憑依転生者『ノエル・シルヴァ』   作:紅ヶ霞 夢涯

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14話

 

 結局アジトには戻らず夜を明かした私は、翌朝になってからアジトの自室へと身支度を整えるためだけに戻ってきた。部屋から出る際に、いつもは任務以外で羽織ることのなかったローブを身に纏う。

 

 そして刀を腰に差して、大広間に入った。

 

「………おはよう」

 

 当然、朝に戻った私が最後のようだ。昨日と違って特に用事もない筈だから気にしないけど。

 

 そこは気にしないのだけど、アスタを除く全員から向けられる視線が何となくむず痒い。しかし、声を掛けてくる気配もないので無視して朝食を済ませた。黙々と食べ終わった直後に団長が声を上げる。何やら、昨日のソッシ村の件で話があるらしい。

 

「散々だったなオマエら!なにはともあれ、ご苦労。馬鹿野郎共!!」

 

「「うっす!!!!」」

 

 あー、朝から喧しい。特にアスタは昨日、かなり血を流した筈なのに………寝てた方がいいんじゃない?

 

(それは私も同じよね)

 

 自嘲していると、バネッサの口からソッシ村を襲った連中に関しての調査結果が語られたが………まぁ、何も分かっていないとのこと。遺留品から念入りな調査も行われるそうだけど、期待していない。

 

「ま、何だってよし!魔法帝に活躍が認められ、星一つ授与されたんだからな!!」

 

 星。それは各魔法騎士団の活躍を簡単に示すもの。各魔法騎士団は、この星の数を互いに名誉として競い合っている………らしい。黒の暴牛には関係なさそうだが。

 

 なにせ黒の暴牛が保有している現在の星の数は−30………名誉云々どころの話ではない。

 

「あとこれ。今月の給料」

 

 そう言う団長から、小さな袋が雑に手渡される。私にはよく分からないが、下民のアスタからすれば目が飛び出るような金額らしい。ノモイモねぇ………あれが美味しいとか、舌の感覚が狂ってるとしか思えないけど。

 

 その後、私とアスタは珍しく素面のバネッサに連れられキッカの闇市を訪れていた。私はいいと言ったのに、半ば無理矢理。

 

「驚いた?王族や貴族は毛嫌いして近づかないものね」

 

「それを知ってて王族を連れて来たの?呆れた」

 

 ………………………まぁ、面白そうな魔導具があるのは認める。

 

「少し、見て回っていい?」

 

 バネッサと共に並び立つ露商を次々と覗いていく。探すのは魔力コントロールを補佐する能力を持つ魔導具と、治癒の効果を持つ魔導具。それらしい物を手に取っては、バネッサに助言を求める。

 

 内心、私に対して良い感情を持ってはいないだろうに彼女は文句も言わずに付き合ってくれる。言い出したのがバネッサ本人だからというのもあるとは思うけど、それでも申し訳ない。

 

(………そういえば)

 

 空いた時間はほとんど鍛錬に当てていたから、こんな風に買い物に出掛けるなんて久し振りというか。

 

「私、兄様達や姉様と出掛けた事なんてあったかしら?」

 

 ないな。だから少しだけ………ほんの少しだけ、新鮮な気持ちになっているのかもしれない。

 

「ねぇ、バネッサ。これは………バネッサ?」

 

 何か昨日のミモザみたいな反応をしているバネッサに呼び掛けるが、どこか反応に乏しい。何か変な事でも言っただろうか。

 

 更に間が悪いことにフィンラルその2、みたいな浮ついた雰囲気の男から声を掛けられる。内容からして悪質なナンパ。魔法騎士団のエリートとか絶対に自称でしかない。

 

「失せなさい、邪魔」

 

 視線を向けることも煩わしい。もう少しマシな嘘を吐け。

 

「オーイ、こんな面白いアイテムがあったぞー!!」

 

「まさか、それ買ったの?」

 

 駆け寄ってきたアスタの手には、用途の想像も出来ない謎の物体がある。仮にも店に並んでいた物から選んだなら、全くのゴミではないだろうけど………勿体無い金の使い方をする。

 

「あれ?オマエは確かーーーフッハ!」

 

「セッケだ!」

 

 アスタ曰く、知り合いらしい。入団試験で一緒だったとか………ふぅん。さっきの発言も、まるっきりの嘘という訳でもないのかも。

 

 星の数を自慢し合う馬鹿二人を放置し、再び魔導具を眺めようとした瞬間だった。

 

「ひったくりだー!誰か捕まえとくれー!!」

 

 あぁ、もう。ロクに買い物も出来やしない。

 

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