今回は「ゆゆゆ」こと「結城友奈は勇者である」です。
サブタイトル2
「天野雪兎は魔王である」
これはとある手違いで別の世界に転生してしまったとある少年のあり得たかもしれない記録の一端である。
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バーテックスという天の神の尖兵により、人類の生存圏は土地神の集合体である神樹様の加護を受けた日本の四国だけとなってしまったとある世界に一人の少年がいた。
「これが樹海化ねぇ………おっ、犬吠埼発見」
その少年は本来ならばあり得ない事に、樹海という神樹様の結界の中でバーテックスと戦う少女達の姿を双眼鏡で眺めていた。
「うーん………時系列的に1話辺りか?敵も乙女座みたいだし」
その少年こと、天野雪兎は所謂転生者というやつだ。飲酒運転のトラックに突っ込まれたのが死因で亡くなったはずの彼は気付けばこの世界にて赤ん坊になっていた。その後、成長するうちに色々な事を知り、この『結城友奈は勇者である』の世界に転生してしまった事を知った彼はこともあろうことか大赦のコンピューターにハッキングを仕掛け、勇者の力の一端である『勇者アプリ』のデータを入手する事に成功した。それを独自に解析改修し実用化にも成功した。その結果、こうして樹海化に巻き込まれ、勇者部一同とバーテックスの戦闘を観察していたのだ。
「おっ、結城が決めたか……って事はそろそろ退散しねぇと不味いな」
その後、雪兎は樹海化が解除されるのに合わせてその姿を眩ませた。
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一方、勇者部はというと………
(あれ?今誰かに見られていたような?)
丁度その時、結城友奈は勇者となり鋭敏となった感覚から何者かの視線を感じとっていた。
(まさか私達以外にも人が?)
「ちょっと友奈~何やってんの!」
「は、は~い!」
しかし、その疑問は樹海化の解除からの一連の騒動ですぐに記憶の彼方へと忘れさられてしまうのだった。
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翌日、再びバーテックスが現れ東郷美森も勇者として覚醒した時も雪兎は樹海にいた。
「うっは~、東郷のやつ派手にやってんなぁ~……もしかしてあの三体を本能的に警戒してんのか?」
今回現れた蠍、蟹、射手の三体のバーテックスは東郷に縁のあるバーテックスなのだ。
「あっ、やば」
そして、狙撃手たる美森に雪兎はその存在を感知されてしまう。その時は何とか撤退に成功するが、勇者部に樹海化した世界に異物が紛れ込んでいるのを知られてしまったのだ。
「あれ、絶対にいたのはバレたな………となると、そろそろ"コレ"の出番かね?」
そう口にする雪兎の端末には『勇者アプリ』に酷似したアイコンがあった。
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一方その頃、勇者部の面々は………
「東郷、どうした~?」
「いえ、私達以外に人影が……」
「はぁ!?ここには神樹様に選ばれた私達勇者とバーテックスしかいないはずよ!?」
そう、樹海には本来は勇者とバーテックスしかいないはずなのだ。他の誰かがいたとは考えられない。
「では、あの視線は一体………」
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そして三度目の襲撃の時、それは起こった。
「えっ、私達は何も……」
今回も勇者部がバーテックスに挑もうとしたその時、バーテックスに勇者部以外の攻撃が加えられたのだ。その事に驚く勇者部の面々だが、もっと驚いている人物がいた。
「一体誰が…………えっ!?」
それは本来ならばその攻撃を行うはずだった三好夏凜だ。完全に自分の出るタイミングを奪われた彼女が攻撃の発生源を見ようと視線を動かし目にしたのは………本来ならば勇者に選ばれる事の無い"男子"の姿だった。
「お~、命中命中。理論は完璧に組んでたから心配はしてなかったが、こうしてちゃんと有効打を与えてるのを見ると感無量だねぇ」
勇者部もそんな
「あ、あれは!天野ぉ!?」
「それって、お姉ちゃんのクラスの凄く頭が良い変わったクラスメイトさん?」
そして、部長の犬吠埼風はその人物がクラスメイトの変人・天野雪兎だと気付く。
「よぉ、犬吠埼」
「よぉ、じゃないわよ!なにやってんのよあんたは!?」
「見てわからんか犬吠埼、砲撃だ」
「いや!それは判るけど!何であんたがここにいんのよ!?」
「う~ん、説明すると長くなるんだが………先にあれ何とかした方がいいだろ?」
「だぁ~!分かったわよ!なら手貸しなさい!」
「手を貸すのはいいが………俺一人で倒してしまっても構わんのだろう?」
その後、すっかり出るタイミングを失ってしまった夏凜を他所に雪兎と風によってバーテックスはあっさりと殲滅されてしまった。
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「で?何であんたが
バーテックスを殲滅し、いつものように屋上に帰還した勇者部一同+α。当然、珍入者たる雪兎はすぐに風に問い詰められるのだが……
「うん、それを説明するのはいいんだが………そこの
「………私の、出番………」
雪兎の指差す先には床にのの字を書く夏凜の姿があった。
「…………逃げるんじゃないわよ?」
「はいはい」
その後、何とか夏凜を立ち直らせた一同は勇者部の部室にて話し合う事にしたのだが………
「…………もう一回言ってちょうだい」
「だから大赦のサーバーハッキングして勇者アプリのデータコピーして自分用に弄ったんだって」
雪兎の何食わぬ顔でのこの発言に部長である風と大赦の勇者たる夏凜は頭を抱えていた。
「……大赦にハッキングってとこでもツッコミどころ満載なのに」
「自分用に弄った、って………」
勇者アプリは元々神樹様の力を扱い易くする為に初代勇者の時代に作られ、この三百年の間にアップデートを繰り返してきた謂わば大赦の技術の粋を集めたもの。それをあっさり自分用、しかも本来ならば神樹様の加護を得られない男子用に改造したなんて言われればそりゃ頭を抱えてたくなる。
「それにしても、天野先輩強かったね、東郷さん……」
「ええ、本当に一方的な強さだったわ」
加えて言うなら、今回の山羊座のバーテックスは止めこそ風に譲っていたものの、ほぼ雪兎一人によって倒されたようなものだった。攻撃しようとした瞬間に高笑いしながら動かそうとした部位を徹底的に撃ち抜いていく様は"勇者"ではなくまるで"魔王"の様だった。
これには友奈達すら敵である山羊座に同情した程だ。
「つ、次こそは完成型勇者の実力を見せてあげるわ!」
「へぇ、それは楽しみだ」
そこから勇者部と雪兎の関係は始まった。
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大赦からしたら異端にも程がある雪兎の存在ではあるが、大赦は雪兎に手を出す事が出来なかった。何故なら、雪兎は既に満開を始めとした勇者部の面々が知りえない真実をいくつも掴んでおり、自身に何かがあればそれを四国中に拡散すると大赦を脅迫していたのだ。そんな訳で雪兎は例外的にも勇者部の一員となり行動していた。
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犬吠埼風side
私にとって天野雪兎は"魔王"だ。私が転入してからずっと同じクラスで、授業中は寝たり他事をしているのが大半だが、当てられれば完璧に対応してみせ、誤りがあれば教師だろうと容赦なく指摘する。スポーツも得意でよく運動部からスカウトされているも「興味無い」の一言でバッサリ。どの部活にも所属していなかったらしい。そんな天才かつ奇人変人に分類されるこの男だが、何かと私に縁がある。買い物に行けばセール品を取り合い、クラスでは様々な事でしょっちゅう絡んでくる。そのせいで私が"勇者部"部長という事もあり、私が勇者、あいつが魔王とクラスでは呼ばれている有り様だ。そんなあいつが本当に魔王だと思い知らされたのは先日のバーテックス戦である。
『よぉ、犬吠埼』
こともあろうかあいつは勇者アプリの模倣品(おそらく性能はあっちが上)を手にバーテックスとの戦いに乱入してきたのだ。その後、話を聞けば……
『だから大赦のサーバーハッキングして勇者アプリのデータコピーして自分用に弄ったんだって』
あいつは当たり前のようにとんでもない事を言い出した。この時私は「あいつが大赦に消されるかもしれない!」と慌てたのだが、大赦はあいつへの不干渉を決定した。あいつを問い詰めたところ、あいつは何かとんでもない大赦の弱みを握って脅したらしい。転入してきた夏凜もあいつの学校でのあだ名を知ってか早々にあいつを"魔王"と呼んでつっかかるも返り討ちにされている。そのせいでついたあだ名は「勇者2号」である。そして………
「三年の天野雪兎だ。短い間だが、よろしく」
とうとうあいつは勇者部にまで
「ゲッ!?魔王!」
「よろしくな、勇者2号」
「2号言うな!」
「天野先輩、本当に夏凜ちゃんと仲いいよね」
「え?」
本当は入部させるつもりは無かったのだが、大赦からも一応監視命令が出ており、
それからというもの………
「この依頼は結城と東郷、これは樹ちゃん、こっちは三好だな」
「な、何で私が!」
「一応お前も部員だろうが……それとも勇者が逃げるのか?」
「やってやろうじゃないの!」
扱いの難しい夏凜も含めてあいつは授業態度とはうって変わってそれぞれの性格や特技から依頼を見事に割り振り効率的に勇者部を運用し始めた。
「魔王が勇者を従えるってどうなのよ………」
「というか、よく今までこんな行き当たりばったりで運営出来てたな?」
「うぐっ」
あいつが勇者部に入ってから知った事だが、あいつは料理、裁縫、その他家事まで万能だった。なんでも一人暮らしらしく、買い物に来ていたのもそのせいなんだとか。
「さて、俺らもいくぞ」
「はいはい……で、何の依頼?」
「演劇部の助っ人。怪我で代役がいるんだとさ」
「確かにそれは私達向けね」
side out
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数日後、新たなバーテックスが出現した。それも残る七体同時に………
「七体か……」
「師匠!特訓の成果を見せる時ですね!」
「ああ……それよりも師匠はやめろ、結城」
「え~」
何故雪兎が友奈に師匠と呼ばれているかというと、この数日の間に効率化した依頼の合間に時間を10倍に引き延ばすVR空間や休日を使って勇者部の特訓が行われていたのだ。更に雪兎は勇者システムの満開について彼女らにネタバレをしており、それに頼らぬ力として勇者アプリのアップデート(無許可)を行いパワーアップした結果、雪兎の想像以上に彼女達は化けていた。
「俺は二体、他は一人一体ってとこか………いけるか?」
「勿論!」
アップデートで追加された籠手を着けた腕を打ち鳴らす友奈。
「ええ!」
既に狙うバーテックスを決めて銃を構える美森。
「頑張ります!」
以前とは違いやる気溢れる樹。
「やってやろうじゃないの!」
雪兎の挑戦的な眼を睨み返す夏凜。
「見てなさい、魔王!あんた何かいなくても勝てるってとこ見せたげる!」
そして、獰猛な笑みを浮かべる風。
「やってみろよ、勇者………無事に終われば手打ちうどん作ってやんよ」
その言葉は無類のうどん好き集団たる勇者部には劇薬だった。更に言えば雪兎のうどんは中々に旨いらしい。
「総員、速やかに片付けるわよ!!」
「「「「おー!!」」」」
円陣を組んで気合い十分の勇者が声を上げる。こうして始まったバーテックス戦。最初に動いたのはジェミニ・バーテックス。ジェミニは勇者達を無視して神樹へと猛ダッシュで侵攻しようとするが、その途中で急に動きが止まった。よく見ればジェミニには無数のワイヤーが絡まっていた。
「そこから先は立ち入り禁止だよ?」
そのワイヤーの正体は樹が仕掛けたワイヤートラップだった。どうやら樹海化が始まってすぐに仕掛けていたようだ。そして、もがくジェミニだったが、樹が指を引くと同時に御霊ごとバラバラになってしまった。
「先輩~、ノルマ達成しました~」
「………教えたの俺だけど、この娘、ヤベーな」
樹の成長っぷりに少し困惑する雪兎。そう言う雪兎も既にアリエス・バーテックスを手にした"大剣"で切り刻み終えていた。
そんな中、他の勇者を妨害しようとタウラス・バーテックスは頭部にある鐘を鳴らして妨害音波を放とうとするが、その鐘は次の瞬間撃ち抜かれてしまう。
「やらせないわよ?」
そう、美森の狙撃である。その後もタウラスが何かしようとする度に美森の狙撃がタウラスを襲い、行動を封殺していく。それはまるで雪兎の初戦の時のようであった。
「………東郷は怒らせないようにしよう」
「たりゃあ!」
続いて夏凜がアクエリアス・バーテックスの左右にある水球を両手の刀剣でバラバラに切り刻む。
「へぇ、やるじゃん」
「当たり前よ!私は完成系勇者よ!」
「はいはい、ならさっさと片付けな」
「こんなやつ瞬殺よ!おりゃおりゃおりゃおりゃ!!」
そこから夏凜はアクエリアスを更に切り刻んでいく。
そのアクエリアスを助けようと、ライブラ・バーテックスが回転しながら接近するが……
「勇者ぁ」
その間に友奈が割り込み、相棒の牛鬼を宿した籠手を着けた右腕を振り上げる。
「パ~ンチ・改!」
そして、全身をバネのようにして爪先から右腕へと力を伝達した一撃を放つ。その一撃はライブラの振り回していた錘のような物体を一撃で打ち砕く。
「結城のやつはもう"断空拳"ものにしやがったか」
そう言っている間にも雪兎がピスケス・バーテックスを仕留めていた。
「やるわね、みんな………部長の私も負けてられないわね!」
そう言うと、風もレオ・バーテックスの放つ炎弾をロングソードサイズに縮小した剣を振るい打ち返していく。
「そんな弾幕ぅ!あいつの特訓に比べたら温いってのよぉおおおおお!!」
全ての炎弾を打ち返したその勢いのまま剣を振るい、剣を今までに無く巨大化させてレオに叩きつけた。
「ぶっ飛べぇえええ!!」
そして、レオを樹海の壁まで吹き飛ばした。
「ホームラン!流石は部長、やるねぇ」
「もう二体倒したくせに、嫌みか!」
「いや、普通に賞賛してんだよ……あの巨体をよく吹っ飛ばせるよなぁ」
「これが女子力よ!」
「いや、女子力は関係無いだろ……」
そんな事を言っていると、レオ、アクエリアス、タウラス、ライブラが何かしようと集結しようとするが………
「させないよ!」
友奈はライブラを掴んで動きを止める。
そのせいでライブラは集結しそびれるが、残るレオ達は一つの大きな炎球に包まれていく。
「これって、もしかして………」
「まあ、定番だわな」
炎が消えると、そこには一体に合体したレオ・スタークラスターがそこにいた。
「が、合体した!?」
「まあ、図体がでかくなって攻撃しやすくなっただけでしょ?」
「夏凜は強気ねぇ」
しかし、最初は驚いた一同だったが、そこまで驚いてはいなかった。
「じゃあ、樹、お願いしてもいい?」
「アレだね?お姉ちゃん」
すると樹がワイヤーを操作し四方八方からスタークラスターを拘束する。スタークラスターも当然抵抗するが、パワーアップした樹の拘束の前には無力だった。
「逃がさないよ!」
それでもスタークラスターもただ拘束されるだけでなく必死の抵抗で炎弾を放つが……
「やらせないっての!」
その全てを夏凜が樹に到達する前に切り裂いていく。
「樹!」
「行って!お姉ちゃん!」
「必殺!犬吠埼ぃ~」
「ロ、ロケットー!!」
その間に樹が別のワイヤーで風を射出し、スタークラスターの頭上まで飛ばす。
「これでトドメよ!チェストォオオオオオ!!」
そして、スタークラスターをも超えるサイズに巨大化させた大剣でスタークラスターを内に秘めた御霊ごと一刀両断する。
「………あれ、まんま参式斬艦刀やん」
「何故に関西弁?」
その頃、ライブラの相手をしていた友奈はというと……
「あっちも終わったようだし、こっちも決めようか」
そう言うと、右腕に牛鬼の力を収束し構えを取る。
「必、殺………勇者ぁあああ!パァ~ンチ・桜花ぁあああ!!」
螺旋エネルギーと牛鬼の力の全てを拳に込めて撃ち抜く。その一撃は先程のものより遥か強力で、それにより余剰エネルギーが桜の花びらのように舞う。しかし、御霊までは破壊出来なかったが……
「御霊は………いた!東郷さん!」
「ええ!友奈ちゃん」
控えていた美森が御霊を撃ち抜き撃破する。
「これで七体全部撃破!」
「終わったの、ね」
「とりあえずは、な」
「?」
雪兎の言葉に首を傾げる風だったが、その意味を知るのはもう少し先の事となる。
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