魔力の操作を習得するために、私は日夜水の魔力を的に向けて飛ばすという訓練をしている………………それが上手くいった試しがないことは、一先ず横に置いておくとしよう。
つまり現状の問題点は、魔力を狙った場所に飛ばせないこと。魔力の塊を抽出すること、それを射出すること自体は問題なく可能な訳。
(なら、後はその魔力を留めておければ…!!)
攻撃の手段としては、とりあえず申し分ないだろう。
「ああああああああああっっっっっ!!!!」
ヒースが咄嗟に張ったらしい氷の壁をぶち破り、魔力を纏った拳を振り抜く。ヒースへとそれが直撃した瞬間に、纏わせていた魔力が爆ぜた。
〈sideマグナ〉
村人達から歓声が上がる。それはノエ公が賊のリーダー的な奴を殴り飛ばし、今までオレとアスタが防いでいた攻撃が止まったからだ。
「やるじゃねえか、ノエ公…」
魔力のコントロールを、この土壇場で成功させやがった。その一歩はきっと、オレが思っている以上にノエ公にとってデカいだろう。
(後は魔法騎士団レベルの魔力持ちが、何人かいるが………多分、ヒースとかいう奴の支援専門なんだろうな。アスタに霧の魔法を使った奴も、せいぜい足止め程度の魔法だったし)
それならまぁ、やりようはあるだろ。
「は?」
しかし、土煙で隠れていたノエ公の姿を見て、思わず疑問の声が出た。
「………流石、に。至近距離だと、キツイわね」
ボロボロだった。直接魔力を纏わせていた左腕はともかく、それが爆ぜた余波のせいでか全身に傷が出来ている。
「ノエ公。オマエ、まさか………」
まさか、などではない。アイツはまだ、魔力のコントロールなんか出来ていない。ただ単に、魔力の塊を自分ごと敵にぶつけただけ。魔力のコントロールを未習得のままに行ったその反動は、きっちりノエ公の身体に現れている。
「アスタ!残りは俺らでやるぞ!!」
「ウスッ!!」
敵のリーダーをノエ公一人に任せまった以上、ここからは先輩の俺がやらねーと。
(それに、あの怪我でこれ以上は無茶させられねーだろ!)
「ノエ公!オマエとりあえず一回下が」
ーーー鈍い音が嫌に響いた。音の発生源に目を向けると、そこにあったノエ公の姿がない。今そこにあるのは巨大な氷だけだった。
今度は背後から鈍い音がした。後ろを振り返れば、村人達の付近で倒れ伏すノエ公の姿がある。
「ノエルッ!?」
「動くなアスタぁ!すぐまた、今のが来るぞ!!」
ピクリとも動かないノエ公に駆け寄ろうとした、アスタを止める。俺もそうできるなら、すぐにでもそうしたい。
「ウオオオオオオオオオオッッッ!!!」
次々に飛来してくる氷の礫の、半分と少しを炎魔法でふき飛ばす。そして残りは、アスタが斬り捨てるか弾いている。
「自爆覚悟の一撃………いや、今のは魔力の操作が出来ていなかっただけか。全く、そんな者がまさか騎士団にいるとはな。余程の人手不足らしい」
ちらりと肩越しに、立ち上がったヒースとやらを見る。奴も傷を負っているが、ノエ公よりはマシだ。どんな魔法を使ったかは分からないが、ノエ公のあの一撃をどうにか防いだらしい。
(マズイぜ、こりゃあ………)
凌ぐことは出来ているが、それだけだ。守っているだけじゃ、勝てない。どこかで攻めに出る必要がある。
(………だが)
攻めに回れば、村人達に犠牲が出る。そうと分かって敵を攻めるなんて、出来る訳がない。
(クソッ!せめて、せめてオレが………!!)
ーーーこの攻撃を一人で防げるだけの、防御魔法を使えたら。