倒したから回せば手にはいるという思考はゴミのように捨てられた……
寒い国から放送をお送りしておりまーす。
えー現在のルウィーの気温は知らん。
天候は雪後に雪となっております。
「寒いわね…」
「だが、辿り着いたぜ、ルウィーによぉ…俺達のサッカー人生はここから始まるんだぜ」
「いや、ゲイムギョウ界を救いなさいよ」
「雪だるま作ってからでいい?」
「子供か!」
「おっさんですね」
「童心にかえってる余裕があるなら働け!」
「ゴボウ!?」
「エルエルも懲りないです~」
はい、早々に一発いただきました。
何てこった、もうこの一撃が俺の目を覚ますものと化してやがる。
まさか、俺はドMだった?
やめよう、気持ちよくはないけど、娘にまで言われた覚えがあるからやめよう。
「……日本一さん、本当に寒くないんですか?」
「平気よ?」
えっへんと胸を張る日本一を見て、本当に寒くないというのが分かった。
俺も死徒だから平気だけど、一応着込んでます。
何でかって?
ちょっと人間気分かな?
というか、何だか向こうが騒がしい。
人が結構集まってるが、誰かが演説でもしてるのか?
「ちょっと気になるな、行ってくる」
「え、ちょっと!」
「悪い、先に教会に行ってても構わないからさ!」
「また勝手にそんな事言って…!」
俺はアイエフ達に言ってから人だかりへと向かった。
かなりとは言いがたいが…それなりには集まっているな。
見ていた俺は少しだけ近寄ることにした。
誰が演説してるのかだけでも確認を……
そう思って近寄っていくと、足が誰かに当たってしまった。
「うわっと……」
「きゃっ……!」
誰がぶつかったのかを確認すれば、それはまだ小さい女の子だった。
こりゃいかん。
「わ、悪い…不注意だったな……立てるかい?」
「ぅ、うん…(おどおど)」
俺は謝ってから手を差し出す。
女の子は少し怖がりながらも俺の手を握って立ち上がる。
「怪我はないか?頭とか打ってはないか?」
「……(こくり)」
「そうか、良かったぁぁ…ああ、自己紹介をしておくと、俺はズェピアって言うんだ。さっきはごめんよ」
「私は…ロム、です」
「ロムか、よろしくな。……親御さんは居ないのか?もしくは、姉とかは……」
「えっと、その…」
話し辛そうだ。
人見知りが激しいのかそれとも恥ずかしがり屋なのかは知らないが、少し踏み入りすぎたな。
「あー…ごめん、言いにくいなら言わなくていいよ。
誰かとは来たのか?」
「うん…」
「そっか。ここは人が多いから、はぐれたのか……」
「……お兄ちゃん?」
「お兄ちゃん、だと……?」
待て、俺はロリコンではない。
妹が居たらなぁとかは昔考えたことはあったしそう呼ばれてみたいという願望はあったけどもロリコンではない!断じて無い。
んー……でも、呼びやすいのがそれならそれでいいか。
何となく、妹ができたみたいで嬉しいですし。
娘はいたが妹は居なかったので新鮮である。
ロムは心細いのか俺の裾を握っている。
まあ、はぐれるよりはマシか……
演説、聞こえないかな……?
ロムには悪いが、少しだけ聞こえる所まで進む。
「マジェコンヌに入ればマジェコンが使い放題!
女神なんかもう古い古い!今の時代はマジェコンヌでしょ!」
聞こえた。
しかも、この声下っ端……リンダの声か!
「……ハァ…」
「お兄ちゃん……?」
「ロム、少しだけ離れる、いいかな?」
「う、うん……」
「悪い、そこの広いところで座って待っててくれ」
俺はロムを置いて、さっさと人を掻き分けて進む。
そして、リンダの姿を確認した。
チラシを配ってるが……どう見ても宗教勧誘ですね。
俺も近付くことにした。
「マジェコンヌに入るなら今だよ~!」
「えー?本当にござるか~?」
「そう疑うなら一度……げぇ!?テメェは!」
「ズェピア・エルトナム・オベローンです。よろしくお願いします」
「ああこちらこそよろしくお願いします…じゃねぇ!
しかも名前なげぇ!何だってこんなところにテメェがいるんだ!?」
「あれは今から36万年前か…」
「いや長生きし過ぎだろぉ!」
「ツッコミありがとう。それで?お前何してんの?
言葉次第によっちゃ泣くぞ」
「泣かせるじゃなくて!?」
「うん、泣く」
「面倒だなテメェ!?」
何だこのツッコミ力は。
下っ端でさえこの力……マジェコンヌ、侮れぬな。
「ま、茶番はここまでだ。マジェコンヌ、布教活動はやめてもらおうか」
俺は構える。
ぶっとばす準備は出来ている。
死徒化をすればいいんだろうけど、無闇に使うとよろしくないからな、あれは。
逃がすつもりはない。独房に入れてくれるわ!
「チッ……かくなる上は……!オラァ!」
「うお、危なっ!?」
リンダは鉄パイプを俺に投げてきた。
避ければ人に当たる。
なので、俺は鉄パイプを掴むか防ぐしかなくなったわけで。
安全のために掴むことにした。
しかし、投げたと同時に走ったリンダには対応できなかった。
「きゃぁっ!?」
「なっ…ロム!」
「へっへっへ……」
リンダはロムを抱え、人質にしてしまった。
小さい女の子だぞ……何て事を!
ロムは苦しいのか必死に暴れるが……
「暴れんじゃねぇ!」
「ひっ……」
リンダの荒い言葉に怖がって動けなくなってしまった。
「卑怯な真似を…!」
「これならテメェが変身しようがどうしようもねぇだろ?動くなよ…?アタシが逃げるまで、動くんじゃねぇぞ?」
「苦しい……」
「その子は関係ない子供だぞ!」
「へっ、悪党にそんな言葉が通じるかよ!」
ジリジリと後ろへ逃げるリンダに俺は追うことができない。
動けばどうなるか……。
俺の判断ミスだ。
ロムを俺の側に居させておけば……!
歯痒い思いで拳を握る。
痛むが、知ったことではない。
リンダの勝ち誇った笑みを睨むことしか出来ない。
「ロムちゃんを離せぇぇぇ!!」
「な、ぐぁぁ!?」
「ひゃ……!」
「ロム!」
リンダの額に氷がぶつかるまでは。
氷がヒットしたリンダはロムを手放してしまい、ロムは地面に落ちてしまう。
俺は慌てて駆け寄って、ロムの安否を確認する。
「大丈夫か!?」
「う、うん…それより…」
「ってて……何だってんだよ!?」
ロムは無事みたいだ。
俺は安堵し、次に誰があの状況を打開したのかを確認するべく辺りを見回す。
「ロムちゃんに酷いことして、許さない!」
そこにいたのは、ロムとそっくりな見た目をした少女だった。
いや、髪色は同じく茶髪だが長さはロムより長いな。
双子だろうか?
「ラムちゃん!」
「ロムちゃん、大丈夫?わたしが来たからには安心よ!」
「うん!」
「……よし!」
しかし、あんな小さな子が勇気を振り絞ったのだ、今度は俺の番だ。
俺は立ち上がり、リンダに向き直る。
「形勢逆転、お縄について貰うぞ!」
「ガキんちょが邪魔しやがって……!」
リンダは今度こそ刀を構える。
周りにいた人達がそれを見て悲鳴をあげる。
「ロムと…ラムだったな?危ないから下がってるんだ」
「…ううん、大丈夫!(キリッ)」
「わたし達だって強いんだから!」
ロムとラムが自信満々にそう言ってから、二人に光が集まる。
この、現象は……!
……ケイが言っていたのはこの事か!
「これは……!」
光が消える頃には、二人の姿が大きく変わっていた。
ロムは髪が青く瞳がピンクで、右側の髪が少し長い。
ラムは髪がピンクで瞳が青く、左側の髪が少し長い。
女神候補生達……予想通りだが、なるほど……!
「女神候補生が二人か!」
「な、何だとぉ!?」
二人はお互いの杖をリンダへと向ける。
「このルウィーの女神候補生であるロムちゃんラムちゃんがやっつけてやる!」
「うん、やっつける!」
「何だってんだ、こりゃぁ……!」
「形成、さらに逆転だな…!」
「チッ……!?」
「ロム、ラム!俺が殴るから援護を!」
「うん!」「仕方無いわね!」
俺はリンダへと接近する。
ロムとラムには遠距離からの援護を頼んだ。
さあ、年貢の納め時だ……!
俺はリンダに拳を振るう。
しかし、刀で弾かれる。
だが、ロムとラムが……
「馬鹿が、マトモに戦う訳ねぇだろっ!」
あれは……!?
「ハッ、閃光玉……!?」
リンダは接近する刀を振るうでもなく懐から取り出した玉を地面に投げ捨てる。
そして、光が俺達の視界を支配した。
「きゃあ!?」「何!?」
「くそ!!」
俺は見えないながらも手を伸ばすが……
手は何も掴まずに空を切る。
そして、視界がようやく戻るが……
やはりリンダの姿は消えていた。
「くっそ…逃げ足は早い!」
「お兄ちゃん、待って…そこ」
「ん?」
「足跡があるわ!ロムちゃん、行くわよ!」
「あ、待って、ラムちゃん!」
「二人とも!?」
ラムがリンダのと思われる足跡を追って行ってしまい、ロムはラムを追いかける形で行ってしまった。
俺もすぐに追おうとしたが
「ズェピア!」
「アイエフか?」
後ろを振り返ればアイエフ達が走ってきた。
「人が逃げてきてたから何事かと思ったけど何があったの?」
「マジェコンヌのリンダが居たんだ。そこに出くわして色々あって今追おうとしていた。ルウィーの女神候補生達は先に行ってるんだ!」
「ルウィーの!?早く行きましょう!」
「マジェコンヌ…悪は私が裁くわ!うおぉぉぉ!!」
「エルエル、アイちゃん!日本一さんが行っちゃいましたです!」
「ええい、早く行くわよ!」
「おう!」「はい!」「はいです!」
俺達はさっさと走っていった日本一に遅れないように走った。
何も起こらないように祈りながら。
・
・
・
・
ルウィー国際展示場、その東館。
足跡を辿ればそこに行き着いた。
日本一にギリギリ追い付いた俺は呼び止める。
「日本一、先走るなよ!」
「ズェピア?あ、ごめん、つい…」
「心配なのは分かるが、それで何かあったら俺は悲しいぞ。行くなら、皆で、な?」
「そうね…ええ!」
俺と調子が元に戻った日本一に少ししてからアイエフ達が追い付く。
コンパは大丈夫だろうか?運動が得意というわけではないだろうし……
あれ、思ったより平気そう?
「ようやく追い付いたわ……ここね?」
「ああ、まず間違いないだろうな」
「じゃあ、行きましょう!」
「はいです!皆で、マジェコンヌをやっつけるですよ」
「正義の名の元に悪を倒すわ!」
「正義執行してやるぜぇ!」
「こんな時にふざけない!」
そうして俺達は中へと進んでいく。
モンスターがちらほら見えるが、構っている暇はない。
ラムとロムが心配だからな、さっさと行く。
しばらくして、ロムとラムの姿を確認し、そのすぐ後にリンダも確認した。
どちらも傷がないからようやく追い詰めたといった様子か?
「ロム、ラム!無事か!」
「お兄ちゃん?」
「やっと来たのね!」
「げ…多勢に無勢ってレベルじゃねえぞ!?」
「やい、犯罪組織マジェコンヌ!悪が栄えた試しはないわ!ここで倒してやる!」
「ク……!?」
流石に人数差による不利を感じずにはいられまい。
逃げ出しても捕らえられる人数ですね、勝ったわ(慢心)
「大人しく投降しろ」
「へ……誰がそんな事すっか!アタシにはまだこの手があんだよ…!」
リンダがそう言って取り出したのはラステイションやプラネテューヌの時と同じ赤いディスク。
あの蜥蜴ぇぇぇ!!
「モンスターディスク…それもグレートレッド製か!」
「そうさ!ほらよ!」
リンダがそれを翳すと赤い光を発し、光が徐々に形を得ていく。
そして、その光は黒く染まる。
その黒が形を得ていく様は、まるで……
「ッ……!」
「まだ、大きくなるの…!?」
ネプギアの驚愕は尤もだ。
だが、俺はこの形を知っている。
この翼、尾、そして…その赤を。
お前まで、お前までもそうなるか……
〔オ、ォォ、ォオオオ……!!〕
サマエルとフェンリル。
あの二体は確かに強い。
特にサマエルはドラゴンという種には必ず勝てる存在だ。
だが、俺にとって、今から出てくるのは強さだけではない。
〔この肉を持つ感覚、檻から解放される感覚……!〕
「これは、まるで…」
「…ドラゴン……!」
「赤い、ドラゴン……!」
「怖い…」
その巨大さは二度見た。
かつての大戦の時に遠くより見たのが一度目。
対話をするために直接あったのが二度目。
〔久方ぶりの肉体、震える力!そして…喰い千切りたくなるほどの敵!!〕
それは、俺を睨み付ける。
そうか、お前はあの時のお前か。
憎いだろうな、そうだろう。
あの子の一生を見てないお前は、俺を憎いままだろう。
「…お前までそうなるのか──」
グレートレッド……お前は俺に何をさせたい…?
俺もまた、その存在を睨み付ける。
俺の世界において、それは恐れられる物。
赤と白のドラゴン。
その赤のドラゴン…
〔ズェピア・エルトナムゥゥゥゥゥ!!!〕
「─……ドライグ…」
『
奴は俺に、御執心のようだ。
俺は、お前の心を知った。
あの時の後悔を聞いた。
なのに、これはないだろう!
お前はもう、暴虐のドラゴンではないだろう……!
だというのに、これは……何て酷い。
俺は戦意を失ったわけではない。
だが、勝てるのか?
今の俺はグレートレッドに一息で殺される程弱い。
その俺に、こいつを…倒せるのか?
俺は皆を見る。
ドライグの力に震えるのが何人かいる。
当たり前だ。こいつは格が違う。
何せ、肉体がある。
何としても、皆を逃がして──
「─ズェピアさん!」
「!」
「また一人で抱え込んでましたよね」
「……ネプギア」
ネプギアが俺の名を呼んだ。次に手を握って来た。
彼女の目には諦めの色が無かった。
他にも、よく見れば震えてはいるが皆負けるものかと睨み返している。
……また一人で考えてたな。
「悪い、癖が出てさ」
「良くないですよ」
「ああ……──頼りにしてもいいか?」
「─はいっ!」
ネプギアは笑顔になる。
ああ、馬鹿だな、俺。
どうやら俺は、頑張れるようだ。
ハハハ、俺は笑顔に弱いのかも。
「皆、やれるか?」
「流石にヤバイけど…倒せない訳じゃないんでしょ?」
「それに、このまま逃げたらルウィーが危ないですぅ」
「どうあれ、正義のために戦うしかないって事ね!」
「ロムちゃん、やれる?」
「怖いけど…ラムちゃんが頑張るなら、私も頑張る!」
「──ああ」
美しい物を見ている気がする。
弱気になってた俺に戦う意思をくれた。
なら、やるしかないじゃないか。
全く、我ながら単純な男だと思う。
〔羽虫どもがうじゃうじゃと……踏み潰してくれる!〕
「それは駄目だな、ドライグ」
俺はドライグに指差し、ニヤリと笑う。
笑え、俺。
これが絶望的な状況でも、笑え!
「お前は、俺達が倒す!!」
そして戦え、この世界での願いのために。
俺が、俺達が守るんだ!
小さい子が勇気を出している。
なら、カッコ悪い所は見せられない。
感想やご意見待ってます。