ワラキー異世界渡航劇   作:ロザミア

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いぇ~いピースピース!

埼玉行って疲れましたロザミアです。
もう花粉症酷いんですけど、なんなんすかねぇ




哀れな怪物に終わりを

潮風が頬を撫でる。

本来なら落ち着く海の香りも今は気を引き締まる為のいいスパイスとなる。

何本も迫る触手をかわして、いくつもある中の一つの目に拳を叩き込む。

 

「■■■■■■■──!!」

 

怪物はヘドロのような液体を撒き散らし、暴れながら悲鳴をあげる。

 

離れないと押し潰されそうな体躯。

 

一度距離をとる。

俺が後ろへ跳ぶのと怪物のいる地面にアイエフの魔法陣が浮かび上がるのは同時だった。

 

「ラ・デルフェス!」

 

瞬間、光の柱が怪物を飲み込む。

怪物の悲鳴がより強くなるがそれでも死を与える威力にはなり得ない。

 

─硬い

 

かなりの硬さだ。

目が弱点なのは間違いないが結構強めに叩かないと潰すことも儘ならない。

 

「攻撃は通るが…効きは薄いな」

 

「黒い銃身は?」

 

「今からタイムリミット付きの変身するか?」

 

「そこは直らなかったのね」

 

「こんなもんですよ、現実なんて」

 

「このままじゃじり貧ね…」

 

「え、無視?…まあ、確かにこのままだと攻撃を貰うのも時間の問題か」

 

「フェンリルって速いイメージがあったけど…あの体じゃ思うように動けないようね。完全に失敗作って感じ…」

 

鈍重な見た目ではあるものの触手の攻撃は正確かつ素早い。

あの目の届く範囲ならどこまでも触手を伸ばしてくるだろう。

それに加えて、サマエルの毒─龍殺しの毒は龍種でなくとも効果は抜群だ。

 

硬さもサマエル由来の硬さだろうか?それとも他の魔獣…

 

そちらを考えても仕方ない。

今は突破方法を…

 

「拘束できるなら…黒い銃身を撃てるんだがな」

 

「そういう道具は無いの?」

 

「俺を便利屋か何かと勘違いしてないか?あるけど…」

 

今の状態で使えるかどうか。

幸い、どう扱うかは長年使ってきてるんで分かるが、そもそもあれ、刺せる?

 

俺は一応目にギリギリ見えるくらいの糸を出す。

 

「それは?」

 

「エーテライト。これを刺せば、相手の情報を閲覧、ハック出来るんだが…さて、どう思う?」

 

「あの目に刺せればってとこかしら」

 

「まあ、そうなるな…援護頼むぞ」

 

「アンタ馬鹿なんだから突っ走ってればいいのよ。それは得意でしょ?」

 

「酷いなあ…その通りだけどさぁ!」

 

再び、怪物に向けて走る。

怪物は俺をギョロリと捉えると触手を何本も伸ばしてくる。

触手─左右と前─の攻撃をギリギリ避ける。

肌に触れないギリギリのライン。

分割思考と高速思考がなければできない回避だった。

 

安堵する暇はない。

もう少し。

 

何本も迫る触手をかわす、アイエフの魔法が俺じゃかわしきれない部分を対処してくれる。

 

今。

エーテライトを怪物の目に伸ばし、刺す。

 

「よし…っ!」

 

エーテライトを介して怪物の情報をハックしようとした瞬間、怪物はおびただしい程の触手を俺だけに向けてくる。

 

意識をそちらへと向けたが、遅い。

このままだと毒の餌食だ。

 

「─烈火死霊斬!」

 

炎を自身のカタールへ纏わせ触手を切り裂くアイエフを目にする。

素早い身のこなしと連撃に触手は焼き払われていく。

 

「早く!」

 

「ああ!」

 

アイエフに急かされ、意識を集中する。

 

怪物の情報へ意識が入り込む。

 

『■■■、■■!』

 

そこには、怪物の元になったであろう素体たちの姿。

サマエル、フェンリル、その他多くの魔獣。

 

全ての情報が俺へと向けられる。

ひたすらなまでの殺意。

呪詛に近い、相手をただ殺そうとする純粋な殺意が俺を突き刺す。

怒りもなく、悲しみもなく。

 

いらない情報を切り裂いていく。

脳が痛む。

一体だけでも多い膨大な情報を何体も混ぜたせいでこの空間自体が歪だ。

 

怪物の中枢に行くまでは脳の痛みを気のせいだと誤魔化す。

中枢さえハック出来れば、動きを止めれる。

 

 

 

「ズェピア!!」

 

 

 

「っ!?」

 

アイエフの言葉に意識を戻す。

触手が俺へと迫る。

捌ききれなかったか!

 

「くっそ!」

 

エーテライトを引き抜き、触手を転がって避ける。

危なかった…声をかけられるのが遅かったら死んでたな。

 

アイエフを見れば、標的がアイエフに変わったのかかなりの数が襲い掛かっていた。

 

「ちょっとは、大人しく!しなさいよ!」

 

苦悶の表情を浮かべながら炎を纏ったカタールで触手を切り裂き、捌ききれないのを避ける。

しかし、避けたところを見計らったように怪物はその先へ触手を伸ばした。

俺は咄嗟にアイエフへと駆ける。

 

「アイエフ!」

 

「っ、しま…!」

 

間に合うか?─間に合わせる。

 

分割思考をカットし、体術をインストールする。

 

まだ足りない。

例えアイエフの近くまで行けても、庇った瞬間死ぬ触手だ。

何か、盾になるようなものがないと…!

 

 

─『私の出番、ということか』

 

 

凛々しい声が俺の内側から聞こえる。

この声は…!

 

急いで対話を試みる。

 

─俺に、力を貸してくれるのか?

 

─『勿論』

 

即答だった。

貸さない理由はないとばかりに。

 

─『守る盾が必要なんだろう?ならば、束の間ではあるが助力しよう』

 

─俺は、ワラキアの夜だぞ

 

─『…他者を庇護しようとするその精神は、偽りではなかった。

例え、ワラキアの夜だとしても…悪用はしないと信じよう』

 

真っ直ぐな瞳を向けられている気分だった。

そうか。

この人物を理解できた気がする。

 

守ることに躊躇は要らない。

 

─力を貸してくれ

 

─『ああ、使ってくれ』

 

意識を向ける。

内側に、タタリに。

助力に感謝を込めて、力を引き出す。

 

姿を変える。

片腕に確かな重みを感じる。

ガードしようとするアイエフの前へ辿り着き、触手にそれを構える。

 

触手がそれに当たった瞬間、触手は弾かれた。

 

「っ…アンタ、その姿…」

 

 

 

 

「─我が盾は魔を弾く城塞なり」

 

 

 

 

怪物へと先端の杭を向ける。

怪物は本能的に感じ取ったのか呻き声をあげる。

守れた。

その事実に安堵する。

 

「如何なる策を弄そうと我が盾は不浄から護り、我が杭は邪悪を打ち砕く!造られし哀し子よ、その身の不浄の一切を払わん!」

 

「■■■■──!」

 

吼える怪物。

俺はアイエフに顔だけを向ける。

何にしたって、俺一人じゃ厳しい。

 

「すまない。守った手前、頼むのは恥ずかしいのだが…私だけではあれに撃ち込めない。君の助力を願いたい」

 

「…ええ…けど後で、自己紹介してもらうからね」

 

「なら、その為にも一撃で仕留めるとしよう」

 

地を蹴り、怪物へ接近する。

懲りもせず伸びてくる触手を切り払いながらも足を止めることはない。

アイエフの援護で撃ち漏らしも気にすることはない。

 

「やっちゃいなさい!」

 

「感謝する!」

 

正式外典ガマリエル。

ヴァイオリンを思わせる銃盾にして槍鍵、パイルバンカー。音律を以ってあらゆる不浄を弾く正しい秩序の具現。

盾の乙女の強さの一端を借り受けた。

 

ならば、魔を払うことに一切の不安なし。

 

あがきとばかりに牙で俺を抉り殺そうとしてくる。

だが…今は、この盾がある。

ガマリエルを構え、力を解放する。

牙が触れる瞬間、ガマリエルに紋様が浮かび上がる。

 

 

 

「祈れ、その魂に奇跡を宿すのなら!裁きの後に救われよう!」

 

 

 

「■■、■■■…─」

 

正式外典・原罪抱擁。

 

瞬間、魔を払う光が怪物を飲み込む。

苦しみから解放されたように、怪物は声をあげ、消滅した。

利用され、意識も混濁し…最後にあんな見た目になった怪物にこの光が救いとなることを祈る。

 

けれど、まだ終わってない。

俺は怪物が倒されてもう何も残ってないだろう犯人に近づく。

 

「…これ以上の抵抗は無駄だ。諦めろ」

 

「…そのようだ…ライブのスピーカーに仕込んだモンスターも倒したんだろう?」

 

俺はアイエフへ視線を向ける。

 

アイエフは携帯を取り出して、頷いた。

 

「ええ、無事に全部倒したそうよ。その証拠に──」

 

 

 

─ライブ会場の方向から観客たちのであろう歓声が聞こえる。

 

綺麗な歌声が、ここにまで届いていた。

 

そうか、これが5pb.の歌声か。

…なるほど、国民が支持するわけだ。

犯人の方へと視線を戻すと、諦めた様子で膝を着いていた。

 

その表情はどこか清々しさすら感じる微笑。

 

「やはり、彼女の歌声は素晴らしい…罪を、償います」

 

Nギアを取り出して、アイエフに渡す。

この姿だと色々と誤解されそうだからな。

 

「まったく……もしもし、ケイブ?ええ、犯人を確保したわ。件は少し無理したから休ませてるわ。平気よ…ええ、じゃあ、後でね。

これでいいのよね?」

 

「ああ、ありがとう。…さて、自己紹介だったか。

私はリーズバイフェ・ストリンドヴァリ、異端審問騎士団の団長だ」

 

「タタリの情報の一人ってことね。さっきは助かったわ、ありがとう。知ってると思うけど、アイエフよ」  

 

「よろしく、アイエフ。それと、この聖盾が役に立ったのならそれでいい。

この世界は私の知る世界とは丸っきり違うようだし、肩書きとか気にしなくていいし…まあ、元々考えてないんだけど」

 

「アンタ、見た目に反してずぼらだったりする?」

 

「分かるのか?特に考えないでいいから戦闘とか仕事は得意だけど、しなくていいならしたくないんだ」

 

「うわぁ、真反対…」

 

しばらく、リーズバイフェの意識に任せているが、本当にずぼらなんだなと感じた。

 

…彼女は俺ではないが、タタリに殺された人間だ。

そんな彼女が別世界とはいえタタリである俺に協力してくれるとは思っていなかった。

もしかしたら、最初はそうだったのかもしれない。

 

…俺の行動も、捨てたもんじゃなかったんだな。

 

「…さて、そろそろ交代だ」

 

「…アンタがいなかったら、危なかった。本当にありがと、リーズバイフェ」

 

「そこまで感謝されると恥ずかしいな。だが、まあ…もしまた話すことがあれば─」

 

 

─リーズと呼んでくれ

 

 

その言葉を最後に意識が俺に切り替わる。

姿が元に戻り、膝をつく。

どっと疲れが来た…

 

「キツそうね、肩貸す?」

 

「いや、このまま座らせてくれれば、平気だ」

 

犯人は観念してるし、問題はないだろう。

 

あー、疲れた。

本当に疲れた。

こういう事件はしばらく勘弁してほしいね。

 

「あっちの方が数が多くなるかもって予想は的中だったか。…もうしばらく頭動かしたくねぇぞ」

 

「慣れないことばっかしてたから、疲れも一際って感じね。…それで、この後どうするの?」

 

「…後の事は後!」

 

「考えるの怠いって言いなさいよ」

 

「アイエフなら言わなくても分かってくれると信じてる!」

 

「…ネプギアも大変ね」

 

何故そこでネプギアが出るのか…ああ、相棒だからか。

だよなぁ、この世界で一番心配くれてるのは間違いなくネプギアだと思う。

自惚れかもしれないが…それでもそういう存在はありがたいものなんだ。まだ死ねないっていう理由になれる。

 

駆けてくる足音が聞こえる。

来たか、皆。

 

「…ふぅ、よく、働いたな」

 

「お疲れ様。…寝てていいわよ」

 

「お見通しか…すまん、後は頼むわ」

 

「はいはい、さっさと寝なさい」

 

全く、気遣いが上手いんだか下手なんだか。

 

重くなる瞼に任せ、目を閉じる。

こちらへ来る足音を聞きながら。

力を貸してくれた盾の乙女に感謝を抱きながら。

 

俺は、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブ会場での戦闘が終わり、アイエフさん達の元へと駆け付ける。

もう終わってるようで、犯人と思われる男の人は諦めた様子で座っている。

 

「アイエフさん!」

 

「ライブを聞いててもよかったのに、律儀ね」

 

「件さんとアイエフさんにだけ任せる訳にはいきませんから…件さん?」

 

「疲れてるのよ。そっとしてやんなさい」

 

「…そうですね」

 

件さんに近寄る。

本当に疲れて眠ってるようだった。

きっと、激しい戦闘だったんだろう。

 

そっと手を件さん…ズェピアさんの頭に乗せる

 

「お疲れさまです、ズェピアさん」

 

「…気付いてたのね」

 

「はい、何となくですけど…でも、私達に明かさないってことはバレたくなかったんだろうなって」

 

「そう。はぁ~無駄に体力使った気分!」

 

最初に出会った時から、ズェピアさんかもしれないという予感はしていたけど、途中から確信に変わった。

たまに見せる真剣な表情が、とても似ていたから。

 

それでも言わなかったのは言ってしまったらズェピアさんが大変だろうから。

こうして協力してるとはいえ脱獄しちゃってるわけだし…ケイブさんに知られたくはなかったんだろうなって。

 

「タタリ、使っちゃったんですね」

 

「今度はリーズバイフェっていう人になってたわね。一体どれだけ引き出しがあるのか知りたいくらいよ」

 

確かに、後どれくらい変身先があるのか気になる。

でも、ならないってことは疲れる以外にも何かあるんだろうな。

ルウィーの時の七夜さんが言ってたことだけど、それぞれに人格があるらしいから…許可、とか?

 

「貴方にはしっかりと法による裁きを受けてもらうわ。いいわね?」

 

「…はい」

 

男性は手錠を掛けられ、ケイブさんに連行されていく。

…晴れ晴れとした顔だった。

何かあったんでしょうか?

 

「何にせよ、これで一件落着ですね。ゲイムキャラの協力、得れるでしょうか?」

 

「ここまでやって駄目だとか言われたら砕く自信があるわ、私」

 

「だ、ダメですよ!リーンボックスのゲイムキャラさんから協力を貰ってようやくお姉ちゃん達を助けられるんですから!」

 

「冗談よ、真に受けないの」

 

うぅ、今日のアイエフさんは意地悪です。

 

私だって本当はズェピアさんと居たかったのに…!

いいなぁ…絶対、買い物とか付き合って貰おう、そうしよう!

 

「…ねぇ、ネプギア」

 

「何ですか?」

 

「アンタはいいの?」

 

「えっと…何が、ですか…?」

 

「このままねぷ子達を助けて、マジェコンヌとグレートレッドを倒して…そしたら、ズェピアは帰っちゃうのよ?想いを早く伝えるべきだと思うけど…」

 

「それは…」

 

「伝える機会を失うことの方が…私は辛いと思うわ」

 

アイエフさんはいつか来る別れの時の事を考えて私に言ってくれている。

改めて、周りを見ているんだと感じた。

 

確かに、お姉ちゃん達を助けたらマジェコンヌやグレートレッドとの戦いは更に激化して想いを伝える機会は増えるどころか減ると思う。

 

「心配してくれてありがとうございます。でも、今伝えてもズェピアさんを混乱させるだけだと思います…だから…」

 

「…そう。分かったわ。アンタがそう言うなら私は何も言わない」

 

「ありがとうございます。…えっと、それで…この後、ズェピアさんはどうします?」

 

「包み隠さずに言うに決まってるでしょ、バレることなんだから」

 

「で、ですよね…」

 

大丈夫かな、ズェピアさん。

 

膝に頭を乗せて、会場の方へ顔を向ける。

まだ、ライブは盛り上がっているようで人々の声がこちらにも聞こえてくる。

 

何はともあれ…お疲れさまでした。

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