ワラキー異世界渡航劇   作:ロザミア

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指が折れかけたから投稿します(謎)

というか、一時とはいえランキングに載ってたけどどういうことなの……


監督気取り、白の大地へ そして──

やあ、皆。

俺だ、ワラキーだ。

 

昨日はまあ、なんだ……

うん、罰だったから仕方ない。

 

え、一緒に寝たのかって?

いやもう鬼を見たくないんで……

 

「……ふぅ」

 

ベッドから出て、伸びをしてから窓から外を見る。

晴れてるようだ、善きかな。

 

……でも、ネプギアがあそこまで俺に歩み寄ろうとしてくれたんだ。俺も、そうしないと。

 

俺は馬鹿だったけど、それでもまた大切なものを見付けられた。

 

まだ帰れそうにないけど、それでも待っててくれるかな、皆。

 

空に向けて、手紙を送るが如く。

俺はあちらの世界にこちらの世界から思いを送る。

だが、届くことはないだろうな。

 

悲しいが、帰ってからしっかりと話さないと。

 

扉を開けてから部屋をもう一回だけ見て、世話になったなと思い出ていく。

何だかんだでいい部屋だった。

 

「おはよう、ズェピア」

 

「アイエフか、おはよう。見たところ、俺は遅かったか?」

 

部屋を出たら、アイエフが話しかけてきた。

早起きだな。もう着替え終えてら。

 

アイエフは俺の問いに首を横に振る。

 

「私が早起きなだけよ。目が覚めちゃったってやつ」

 

「なるほど…」

 

「…昨日、ネプギアと何を話したの?」

 

「皆で頑張ろうって話したな。後は、タタリの事を一緒に考えてた」

 

「ふーん…答えは出たの?」

 

「まだかな。もう少し、時間がかかる。ごめんな」

 

「謝ることじゃないでしょ」

 

アイエフは苦笑する。

 

「アンタが出すべき答えを急かして何になるって話よ」

 

「確かにそうだけど…」

 

「それに、アンタは抱えすぎよ」

 

「え?」

 

ずいっと迫るアイエフに俺はたじろいだ。

ネプギアにも同じようなことを言われたからドキッとした。

 

「馬鹿なんだから、グレートレッドだとか黒い銃身だとかタタリだとか…もっと気を抜いて考えなさいよ」

 

「いや、それはちょっと」

 

「それぐらいしてもいいってこと。アンタは一人じゃないんだから」

 

「……アイエフ」

 

「それとも、私達には相談もできない?」

 

「……ハハ、皆優しいんだからなぁ」

 

「分かったんなら、いいわ」

 

「うん、ありがとな」

 

優しいな、アイエフ。

俺には勿体無い仲間達だ。

 

そうだな、難しく考えすぎていた。

 

少し問題を深刻に考えすぎていたのかもしれない。

確かに深刻ではあるけど。

 

考えても仕方ないことも考えていた。

キャラじゃないな、そんなの。

 

「ネプギアだけがアンタを見てるわけじゃないって事、忘れないでよ」

 

「……そうだな、俺は恵まれてる」

 

「なら、その分何かで返しなさい。ほら、行くわよ」

 

「ああ」

 

アイエフが行くので、俺もついていく。

何だか、毎度こんなで情けないな、俺。

そろそろ、ちゃんとしたところ見せないと。

 

名誉挽回しないとな。

 

『君、そう言うのならそれこそタタリを使いこなせるようになるべきでは?』

 

─うぐ…頑張るよ

 

『うむ、そうしてくれたまえ』

 

ワラキアから指摘されてしまったので若干苦しくなるが、仕方無いことなので言い訳せずに受け止めて、少し距離が離れてしまったので急ぎ足で向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよーう!」

 

「うわ、朝から元気ね……おはよ」

 

「おはようユニ、起きてたのね」

 

「こんなの何時も通りよ」

 

ユニがいたので、朝の挨拶。

 

ユニは早起きなようだ。

ネプギアも早起きなんだけど、こんなに早くはないだろう。

だって今、4:00らへんだもん……ユニ、普段がこれなんて恐ろしい子……!

 

社会人だったんで経験ありますあります……

 

「昨日は……」

 

「ああ…あれは…ちょっとあんたのせいじゃないって言うか、アタシが悪かったから」

 

「だから、今もう一回見るか?」

 

俺は黒い銃身を取り出してユニに見るかどうか聞く。

 

「いいの?」

 

「いいさ、どんどん質問してくれてもいい」

 

「…うん!」

 

ユニは黒い銃身を受け取って、じっくりと見て触りどんなものかを確認する。

 

何だか、その姿は俺が最初に造っていた時を思い出してしまって。

自然と笑ってしまう。

 

ユニは突然笑いだした俺にどうしたのよ?と聞いてくる。

 

「ハハハ、いや…造ってた時の俺に似てるなって。

俺も、そうやって見て、触って…精一杯に造ってた」

 

「そういえばあんたが造ったんだっけ…」

 

本当は、アトラスの誰かが造ったものだ。

ズェピアかもしれないし、他の誰かかもしれない。

でも、『その』黒い銃身は俺が理想のために造り上げた物で、色々な想いが詰まっている物だ。

だから、これは

 

「そうだな、うん、俺が造った」

 

そう、俺の自信作に違いない。

 

ユニはそれを聞いて、微笑んでから黒い銃身をもう一度見る。

 

「そんな清々しい顔をして言うんだから、銃も嬉しいでしょうね」

 

「そうかな?」

 

「ええ、きっと想いが詰まっているんでしょ?」

 

「そう、だな。うん、色んな想いが詰まっている。俺だけじゃなくて、皆の」

 

「そう……」

 

「……だったら、さっさとグレートレッド達やマジェコンヌを倒して帰らなきゃね」

 

ずっと俺達の様子を見ていたアイエフがそう言ってくる。そうだ、そのためにも強くならんとな。

 

この体も鍛えれば悪くはないはずだ。

勿論、タタリの本質も理解してみせる。

 

「ああ、絶対に倒そう!」

 

「……それで、ユニはどうするの?」

 

「え、来るんじゃないのか……ってそうか、そうするとラステイションが……」

 

「ええ、ゲイムキャラが力をあんた達に渡した以上、アタシはいけないわ。……でも、ずっと行けないなんて事にはならないから」

 

「…おう!」

 

「それまでは、ね」

 

「ええ」

 

絶対に駆けつける。

意思を示してくれたユニに俺は笑顔で親指を立てる。

それまでは任せろという意思を、俺も示す。

アイエフも、笑みで示す。

 

珍しい組み合わせの三人だが仲間だ。

意思表示くらい楽勝だ。

 

そうした後、ユニが黒い銃身を返してきた。

 

「もういいのか?」

 

「ええ、アタシには使えないってのは昨日の時点で分かってたし…」

 

「そうか」

 

本来なら、黒い銃身も強化しなきゃならないが…やめとこう。

まだ大変だろうしな。

また来たときにしよう。

 

朝早く起きるもんだな。

得をしたというか、何というか。

早起きは三文の徳とは言うが、あながち間違いではないようだ。

 

「よし、やるか」

 

「何をよ?」

 

「朝食を作るであります!」

 

「……ああ、そういえばずっとご飯作りたいって言ってたわね」

 

「料理できるの?」

 

「こう見えて、家族に料理を教えたのは俺なのだよ、二人とも……家事スキルは高いのだ、ヘケッ」

 

「味の保証は?」

 

「そんな疑うの?二人が俺をどんな目で見てるのか気になってきたんだが?」

 

「「馬鹿ね」」

 

「あぁぁぁ……そういう事言うのか!なら、見せてやろう!エリート監督の圧倒的家事力を!」

 

俺は…スーパーワラキアだ。

舐めるなよぉ!チャァァァァァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しいです!」

 

簡単にトマトスープとか、チキンサラダとか…まあ、作ってみた訳だが。

その間に皆起きてきて、顔とか洗ったりした後席について俺の作った朝食を食べてくれている。

皆驚いていたが食べてみたら、今みたいに笑顔になっているネプギアみたいに絶賛である。

 

ふっ……どうよ?

そんな顔をユニとアイエフに向けると

 

「まさかここまでとは……うぅ」

 

「悪かったって、そんな顔向けないでよ」

 

「そうだろ?俺だってこれくらいは楽勝なんだぜ?」

 

「エルエルは主夫さんですぅ」

 

「結婚はおろか彼女すらいませんがね……!」

 

「でも、美味しいわ!」

 

「日本一…素直は美徳だ。お前はそのままでいてくれ……!」

 

「?うん」

 

降参を宣言した二人にドヤ顔をかましているところにコンパの鋭い一撃が俺の心を粉微塵に砕いた。

そして、日本一の素直な一言が俺を癒してくれた。

俺は涙してそのまま染まらないでくれと願う。

というか、色物は増えすぎてはいけない。

え?日本一はもう色物では、だと?

 

うるせぇ、そんなこと分かってんだよ!

でもなぁ、素直さまで消したら取り返しつかないだろぉ!?

 

「……それで、ケイ。ルウィーの現状は?」

 

俺はふざけるのもそこまでにして、一緒に食べているケイにルウィーがどうなっているかを聞く。

このラステイションみたいにマジェコンヌの被害がないというのはあり得ないだろう。

 

だから、マジェコンヌの侵食具合を確かめる。

 

「ルウィーは今、かなりマジェコンヌの手が入ってしまっているらしい。ここ、ラステイションと同じかそれ以上とはルウィーの教祖から聞いたよ」

 

「そんなにか…」

 

「女神候補生も頑張ってはいるらしいけど…まあ、あれだと出来ることは知れているだろうね」

 

「そんな言い方しなくても…」

 

「事実だよ、といっても納得はしないだろうけど…見た方が早いだろう。僕の言い分は尤もだと思うだろうからね」

 

「それで、ゲイムキャラについては……」

 

「それはラステイションの教祖でしかない僕には知り得ないよ。ノワール達なら知っていたかもしれないが」

 

「ルウィーの教祖様に聞くしかないですね…」

 

「大丈夫、成せばなるよ!」

 

ルウィーもかなりヤバイの一歩手前か…もう既に、か。

何にせよ、あちらの教祖と女神候補生達に会わないことには何にもならなそうだ。

 

だからといって、気持ちを急がせても仕方無い。

そりゃ、焦りもあるにはあるが、それで転んでしまっては目も当てられない。

 

今は、食事に集中しよう。

 

…千差万別、か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルウィーは遠いので、列車に乗って行くらしい。

ラステイションもしばらくはおさらばか。

プラネテューヌにも一度戻りたいが我慢だな。

 

ケイは見送りには来なかったが、ユニは来てくれた。

まあ、ケイは教祖だし忙しいんだろう。

俺達が渡した素材で何作るかは気になるが。

 

今、ネプギアとユニが話をしている。

せっかくできた候補生の友達だもんな。

 

「アタシはまだまだだって思い知ったし、もっと強くなるわ」

 

「私も強くなるよ。お姉ちゃんが驚くくらい強くなる!」

 

「…頑張りなさいよ、ネプギア!」

 

「うん!ユニちゃんも、頑張ってね!」

 

何とも微笑ましい光景。

おおう。俺こういうのに弱いんだよ……

 

俺達は少し離れた所から二人を見ていた。

 

「青春だなぁ」

 

「爺か!」

 

「エルエルは吸血鬼だから年齢的にもお爺さんですぅ」

 

「あれ、だったらもっと優しくした方が……」

 

「やめて?コンパ、俺は吸血鬼だけど見た目これだから!精神的にも爺に見えるか?

日本一もやめて?いつも通りに接して?」

 

俺の精神がルウィーになる。

冷たくなるからやめて。

接し方が爺へのそれになったらもう俺はダメになる。

 

「それで?ケイには許可を得れたの?」

 

「黒い銃身だろ?まあ、何要求されるかはその時によるがな」

 

「やっぱりそこはムカつくわね」

 

「まあまあ……」

 

ケイにもう一つだけ頼んだことがある。

それは少し後になるが黒い銃身の強化をする際にラステイションの施設を貸してほしいということだ。

流石に難しい顔をされたが、出来ればと伝えたら

 

『その時次第かな』

 

とのこと。

貸すのはいいが、代価は貰うということだろう。

 

ハア、次は要求難度を下げてくれるといいが。

 

その事にちょっと不安に思いつつ、二人を見ていると話は終わったのかネプギア達がこちらへ来た。

 

「皆さん!」

 

「おう、行くか。ユニ、頑張れよ」

 

「あんたもね。人の心配の前に自分の事よ」

 

「お厳しいことで。ま、その通りなんだけどさ」

 

俺とユニは握手をする。

勝ち気な目だ、いつものユニだな。

心配はいらなそうだ。

成長が早いというか、何というか。

 

まだ話をしたいが、列車は待ってはくれないようでもう乗らないといけないみたいだ。

 

「またな」

 

「またね、ユニちゃん!」

 

「マジェコンヌには気を付けなさいよ」

 

「怪我にもですぅ」

 

「悪に屈しちゃ駄目よ!」

 

「ええ、またね、皆!」

 

俺達は列車に乗り込み、最後にもう一度手を振る。

 

そうして、俺達は一時的にではあるが、別れた。

さあ、気持ちを切り替えていこう。

 

次の目的地は、ルウィーだ。

 

 

 

・ ・ ・ ・

 

 

 

「…行っちゃったか」

 

列車は走っていき、すぐに見えなくなってしまった。

別れはアッサリだなと思い、アイツと握手をした手を見る。

 

新しい悩みができても、アイツは大丈夫なようで安心した。

アタシも頑張らないとね。

 

お姉ちゃんを助けるくらいに強くなってやるんだから。

 

友人と約束した手前、無様は晒せないものね。

 

少し寂しいのは確かだけど、もう会えない訳じゃない。

 

「さて、戻ろう」

 

アイツらが戻ってきたときに見違えるほど強くなってやるんだから。

 

それにしても、ネプギアは気付いてないようだけど……自分の気持ちなんだから、自分で気付けばいいかな。

 

そう思いながら、アタシはラステイションの教会へと戻っていった。

 

 

 

 

・ ・ ・ ・

 

 

 

 

列車に乗り、俺達の席に座るが…いいな。

移ろい変わっていく光景、ラステイションが夏とすればルウィーは冬か。

秋を飛ばしての冬景色へと変わっていく。

 

俺はそれを座りながらただじっと見ていた。

 

「…この光景を、直接見せてあげれたらなぁ」

 

「家族にですか?」

 

「ああ…きっと喜ぶだろうなって」

 

「…皆で来ればいいんですよ!」

 

「え?いや、でも…世界を越えてか?」

 

「はい!皆でまたこっちに来て、それでまた乗りましょう!」

 

「また…か」

 

ネプギアが言ってるのは、確率的には低すぎる。

世界を越えるなんて、それこそ…奇跡的だろうに。

俺が来れたのも場所とか諸々の条件が偶然噛み合ったからであって……

 

「いいじゃない、それで」

 

「うんうん、家族皆で平和になったゲイムギョウ界に!」

 

「ですね~」

 

「…そうだな、その時が楽しみだ」

 

「はい!」

 

「ああ」

 

そうだな、確率とか…理屈じゃないか。

気持ち一つで世界くらい跳べるさ。

 

それぐらいの気概見せてやんよ

 

あー……一度でいいから皆の顔を見たい……

フリージアは体調とか大丈夫かな……

オーフィスはギスギスしないでやれてるかな……

教授は店の管理とか大丈夫かな…

 

あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"……

 

自然と、ため息が出てしまう。

 

「ハァ~……」

 

「どうしたの?元気になったかと思えばため息なんてして」

 

「皆しっかりと早寝早起きして三食食べて歯磨きとかして風呂とか入ってるか心配で心配で……」

 

「アンタって親馬鹿ね……」

 

「確かにフリージアは料理できるよ?でも、無理してないか……オーフィスもさぁ…あの子、あんなことした手前心配なんだよ…教授はまだ平気だと思うけど…」

 

「不安がどんどんと出てますね……」

 

「エルエル、パパモード入ってますぅ…」

 

「これは重症ね」

 

「早く帰って確かめるためにも…グレートレッドの野郎を粉微塵にするゾ」

 

「忙しいやつ……」

 

こらそこぉ!呆れるなよ?

俺だって忙しないのは分かってるんだから。

 

家族への愛を叫ぶのを日頃我慢してるんだからこれくらいの愚痴は許してよ!

今言うことかと言われたら何も言えないけどさ。

 

「ま、ズェピアは放っておいて……」

 

「うぉい」

 

「そろそろルウィーみたいよ」

 

アイエフは視線を窓にやり、ルウィーが近いと教えてくれた。

 

「マジか、雪合戦楽しみですね」

 

「いや子供の旅行に来たわけじゃないでしょうが!」

 

「タコスッ!?」

 

チョップが俺の頭に落とされる。

鋭い一撃…こいつ、洗練されてきているだと…!?

 

あの短期間でここまで強くなろうとはな

 

「威力が上がってやがるなアイエフ……」

 

「私のツッコミは威力測定器か何かかっ!」

 

「仲がいいね二人とも」

 

「アイちゃんはエルエルの事気に入ってるです」

 

「そうなんですか?」

 

「違うから!これはネプ子がボケで私がツッコミだったから自然と身に付いたスキルだから!」

 

「そうだぞ、コンパ。厳密には逆だ。俺がアイエフを気に入っているんだ。なあ遠坂?」

 

「だからその遠坂って誰よ!?そして恥ずかしげもなくそんな事を言うな!」

 

「サム!?ゲタン!」

 

二連撃だと!?

しかも、見えなかった……こいつ、ツッコミながら成長してやがる!

 

「あーもう…ほら、さっさと支度する!」

 

「はいです!」

 

「先生、バナナはおやつに入りますか?」

 

「それ以上ボケるなら窓から列車とお別れすることになるわよ?」

 

「はい」

 

「日本一さんは何か暖かい物とかないんですか?」

 

「寒さなんてへっちゃらよ!体を動かせば温まるもの!」

 

「これがアウトドアの人間か…」

 

俺はこの運動すれば温まるの精神を本気で言っている日本一に尊敬の念を抱いて、コートを出しておく。

まあ、俺も寒さとか平気なんだけどな…死徒便利だね。

 

「さて、お次は夢見る白の大地、か…」

 

何にせよ、やれることをやるだけだ。

いつか帰れると信じて、突き進む。

 

それが俺にできる事なんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

三人の人の姿があった。

そこは本来、誰も寄り付かぬ場所。

二体の生物がかつて棲んでいた場所。

 

少女がとある位置で立ち止まる。

 

「……!」

 

「どうしたの?」

 

二人目の少女が一人目の小さな少女に問い掛ける。

 

「見つけた、薄い反応ではあるけど…ここから突然消えている」

 

「となれば…なるほど、理解したぞ」

 

「本当?」

 

三人目の男が、小さな少女にああ、と頷く。

 

「この空間は特殊だ。それこそあらゆる次元の境界に位置するほど曖昧であり、それでいて世界同士の衝突が起こらない為の壁としての役割をしている。ならば、その壁が一時的に強大な力同士がぶつかることによる壊れたなら?」

 

「そこに吸い込まれる形で消えたって事?それだと…」

 

「もう一度壊せばいい?」

 

小さな少女は腕をぐるぐると回す。

可愛らしい動作ではあるが少女からすればその拳を振るえばこの空間に穴を開けるくらい造作もないだろう。

 

しかし、男はそれを止める。

 

「それをすれば最悪、世界が消失するだろうな。

であれば、奴の帰還を見守る位にしか我らには出来ん」

 

「そんな……」

 

「だが、一つだけお前になら出来ることがある」

 

「…我に?」

 

小さな少女は男に首を傾げる。

二人目の少女もまた、同じく。

 

「『オーフィス』、お前のその無限の力を使う時が来た。それを以てしても出来ることはあまりにも小さいがな……」

 

「無限…我の……やる、教えて」

 

「気休めにしかならんが?」

 

「それでも、やる。『カオス』、どうすればいい?」

 

カオスと呼ばれた男はクク、と笑う。

それでこそ貴様だとばかりに。

オーフィスと呼ばれた少女はどうするのかを今か今かと待ちわびている。

 

「ならば、『フリージア』。貴様の力も借りるぞ」

 

「私にできる事があるならやるよ!」

 

フリージアと呼ばれた少女は、やる気に溢れた瞳で男を見る。

 

カオスは、更に笑みを深める。

やはり面白いとばかりに。

 

「ふっ、では奴の…『タタリ』のいる世界へプレゼントを送るとしよう」

 

「うん!」「ん……!」

 

世界への干渉。

どれだけの事をしようとしているのかを全員が理解している。

不可能に近い事だ。

だが、それでも全員がやると決めたのはやはり──

 

 

 

 

 

「家族の一時を待ってるよ、ズェピア」

 

「貴様が居なくてはつまらんからな。獣も寂しがる」

 

「ん、我達は何処に居ても……家族だから」

 

 

 

 

 

─全員が一人の馬鹿な男の言う家族だから、なのだろう




家族バカは伝染する。

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