憑依転生者『ノエル・シルヴァ』   作:紅ヶ霞 夢涯

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9話

 魔力の操作を習得するために、私は日夜水の魔力を的に向けて飛ばすという訓練をしている………………それが上手くいった試しがないことは、一先ず横に置いておくとしよう。

 

 つまり現状の問題点は、魔力を狙った場所に飛ばせないこと。魔力の塊を抽出すること、それを射出すること自体は問題なく可能な訳。

 

(なら、後はその魔力を留めておければ…!!)

 

 攻撃の手段としては、とりあえず申し分ないだろう。

 

「ああああああああああっっっっっ!!!!」

 

 ヒースが咄嗟に張ったらしい氷の壁をぶち破り、魔力を纏った拳を振り抜く。ヒースへとそれが直撃した瞬間に、纏わせていた魔力が爆ぜた。

 

 

 

 

 

〈sideマグナ〉

 

 村人達から歓声が上がる。それはノエ公が賊のリーダー的な奴を殴り飛ばし、今までオレとアスタが防いでいた攻撃が止まったからだ。

 

「やるじゃねえか、ノエ公…」

 

 魔力のコントロールを、この土壇場で成功させやがった。その一歩はきっと、オレが思っている以上にノエ公にとってデカいだろう。

 

(後は魔法騎士団レベルの魔力持ちが、何人かいるが………多分、ヒースとかいう奴の支援専門なんだろうな。アスタに霧の魔法を使った奴も、せいぜい足止め程度の魔法だったし)

 

 それならまぁ、やりようはあるだろ。

 

「は?」

 

 しかし、土煙で隠れていたノエ公の姿を見て、思わず疑問の声が出た。

 

「………流石、に。至近距離だと、キツイわね」

 

 ボロボロだった。直接魔力を纏わせていた左腕はともかく、それが爆ぜた余波のせいでか全身に傷が出来ている。

 

「ノエ公。オマエ、まさか………」

 

 まさか、などではない。アイツはまだ、魔力のコントロールなんか出来ていない。ただ単に、魔力の塊を自分ごと敵にぶつけただけ。魔力のコントロールを未習得のままに行ったその反動は、きっちりノエ公の身体に現れている。

 

「アスタ!残りは俺らでやるぞ!!」

 

「ウスッ!!」

 

 敵のリーダーをノエ公一人に任せまった以上、ここからは先輩の俺がやらねーと。

 

(それに、あの怪我でこれ以上は無茶させられねーだろ!)

 

「ノエ公!オマエとりあえず一回下が」

 

 ーーー鈍い音が嫌に響いた。音の発生源に目を向けると、そこにあったノエ公の姿がない。今そこにあるのは巨大な氷だけだった。

 

 今度は背後から鈍い音がした。後ろを振り返れば、村人達の付近で倒れ伏すノエ公の姿がある。

 

「ノエルッ!?」

 

「動くなアスタぁ!すぐまた、今のが来るぞ!!」

 

 ピクリとも動かないノエ公に駆け寄ろうとした、アスタを止める。俺もそうできるなら、すぐにでもそうしたい。

 

「ウオオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

 次々に飛来してくる氷の礫の、半分と少しを炎魔法でふき飛ばす。そして残りは、アスタが斬り捨てるか弾いている。

 

「自爆覚悟の一撃………いや、今のは魔力の操作が出来ていなかっただけか。全く、そんな者がまさか騎士団にいるとはな。余程の人手不足らしい」

 

 ちらりと肩越しに、立ち上がったヒースとやらを見る。奴も傷を負っているが、ノエ公よりはマシだ。どんな魔法を使ったかは分からないが、ノエ公のあの一撃をどうにか防いだらしい。

 

(マズイぜ、こりゃあ………)

 

 凌ぐことは出来ているが、それだけだ。守っているだけじゃ、勝てない。どこかで攻めに出る必要がある。

 

(………だが)

 

 攻めに回れば、村人達に犠牲が出る。そうと分かって敵を攻めるなんて、出来る訳がない。

 

(クソッ!せめて、せめてオレが………!!)

 

 ーーーこの攻撃を一人で防げるだけの、防御魔法を使えたら。

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