ワラキー異世界渡航劇   作:ロザミア

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遥か彼方からの贈り物 前編

体が沈んでいく。

深い深い、(精神)の底へと、ゆっくりと、されど確実に沈んでいく。

 

それは心地が良い感覚だった。

何もする必要はない。

ただ、この感覚に身を委ねるだけで安心感を得れる。

何かをする必要はない。

 

(…────)

 

ゆっくりと、目を開けてみる。

既に海面は見えない。

横を見ても、同じ光景が続くだけ。

 

そんな当たり前を見て、何となく微笑む。

暗い暗い、海の底へ。

 

だが、ふと思う。

 

何時から、自分はこの海へと沈んでいるのか。

何故、沈んでいるのか。

そもそも、沈むまで嫌なことがあったのか?

 

(────ぁ)

 

ゴポリ、と息を漏らす。

 

思い出した。

 

それと同時に、自分の姿が不確かから確かなものへ。

正確な声と形を得る。

 

(ああ、ああ────)

 

そうだ。そうだ。

自分は、俺は。

耐えられなかったのか。

 

あの世界に。

 

駄目だった。

結局、足を引っ張る。

弱くなった俺は、確かに強さを得はした。

だが、それと同時に脆くなってしまった。

 

前の俺なら、家族のみを重視していた俺なら。

きっと、こうはならなかった。

 

何て、無様──。

 

だけど、これでよかったのかもしれない。

 

今の俺は、足手まといだったろう。

変身して強くはなれる。

だが、それも一時のものだ。

それが終われば、動けもしない役立たず一人。

 

だから、これでもう、ネプギア達に苦労を掛ける必要はない。

 

そう思えば何となく気が楽になる。

 

……グレートレッドは、どうしよう。

今の俺じゃ、勝てない。

タタリで世界を覆うことも出来ないのに、勝てるわけがない。

 

でも、あの子達なら勝てるのでは?

だって、あの子は主人公だ。

勝つのは法則だろう。

 

だから、元々俺が頑張る必要なんて無いのでは?

 

(──いや、それは流石に最低)

 

今のは流石に無い。

自分の問題まで押し付けるようになってはオーフィスにすらゴミを見るような目で見られることだろう。

 

戻らないと。

 

きっと、皆心配してる。

 

(──駄目か)

 

そう言い聞かせても、体は浮上してくれない。

恐らく、脳事態が世界を見るのを拒否している。

自分の意思すら通じない拒絶。

 

どうすればいいのか。

 

ああ、何ということだろう。

体を制御すら出来ないとは。

今の俺は、こんなにも────

 

 

 

───無力だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日になったのに、ズェピアさんは元気な顔を見せてくれない。

何処かで間違えた。

あの時、送り出さなければよかった?

あの時、変身を無理矢理でも解除させればよかった?

あの時、あの時、あの時、あの時、あの時、あの時。

 

自分の心の中にあった言葉を、吐き出せばよかった?

 

「ズェピアさん……」

 

眠っているズェピアさんの手を握り、声をかける。

返事はない。

でも、温もりを感じることは出来た。

 

それだけが私を安心させる。

それだけが私を満足させる。

 

お姉ちゃんが居ない。

甘えてしまう。

この人の優しさに溺れてしまいそうになる。

 

「どうして……?」

 

この人についていたくなるのは何故だろう。

 

頭を撫でられると嬉しくなる。

お姉ちゃんが抱き付いてくる時も嬉しいけど、それとは少し違う。

ぽかぽかする?

 

どうしてだろうか。

 

どうして、この人が他の子と仲良く接してるのを見て焦りが生まれてしまうのか。

どうして、無意識のうちに不機嫌になりそうになるのか。

 

黒い感情は今まで抱いたことはある。

でもこれは違う。

これはもっと黒いもの。

 

ドス黒い感情ともいうべきもの。

 

「…怖い」

 

その感情が自分から出ているものだと分かったら、怖くなる。

自然とズェピアさんの手を強く握る。

いつもは握り返してくれる手も今は力がない。

 

それが、居なくなってしまうという恐怖を生み出す。

 

コンコンと、部屋の扉がノックされる。

誰だろう?

 

『ギアちゃん、入っても良いですか?』

 

「…コンパさん。はい、どうぞ」

 

「失礼します。……エルエルは、起きないですか?」

 

「はい……」

 

「そうですか……」

 

コンパさんは心配そうにズェピアさんを見る。

 

「ズェピアさん、このまま起きないんでしょうか……」

 

「そんな事は無いです!精神的疲労と肉体的疲労が一気に来て寝込んでるだけだと思うです。だから、近い内に目を覚ますですよ」

 

「そう、ですよね……」

 

目を、覚ましてくれますよね。

ズェピアさんは、なんだかんだ言って無事に戻ってきますよね?

 

戻ってきて、くれるよね?

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

ルウィー 広場。

 

「寒っ。寒すぎると思うんだが?吾輩、このままでは凍えてかき氷ならぬかき猫になってしまうであるよ」

 

「ん、つまらない冗談はやめる」

 

猫と思わしき……猫?うん、猫。

猫が寒がる仕草をして愚痴るとそれについている少女が興味無さげに周りを見る。

 

「冷たい反応だにゃ~ドラゴンガール?

もう少し家族への情というか、ノリというか…そういう漫才的な個性を出してくれてもいいのよ?」

 

「そういうのは間に合ってる」

 

「付き合い悪いにゃー……吾輩、拗ねちゃうよ?

まあ、にしてもマイフレンドのプレゼントである吾輩達はこのお国で油売ってる暇はにゃいのであーるが……む、にゃにぃ!?」

 

「?どうしたの?」

 

猫?が唐突に驚きの声をあげたので探し物が見つかったかと思った少女は猫?に問う。

 

「ルウィーわんにゃんカフェとは吾輩の生き残ってしまった忌々しき猫本能を燻るであるな?という訳で行っとく?」

 

「行かない。お金、ない」

 

「この前悪党から巻き上げたばかりじゃにゃいのよ」

 

猫?の言葉に少女は顔をそらして口笛を吹き出す。

無表情で。

猫?はそれを見たときに察した。

 

「……」

 

「このバカガール!もしやラステイション焼肉定食とやらに全部注ぎ込みやがったな!あの資金は我々が順当に使おうと決めたマネーじゃにゃいの!

それを全部使ったのだな!?」

 

「カフェに注ぎ込もうとしてるのに言われたくない」

 

「いや焼肉定食に全部使ったお主にも言われたくにゃいわ!」

 

哀れ、資金が尽きた猫?はわんにゃんカフェを前に膝をつく。

周りの子連れの母は見ちゃいけませんと子供の目を手で隠しながら汚物を見るような目で通り過ぎていく。

 

「吾輩の猫合コンがみ・ず・の・あ・わ♥」

 

「ドンマイ?」

 

「シィット!…こうしてはおられません。

吾輩達のソウルフレェンドを探さなくては…とんでもない事になるであーるよ!」

 

「どうなる?」

 

「人々が恐れる死にかた。

一般的には飢え死に。吾輩的には貧乏死という訳よ」

 

「……!早く探す!」

 

「これが飯に命かけてる少女の心ってやつかにゃー…」

 

所々常識的な猫?の発言に少女が焦る。

この焦りは間違いなくそのソウルフレンドに飯を集る気間違いなし。

 

猫?は探しているソウルフレンドに同情する。

 

ついでに己にも同情する。

 

「もしかして、お困り?」

 

「お?」

 

「…………誰?」

 

そんな二人に話し掛ける奇特な人間がいた。

二人は同時に首をかしげる。

しかし、猫?は煙草を持っているため可愛さは相殺されて寧ろマイナスである。

 

「誰だ何だと聞かれれば答えてあげるがヒーローの定め!私はゲイムギョウ界のヒーロー、日本一!

何となく困ったオーラを醸し出す貴方達に話しかける1ヒーローよ!」

 

「汝、話し掛ける相手をメニー間違えるぞ、マジで」

 

「……───ズェピアの匂い」

 

「にゃ、にゃにぃ!?この僕アカに出たら意外と個性強そうな女子に我等がソウルフレェンドのスメ~ルが?

いやぁfate出身じゃにゃいけど運命感じちゃうよ吾輩」

 

二人の何となく嬉しそうな雰囲気に日本一は問題解決かと首をかしげる。

こいつら皆首をかしげる。

 

しかし、日本一はズェピアという名前を聞いてハッとする。

 

「貴方達、ズェピアの知り合いなの?」

 

「めっちゃ知り合いなんですよねこれが。

吾輩達は浅草でキャットフードを貪ったフレンドよ」

 

「我は違う」

 

「ズェピア…友達は選んだ方がいいよ……」

 

今は眠っている友人兼仲間に同情を送る。

 

少女は日本一にぐいっと近付く。

無表情で。

日本一はそれに少し気圧される。

 

無表情だからである。

 

「ズェピアの所に案内する」

 

「えっと、友達、なのよね?」

 

「魂を分け合った家族でもあるのよこれが。

我等はアニメを5日ぶっ続けで視聴したファミリー!」

 

「うるさい」

 

「ギニャァ!そんな猫相手に拳振るわなくてもにゃぁ!?」

 

「取り合えず、案内する」

 

「うーん……分かったわ!」

 

日本一は難しく考えるのを放棄して教会まで案内することにした。

煙草を吸ってる奇妙な猫?と無表情でついてくる黒髪の少女は、日本一についてくる。

猫?は少女に引き摺られる形でだが。

 

「あー床つめてぇ……これではネコ・アローラの姿になってしまう……」

 

何ともなさそうなのは気味が悪いが、悪いやつでは無さそうなので気にしないことにした。

 

「ズェピア……やっと会える」

 

「ヤンデレ醸し出すのやめにゃい?今回の吾輩達の出番今回と次回が終わればしばらくにゃいよ?いや、吾輩に至っては一生無い可能性が微れ存な訳でへぶっ!」

 

「空気を読む」

 

「いや、それ、吾輩、だけじゃ、にゃい──地面に何度も顔叩きつけるのやめてくんにゃい?」

 

「楽しい」

 

「わぁお加虐趣味……」

 

「うーん……これ、大丈夫よね?」

 

日本一は若干不安になりながら、歩を止めることは無かった。

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