【完結】秘封道楽 〜少女達の食探訪〜   作:ユウマ@

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お久しぶりになるのかしら
だから感覚戻しにクッソ短いよゆるして()


間話 最悪の季節、到来

当然の事ながらこの世界は4つの季節を繰り返している。

春夏秋冬、乱れる事なくほぼ一定の周期であるが故、好きな季節も嫌いな季節も平等に降りかかってくるのだ。

 

 

そんな事を普段より大分遅めの速さで口走るのは、カフェテリアのテーブルに死んだように突っ伏す相棒だ。

 

「そうね、季節は平等だわ。だから比較的温度も管理されてるカフェで涼もうって言ったのは蓮子じゃない」

「だからって、道中でこんなに暑かったら殆ど意味ないわよ…次からタクシー使わない?」

「そうしたら蓮子のお財布がますます軽くなるわよ?私は別に構わないけど」

「うむむむむー…」

 

 

蓮子は唸って財布とにらめっこをしている。そんな様子も程々に、蓮子はガタリとテーブルを揺らして立ち上がった。

 

 

「ま、そん時はそん時よ!取り敢えず今は冷たいものでも買ってくるわ」

「投げたわね…私のもお願い」

 

 

いつもかぶっている帽子を椅子に置き、小走りに駆けていく。動くのが億劫だったので頼んでしまったが、よもや妙なモノを買ってこられたりしないだろうか。蓮子が好奇心を発揮しないよう祈るばかりだ。

 

 

「はいメリー、おまたせ」

「十分早いわよ。…これはまた、懐かしいのが売ってたわね」

「これが1番安かったしね。涼しくなるにはうってつけよ」

 

 

目の前には昔ながらの紙容器と、そこにうず高く盛られた削られた氷。頂上にかけられた赤が眩しいレベルで真っ白だ。

 

早い話がかき氷というやつだ。今となっては殆ど目にする機会は無くなってしまったが、昔はお祭りの定番だったようだ。

 

 

「今はお祭り自体珍しくなっちゃったからねぇ。氷食べる人なんて今時居ないって事でしょ」

「そうかもね。昔の文化が無くなるのは物悲しいものね」

 

 

 

スプーンで氷を崩して口に運ぶ。冷たさにイチゴの味がほんのり染みて心地良い。

 

「うん、まぁ不味くはないわよね。私実はかき氷って初めて食べたんだけど」

「日本在住の貴女より私の方が食べた事あるってどうなの」

「好みの問題よ。大体夏にしか食べる機会無いじゃない」

 

 

確かにどこまでいっても氷は氷、シロップで味があるとはいえ現代人にとってはわざわざ買って食べるまでも無いのかもしれない。

 

 

と、

 

 

 

「ーっ!」

「あはは、メリーったら普段気温の変化が激しくないから、こういう時にすぐ頭痛くなるわよね」

「かき氷で頭痛を起こすのは定番でしょ。蓮子こそ痛くならないの?」

「私はメリーと違って頑丈だからね」

 

 

どういう理屈だ、それは。まだ痛む頭を抑えつつ、かき氷を流し込む。既に少し溶け出していたようで、シロップと混ざってどちらかと言えばジュースのようになってしまっていた。

 

 

「さてと、そろそろこの夏の活動を考えないとね」

「私は家で読書でもしたいのだけど…」

「メリーは年がらそうでしょ。夏だからこその体験をしたいじゃない」

「今食べたじゃない、かき氷」

 

 

そう言うと、蓮子は無言でこちらを睨みつける。私は別に間違ったことは言っていないと思うのだけど。

と、そんな顔もすぐに元どおりになり。蓮子は何やら鞄を漁り、中から1枚の紙を取り出して手渡してきた。

 

 

「何これ…夏祭り?ウチの大学で?」

「そそ。今年からの新たな取り組みってやつね。ねぇメリー、一緒に見て回りましょうよ!花火もあるらしいわよ!」

「夏祭りねぇ…」

 

 

 

正直に言えば、あまり乗り気ではない。けれど、こちらに詰め寄る蓮子の顔を見ると、なんとなく…なんとなくだが、行く必要を感じてしまう、気がするのだ。

 

 

だから、結局。

 

 

 

「…分かったわよ。けど、行くならちゃんとエスコートしてよ?」

「まっかせなさい!完璧にしてみせるわよ!」

 

 

蓮子が目を輝かせて笑う。その顔を見るのが、何となく嬉しくて。

 

 

早速当日までの予定を立て始める蓮子に苦笑して、私は額の汗を拭った。

 

 

 

 

案外、夏というのも悪くは無いのかも、しれない。




<NEXT>
「お祭りまで随分日があるわね」
「早めに予定を立てておくのも大事よ」
「早く立てても遅く立てても遅刻してくる人もいるけどね」
「うっ…」

【次回 岡崎研究室の叡智?】
お楽しみに〜
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