔王軍、勇者部に合流の巻。

アンナと雪花は知り合いという事にしました。
次は合流直後なので各メンバーとの交流回かな?
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