俺とネプギアは変身する。
ドライグと戦うには全員で掛かっても苦戦どころか敗戦する可能性は高い。
というのも、こいつは自身の力を倍加するからスペックとかは宛にならない。
アルビオンはまだ楽な部類だが、ドライグは自己強化をしまくるから辛い相手だ。
だが、差は気合と作戦で埋める。
変身した俺を見て、ドライグの憎悪がより一層強くなる。
〔ズェピア・エルトナム…!!貴様は殺す!
必ず、喰ってくれる!〕
「やらせません……私達が、貴方を倒します!」
「ドライグ…君の憎悪は分かるとも。
だが、その憎悪を持ち出すということは…君は変われなかったドライグということだ」
〔何を訳の分からぬことを……!〕
「簡単な話だ。その憎悪は、フリージアを侮辱し、かつての感想を伝えてくれた君さえも侮辱した憎悪だ………とても許せることではない。本来ならば、私だけが取り掛かるべき事だ……だが、舞台整理は全員の仕事だからね、君という粗悪品を役者全員で始末するとしよう!」
〔吸血鬼風情が俺を愚弄するか!かつての貴様ならばまだしも今の貴様に俺と戦う資格などありはしない!
潔く朽ち果てるがいい!!〕
ドライグの口から炎が溢れ出す。
龍のブレス、それは古来からの災厄の一撃。
受けたものはまず只ではすまない。
三回の倍加をしたドライグのブレスならば尚更だ。
まだ上がるというのだから質が悪い。
それが今、放たれた。
「合わせろ!」
「はい!」「うん……!」「分かったわ!」
「「「「ハァァァァァァ!!!」」」」
俺とネプギア、ロムとラムはそれぞれが遠距離で放てる攻撃で一番火力のある物を放つ。
俺は悪性情報を質量のある奔流として放ち、ネプギアはマルチプルビームランチャー…MPBLからビームを放つ。
ロムとラムはそれぞれの杖から氷の魔法を放つ。
それらが赤龍帝のブレスへと向かい、ぶつかる。
僅かにだが、押しているぞ!
〔ぬぅ!?何故俺が押し負ける!?〕
「そんなもの決まっている!」
「ゲイムギョウ界を救いたい!」
「「ルウィーを守りたい!」」
「己の願いのために戦うのだ!それを、貫き通す覚悟こそが、君の炎に打ち勝つ力となる!」
〔─舐めるなぁァァァァァぁ!!〕
「今だ、アイエフ、日本一!」
「ええ!」「合点よ!」
「コンパ、申し訳無い、歯痒いだろうが!」
「私は看護師です!回復は任せてですよエルエル!」
コンパは戦わせられない。
何故ならコンパは回復役だからだ、コンパが倒れてしまえば、俺達は回復もできずにやられてしまう。
その為にも、後ろに居てもらう!
それを理解しているコンパは回復の用意は万全だ。
頼もしいな!
アイエフと日本一がドライグへと駆ける。
今、この瞬間においてドライグはブレスに意識を割いている。
今ならば接近戦で殴れる訳だ。
二人は素早いから、引き際を誤るとは思えない、だから任せる。
信頼して任せる。
二人はドライグの腕を狙う。
日本一のドリルが鱗を削り取り、アイエフのカタールが削り取られた部分を斬る。
そして、その僅かな痛みが重要だ。
〔ぐぬ、羽虫風情がぁ!!〕
─意識を腕に向けた!
「力を振り絞るぞ!今が好機だ!」
「うん!」
「頑張る……!」
「いきます!」
俺達はさらに力を込める。
腕に意識を僅かでも向ける。
それは倍加を続けていても隙であることに変わりはない。
この数秒でミスをしたな!
ブレスをどんどんと押していく俺達の合わせ技。
ドライグもそのミスに気づき、再度力を込めるがもう遅い!
俺達の技がブレスを押し切り、ドライグの顔に当たる。
押し切る瞬間にアイエフと日本一も退いたようだ。
当たった瞬間、それは爆発し、ドライグの顔を包み込んだ。
〔ぐ、ぬぅおぉぉぉぉ!!?〕
苦痛の声をあげるドライグに効果はあったようだと確信する。
だが、あれで倒せるとは思っていない。
大戦時代、どれだけの犠牲が出たかを知っている。
四大魔王も、聖書の神も死んだ。
多くの者が死んでいった。
どれ程の強さだったか……。
……だが、かなりの出力を出したのも事実だ。
まさか、たった5回の倍加でここまでの消費を強いられるとは。
女神候補生達も辛そうだ。
「かなりの威力だったけど…」
「ど、どう……?」
「いや……まだだ…」
〔─貴様らァァァァァぁ!!〕
煙が晴れるとそこには怒りに身を震わせるドライグがいた。
その顔は先程の攻撃でボロついている。
だが、ドライグ自身はまだやれそうだ。
自信ある一撃だったんだけどなぁ……!
でも、少しだけ回復はできた。
こういう時、回復係がいるとありがたいな。
『だが…このままでは』
─ああ
「うわわ!?」
「まだまだ余裕って感じね……!」
「それに、まだ強くなってるわ!」
「反則…!(イラッ)」
「ズェピアさん、何か手はあるんですか…?」
「ある」
確かに、先程の作戦で一撃を与え、ダメージは与えた。
かなりのダメージだったろう。
だが、足りない。
足りない分は、監督が補う。
「先程よりも重労働間違いなしの作戦となる。
構わないか?」
「それで、勝てるんですね?」
「ああ、勝てる。確実にね」
「なら、やるしかないでしょ」
「あのドラゴンさんを倒さないとルウィーが危ないです。私達で倒すですよ!」
「…他の皆も同じよ、ズェピア。皆が正義を背負ってるんだからね」
全く、最高の仲間だ。
じゃあ、やるか。
分割思考、限界展開。
〔ズェピア・エルトナムだけではない、貴様らも喰い殺してくれる!!〕
ドライグが動き出す。
倍加は恐らく8回。
ってことは、一発即死か。
「ネプギアは私と動くぞ、決定打を撃てるのは君と私だけだ。ロムとラムは魔法でドライグの注意を惹き付けてくれ。アイエフと日本一が一番の労働となるが?」
「任せなさい」
「まだまだ動けるわ!」
「よし、ならばロムとラムを抱えながら走ってくれ。
二人の足ではすぐに追い付かれる。君達もドライグの倍加がこれ以上かかればキツい。コンパ、君には…これを」
俺はコンパにあるものを渡す。
「これは……」
「君がこの作戦の要だ。……使い方は?」
「分かります!」
「よろしい。……では、私が合図をしたら、頼む。
それまでは隠れながら動いてくれ。常にドライグの頭が見えるようにね」
「はいです!」
「では、作戦開始だ!!」
全員が頷き、作戦通りに別れて動き出す。
アイエフと日本一は素早くロムとラムを抱えて走り出す。
ロムとラムが氷を造り出し、それをドライグにぶつける。
〔この程度、痒いわ!蝿どもめ…!〕
「こっちこっち!」
ドライグは予想通り二人を狙ってブレスを吐く。
動き回る二人に抱えられているから当たらないが、いずれは当たる……それまでに。
俺はアイエフたちと逆方向に一緒に飛んでいるネプギアに話し掛ける。
「MPBLのチャージは?」
「もう少しです。……ズェピアさん」
「……怖いかね?」
「…っ」
よく見れば、武器を持つ手は小刻みにだが震えている。
当たり前だ、この作戦の要はコンパだが、最終的に倒すのは俺とネプギアだからな。
失敗したらどうしようと考えるのは普通だろう。
俺だって怖い。
だから、俺は近付いて武器を持っていない手を握る。
「ズェピアさん……」
「大丈夫だ、君だけが背負うんじゃない。私も、皆も背負う」
この戦いは辛い。
だからこそ、勝たねばならない。
正直な話、人でなしと言われるだろうが他人の命なんてどうでもいい。
ただ、その他人の中に、ネプギア達が含まれているのなら…ついでで守る。
俺が出来るのは大切な人たちを守ることだけだ。
正義の味方になれるのは、その時だけ。
ネプギアは、俺の手を強く握り返す。
先程の弱気な顔はどこへやら、そこにあるのは強い眼差しだった。
「もう大丈夫かね?」
「はい…ありがとうございます!やっぱりあなたの手は…温かいです」
「ハハハ、照れることを言う。私に出来るのは、戦闘以外ならこれだけだからね。さて、気持ちを切り替えよう」
「はい!」
さて……上手くいってくれよ……!
・ ・ ・ ・
「キッツいわね……!」
私、アイエフはロムと呼ばれた少女を抱えて走っている。
後ろにはドライグと呼ばれるドラゴンのブレスが地面に激突していた。
あの場にいたらどうなっていたか……なんて考える余地もない。
まさか、ドラゴンから逃げるために女神候補生を抱えて走る日が来ようとは思わなかった。
女神化してるから飛べばいいとは思っていたけど、ズェピアの方が正しかったみたいね。
あのドライグって奴、あの巨体で速く動けるなんて反則にも程がある。
「日本一、無事!?」
「まだまだ走れるわ、そっちは?」
「私もまだ平気といえば平気よ。諜報員の運動量ではないけどね……!」
「大丈夫……?」
「構わないわ。貴方にも負担はあるわけだし、お相子でしょ?」
抱えているロムから心配の声が聞こえたので微笑んで見せる。
まだまだやれるっての。
ズェピアではなく私達から始末することを考えている今のうちにひたすら走る。
ロムとラムが注意をこっちに向けてくれるけど、二人もどこまで持つか……
〔ちょこまかと鬱陶しいゴキブリどもめが!!〕
ドライグは私達に巨大な火球を何度も放ってくる。
私と日本一は当たらないように方向を変えながら走る。
後ろから轟音が鳴り止まなくて眠くはならなそうね…
「ロムちゃん!」
「うん!」
「「ブリザードランス!!」」
二人が力を合わせて巨大な氷槍を生成して火球を放ったばかりのドライグに命中させる。
けれど、あまりダメージは見込めないようね。
〔ええい……!ならば……──ふん!!〕
ドライグは苛立ちが頂点に達したのかその場で地面を強く殴る。
─瞬間、ルウィー国際展示場が揺れた。
「くっ!?」
「これは……っ!」
「きゃあっ!?」「ひゃあっ!?」
あまりの振動に走れず、転んで倒れてしまう。
二人して抱えていた女神候補生を手放してしまった。
マズイ……!!
〔さあ、これで逃げれまい…皆殺しだ、小娘ども!!〕
揺れが収まった時にはドライグが既に私達に追い付き、その口から炎を溢れさせる。
この距離でそれを放たれたら……!
作戦が失敗?
そんな事には、絶対にさせない。
何か、手が……!
そうこうしている内に、ドライグは私達を確実に殺しきる準備が出来たらしい。
〔この世から、完全に消え失せるがいいっ!!〕
そうして、ドライグの口から地獄の業火が──
「今だっ!!」
「はいですっ!!」
─放たれる前に、ドライグの顔の前で閃光が弾けた。
・ ・ ・ ・
「ズェピアさん!!」
「ああ、放て!!」
俺はアイエフ達に炎が放たれる前に、ネプギアのチャージが完了したのでコンパに合図を送った。
いつでも使えるようにしていたのか、コンパはその合図と共にそれを投げた。
俺が渡したもの──閃光玉を。
持っていたものではない。
急造の品だ。
タタリを用いて、それに情報を与えて本物同然の偽物を造り出した。
ぶっつけ本番だったが、上手くいった。
俺は俺の能力を信頼して、仲間を信頼した。
結果は、勝ちだ。
〔ぬぅあ!?〕
「今よ!」「ええ!」
アイエフと日本一が即座に二人を抱えて逃げ出す。
そして、俺とネプギアの位置は、ドライグの背中だ。
ここで大技を放てば、お前といえどデカい傷は確定だろう。
そして、ネプギアはその背中へMPBLを向ける。
「マルチプルビームランチャー最大出力!いきます!」
〔何、上だと!?〕
ドライグが気付いたがもう遅い。
MPBLから先程よりも極太のビームが放たれる。
それはドライグが動くよりも早く、ドライグの背中に当たる。
〔グァァァァァァァァァ!!?〕
ドライグもこれには堪らないようで、背中に叩き付けられた事もあってその巨体が地面へと沈む。
だが、まだ生きている。
放たれ続けるビームを喰らいながらもまだ。
だから俺は、その背中へ
赤い龍に向けるのは、二度目だ。
俺がそれを放てなかったのには理由がある。
まず、その鱗の耐久だ。
これではそれを貫けない。
そして、次にドライグ自身の身体能力。
倍加し続ける体がこれを避けれない訳がない。
だからこそ、決定的瞬間を待っていた。
「『
その写し身を消し去ろう!」
〔ズェピア・エルトナム…また、貴様か…ガァァ!?〕
黒い銃身を向け、その弾丸を放つ。
それは傷だらけで鱗の耐久も何も気にする必要はない背中へと、真っ直ぐ進んでいく。
〔貴様が、俺の死になるなど………!!〕
弾丸は、ドライグの背中を撃ち抜いた。
俺とネプギアは降りて、仲間達の元へと向かった。
・
・
・
・
「皆、無事か!」
「ええ、何とかね……」
俺とネプギアはアイエフ達の元へと向かい、アイエフから無事という報せを聞いて安堵した。
炎が少しでも当たっていたらと考えるとゾッとする。
アイエフと日本一は疲労感からか座り込んでしまった。
ロムとラムもまた、寄り添うように壁に背を預けている。
コンパはそんな四人を診ている。
「皆、異常はないですよエルエル」
「そうか、良かった……」
「……あれで、勝ったの?」
「ああ、勝ったとも、その証拠に……」
〔が、ぁァァ……!〕
ドライグの苦痛の声が聞こえて、全員がそちらへ顔を向ける。
そこにあったのは、悲しい姿だった。
〔消えて、いく……俺が、俺の体が……!〕
ドライグの尾が、粒子になり、消えていく。
痛みは想像を絶するだろう。
炎を放つ余裕もないようだ。
俺は、ドライグへと近付いていく。
「ズェピアさん!」
「すまない、ケジメでね」
「…大丈夫、ですよね?」
「勿論だとも」
腕を掴んで止めてきたネプギアに微笑む。
俺は手を離してくれたネプギアの頭を撫でてからドライグの元へ向かう。
当然ながら、近づいてくる俺を睨み付けてくる。
「やあ、ドライグ」
〔ズェピア・エルトナム……!貴様、だけは許さん…〕
「許さなくていいとも。私は、許されようとは思っていない。……君を殺し、次へと進ませてもらう」
〔この、俺が……何故だ!何故この肉体でも勝てない!?〕
「それは、最期の疑問かね?」
〔答えろ!何故だ!何故、俺は……!〕
既に、下半身は消え去ってしまったドライグが、血を吐き出しながら問い掛けてくる。
鬼気迫る声で聞いてくる。
俺はそれに対して真剣に答える。
「簡単なことだとも。
君は独りで、こちらは仲間がいた。それだけだよ」
〔…大戦の時の繰り返しと、そう言いたいのか……俺と白いのは貴様らのような矮小な存在の群れに封印された。その繰り返しと?〕
「さあ、それは君の想像に任せよう。」
〔…力だけではないというのだな、この世は〕
「君が味わった通りだと思うがね。
だが、昔私が言った通り、龍の摂理はもう私達の世界では適応されない」
〔純粋な力のみで生きていられる時代は既に古い…─〕
ドライグは何かに気付いたように、睨むことすらやめてぐったりと顔を地面へと置いた。
〔ああ、そうか。俺は──〕
〔──時代に、殺されたのか〕
その言葉を最後に赤龍帝と呼ばれ、恐れられた龍は消えた。この最後の問答で、答えを得られたのなら、それはそれで結構だ。
俺も、タタリによる答えを得られた。
「…移り行く世界、変わり続ける人の世。無数に存在する恐怖の形。君はそれに殺された、か」
俺はそうして、死徒化を解除する。
しかし、俺は忘れていた。
いや、俺たちは、か。
俺は、体が突然重くなり倒れ伏す。
「「「「あっ」」」」
「えっ?」「あれ?」
「……忘れ、てた……!」
……死徒化した状態で動くと戻ったときにかなりの負担が来ることを忘れていたのだ。
ロムとラムはそれを知らず、キョトンとする。
知っている四人は……
「全く、締まらないわね……」
「でも、エルエルらしいですよ」
「うんうん、所々抜けてるところがズェピアらしいわ」
「あはは……」
苦笑している。
……恥ずかしいな、これは。
ロムとラムは困惑しながらネプギアに聞いて、ネプギアはそれに答えると二人とも安堵していた。
皆無事で良かった。
これは俺も体を張った甲斐があるというものだ。
だけどさ……
「あのぉ……誰か助けちゃくれませんかね……?」
俺の体、動かないからモンスターに襲われる前に起こしちゃくれませんかね!
タタリの答えを得たワラキー。 その答えとは?
次回に続く、続くったら続く。
感想、ご指摘があればください。
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