【完結】秘封道楽 〜少女達の食探訪〜   作:ユウマ@

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3月4日はバウムクーヘンの日ーという事でネタと被ったのでこの日に。前回に比べればかなり短めよ。


喫茶店のバウムクーヘン

「何の、成果も、なし‼︎」

週末の夕刻。私達2人とも午前で講義は終了という事で、サークル活動に息巻いていた蓮子に付き合う事数時間。私はがっくりと肩を落とす蓮子の隣を半ば呆れながら歩いていた。

 

「ううー、もう京都にはオカルトなんて無いっていうの…?」

「そもそも今まで大したオカルトを見たことなんてないでしょ」

 

ため息をつきながら空を仰ぐ蓮子を僅かに睨んでそう返す。今まで幾度も活動している私達だが、蓮子の情報についていってロクなものを見た試しがない。記憶に新しいのは大阪城にまつわるものだったか、結局オカルトなんてものは今の時代においてただの迷信なのだろう。

 

「メリーの見た夢の件もさっぱりだしね」

「そうね…。蒲焼きを買ったのを忘れて夢を見ただけかって思い始めたところよ」

「まあ、そこも含めて話し合うとしましょうか」

 

一軒のお店の前で蓮子が足を止める。私も同時に立ち止まる。私達が訪れたのは小さな喫茶店。元々は私がひっそり過ごす場所だったが、蓮子と出会ってからはこうしてサークルの話し合いの場として使う事が多い。

 

 

「いらっしゃいませー」

 

店員に案内されて席に着く。いつも紅茶とショートケーキしか頼んでいないが、今日もそれにしようと思ったところで先にメニューを見ていた蓮子が声をあげた。

 

「そうそう。メリー知ってる?今日はバウムクーヘンの日なんですって」

「…そうなの?別に語呂があっている訳でも無いけど」

 

今日は3月4日。普通そういう日は何かしら語呂合わせをして無理やり読む場合が多いのだが、

 

 

「違う違う、そういうのじゃなくて、今日は日本でバウムクーヘンが初めて売られた日、って事らしいわよ」

「なるほどね。それなら折角だし私はバウムクーヘンにしようかしら」

「あ、じゃあ私も。すいませーん!バウムクーヘン2つー!」

 

注文をする蓮子をよそに、ふと頭に思いついた事があった。本来はドーナツに対して言われていたことだった気がするが、同じ形のバウムクーヘンでもそうだろう。

 

 

「ねえ蓮子」

「んー?」

 

 

 

「聞いたことがあるんだけど。“穴が空いている食べ物はゼロカロリー”って理論、貴女信じる?」

 

 

その時の蓮子の同情に満ちた視線を私は忘れないだろう。

 

 

「…メリー、いくら成果が無かったからって私が求めてるのはそういうオカルトじゃ…」

「ち、違うわよ。昔何かで見たのよ、穴の空いてる食べ物はゼロカロリーって。確かカロリーが真ん中に集まるからって」

「良いメリー?バウムクーヘンを焼く時に真ん中にあるのは回すための棒よ。カロリー以前に食べ物ですら無いのよ」

 

私が口を開く前にバウムクーヘンが運ばれてくる。皿の上のバウムクーヘンは大方の予想通り、中心が丸くくり抜かれた形状をしていた。

 

「ま、まあとりあえず食べましょう?」

「…そうね」

蓮子に促され、バウムクーヘンをフォークで切り分ける。

口に運ぶとケーキの甘さとは違う、バターの味が強い甘味がする。これは喉が渇きそうな感じだ。そうでなくても甘味の口直しに飲み物は飲むけれど。

追加で私は紅茶を、蓮子はコーヒーを注文。すぐに出された紅茶を飲んでとりあえず口直しをする。

 

「それで、落ち着いた?」

「…私が落ち着いていないような言い方ね。さっきのカロリーについての話は場を繋ぐための単なる話題よ」

「分かってるわよ。でも場繋ぎにカロリーの話を持ってくるなんてメリーも案外気にしてるのねえ」

そう言って頬杖をついて笑う蓮子の頭をとっさにはたきたくなったが、一応公共の場という事でこの場では止めることとする。

はたこうと伸ばしかけた手を戻したところで、バウムクーヘンの皿の端に何か小さなピッチャーがある事に気がついた。

 

「あら?何かしら」

「ん?あ、私のとこにもある」

 

蓮子と同時にピッチャーを手にとる。中に入っているのは何だろうと匂いを嗅ぎ、

 

 

「コレは…チョコレート?」

「みたいね。バウムクーヘンにかけろって事ね」

 

言いながら蓮子はチョコソースをかけていた。私もそれに続いて残り半分程のバウムクーヘンにソースをかける。

チョコでコーティングされたそれを大きめに切って口へと運ぶ。

 

 

「んん、そのまま食べるには苦そうなチョコの味ね」

 

ブラックチョコなのだろうか、随分苦味のあるチョコソースだ。それ自体に甘味はさほど感じないが、成る程バウムクーヘンと合わさる事で良い感じに混ざり合って美味しい。

 

「そうね。ここのスイーツ、ケーキ以外も案外イケるわね」

そう言う蓮子の皿には既にバウムクーヘンは無く、のんびりコーヒーを飲んでいた。コーヒーに砂糖なりを入れる所を見ていないが、コーヒーもブラックならかなり苦いのでは無かろうか。

 

「ちょっと待って、私ももう食べ終わるから」

「ええ。にしても、さっぱり活動の話しなかったわね。メリーの説は面白かったけど」

「いつまでもそれを引きずらないの。活動の話はしょっちゅうするから良いでしょう?」

 

確かにね、と苦笑する蓮子に軽くため息をついて、バウムクーヘンの最後のひとかけらを放り込む。

紅茶と共に食べたバウムクーヘンは、すっきりとした後味を残して消えていった。

 

 

 

「さてさて、次はどんなとこに行こうかしらね!」

「そうねぇ、また変な情報に振り回されない事を祈るばかりだわ」

 

星が出始めた道を蓮子と共に歩く。

帰ったら、私も面白そうなスポットを探すのも良いかもしれない。

 

「そうねえ、今度は何処か静かなところが良いかしら」

「まっかせなさい!蓮子さんがエスコートするわよ」

 

帽子を押さえて笑みを浮かべる蓮子に笑みを返して、私達は夜道を行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで蓮子」

「何?」

「女の子にカロリーの話はタブーよ」

「あだっ」

 

 

もちろん蓮子をはたくことも忘れずに。




<NEXT>
「未定よ」
「ええ…」
「作者的にハイペースだからネタが無いのよ」
「そうねぇ、そろそろパンとか麺類とかが良いわね」
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