やあ、皆の衆。
俺だ、ワラキーだ。
そう、ワラキーだ……ク、クク、ハーハハハハハ!
戻った、ついに戻ったぞ!
クックック……何て素晴らしい!
この体になってから、前の体とは大違いだ。
やはりな……死徒に近い肉体と、完全な死徒の肉体では差が出るのは当たり前だ。
『喜んでいるところ悪いが、そう良いニュースばかりではない』
─うおっ!?お前、急に話しかけてくるなよ!?
話しかけてきたのは俺の中からだった。
ワラキアの夜の人格。
タタリと一緒に戻ってきたようだ。
『いやなに、気味の悪い笑い声が響くものでね』
─ああ、それはすまん。それで、どういうことだ?
『うむ、何故かは分からんが、君は今のその姿にずっとはなれない』
─はい?
『私にも分からないのだがね。何かの概念が邪魔をしているのか、さて……』
─何てこった…もうグレートレッドが悪いってことでいいな!
『君が良いならいいが』
─おし。もう一つ聞きたいことがある
『何かな』
─サマエルの毒はどうしたんだ?俺の体から無くなっているが……
『ああ、それなら──』
『─こちら側で黒い銃身の銃弾の効果を元に造った薬を入れてあげたが?』
─何やってんのぉ!?
え、マジ?こいつ何やっちゃってんの?
最悪その内容だと俺死ぬじゃん。
無許可で何投与してんの!?
いや、そもそもどうやって投与したし!?
『ほら、この間二秒弱だがサマエルが待ってくれないぞ?』
─この野郎、後で問い質してやる!
『ハハハ』
ハハハじゃないよこの馬鹿野郎……
まあいい。
さて、時間制限があるなら仕方無い。
さっさと終わらせよう。
えっと、サマエル君は確か…舌が特殊耐性の化け物ぉだよな?
じゃあ、あれをこうして……
あ、面倒だ。
撃っちゃえ♪
「─『黒い銃身』よ、眼前の敵を撃ち滅ぼせ」
『黒い銃身』を取り出す。
セキュリティが俺を認識する。
やっと認識しやがったかポンコツが。
あとで改良の余地ありじゃねぇか。
「─■■■!!」
「キヒ…ヒヒヒヒ!」
怯えて触手の舌を伸ばしてくるサマエルに笑いが止まらない。
クク、ご都合主義に身を委ねるのは酷く不愉快だが、ネプギア達への説明が最優先だ。
その為にも死ね。
「撃ち抜けっ!!」
黒い一発の弾丸がサマエルの伸びてくる舌へと放たれる。
銃声が聞こえたときにはもう遅い。
弾丸は舌へと当たる。
「■■■■■────」
舌が弾丸に当たると同時に粒子となる。
対グレートレッド用決戦兵器やぞ、テメェなんぞ即死だ。
粒子は舌を伝い、頭、上半身、下半身。
最後に、尾の先端にまで来たときにはサマエルという存在は消え失せていた。
さようなら、この世界の糧となるがいい。
「ハァッ!」
「ガッハ……!?く、くそ……覚えてろぉぉぉぉ!!」
あちらも、あっさりと終わったらしい。
まあ、そう信じて任せたんだし、そうでなきゃ困る。
下っ端は遥か彼方へと吹き飛ばされ、悪役の負け台詞を残し、サヨナラーした。
よしよし。
さて、声を掛けますかね
「ふぅ……」
「ネプギア」
「ひゃ、はい!?」
「お疲れさま、君の勇姿、この目で確と見ていたよ」
「え、と……」
あれ、どうしたんだネプギア。
何だか、あれだな…反応が薄いっていうか
「あの、ズェピアさん、ですよね?」
「間違いなく、ズェピアだ」
「それが、本当の姿ですか?」
「…どう言えばいいのか」
本当にどう言えばいいのか。
だってこれは本当の姿だと言われてもそうだよとすぐには答えられない。
あの時はそう説明したが……
「……うむ、こちらも真実の姿ではあるが、あちらもまた、真実だ」
「そうですか…」
…うーむ、もしかして……
ワラキアの夜の姿に戸惑ってるのかな。
まあ確かに、突然俺の姿も声もこうなればな。
アイエフとコンパを見ると、やはりというか戸惑ってる。
仕方無い。
『戻るのかね?』
─まあ、その方がいいだろ?後、説明してもらうからな?
『了解した。まあ、しばらく私は黙っているとも。もちろん、見る真似もしない』
─そうしてくれ
ワラキアとの会話をやめて……この状態、どうしよう?
『死徒化』にするべきかな。
女神化を真似てだが。
技名風にしとけばなりやすくなるかもだし
死徒化を解除して、元の姿に戻る。
血とかも無くなり、元通り。
やったぜ。
「…よし。改めて、お疲れさま、ネプギア。よく頑張ったな」
「っ……ズェピアさん……!!」
「うおっと」
労りの言葉を言うと、女神化を解除して泣きそうな顔をして俺の胸へと飛び込んできたので、受け止める。
しっかりと抱き締めてくるネプギア。
…背負わせてしまうところだったのを、再認識して、自己嫌悪する。
「ズェピアさん…!生きているんですよね!ズェピアさん!」
「生きてるよ。……悪かった」
「本当です!もう、会えなくなるかと思いました…!
う、ぅ……!」
「ごめん…もう、こうならないようにする」
胸の中で、泣くネプギアに謝り、俺も抱き締める。
本当に、馬鹿野郎だなぁ俺。
ああするしかなかったとはいえ、悲しませるなんてよくない。
こうならないようにこの状態でも強くならないと。
「ネプギア、格好よかったよ」
「…そんな事言っても、今日は許しません!」
「別にそんなわけじゃあ……」
「ふんだ」
「……」
可愛いなおい。
ふんだ、て言ったよ。
説得を諦めた俺は今日は何をされるか分からないと思うのであった。
「もういいかしら?」
「アイエフ、コンパ……心配かけて悪かった」
「そうですよ!今日は医務室で絶対安静です!」
「はい……」
「ったく…でも、良かったわ生きてて。取り合えずお疲れさま」
「アイエフ…ありがとな」
コンパは泣きながら叱ってくるし……
アイエフも、こうは言ってるが、泣いた跡が見えてるからな。
皆、俺のために泣いてくれたのは嬉しいような悲しいような。
〔…私もよろしいでしょうか?〕
「「「「ひぇ!?」」」」
な、何だ!?俺まで変な声出ちゃっただろ!?
幽霊か!?やめてくれよそういうの弱いんだよ!
ネプギアだってビクッとしたぞ。
誰だと思ったら、先程下っ端に叩かれていたゲイムキャラのディスクが光っていた。
ネプギアも、俺を抱き締めるのをやめて、ディスクに話し掛ける。
「…貴女が、ゲイムキャラさんですか?」
〔はい、その通りです。助けていただき、ありがとうございます〕
「守れたようでよかったですぅ」
「ええ、取り合えず最悪な事態は回避できたようでよかったわ」
〔はい。…そちらの貴方も、ありがとうございました〕
「いや、俺は別に。俺の世界の奴がこの世界に迷惑をかけてるからな…謝りこそすれど感謝なんて」
〔いいえ、結果的に貴方は私を助けてくれたのですから、感謝させてください〕
「ズェピア、素直に受け取りなさい」
「……分かったよ」
〔はい。それで…私が眠っている間に、世界は大変なことになっているようですね〕
眠ってたのか。まあ、叩かれてたのに反応しなかったしな。
「そうなんです。それで、ゲイムギョウ界を救うためには貴女たちゲイムキャラの力が必要なんです!
どうか力を貸してくれませんか?」
〔……いいでしょう。元より、そのつもりでしたし、プラネテューヌの女神候補生。貴女ならば間違った道には歩まないと信じます。さあ、受け取りなさい〕
「何の光!?」
「ネタ挟まないっ!」
「グボログボロ!?」
「叫び声にしても無理がありますぅ……」
ディスクが光を放ち、その光が紫のディスクとなり、ネプギアの手へと置かれる。
「これは……」
〔『パープルディスク』といいます。これに、私の力を託しました。……どうか、ゲイムギョウ界を救ってください〕
「…はい!任せてください!」
〔ありがとうございます。……では、私は再び力を蓄える為にも眠りに就きます…〕
そうして、ゲイムキャラは光と共に消えた。
「……よし、帰るか」
「はい!そうですね!」
「…ところで、ネプギア。一つ良い?」
「アイエフさん、どうしたんですか?」
「いやその……その顔と手とかについた血なんだけど……」
「へ?」
ネプギアはそれを聞いて自分の手を見る。
そして、次の瞬間顔が青ざめていく
「キャァァァァァァ!!?」
「うわ、ビックリした」
「ビックリしたじゃないわよ!元はと言えばアンタが流した血でしょうが!」
「そんな血を流さない生き物じゃないんだから理不尽な!?」
「早く戻って洗いましょうねギアちゃん」
「は、はい!急がなきゃ~!」
「「て、おい!二人とも!?」」
俺とアイエフはコンパとネプギアに置いていかれた。
その後、二人で顔を合わせてから苦笑する。
「帰るか」
「そうね。ったく、あの二人は……」
こうして、俺たちは最初の試練を乗り越えたのだった。
・
・
・
・
プラネテューヌ教会に到着したぜ。
ふぅ、無事に帰ってこれたな。
無事ではないが
─んで、ワラキア
『説明だろう?といっても、この世界での君の変身……死徒化の原理を教えるくらいしかないが。毒については聞かないでくれ』
─十分だ
ってか、分からなかった言ってたのにもう、分かったの?理解度高いなおい。
『そうかね。では、説明しよう』
というか、それを教えてもらわないと説明するときの俺が困るからな。
『簡単に言うと、女神化と似たようなものだ。
君の場合はシェアではなく、自分の魔力を大量に消費してあの姿になる』
─制限時間もあるのは何でだ
『吐いたリソース分と言えば分かるかね?』
─あー、なるほど。要するに、この世界だと魔力を消費しなきゃなのね……この姿だとタタリが使えないのは?
『それは恐らく、君自身がリミッターを掛けたんだろうね』
─はぁ?
俺がリミッターを?
何でそんな?
『あの時、この世界に飛ばされた時、君は己の力を守るために、無意識に鍵を掛けたのだ』
─なら、もう使えても……
『というのが一つ』
─へ?
『まさか一つだけだと思ったのかね?』
─く、こいつ……!?
『それで、もう一つだが……そもそも、君の体では容量が足りない』
─……そうかぁ……
容量か。
まあ確かに。
世界を覆える程の力を俺個人の、転生前の体に入りきるとは思えない。
なるほど、欠片も使えないのはそういうことか……
『理解できたかね?では、私はこれで…』
─おう、ありがとうな
『構わないよ……ああ、それと。ネプギア、だったか?あまり乙女を泣かせるものではないよ、君』
─……分かってるよ
…泣かせないようにしないとな。
やっぱり、笑っていてほしいし。
心から笑えるように、頑張るか。
マジェコンヌと繋がってるなら、必ずアイツと最期は殺し合う。
そういう運命だ。
この手の中の
大丈夫。
「ズェピア!」
「ん、おう、どうした?」
考え事に耽っていたらアイエフに名前を呼ばれた。
いかんいかん。
「どうした、じゃなくて…イストワール様のところへ報告しに行くわよ」
「ああ、すまん。ネプギアたちは?」
「念入りに体を洗ってるわ。」
「悪いことしたなぁ……」
「そう思ってるなら、無茶はやめなさいよね…悲しむわよ、私たちもだけど、あの子はより一層」
「……だな。って、私たちもって……デレたな?」
「うっさいっ!!」
「ゴファ!?」
照れ隠し、いただきました……
拳骨痛い…どうも、ツッコミの時は俺の防御力を貫通するらしい。
何それ怖い。
とにかく、イストワールの所へ行くか。
・
・
・
・
「おかえりなさい、二人とも」
「ただいま戻りました、イストワール様」
「ただいま」
「ネプギアさんたちから話は聞いています。
無茶をしたようですが、ゲイムキャラから無事協力を得れたようですね。女神化も出来たようですし…それに、ズェピアさんも力が戻ったとのことですが」
無茶を~の部分で俺を心配そうに見てくるイストワールに悪い、とだけ言っておく。
こんなに心配されるなんて、恵まれてるな、俺は。
「皆が揃ったらいろいろと説明がしたいし、俺のことは待ってくれ」
「……分かりました。しかし、無事でよかったです」
「ご心配をお掛けして、申し訳ありません」
「いえ、私は戦ってもいないので大丈夫ですが、ズェピアさんは体に異常は?」
「それなら、大丈夫だよ」
「よかった……」
本当に心配していたんだな。
あーもう、こんなに色んな人たちから心配されるなんて
無かったし……むずむずするな。
「た、ただいま戻りました!」
「戻りましたですー!」
「はい、二人とも、おかえりなさい」
「はい、いーすんさん!」
「あ、エルエルとアイちゃん、戻ってきたんですね」
「置いていかれたわ、ねぇ?」
「置いていかれたなぁ?」
「そ、それはぁ……ごめんなさいです」
「すみませんでした…」
二人して顔を合わせて、よしと頷く。
謝罪頂きました。
「…いいわよ別に。」
「実は気にしてないし、平気だよ」
「……それでは、ズェピアさん、説明をお願いしても?」
「ああ、そうだった……皆には聞いてほしいことがあるんだ」
「力の事ですか?」
「おう、その通りだコンパ。今回、戻ったと思っていた力なんだが……実は結構面倒なことになっていた」
四人はそれに首をかしげる。
面倒なこととは、って感じだな。
まあ、これは俺にしか分からないし、仕方無い。
「俺の姿が元に戻ったが…あれのことは『死徒化』と命名するが…そうだな、見せた方が早いか」
「お願いします」
「よし……」
─いけるか?
『少しだけならいけるだろう。君の魔力もそう多くはない事は理解してくれ』
─はいはい
「『
瞬間、俺にノイズがかかる。
ザザザと音を立てながら、ワラキアの夜の姿へと変わる。
ノイズが晴れた時にはもうあの時と同じ姿だ。
変身完了!
「さて、これが私の姿…ワラキアの夜の姿だが」
「さっきも見たけど、変わりすぎじゃない?ねぷ子の比じゃないっていうか……」
「エルエル、かっこよくなってますよ~」
「そうかね?そう言って貰えるならば光栄というものだ」
「うぅん…やっぱり、違いすぎて慣れません…」
「すまないね、ネプギア」
「い、いえ!これから慣れていきます!」
「ふむ…」
「どうやら、女神化と同じようになるらしいですが…」
「うむ、その通りだ。ただし、この姿の時はシェアではなく魔力を消費する。消費した魔力の分だけこの姿は持続するが……それが過ぎれば」
またノイズが俺にかかる。
今度は、転生前の体へと。
「こうなるわけだな」
「女神化と殆ど一緒ね…この世界に来てからその原理になっちゃったとか?」
「あり得るな。それに、タタリもこの状態だと使えないことも判明したしな……それで、他にもあるんだ。
グレートレッドが犯罪組織マジェコンヌに協力しているようでな……」
「…でも、何でグレートレッドはマジェコンヌに?」
「そうです、エルエルの話だと独善的だけど正義感はあったようですし……」
「ああ、それなら簡単だ」
すっごいムカつくけど理由はわかる。
「単に、俺を潰しに掛かるならマジェコンヌに協力した方が効率的だからだろうな。アイツは、人の心を理解しやしない…だから、死後の魂すら利用しようと思える。マジェコンヌの下っ端は悪党だったが、グレートレッドは外道だ」
「とんだ厄介者ね……」
…娘を利用したのもそうだが、この世界の関係ない人にまで危害を及ぼすなら容赦はしない。
絶対に、この世から存在もろとも塵にしてやる。
突然、袖を引っ張られる。
そちらを見ると、ネプギアが不安そうな目を向けていた
「ズェピアさん、考えすぎは良くないですよ?」
「……悪い。怖い顔してたか?」
「はい、プリンを食べられたときのお姉ちゃんみたいな顔でした」
「比較対象の差よ……ハハハ」
思わず笑う。
プリンを食べられたときのネプテューヌと今の俺が同じくらいか。
そりゃ、怖いだろうなぁ
「…んで、多分、この先も事あるごとに今回みたいにグレートレッドが間接的に邪魔してくるかもしれない。多分、俺がお前らと居るからだな……悪い。もし嫌だったら」
「嫌じゃないです!」
「ネプギア…」
「嫌じゃないですから!私たちは、仲間だって言ってくれたじゃないですか!自分を切り捨てる考えはやめてください!」
「そうよ、私たちだって怒るときは怒るわよ?」
「ですです!」
「ズェピアさん、貴方が自分をどう思っているのかは分かりません。ですが、私たちは貴方の事を見捨てることは出来ません」
「アイエフ、コンパ、イストワール…」
…ヤバイな、涙が出てきた。
この姿は、涙腺まで弱いのか?
切り捨てた方が、絶対に楽なのに、だってのに皆は…
「…ありがとう!これからも、宜しく頼む!」
「はい!」
「よろしくです!」
「よろしく…たまにはボケ放棄してよね、頼むから」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
この世界で得た仲間は優しくて、とても強い。
それを、改めて知った俺は、頭を下げた。
皆が、笑顔で迎えてくれた。
俺はどうやら、一人にならなくていいようだ。