ワラキー異世界渡航劇   作:ロザミア

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どうも、ロザミアです。
fgo編も編集してるのに、何でか分からないけど気が付けば1.5部になってるのは何故だろう?

今回は変化球いってみます。
ではどうぞ


殺人貴、線を斬る

駆ける。

地面を踏み、蹴り、壁を伝う。

からくり仕掛けで一撃でも貰えばこの体では醜い肉塊へと成り果てることだろう。

一撃即死、大いに結構。

有名でベタだが、当たらなければ問題はないのだ。

 

その点と殺しにおいては七夜志貴の体は優秀だ。

七夜の体術を用いれば、一歩で10㍍は容易いという。

反則な動きだと思うが、そうでなくとも人外とのスペック差を考えればまだ彼方の方が有利なのが苦しいところだ。

 

幸い、このダンジョンはブロックの形をした遮蔽物が多い。壁もまた同じ形状と来ている。

迫る鈍器()を壁に跳ぶ事で避ける。

どうにも、通常攻撃の効きが薄い。

ナイフは当然ながら、ネプギアのMPBLのビームや斬撃を受けてもびくともしない。

 

というか、日本一のドリルが一番効果的なのは用途の違いか?

けれど……その堅牢さも、この眼の前では紙同然だ。

 

「よっと。斬る!」

 

〔ガガ…左腕損傷率40%をオーバー〕

 

また剣を回避して左腕の『線』を斬る。

すると、まるで効いていなかった俺のナイフが豆腐を切るよりも楽に斬れてしまった。

まあ、大きすぎるから一部を切り離せた程度だが、キラーマシンからすれば40%の損傷らしい。

 

こうして一手二手先を打ってようやく腕一つの少しの損傷。

参ったな、これだと間に合わない。

 

七ツ夜だと斬り切れない─!

 

『加えて、後少しでこのデカブツとの刺し合いも終わっちまう。口惜しいと思わないか?

人でないにしても、あっちは機械の癖に分不相応に殺意をぶつけて来てくれる。なら、此方も脳髄が砕けるほどの気持ちでデートに応えなきゃならんと思うんだがね』

 

─黙ってろ殺人貴

 

殺人嗜好の男が話し掛けてくる。

話す声は愉しげだ。

もっと視ろ、もっと動け、もっと殺意をぶつけろ。

そう伝える男に黙れとだけ言う。

 

『オイオイ、人の技を使っておいて業は無視とはいただけない。柵を捨てずにそのスペックを活かせないで死んだら閻魔に斬りかかるぞ?』

 

─分かってる。分かってるから少し黙れ

 

そちらの価値観までコピーする気は毛頭ない。

ワラキアがどれだけ協力的か分かる位に言うことを聞いちゃくれない。

 

『ああ、ネプギアだっけか。あの子に負担を掛けたくないんだろ、お前(・・)

 

─だからなんだ

 

『観客から役者になった割には中々我儘だな。

ここで姿が元のお前に戻ればどうなるか……』

 

─だからこそ、こうして奴を仕留めるかを考えてる

 

『分かっちゃいないな、お前。そんなんだから腹の皮一枚しか斬れなかったんだ』

 

何を言いたいのか。

先程まで力を貸してくれていたとは思えないほど苛立つように話す七夜に困惑する。

 

『自惚れるなよ。お前は借り物の力でしか個を示せない男だ。なら、自分に相応しい領分を知れよ』

 

─領分って…

 

『お前が今使ってる体は俺だ。だからこそ分かる。

このまま殺り合っても時間切れで退場間違いなしだ。

俺一人で、それも時間制限ありで出来る事なんざ高々脳天串刺しにして解体する程度だ。巨大な機械を即時解体なんざこのナイフ一本じゃ出来るわけがない。

そんな事実も認識できないとは言わせない』

 

たわけが、と毒を吐く自分の内の力に思考がクリアになる。

つまりは、一人で突っ走るな。

そう言うためだけにコイツは俺に話し掛けてきた。

 

─お前、素直じゃないな

 

『誰かさんの反転なものでね』

 

─…悪かった。少し周りが見えなくなるのは悪い癖らしい

 

『熱を持つのは構わないが、もう少し弁えて欲しいね。踊れる舞台もそれじゃ転ぶ』

 

─はいはい

 

『分かったらさっさとやりな。足りない分は補え。

それが出来ないようなら、未熟も未熟だ。

ま、俺が言えた口ではないだろうがね』

 

─だろうな

 

それを断って殺ったお前が言える口では断じてない。

だから、俺は感謝と同時に憤慨する。

 

まあ、いいか。

 

結局、俺はダサいまま。

それがらしいと言われればそれで終わりだが……。

カッコ悪くはなりたくはない。

 

だから、軌道修正(お願い)のお時間だ。

 

「ネプギア、日本一」

 

「すいません、私の火力じゃ倒せないみたいです……」

 

「私もごめん!」

 

「ああ、構わない。というより謝罪すべきは俺だ」

 

「え?」

 

「長ったらしく喋る時間もない。素早くいこうじゃないか」

 

「えっと……どういうこと?って危ない!」

 

〔ギ、ギギ───!〕

 

話してるところをキラーマシンが腕を振り上げてから勢いよく振り下ろす。

あまりにも鈍い攻撃なので全員で左へと跳んで避ける。

 

「それで、どうすればいいの!?」

 

「どうもこのナイフじゃ斬れるところまで斬れない。

だから、頼みがある。ネプギア、その武器を貸してくれないか?」

 

「マルチプルビームランチャーを、ですか?」

 

「ああ、さっさと斬るならそれが一番だからな」

 

「え、それだと私は?」

 

「日本一はあのデカブツを引き付けてくれ。

出来れば、そうだな…あの壁端までいけるか?」

 

「モチのロンよ!」

 

「古いですよ……」

 

日本一は笑顔で承諾してキラーマシンへと突撃していった。

 

「さ、ネプギア。貸してくれ」

 

「でも、私は……」

 

「することがない、か?」

 

「はい……日本一さんと志貴さんに任せて、アイエフさんやコンパさんも戦ってるのに……」

 

「それは違うな」

 

「え?」

 

俺はネプギアのMPBLを持つ手に自身の手を重ねようとして、やはりやめる。

それを悟られないように、話を続ける。

 

「剣を交えたりするだけが戦いじゃない。

応援だとか、そういう事だって一つの戦いだろう?

俺がネプギアのこの武器を持って、戦うってことはネプギアの想いを背負って戦うってことだからな。

そうだな……武器に想いを込めると、一緒に戦っている気分になるらしい」

 

「武器に……」

 

「それに、そうしてくれたら女神様のご加護ってのが働きそうだ」

 

「うーん…候補生の私じゃそれは期待できないかも……勝てるんですよね?」

 

「勿論、無理をするなって方は守れる自信はないが、アイツを解体しろってのなら守れる」

 

「出来れば約束の方を大事にしてほしいんですけど…でも、はい、分かりました」

 

そうして、ネプギアはMPBLを渡してくれた。

 

……思ったよりも軽い。

片腕で振り回せそうではある。

 

日本一の方を見ると、全然平気そうだ。

しっかりと誘導もできている。

少し任せてしまってもいい気がしてきた。

 

いや、しないけど。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「いってらっしゃい、志貴さん」

 

俺はそう言って、走る。

 

やはり、速い。

後数歩で間に合うくらいには。

あー、これはサマエルの時に欲しかったな。

あの痛みを味あわずに済んだのに。

 

「よう、日本一。楽しんでるかい?」

 

「いやぁこれはちょっと楽しむ余裕はないわ!

七夜と違って壁は走れないしね!」

 

「何、もしかしたら出来るかもしれない」

 

「流石に無理!」

 

「く、は、は!なら仕方無いな。代わろうか」

 

「後は頼むって言えば良い?」

 

「そうだな、後は任せてもらう」

 

「分かったわ、じゃあ、武運を祈る!」

 

日本一はネプギアのところまで撤退した。

よし、気兼ねなくやれるな。

 

いや、まあ……最適解が今回は俺だっただけで、本来は分からないけど……うん、気にしても仕方無いね!

 

〔目標、変更──〕

 

「あー…そもそも形が悪いんじゃないか?殺戮兵器ってんなら、腕を一つや二つ、増やすべきだろう」

 

〔目標抹殺、抹殺、抹殺──!〕

 

「会話を楽しむ機能はないようで─!」

 

さあ、しっかりと視ろ。

理解しろ、死を。

 

目の前のデカいだけの機械を視て、『線』を捉える。

後は、それを斬るだけ。

 

キラーマシンが横薙ぎに腕を振るう。

 

それより少し高く跳んで避けながら、腕の『線』をMPBLで斬る。

ナイフでは斬りきれなかったが、今度は全部いけた。

 

〔ガ、ガガ──損傷率、拡大──〕

 

「中々デカいな、斬り甲斐はある」

 

等しく、この眼は死を与える。

 

「斬刑に処す」

 

その言葉を皮切りに、俺は奴より速く動く。

壁を伝い、もう片方の腕を斬る。

続けて肩にあたる部分を斬り落とす。

 

足腰は無いので、残念ながら後は体だけ。

 

〔ギ、ギギ──〕

 

「終わりだ……ッ!」

 

奴の反応速度を更に超える。

 

頭が痛むが、後少し。

 

俺は最後に、奴の真上まで跳ぶ。

羽もない、浮遊もできないのにただ、ジャンプするだけで軽々と巨体より上へ跳べるとは、恐れ入る。

 

俺は、MPBLを両手で振り下ろしながら落下する。

巨体の『線』を斬る。

とても堅い体なのだろう。

女神を殺すための強さを持ってはいるのだろう。

 

だから、反則を使う。

直死の魔眼という、反則を。

 

「機械だろうと、例外はない」

 

〔ガ、ガ────機──停───〕

 

キラーマシンは、言語機能すら壊れたのか、喋りきる事も出来ず、爆発した。

 

勿論、俺は爆発の範囲外まで逃げたが。

 

「しかし下手だね、どうも」

 

本当に下手だ。

こんな方法すら思い付かなかったとは。

ハァ~……皆に謝りたい気分だ。

いや、皆は訳分からんと思うだろうが。

 

「き、キラーマシンが!くそぉ!覚えてろよぉぉぉ!」

 

下っ端ことリンダも可哀想な事に負けてしまったようで逃げていった。

悲しいね……連敗記録。

 

「下っ端の癖に生意気なのよ」

 

「ギアちゃん達も終わったようです!」

 

二人とも目立った怪我はないな。

それに、回収も終えたようだ。

なら、さっさと逃げるに限る。

 

俺もネプギアと日本一の元へ戻る。

 

「凄い動きだったわ!こう、ズバッていって、シュババって動くの!」

 

「すまん、分からん」

 

「お疲れ様です、皆さん!」

 

「ああ、お疲れ様……と言いたいが、早いとこ逃げた方がいいな」

 

「悪のロボットから逃げるなんて屈辱だけど…数的に真っ向からは危険だものね」

 

「そういうこと。ほら、返すよネプギア」

 

「ありがとうございます!えっと…使いやすかったですか?」

 

「ん、まあ思ったよりは軽かったな」

 

「そうですか…よかった」

 

そりゃ、重くて出来なかったらまずいからな。

本当によかった。

アイエフ達もこちらへと来る。

 

「さ、ゲイムキャラの欠片も回収できたし、ルウィーへ戻るわよ!」

 

「そうだな」

 

「……何か楽ね、その姿だと」

 

「流石にそれだけだと何が楽か分からないな」

 

「ボケに回ることが無いからよ。ほら、いつもだとボケが多くって……」

 

俺達はそうしてブロックダンジョンからルウィーへと戻る。

戻る途中で、爆弾発言が起こった。

 

「ああ、なるほど……理解してるよ。コイツは底抜けの阿呆だからな」

 

─おい、また勝手に

 

『何だ、否定はできまい?』

 

─ぐぬぬ……!

 

『ま、付け足しはしてやるか…』

 

─あん?

 

「そーそー……何度私がツッコミを入れたか」

 

「ま、許してやりなよ。コイツなりの大切な奴との接し方なのさ。不器用ってやつだ」

 

「ふーん……」

 

─おま!?

 

『く、は、は!こうされるのが嫌なら、もっと己を鍛えるんだな?』

 

この野郎……中々に曲者だ。

あんまり、頼りたくねぇ~……

 

しかも、コイツに体使われてるし

 

『お前が言うなと言っておこう』

 

「エルエル、意外と可愛いところがあるです~」

 

「志貴さん、勝手に言ってよかったんですか?」

 

「構わないさ。こっちは力を貸してやってるんだ。

少し位遊んでもいいだろう?」

 

「侵害してる気がするけど……いいのかな?」

 

良くないですねぇ。

 

「ところで、変身解除はしないの?ネプギアはしたけど……」

 

「それをしたら、一人動けない役立たずが増えるからな」

 

「ああ……」

 

「でも、脳が……」

 

「何、別に特にデカいのを視ている訳じゃないんだ。

死にはしないさ」

 

そう言って、俺は速度を速くして先に歩いていく。

後ろから歩を早めて来るのが分かるが、今は皆を視ているのが辛かった。

 

また頼るのを忘れてたってのもある。

だけど……

 

『諸刃の剣。正に言葉の通りだろう?』

 

七夜の言葉に無言で肯定する。

 

ここまで眼を抉りたいと思ったのは、初めてだ。

ここまで人を切り刻みたいと思ったのは、初めてだ。

 

正気を保つ。

さっさとルウィーへ戻らなければ。

戻ったら、すぐに解除しないと。

 

どこまでも不憫な体なのだ、元の俺の体は!

 

人間の体がここまで疎ましく思えるとは。

死徒の力があるだけの人間の体……なまじ人の力では無いからこそ焦燥感というのが生まれる。

残りの魔力を変身に割いて、ルウィーに到着するまでの時間を作る。

 

今、解除したら疲れだけじゃないのまで来そうだ。

 

嗚呼、儘ならない。

全くもって、儘ならない────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズェピアさんが七夜志貴さんに変身して、もう何十分と経つ。キラーマシンを見たときに、一瞬だけ顔が苦痛に歪んだのを私は見ていた。

 

だけど、志貴さんは私の武器を、MPBLを貸してくれと頼んできた。

 

直死の魔眼と呼ばれる特異な魔眼。

それは志貴さんが言うには『死』が見えるという。

あらゆる物の死が───

 

それは、どれだけ怖い世界なのだろう。

私には到底理解できない世界なのは分かった。

それに、あの苦痛に歪んだ顔を見れば、脳による負担の大きさは想像を絶するだろう。

 

きっと、私や他の人の『死』が見えていたのかもしれない。

 

……今回、あくまであの人は武器を欲していた。

志貴さんの性格も出ていたのかもしれない。

だけど何より、少し怖かった。

 

 

─俺に殺らせろ

 

 

そう、目が言っていた。

顔は優しげで、言葉も気を遣ったような言動。

それでも、あの不気味なまでに青い瞳は、殺意を灯していた。

 

マジック・ザ・ハードがこちらへ向けてきた殺意。

それと同じような殺意を。

 

斬られるのは私なのかもしれないと思った。

一瞬だけ、思ってしまった。

 

顔に出さないで、送り出せたのは今でも不思議だった。

 

キラーマシンを倒して、戻ってきたときの目は普通の志貴さんだった。

 

あれは、あの眼は…志貴さん本来の性格が浮き彫りになった眼なのだろうか?

ズェピアさんはあんな眼にはならない。

そもそも、変身した時は目が閉じてるのだけど…

 

ズェピアさんが変身をする度に怖くなる自分がいる。

どんどんと違う人になってるようで。

本来のあの人の優しさが塗り潰されていくようで。

今回は、青かった。

前回までは、黒かった。

 

私の思い違いだと言うのは分かっている。

そもそも、タタリによる変身はズェピアさん本来の力だから。

でも、まるで─────

 

 

────そのタタリに、侵食されているようで。

 

 

そうして、変身した後に解除して、体に負担が訪れる。

倒れて、皆に心配されながらも呆れられて苦笑するズェピアさんを見て…安心する。

 

ああ、元に戻ってよかったと。

 

もし、志貴さんが変身を解除しても、ズェピアさんの姿に戻ってなかったら、私は。

あの優しい手の温もりを、撫でてくれる手が来てくれないと思うと、私は。

 

きっと、それを────────「ネプギア?」

 

「!あ、はい!何でしょうアイエフさん?」

 

「何でしょう?じゃないわよ。話し掛けても上の空だったわよ、今のアンタ」

 

「そ、そうだったんですか?」

 

「自覚無かったの?」

 

「えと……考え事のし過ぎかも?」

 

「皆疲れてるですよ。エルエルも休ませないと……」

 

「今回も動いたもんね~……」

 

「ですね……」

 

今、おかしな事を考えた気がする。

 

流石に疲れてるのかも……。

頭を左右に振ってから思考をリセットする。

 

考えすぎは良くない。

 

「あ、そうこう歩いているうちにルウィーね」

 

「近い方で安心したわ……」

 

「じゃあ、教会に行くですよ!」

 

「ですね。……?」

 

ハァ、と疲れたように話す三人と、ゲイムキャラさんが心配な私。

でも、私は志貴さんを見て、何か違和感を覚える。

 

志貴さんは、何をするわけでもなく立ち止まっている。

 

嫌な予感がした。

 

「志貴さん、大丈夫ですか?」

 

私は先程まで私達よりも先に歩いていた志貴さんの所まで歩く。

アイエフさん達も、違和感を感じたのか一緒に来てくれた。

 

「志貴さ──」

 

私は志貴さんの隣まで歩いて、志貴さんに話し掛ける。

いや、話し掛けようとした。

 

突如、私の頬に手が触れる。

どうしたのだろうと思う暇は、なかった。

 

触れてるその手は、震えていたから。

 

「──ぁ、ぐ──ハ、ハ──ネプ─ギア──?」

 

突然元の姿に戻って、目から血を流し、笑いながら私の頬に触れているズェピアさんを見て、そこから先を言えなかった。

 

「ズェピアさん……!?」

 

「あ、ああ……よかった……『線』が見えない……

ア、ハハハハ…ネプギアの、皆の、死が見えない──」

 

「ズェピアさん、しっかりしてください!」

 

「エルエル!」

 

「やっぱり、無理してたんじゃない!」

 

「変身の影響!?」

 

大きな汗がズェピアさんの顔にいっぱい流れている。

目を見ると、焦点が合っていない。

 

それに、怖がっているような顔だ。

 

私は、私の頬に触れている手に自分の手を重ねる。

ズェピアさんがしてくれたように。

 

しっかりしてと声をかける。

 

「ああ……!コンパ、日本一、アイエフ……皆、『線』が見えない……視えない……!」

 

やっぱり、あの変身は無理があったんだ。

志貴さんの変身は、負担が大きかったんだ。

体としての疲れもあるだろうけど、精神的な疲労が専門的でない私でも見れば分かる。

 

あの眼は、よくない眼だ。

 

「ああ、触れても、大丈夫……」

 

「大丈夫、大丈夫ですから…ズェピアさんは、ズェピアさんですから……」

 

「ああ…ああ…!」

 

「…ギアちゃん、支えながら教会まで行くですよ」

 

「はい……!ズェピアさん、立てますか?」

 

私の問いにこくりと頷いて立ち上がるズェピアさんを、私は横から支える。

もう片方はコンパさんが支えている。

 

「先に行って、説明して部屋を用意してもらうわ!」

 

「支えるのは私とコンパさんで平気ですから日本一さんもお願いします!」

 

「了解よ!」

 

アイエフさんと日本一さんは教会まで走っていった。

疲れてるだろうけど……今は、この人を。

 

二人で支えながら教会を目指して歩く。

 

「大丈夫、大丈夫ですからね」

 

「エルエル、しっかりするですよ。私達がついてますから」

 

「…怖い、怖いんだ……」

 

「ズェピアさん……」

 

「怖い。…怖い、怖い……」

 

「エルエル……」

 

教会に着いて、ミナさんに案内された部屋に行って寝かせるまで、ズェピアさんは虚ろな眼差しで何度も怖いと言っていた。

 

 

 

 

──明日になっても、ズェピアさんは目を覚ますことはなかった。




直死の魔眼による世界の視え方の違い。
それは決して常人が耐えうる世界ではない。
そして、その常人の枠に、『■■■■』が入っていない道理は無く。
異常な力を持っていようと、所詮は唯人に過ぎない男は、視た世界に耐えきれずに倒れた。

しかし、それでも運命は男を突き動かす────


次回、超次元ゲイムネプテューヌmk2 with ワラキー

『遥か彼方からの贈り物 前編』
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