ワラキー異世界渡航劇   作:ロザミア

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感想がなぁ、来るとなぁ~力が増します(露骨な要求)


監督気取り、その全力

時間差で俺へと迫ってくる雷。

カバラ系列の一つ、数秘法(ゲマトリア)

確かに強力な魔術だ。

 

初代ロアが相手なら、これよりも更に恐ろしい魔術だったに違いない。

 

蒼崎青子曰、古い魔術ではあるが…まあ、魔術は元々古いからね。

 

それを身を翻して避け、時にはこちらもタタリを用いた火球等で相殺している。

 

「どうしたタタリ、攻めが弱いじゃねぇか!

こんなんじゃ物足りねぇなぁ!?」

 

煽りながらも攻めの手を緩めないロア。

俺はどうしたもんかなと思う。

 

あっちは嫌なことに魔眼の類いも持ってる。

直死とは違うが、似たようなものだ。

つまり、アイツからしたら俺は弱点だらけなのだろう。

 

ワラキアの夜に直死の魔眼は通用しない。

 

そうだね、初代だね。

今はバリバリ効くだろうね。

 

だが、攻めに転じないとあちらが有利なのは変わらないか。

俺はタタリでロアの左右から教授と七夜を出現させる。

 

「キャスト!」

 

「おっと、旦那と志貴の偽者か!

だが、これじゃあ俺には傷一つも─」

 

ロアは当然、数秘法(ゲマトリア)による雷で即座に一掃する。

だが、この短時間が俺にとって必要なもの。

 

そう、安全にロアへと接近できる。

 

「カット」

 

「うおっとぉ!」

 

「逃がさないぞ蛇。cat!」

 

「チッ─だが!秘雷針!」

 

「ギィ……!」「がっ……!」

 

爪を避けたロアを更に追い詰めるようにロアの足元から黒い竜巻を発生させる。

だが、ロアもただでは食らわない。

タタリを行使している俺に雷をぶつけてきた。

 

そして、互いに軽傷ではすまないダメージを負う。

 

……けれど、互いの傷はあっさりと癒えた。

 

「カット!カットカットカット…カットカットカットカットカットォォ!!」

 

「ヒュゥ!これはどうよ!?」

 

タタリを用いた爪により何度も切り刻む。

ロアもまた、雷と体術で俺を殴り、焼く。

 

「ぬぅ……!」

 

「こいつは効くなぁ!中々いい攻撃だ!」

 

どちらも死徒の上位に位置する者。

そう簡単に死ぬことはおろか傷が残ることもなし。

 

だが、それにしても気掛かりだ

 

「何故、『過負荷(オーバーロード)』を使わない」

 

「お前のそれと違って消費があるんでね…引き出しの多い旦那やお前と違って応用性が低い俺は大人しく切り札は残しておくもんさ」

 

「そうして負けても知らんが?」

 

「ハッ!出し所を見誤るようならとっくに死んでいるな」

 

過負荷(オーバーロード)

ミハイル・ロア・バルダムヨォンが到達した固有結界。

効果はその名の通り、魔術に過負荷をかけるもの。

他にもできるだろうが、単純にこれが強い。

先程の数秘法(ゲマトリア)による雷に割く魔力に過負荷をかければ威力は馬鹿みたいに跳ね上がる。

 

それを使わないということは……まだ本気じゃない。

 

「そもそも、お前と俺では力に差がある。まだ全力出してねぇのにこれじゃあ張り合いがねぇな、タタリ」

 

「ならば、早々に私を倒せば君の目的は果たせるが…」

 

「確かにそうだが……違うな、俺の本当の目的は別だタタリ」

 

「何?」

 

「ま、半分は達成されたし……そろそろ、一発だけ勝負をして帰るとするか」

 

淡々と、いくぜ?と言ってくるロアに俺は警戒度を高める。

元々警戒してるけど、それでもだ。

 

一発だけという言葉…何をしてくる?

 

奴の現在位置はタタリで即座に吹っ飛ばせる。

だがそれはアイツも分かっている筈……

 

過負荷(オーバーロード)を使わない…いや、使う気がないな

 

となると……

引き出しから出す技は……あれか?

 

 

─突如、ロアの姿が雷となって消える。

 

やはり、瞬雷!

俺は俺の目の前まで来るであろうロアに黒い銃身を向ける。

 

「やはりか……!」

 

「これは読むだろうな、だが──」

 

 

 

─だが、黒い銃身から銃弾が放たれることはなかった。

 

 

 

何故、と思う事はない。

簡単な話だ。

俺は拘束されている(・・・・・・・)

 

雷が俺を縛る。

 

「いつの間に……!」

 

「それこそ簡単な話だ。今お前に接近するときに魔力をこっちにも割いておいただけだ」

 

魔術の二重発動か。

精度、素早さ、そしてこの拘束力…

 

「さて、程度は分かった。タタリ、お前が強くなるのに一つ助言をしてやる。ありがたく受け取れよ?」

 

「冥土の土産という奴かね」

 

「おいおい後ろ向きな考えはその体由来か?

まあ聞けよ…お前はまだタタリの本質を理解しちゃいない」

 

「何?」

 

「食い付いたな」

 

俺が、タタリの本質を?

そんな馬鹿な……。

 

ロアはわかってるというのか?

 

「思い出せよ…タタリはいつから『ズェピア・エルトナム・オベローン』の姿になるための力になった?」

 

「───。」

 

「本来なら死徒同士の戦いってこともあって殺すに限るんだが……今回は見逃してやる。

死徒二十七祖として、お前はまだ未熟にすぎる」

 

「ッ……!」

 

「やはりその様子だと旦那は何も言わなかったか。

まあ、旦那は人付き合いもいいが空気も読めるからなぁ……」

 

……まさかこいつに諭されるとは。

俺が、タタリの本質を見誤ってた……。

 

そうか、そういうことか……!

 

「まあ何にせよ、次に会うときはもうちょいマシになるんだな……」

 

俺の体が浮き上がる。

雷の拘束が俺を浮かせている。

 

この技は……ああくそ、抜け出せん。

拘束すると同時に術を縛っている?

 

「四つの福音を以て汝を聖別す──」

 

まずい、マズイ!

この状態でそれはマズイ!

 

俺の周りを魔法陣が4つ、出現する。

それから発せられる魔力は桁違いだ。

 

 

 

「─怒号を以て神意を示せ!」

 

 

天の崩雷。

相手を縛り、四方向からの雷で敵を攻撃する技。

 

それが俺に襲いかかる。

当然、防ぐ手段などなし。

俺はネプギア達のいる方を確認する。

 

…まずい、泣かせてしまっている。

ああ、くそ、欲張らなきゃよかった。

 

 

「ガァァァァァ……!!」

 

 

肉が焼かれる感覚、手足が痺れ、動けなくなる感覚。

 

それら全てが一瞬にして俺に襲いかかる。

 

ダメージがデカすぎて俺の体がピクリとも動いてくれない。

 

「ぐ、ぉぉ……!」

 

「おいおい無理すんなよ立てる気力があるのは認めてやるが力が入ってねぇなぁ」

 

強制的に結界が解除される。

皆が駆け寄ってくる。

 

カッコ悪いところを、見せている。

 

「ズェピアさん!」

 

「安心しろ、プラネテューヌ…だったよな?そこの女神候補生。加減はそこまでしてねぇがそいつも死徒だ。

そう易々と死にはしない」

 

「貴方は、何が目的なんですか!」

 

「ブラックディスクを寄越せとか言ったと思えば別に構わないと言って、目的は他にあるなんて、ふざけているの?」

 

皆が怒っている。

何故俺に怒らない?

いや、後でか。

治療を受けているが、体はまだ動きそうにない。

 

ロアはユニの言葉にヒヒヒと笑う。

 

「ふざけてないとも。

俺は至って真面目だよガンガール。

だが、そう、俺は先程いった成長が見てみたいだけだ

魂の成長、未完成故に最適化されていく器の姿をな」

 

「だが……君の『永遠』にそれが意味を成すのか?」

 

「勿論、意味はある。この世界に姫君は居ないが楽しむ要素は腐るほどあるからな」

 

「あくまでズェピアを含めてアタシ達は観察対象に過ぎないってこと?」

 

「俺のお前らへの評価を改める事態があればそうじゃなくなるが、今はそうだな」

 

「悪の研究者め!」

 

「いいねぇそれ、そう呼んでくれても構わねぇぜ?」

 

転生による永遠。

それの更に上のステップがあるのか?

他人への転生、それによる自我の掌握。

 

それの上のステップ?

 

あくまで観察対象。

その言葉に嫌悪感が増す。

だが、俺は勝てなかった…。

 

弱くなっているのもあるがワラキアの力を誤認している事が一番の要因か。

 

「まあ、何はともあれ収穫はあった。俺はそろそろお暇させてもらうか」

 

「……私達は、貴方を必ず倒します」

 

力量差を知った。

そして、見逃された。それも意図的にだ。

屈辱的だ。

 

だが、それでもネプギアはしっかりとロアを見捉えて言った。

 

ロアはネプギアを一瞥してから去っていく。

 

「その日を楽しみにさせてもらおう」

 

こうして…アカシャの蛇、ロアが参戦したのだった。

 

それは俺達にとっても、マジェコンヌにとっても……或いは、グレートレッドにとっても変化をもたらすのかもしれない。

 

そう、今はまだ分からないが…。

 

しかし、俺には一つだけ気がかりが残る。

 

─おい。タタリの本質の件、分かっていたのか

 

『無論、私は君の言うタタリそのもの。

いや、タタリを管理するプログラムだ。誰よりも理解し、誰よりも近くにいる』

 

─なら、なんで教えてくれなかった?

 

『教えれば、君は分かったかね?』

 

─……

 

『つまりはそういうことだ。今一度、タタリを知るために人としての生を味わうといい。何、私は君の味方だ。それは保証しよう』

 

─……分かった

 

ワラキアは分かって俺に教えなかった。

教えても真の理解を出来ないと思ったからだ。

 

つまりは、俺自身が未熟なことに他ならない。

 

悔しい。

堪らなく悔しい。

勝てなかったことも、本質を理解できていなかったことも!

 

そうして、傷が癒えた頃に姿が元に戻った。

手を空へと伸ばす。

自然と、出そうとする声が震える。

 

「……ああ、悔しいなぁ…!」

 

「ズェピアさん……」

 

「……今は帰りましょう。後味悪いけど、まだやるべきことは残ってるんだから」

 

「エルエル?立てますか?」

 

「ほら、肩貸すよ」

 

「ああ……悪い……!」

 

「本当よ、あんな無茶な戦いして、アタシ達の気にもなりなさいよ!」

 

「……悪い」

 

ユニの説教にただ謝るしかない。

調子に乗りすぎたのかもしれない。

 

今まで負けという敗けをしなかった。

知ることがなかった。

 

だが、それを今知った。力での挫折を味わったのだ。

 

「…頑張るよ、俺」

 

「……そうよ、アタシ達に言葉投げ掛けてるんだから、あんたも頑張りなさいよ」

 

「ああ、頑張る。……ありがとう、皆」

 

……だからこそ、強くなる。

理解し、掴み取る。

 

タタリの本質を、すぐにでも。

 

そう決意していたら、ネプギアが笑顔になってこちらを見ていた。

 

「ズェピアさん」

 

「え、あ、なん……でしょう?」

 

何故か、声に覇気がある。

おかしい、体が震えているぞ?

日本一、どうしたんだ?何かヤバイもの見てる顔して

 

「約束、破りましたね?」

 

「………………あっ」

 

「帰ったら覚えていてくださいね」

 

「……はい」

 

これからラステイションで起こるであろう説教に、俺は身を震わせるしかなかった。

 

あ、そういえば何でも言うことを聞くんだった。

財布が……!

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

ギョウカイ墓場、ある一帯。

そこに、一人の男と一体の龍がいた。

 

赤く、紅い龍は帰って来た男を睨む。

 

「どういうつもりだ、アカシャの蛇」

 

「おいおい、どういうつもりも何もああした方がいい」

 

「どういうことだ」

 

「分からないか?ッハァ!これだからお前は理解度が薄い!人の心が理解できず、人の世を知れぬ龍には道化しか似合わないぞ?」

 

「……」

 

男、ロアの言葉に龍、グレートレッドは押し黙る。

 

ロアは続けざまに聞く。

 

「俺も一つ聞かせてくれねぇか?何故タタリ達に差し向ける魔物の強さが微妙なんだ?お前なら、それこそ自身の分身を産み出すのも容易だ。弱っていてもな。

わざわざ(・・・・)そうする理由はなんだ?」

 

「……──」

 

 

 

 

「分からない」

 

 

 

「そりゃまた、何故?」

 

グレートレッドは何かを考えるように言葉を発する。

そこにかつて自分本意の思考は存在しなかった。

 

ズェピア・エルトナムを滅ぼす。

それだけが龍の考えを埋めていた。

 

だが、一つだけ気掛かりだった。

 

「何故、運命に逆らう?

私が定める運命、それが間違っているとすれば…何故不確かな未来へと足を伸ばす?理解が出来ない。

ズェピア・エルトナムは私という脚本が不要と言った。それは抑止に任された私の存在意義を否定する言葉だ

何故?何故なのか……分からない。分からないが……」

 

グレートレッドは遠くを見つめる。

その目が何を見ているのか。

 

ロアはそれを訝しむように見るだけだ。

 

()を見ていれば……分かるのだろうか…

人の心、人の存在意義を。そして、私を……

私は、知りたい。

定めを無視し、尚突き進もうとする精神、在り方を」

 

「…そうかい。まあ、本来ならそんなものどうだっていいが、この世界にはまだ調べたいものが多くある。

解明するまでは付き合ってやるよ」

 

ロアはそう言ってまた一人で何処かへと去っていった。

グレートレッドはそれをチラリと見てからまた遠くを見る。

 

「教えてほしい、平凡なる男よ。

何故、私はこうも考えることを放棄できないのか。

私は抑止に、主に見放されたのならば……」

 

 

 

─どう生きればいい?

 

 

 

龍もまた、迷い子であった。

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