ワラキー異世界渡航劇   作:ロザミア

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監督気取り、少女と一日を

やあ、皆。

俺だ、ワラキーだ。

 

ラステイションに戻ってからネプギアにこっ酷く怒られた。当たり前だが、他の皆にも。

ただ、その中でもネプギアは涙を浮かべながら俺に怒るもんだから脳に焼き付いている。

 

浅はかな行動を取ったとは思った。

どうしても確かめたかったという理由で約束を反故にしたのは申し訳ない。

 

ケイにはしっかりと全てを報告した。

ゲイムキャラの力を借りることが出来たこと、ロアの存在等、全てだ。

 

ケイは報告を聞いてから

 

『取り敢えず、今は女神候補生とゲイムキャラの協力を得ることを優先して動けばいいと思うよ。

その中で、色々と見付けるだろうからね。

次はルウィーに向かうといい。あそこの女神候補生達の協力を得れるかは……分からないけど』

 

『女神候補生……』

 

『達?』

 

『ふふふ……頑張ってね』

 

あの意味深な笑みはなんだというのか……。

いやまあ、大体の予想はついている。

 

という訳で、今日からルウィーへと向かっている…訳ではない。

まだラステイションに居るし、ついでに言うと俺は教会の自分の部屋にいる。

 

ネプギアと一緒に。

…何でかというと、まあ、約束を破った罰らしい。

それに、ルウィーに向かう前に各々で揃えるものを揃えてしまおうという話になったのだ。

そう言ったアイエフは次の日に行くということになった。

というか、寒いらしいので暖かい服装はするべきとのこと…俺?うん、まあコートは買ったよ。ついでに服も。

 

いつまでもあれじゃあねぇ……

 

それで、朝の買い物が終わってからネプギアと一緒にここにいるわけだ。

 

「それで、ネプギア?」

 

「何ですか?」

 

「罰らしいけども、俺は何すれば?」

 

「うーん……」

 

「考えてなかったのか」

 

「仕方ないじゃないですか!私こういうことはしたことないんですから!…でも、今日はあまり何処かに行かないでください」

 

不安げにそう言ってくるネプギアに俺は了承するしかない。

余程、あの時不安にさせてしまったのだろう。

何となく、頭を撫でる。

もう癖だな、これ…オーフィスにも無意識にやってたし

 

「ごめんな。そんで、分かったよ。今日は何処にも行かない。ここに居ればいいんだな?」

 

「はい!」

 

「でも、ネプギアはいいのか?」

 

「私は大丈夫です!」

 

「そっか」

 

それ以上は何も聞かなかった。

本当は何処かに行きたいのかもしれないが……

俺には分からない。

今の俺には、何も。

 

不意に、手に暖かい感覚がした。

ネプギアの手が俺に重ねられている。

そのまま、両手で包まれる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「えっと……何が?」

 

「昨日のロアって人に言われたことを気にしてるんですよね?」

 

「…まあ、な。事実だから何も言い返せなかった」

 

「タタリの本質を理解していない……でしたっけ」

 

「ああ、だから俺は弱いともな。…ロアはふざけているが死徒二十七祖と同格の存在だ。加えて、地頭もいい。アイツの指摘はもっともだった」

 

あの時の言葉が甦る。

 

〔思い出せよ…タタリはいつから『ズェピア・エルトナム・オベローン』の姿になるための力になった?〕

 

つまり、力の有り様から違う。

長い時を生きているせいか、前世の事も中々に思い出しにくくなっている。

その弊害で何かを履き違えている?

 

考えられるとするなら死徒化そのものの在り方になる。

 

……。

 

延々と考えているとネプギアが俺の名前を呼ぶ。

俺はそれにどうした?と聞くと

 

「ズェピアさんは、タタリがどんなものかを把握しきっていないという事ですよね」

 

「そうなるな」

 

「なら、もう一度タタリの事を口に出して説明してみてください」

 

そう言ってきた。

口に出して……か

 

確か、前もネプギア達に説明したな。

口に出すことで思い至る可能性もあるか。

 

「分かった。…タタリは、元々はこんな使い勝手のいい物じゃなかった。それは覚えてるよな?」

 

「はい、改良したんですよね」

 

「ああ、噂等の悪性情報を元にタタリはその噂の人物になることができる」

 

「でも、それを改良した結果、任意でその能力が使えるようになった」

 

「そう。改悪にならなくてよかったよ…」

 

それからもタタリについて話していった。

ネプギアはタタリの説明を質問を交えながら聞いてくれた。

 

けれど……

 

「うーん……駄目だな。よく分からない」

 

「タタリに不備は無さそうですけど…あるとしたらズェピアさん側に問題があるんですかね?」

 

「恐らくな。……うぅん……よし、やめた!」

 

「やめちゃうんですか!?」

 

「ずっと考えてちゃ疲れる!だから、今はやめた!」

 

『君は其でいいのかね?』

 

─駄目かなぁ…

 

『まあ、構わないよ。答えは意外と身近なのだがね…』

 

─そうなのか?

 

『ヒントをあげるとするなら、やはり〔姿〕だろうね』

 

─姿……か。あー、出かかってるような

 

『ふふ、取り敢えず、今日はやめておくといい。

明日からしっかりと考えることだ』

 

……そうするか。

 

「ズェピアさんがいいならそれでいいですけど…」

 

「悪い」

 

「謝ることじゃないですよ」

 

「……それでさ、暇だけど、どうする?」

 

「あ、それなら……その…一緒に「ズェピア!」え?」

 

「ユニ?どうした?」

 

突然ユニが扉を開けて入ってきた。

一体どうしたというんだ……?

 

「アイエフ達から聞いたのよ、あんたが珍しい銃を持ってるって」

 

「黒い銃身の事か?これ、そんな珍しいかな?」

 

「ちょっと見せてくれない?」

 

「構わないけど……」

 

俺は黒い銃身を取り出してユニに渡す。

凄い食い付きだな……まあ、その性質上弾も特殊だからな。

 

手に持ってそれを様々な角度から観察している。

 

「へぇ…古い見た目に反してかなり複雑なのかしら…」

 

「分かるのか?」

 

「マニアというか扱ってる者としての勘も交えてだけど……これ、使えない?」

 

「無理だな、死徒化した俺じゃなきゃセキュリティのせいで撃つことすら出来ない」

 

「厳重ね、それじゃあ結構危険な代物なのかしら」

 

「弾が当たりさえすれば、殆どのモノが原子レベルまで分解されるかな」

 

「かなり危険じゃない」

 

「だからこそ、俺しか扱えないんだよ」

 

「ふぅん…ところで「ユ ニ ち ゃ ん ?」──」

 

ネプギアがユニを呼んだ途端、ユニは固まり、徐々に恐怖に染まる。

ど、どうしたんだ?

 

もしかしてネプギアの顔が怖いとかそんなか?

いやでも普通に呼んでたぞ?

 

「ユニちゃん」

 

「は、はい!」

 

「私、ズェピアさんに約束を破った罰の途中だったんだけど…申し訳ないけど、今日はここまでにしてくれないかな?」

 

「分かったわ!じゃあねズェピア!」

 

「お、おう……」

 

勢いよく黒い銃身を俺に返して出ていったユニに俺は呆然と見てるしかなかった。

……ネプギア、どうしたというのか

 

「ズェピアさん、それでその、罰なんですけど…」

 

「う、うん」

 

いかん、何言われるか緊張してきた。

財布が軽くならなければいいのだが……。

 

心なしか顔が赤いネプギアは意を決したように言う。

 

「うー……罰として!私に膝枕されてください!」

 

「はい?」

 

それは罰ではないのではないか?

普通に考えて、男からすればネプギア程の可愛い女の子の膝枕なんてご褒美の類いだ。

 

どうしちゃったのか……。

 

「えっと、それでいいのか?」

 

「はい!それがいいんです!」

 

「まあ、そう言うことなら良いんだけどさ…」

 

「じゃあ、はい、どうぞ」

 

積極的な態度で膝枕の準備を完了させたネプギアに疑問を覚えながら、横になって頭を膝に置く。

 

……静かな時間が過ぎていく。

 

「ネプギア?」

 

「はい?」

 

「本当にこれでいいのか?無理してるんじゃないか?」

 

「……いいえ、これでいいんです」

 

「そうなのか……?」

 

少しして、俺がこれでいいのかと聞くと穏やかで優しい声でネプギアは俺の髪を撫でながらこれでいいと言う。

 

ネプギアの顔は今見えないが…何だろう?

 

「こうしていると……ズェピアさんがいると感じられるんです」

 

「──」

 

ようやく気付いた。

そうして、俺は馬鹿だと自身を嫌悪した。

 

気丈に振る舞っていたが、ずっと怖かったんだ。

あの時も泣いてたじゃないか。

こんな男にも涙を流してしまう女の子だと知っていたのに。

 

俺は何でそうやって手遅れになってから気付く。

 

「無茶をして、自分勝手で、優しく振る舞って。

……そうして傷付いて、私達がそれをどんな思いで見ていたか」

 

「……」

ネプギアの口調が強くなっていく。

 

「私は、頼りないですか?私達は、そんなに頼りないですか?」

 

「そんな事は─」

 

「じゃあ……お願いですから、もっと頼ってください!仲間だと思うなら、私達よりも先に行って一人で傷付かないで下さい…!」

 

「ネプギア……」

 

俺は頭を動かしてネプギアの顔を見る。

すると、顔にぽつりぽつりと雫が落ちる。

ネプギアは泣いていた。

 

俺に、一人で行かないでくれと願いながら。

 

「ズェピアさんは、焦っています…家族の元へ早く帰らないといけない、グレートレッドを倒さなきゃいけない……自分が悪いからって、そうして一人で解決しようとして、私達を置いていくんです」

 

「それは…」

 

「私は、嫌なんです……ズェピアさんがそうして一人で行っちゃうのが、怖くて仕方がないんです……!」

 

悲しみをぶつけられる。

俺が焦っていた。

そうなのかもしれない。

 

今思えば、ロアに一人で挑んだのも、そうなのかもしれない。

 

……俺は、また泣かせてしまったんだな。

 

 

 

 

・ ・ ・ ・

 

 

 

 

私を辛そうな顔で見るズェピアさんに言葉を吐き出す。

一人で、一人で戦って、傷付くこの人を見たくない。

もっと頼ってほしい。もっと仲間だと思ってほしい。

 

もっと───もっと、私を見てほしい。

 

そう願い、ズェピアさんに涙を流す。

 

だって、傷付く姿を見て苦しいから。

頼ってくれていいと言ってくれた人が、頼ってくれないのが悔しいから。

 

ロアに一人で挑んで、わざわざ結界で私達が乱入できないようにした時、壁を感じた。

力量、それもあるけれど…一番は心の壁だった。

 

そうして負けて、所々焼けたズェピアさんを見て、怖くなった。

この人を失ってしまうと、思ってしまった。

 

一人で突っ込むような真似はやめてください、とその日は説教をしたが、その後は自室で震えていた。

 

本当は、あの人に抱き付いて寝てしまいたかった。

居なくなってしまうも思ってしまったときには震えが止まらなかった。

お姉ちゃんやアイエフさん達がそうなっても私は震えると思うけど、それでもあの時は異常だった。

 

怖くて、涙を流して、名前を呼び続けていた。

疲れて、寝てしまったけど、起きたときには早く顔をみたいと思った。

顔にも行動にも、仕草にも出さずに心掛けていの一番にズェピアさんの姿を確認したときは心が軽くなった。

 

生きていると分かったからなのかどうなのかは分からないけど……それでもよかった。

 

「私、もっと強くなりますから!私だけじゃなくてアイエフさん達も一緒に強くなりますから!

貴方が頼ってくれるようになるために強くなります……だから、お願いですから……私達をもう少し信じてください!」

 

少しでも、少しでも心に近付きたかった。

いつか帰ってしまうのは分かっている。

それでも、この世界でもこの人の助けになる人はしっかりといると教えたかった。

 

分かったことが一つあるんです。

この人の分かった、は分かってない可能性があること。

 

だから、伝わるように必死に伝える。

 

そうして、ズェピアさんは手を伸ばしてきた。

その手はいつものように頭に置かれるのではなく頬へと当てられた。

そのまま、私の涙を親指で拭う。

 

「──…ああ、そうか」

 

一言、何かに気付いたかのようにズェピアさんは私の顔を見る。

先程の辛い顔は穏やかな物へと変わっていた。

 

分かってくれたのかな。

 

「ネプギアは、強いなぁ」

 

「私は、強くなんか……」

 

「強いよ。…うん、焦ってた。ごめんな、ネプギア」

 

「ズェピアさん……」

 

「ハハ、これじゃユニにも謝らないとだ」

 

「ユニちゃんにも……?」

 

「焦りすぎだって言っちゃってさ。人の事言えないのにな、俺は。でも放っておけなかったからさ」

 

「そう、ですか」

 

何となく、ユニちゃんも大変だったんだな、と思った。

それと同時にユニちゃんの話をするズェピアさんに不満を感じた。

何でだろう、でも、何だか嫌だ。

 

「ズェピアさん」

 

「ん?」

 

「今は、罰の最中ですよ。…他の子の話は禁止です」

 

「…そっか、罰なら仕方ない。心地がいい罰だな」

 

「心地いいんですか?」

 

「何だか、安心する」

 

頬を膨らませて、駄目ですと伝えると笑ってそう言うものだから少し恥ずかしくなる。

涙はいつの間にか止まっていた。

 

安心する。

……そっか、そう思ってくれてるんだ。

何だか嬉しい。

 

「私も、安心します。貴方と二人の時間が」

 

「…それは恥ずかしいな」

 

「そうなんですか?」

 

「まあ、うん。色々とね」

 

ズェピアさんの恥ずかしそうな顔なんて初めて見た。

心の壁、少しは越えられたかな?

 

……強くならなきゃ。

ズェピアさんも、私も、皆も。

そうして、お姉ちゃん達やゲイムギョウ界を救うんだ。

 

でも、今は少しだけ休息を。

 

この人にも、私達にも、それくらいは必要です。

 

 

 

 

・ ・ ・ ・

 

 

 

頭を撫でるのはよくやるが、撫でられるのはそんなに無い。

……ネプギアの言葉は、俺の心にとても響いた。

 

愚かだ、何という愚かさだろう。

俺は仲間だと言いつつ、真にそれを理解できていなかった愚者だったのだ。

これでは申し訳が立たないどころか、会わせる顔がない

 

…ネプギアは、何処と無く、オーフィスと似ている。

俺に泣きながら言葉を吐き出すネプギアを見て、俺が思ったのは其だった。

 

タタリで世界を覆った時、オーフィスは今まで隠してきた意思を爆発させた。

それはあまりにも優しい願いだった。

俺を休ませたい。その為に全てを消し去ろうとした。

手段はあれかもしれないが、その目的は俺にとっては感謝をせざるを得ない。

だが、それを認めるわけにはいかなかった。

 

だから、喧嘩をした。

そして、仲直りをした。

 

……結果、この世界へときた。

 

悪いことだとは思わない。この世界の人々と会えたことで俺にとっての結論が変わることだろう。

それに、この温かい人達を守りたい。

 

俺にも、それをしてもいいだろうか?

世界を壊そうとした俺が守るという尊い行為をしていいものか?

 

…いや、関係無いか。

俺は俺だ。元より誰にも運命を縛られるつもりはない。

守りたいから守る。

それでいいだろう。

 

今までそうしてきただろうに、何を俺は。

原点を見直せ、■■■■。

 

俺は、何を守りたくてそうしたのかを。

俺は、尊いモノを守りたかったから、ああしたんだろう

なら、俺はこの世界の尊いモノを守りたい。助けたい。

 

「…必ずお姉さん達を助けような」

 

「はい!」

 

涙を拭った後の目は少し赤かったけど、俺はそれが綺麗に見えた。

…でも、どうしてこの子の涙を拭いたいと、思ったんだろう。

 

それも自然とやった行為だった。

 

この子の笑顔を見ていたい、そうも思った。

俺は、それを悪いものとは思わなかった。

 

……うん、この世界で俺が頑張ることは、そういう願いでいいんじゃないか?

 

ああ、ようやく、願いを見つけた。

この世界で、したいと思うことを。

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