達也がアーシアを教会に送り届けた夜
リアス『朱乃、何かあったのでしょう?」
部長の問いに朱乃さんはニコニコ顔をから一変、真剣な顔になった。
朱乃『大公からはぐれ悪魔の討伐依頼が届きました』
はぐれ悪魔とは、眷族である悪魔が主を裏切るまたは、殺害した悪魔のことらしい。
はぐれ悪魔は非常に凶悪で各勢力から危険視されていて、見つけ次第、消滅させることになっているとのことだ。
そんなはぐれ悪魔がグレモリ―領であるこの町に潜入していて、毎晩、人間をおびき寄せては喰らっているらしい。
俺達、グレモリー眷族はそのはぐれ悪魔を退治するべく、とある廃墟に来ている。
確かに中から悪魔の気配がする。
一誠『部長、俺達も戦うんですよね?」
リアス『あなた達の実力も見ておきたいところだけど、今日は見学してもらおうかしら。駒の特性も教えておきたいし』
悪魔の駒はチェスに倣って作られている。
駒には王、女王、戦車、騎士、僧侶、兵士の種類があり、それぞれに特性があるらしいのだが、俺はその特性とやらについてまだ説明を受けていなかった。
まぁ、話を聞く機会がなかったというのもあるのだけど。
そういうことなら、今日は後ろで見学といくか。
部長が訊いてくる。
リアス『悪魔がどうして人間を転生者として悪魔に変えようとしたのかは話したわね?』
一誠『ええ。悪魔の出生率の低さですよね』
木場『実際にはそれだけじゃないんだ』
木場が部長に代わって話し始める。
木場『悪魔は過去の大戦で純粋な悪魔を失い、兵力を失ったんだ。だけど、堕天使や天使との臨戦態勢は消えないから、隙を見せるわけにはいけない。そこで大きな兵力の数は無理だから、少数精鋭にしようとしたんだ」
一誠『それで出来たのが悪魔の駒ってことか』
リアス『そういうことなの。この制度は爵位持ちの悪魔に好評なの。《レーティングゲーム》なんてものあるのよ』
祐哉『レーティングゲーム?』
リアス『レーティングゲームというのは、簡単に言えば上級悪魔同士が自分の下僕をチェスのように実際に動かして競い合うものなの。詳しくはまた今度説明するわ。それで、駒の特性というのは』
部長はそこまで言って言葉を止めた。
止めた理由は俺もすぐに分かった。
達也『はぐれ悪魔か』
達也の視線の先にいたのは上半身は女、だけど下半身は巨大な獣の体をした化物だった。
両手には槍みたいな獲物を持っている
????『不味そうな匂いがするぞ? でも、うまそうな匂いもするぞ? 甘いのかな? 苦いのかな?』
低い声で何やら呟くはぐれ悪魔。
そんな奴に俺が言えることは一言。
一誠『気持ち悪い!』
つい口に出してしまった。
見た目も、声も、表情も何もかもが生理的に受け付けない!
笑い声だって、「ケタケタケタ………」って不気味なんだぜ?
木場なんか苦笑いしてるし。
部長がはぐれ悪魔に言い放つ。
リアス『はぐれ悪魔バイサー。あなたを消滅しに来たわ。己の欲を満たすために暴れまわるのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名においてあなたを消し飛ばしてあげる!』
バイザー『小娘ごときが生意気な!』
部長の言葉にはぐれ悪魔バイサーは笑い声を止め、襲いかかってきた。
リアス『祐斗!』
木場『はい!』
命令を受けた木場が飛び出す。
そのスピードは速く、瞬時にバイサーとの距離を詰めていく。
リアス『一誠駒の特性を説明するわ』
部長は木場の方を見た。
木場は非常に速い速度ではぐれ悪魔の槍による攻撃を全かわしている。
リアス『祐斗の駒は《騎士》。騎士になった悪魔は速度が増すの。そして祐斗の最大の武器は剣』
いつの間にか剣を握っていた木場はその速度をさらに上げてバイサーの両腕を切り落とす。
バイザー『ギャアアアアアア!』
切断された腕から血を噴き出しながら、絶叫するバイサー。
絶叫の途中のバイサーの足元に小猫ちゃんが立っていて、
リアス『小猫の特性は《戦車》。その力はバカげた力と屈強な防御力』
バイサーが小猫ちゃんを踏み潰そうとするも小猫ちゃんはそれを軽く受け止め、巨大な足をどかせる。
小猫『ぶっ飛べ』
そして、小猫ちゃんはバイサーの腹の高さまでジャンプすると、拳を打ち込んだ。
その瞬間、ドゴンッと廃墟に打撃音が響く。
こいつが戦車の駒による強化ってことか
リアス『最後に朱乃ね』
朱乃『あらあら、うふふ分かりました、部長』
朱乃さんは悪魔の方へと向かっていく。
すると、朱乃さんの手からビリビリと電気のようなものが発生する。
リアス『朱乃の駒は《女王》。《王》を除いた全ての特性を持つ、最強の駒。最強の副部長よ』
バイサーの上空で雷雲のようなものが発生し、次の瞬間、そこから激しい落雷がはぐれ悪魔を襲った。
雷撃がバイサーが覆い、その巨体を焦がしていく!
雷撃が止み、その場にいたのは黒焦げとなったバイサー。
バイザー『ぐぅぅぅぅ』
ボロボロになりながらも朱乃さんを睨み付けるバイサー。
朱乃『あらあら、まだ元気みたいですわねぇ。ならドンドンいきましょう』
次から次へと雷撃を浴びせていく朱乃さん!
えっ、まだやるんですか!?
これ以上はほとんどオーバーキルだと思うんですけど!?
っていうか
朱乃『うふふふふ』
すごく笑ってるよ!
怖いよ、別の意味で!
リアス『朱乃は究極のSなの』
達也『マジか』
祐哉『うわぁ』
一誠『見れば分かりますよ!』
リアス『大丈夫よ。味方にはやさしいから』
本当ですか!?
信じますよ!?
ふとした時にSに虐められたりしませんよね!?
そうこうしているうちにバイサーは完全にダウン。
もう抵抗する力はないのは明らかだ。
地面に突っ伏すバイサーに部長は手をかざす。
リアス『最後に言い残すことは?』
バイザー『こ、殺せ』
リアス『そう。なら消し飛びなさい』
部長の手からどす黒い魔力が放たれる。
魔力がバイサーの体に触れた瞬間、奴は完全に消滅した。
リアス(これで終わりね。朱乃、祐斗、小猫、ご苦労さま』
はぐれ悪魔の討伐任務はこれで終わりらしい。
はぐれ悪魔、身も心も完全な化物だったな。
ああはなりたくないものだ。
終了ムードになり、皆が帰ろうとする中、俺は部長に訊ねた。
一誠『部長、《兵士》ってなんか特性があるんですか?』
リアス『兵士の最大の特性は《プロモーション》よ』
一誠『プロモーションですか? それって実際のチェスと同じ?』
そうよ。兵士は私が敵地と認めたところに足を踏み入れたとき王以外の駒に昇格することができるの」
なるほど、最初は他の駒のような特性は持たないが、プロモーションすることで、女王、戦車、騎士、僧侶の特性を得られるってことか。
自由度が高いが、どのタイミングでどの駒になるかが重要になるってことか。
リアス『とりあえず、プロモーションについては実際にやってみた方が良いでしょうね。今度はあなたにも戦ってもらうから、その時はよろしくね』
一誠『はい、部長!』
こうして、はぐれ悪魔の討伐と俺への駒の解説は終わり、部室に戻ることとなった。
はぐれ悪魔バイサーの討伐が終わり、部室に戻った後、俺に依頼が入った。あと達也もついてくる。
一誠『部長、行ってきます』
リアス『ええ、頑張ってきなさい』
転移用魔法陣の上に立ちながら出発の挨拶をする。
いつも通りに魔法陣の光に包まれ、今日の依頼者の家の玄関へ到着する。
だけど、達也は到着早々、違和感を感じた。
達也『血の匂いそれにこの感覚。まさか」
そう、嫌な予感がした達也は家の中へと入っていった。
気配を辿って着いた部屋には薄暗いライトがついているだけ。
部屋を覗いてみると―――――そこには血を出して倒れる人と、それを見下げている神父服のような服を着ている白髪の男。
男は俺に気付いたらしく、こっちを見て話してきた。
フリード『おぉ~? これはこれは、悪魔くんじゃあ~ありませんか~」
ふざけた口調。
だけど、その眼には明らかな殺意があった。
フリード『俺の名前はフリード・セルゼン。とある悪魔払い組織に所属する末端にございますですよ』
目の前の白髪の男フリードは自己紹介をしながら一礼してくる。
俺は床に倒れる血塗れの男性に視線を送りつつ、確認を取った。
一誠『これはお前が、やったのか?』
フリード『イエスイエス。俺が殺っちゃいました。だってー、悪魔を呼び出す常習犯だったみたいだしー、殺すしかないっしょ』
隠す気もなし、か。
人を殺しておきながら、罪悪感の欠片も感じない
俺がもう少し早く着いていたら、この人は助けられたかもしれない………と、悔やんでも今は仕方が
フリードが光の剣を振り回して突っ込んできているからな。
フリード『今からお前の心臓にこの刃を突き立てて、このイカす銃でお前のドタマに必殺必中フォーリンラブ、しちゃいます!』
横なぎに振るわれる光の剣。
俺はそれを難なく避けるが、フリードは避けた俺目掛けて銃を撃つ。
フリード『悪魔祓い特製の祓魔弾だぜ☆当たったらそうとう痛いよー。ひゃはははは!』
悪魔祓い専用の銃ってことか。
確かに、あの銃からは嫌な雰囲気がある。
これも俺が悪魔になったから、そう感じるのかね?
とにもかくにも、触れない方が良さそうだ。
フリードは俺目掛けて次々に引き金を引きながら言う。
フリード『ほほぅ! これをかわしますか悪魔くぅん!』
一誠『一々うるさいやつだな。もう少し、静かに戦えないのか?』
剣を避ければ、銃弾が飛んでくる。
その銃弾を避ければ、今度は剣が降り下ろされる。
銃による攻撃によって、俺の動きをコントロールしようってわけか。
で、俺の動きを先読みして、そこに剣撃。
剣と拳銃のコンビネーション。
ふざけた野郎だが、訓練はしっかりされているらしい。
だが達也が横から
瞬時にフリードの懐に飛び込み、鳩尾に拳を撃ち込んだ。
フリード『ぐふぉ!』
ズドンッと衝撃がフリードの体を突き抜ける。
強烈な一撃を受けたフリードはその場に崩れ落ち、腹を抑えて悶絶している。
そうだろな。達也は人間じゃなくオルフェノクだ。
達也は膝をつくフリードを見下ろして言う。
達也『かなり手加減してやったんだ。意識はあるだろ?』
フリード『よくも俺様を殴ったなぁぁあ!』
フリードが苦しみながらも達也を睨み付けた。
一誠『睨みつける元気はあるのか。だけど、おまえ、達也に勝てると思うなよ? おまえの実力じゃ逆立ちしても達也には勝てねぇよ』
達也が手加減したのは、こいつを活かして捕らえるため。
今回の件について洗いざらい話してもらうためだ。
さて、暴れられても面倒だし、意識ぐらいは刈り取らせてもらうか。
アーシア『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
女性の悲鳴が室内に響き渡った。
声が聞こえた方に俺と達也もフリードも声がした方向に視線を向ける。
倒れ伏した男性の遺体を見て表情を固まらせていたのは達也が教会へ案内をしたシスタアーシアだった。
達也『アーシア?』
フリードはヨロヨロと立ち上がって、アーシアに話しかける。
フリード『おんやぁ? 助手のアーシアちゃん。結界は張り終わったのかな?』
アーシア『こ、これは』
フリード『そっかそっか、アーシアちゃんはこの手の死体は初めてでしたねぇ。これが俺らの仕事。悪魔に魅入られたダメ人間をこうして始末するんすよ♪」
死体を見て呆然としているアーシアに何でもなでもないような口ぶりで自分が行なったことを説明するフリード。
アーシア『そ、そんな』
その説明を聞いてショックを受けたアーシアがフリードの方を向く。
当然、俺達の顔も見ることになり、彼女の表情は驚愕したものになる。
アーシア『一誠さんと達也さん』
達也『アーシア』
アーシアも俺と達也がこんなところにいるなんて思いもしなかったのだろう。
彼女は俺達のことを何処にでもいる普通の男子高校生だと思っていたはずだからな。
この雰囲気を見て俺達のことはフリードにも分かったようだ。
フリード『なになに? 君たちお知り合い?シスターと悪魔の禁断の再会ってやつ?』
アーシア『悪魔? 一誠さんと達也さんが』
フリードの言葉が信じられないと固まるアーシア。
俺は正直、知られたくなかった。
あのままで良かったんだよ、お互いのためにも。
一誠『ゴメンな、アーシア。達也は違うけど俺は悪魔だ。
俺が達也は違うが自分がアーシアに謝る横でフリードが大笑いしていた。
フリード『ひゃはははは! 残念だけどアーシアちゃん、悪魔と人間は相容れません! それに、僕達、堕天使様のご加護なしでは生きてはいけないハンパ者ですよぉ?』
達也『堕天使だって!』
フリードはともかく、アーシアが?
いや、ちょっと待て。
そもそも、悪魔と敵対関係にあるはずの堕天使、その堕天使の加護を受けた二人が上級悪魔が管理するこの土地にいるというのはどういうことだ?
そんな疑問を持つ俺を無視して、フリードが言う。
フリード『まぁ、そんなことは良いとしてぇ、俺的にはもう一人にさっきの仕返しとしてぶったぎらないと気がすまないんですよぉ』
達也に光の剣を突き付けるフリード。
達也『懲りないやつだな。もう一発、キツイのを食らわせないと実力差を理解できないか?』
拳を鳴らせながら、フリードを睨む達也
達也とフリードが戦闘を再開しようとした時だった。
アーシアが達也の前に立ち、庇うように両手を広げたんだ。
その行為に達也もフリードも目を見開いた。
達也『アーシア』
フリード(マジっすかー、アーシアちゃん。キミ、何をしているかおわかりなんですかぁ?』
フリードの問いにアーシアが言う。
アーシア『はい。フリード神父。お願いです。この方を見逃してください。人間を裁いたり、悪魔を殺すなんて、そんなの間違ってます!』
アーシアの言葉を聞いたフリードは憤怒の表情となった。
フリード『はぁぁぁぁぁああああ!? バカ言ってんじゃねぇよ! このクソアマが! 悪魔はクソだって、おまえも習っだろうが!』
アーシア『悪魔にだって、いい人はいます!』
フリード『いねぇよ、バァァァカ!!』
アーシア(います! 一誠さんはいい人です! 悪魔だと分かってもそれは変わりません! こんなこと、主が許すわけがありません!」
アーシアがそう言った時、フリードは拳銃をもった拳を振り上げて―――――。
達也『おまえ、アーシアに何しようとした?」
達也はアーシアに当たる直前にその手を掴んだ。
腕を掴まれたフリードが叫ぶ。
フリード『なっ!? 離しやがれ、クソがぁあ!』
フリードは達也の手を振りほどこうとするけど、達也は離さない。
離してやるものか。
達也は握る力をさらに強めて、
達也『アーシアを殴ろうとしたよな? こんな優しい女の子を殴ろうとしたんだよな?』
フリード『それがどうしたんすかぁ? 悪魔を庇うなんて、バカなことするからっすよ。そんなクソには教育が必要でしょ?』
達也『ふざけたこと、言ってるんじゃねぇぞ?」
鈍い音が部屋に響く。
達也は掴んでいたフリードの腕をそのまま握り潰したんだ。
フリード『ギャアアアアアア!?』
手首を潰されたフリードは痛みのあまり絶叫を上げてもがき苦しむ。
そんな奴に達也は言う。
達也『殺された人はもっと痛かったと思うぜ?』
フリード『このクソ悪魔がぁぁあああ!』
何処から出したのか、フリードは隠し持っていた光の剣を出して一誠に斬りかかってきたが無駄だ。
達也『クソはおまえだよッ!』
今度は死なない程度の力でフリードの顔面を殴り付けた。
フリードの顔面に拳がめり込むと、奴の体は勢いよく吹っ飛び、家の壁に衝突。
そのまま壁をぶち破り、外まで飛んでいった。
そして、外にある大きな木に衝突し、完全に気を失った。
派手に吹き飛んだが、ギリギリ生きてるって感じか。
フリードが戦闘不能状態になったことを確認した達也はアーシアの方へと駆け寄った。
達也『アーシア、大丈夫か?」
アーシア『はい。達也さんに守っていただきましたから」
身体的にはケガ一つないが、精神的には
昼間には仲良く話していた俺が敵対関係である悪魔だったこと。
フリードが人を殺めていたこと。
今の彼女は頭の中がぐちゃぐちゃになっているはずだしな
部屋に紅い引光―――――グレモリー家の紋章が現れた。
転移魔法陣だ。
となると、
木場『やあ、兵藤君,草薙君助けに来たよ。ってもう終わったのかい?」
一誠『遅えよ、木場」
魔法陣から最初に顔を出したのは木場だった。
木場に続くように残りのオカルト研究部の面々が魔法陣から現れる。
リアス『無事なの? ゴメンなさい、依頼人のところにはぐれ悪魔祓いが訪れていることが分分かって、急いで来たのだけれど』
一誠『大丈夫ですよ、部長。俺は無傷です。あのクソ神父の方が相当重傷だと思いますよ?』
リアス『そう、それは良かったわ。でも、心配したのよ?」
一誠『ははは、すいません」
今回の件は部長に心配かけて
俺はふと死んでいる男性の方を見る。
リアス『イッセー、あなたのせいではないわ』
一誠『だけど、俺がもう少し早く来ていればこの人は助けられたかもしれません』
リアス『それでも、自分を責めないで。責任なら私にもあるわ。一誠あなたはそこにいる女の子の正体を分かっているわね?』
一誠『悪魔とシスターは、相容れないって言いたいんですよね?』
部長の言いたいことは分かる。
それでもアーシアは
朱乃『部長、数人の堕天使の気配がここに近づいていますわ』
堕天使ーー達也はその言葉を聞いて、アーシアの手を引く。
自分の手を引かれたアーシアは少しばかり驚いた顔を見せる。
達也『アーシアはリアスと一緒に逃げろ。俺が連中を引きつける。おい、一誠」
こいつを頼む。
そう言おうとした達也だったが、突如自分の体を何かに押さえつけられる。
達也『何してんだ…離せっ!』
自分の体を押さえつけている二人ーー小猫と祐斗はそれぞれが達也の服を引っ張り、アーシアと自分を結ぶ手を離させようとしていた。
アーシア『一誠さん,達也さん本当にありがとうございました。
また…きっとまた会えますだから…今は』
アーシアは目尻にほんの少しの涙を浮かべながら、自分と達也を繋ぐ手に込める力を抜いた。
スルリと離れていく自分と達也の手。
自分の手にはまだ、達也の手の暖かさと感触が残っていた。
リアス『朱乃、ジャンプの用意を』
(はい、分かりましたわ』
リアスは堕天使達と戦う事はせずにその場から部室に戻ろうと魔法陣を引くように朱乃に命じる。
早々と魔法陣の準備を済ませ、グレモリー眷属にのみ使える魔法陣を一誠達やリアスたちの足元にも届くように広げる。
達也『おい…!あいつが…堕天使に捕まるだろが』
一誠『駄目だ。達也,今はとぶつかり合うこと時じゃない。
小猫『今は逃げる方が大事です。』
怒りと焦りの篭る声を出しながら、自分の体を抑え込む一誠と小猫を何とか引き剥がそうと体を揺らし、アーシアの手を掴もうと手を伸ばす。達也を止めようとする一誠と小猫の声は耳に入ってこない。
魔法陣による移動が行われ始める。
自分の視界が召喚による移動の時同様に、赤い光に包まれる前。その瞬間に達也が見たのは……
アーシア『ありがとう…達也さん』
涙を流しながら、達也にお礼を告げるアーシアの顔だった。
次の日。達也と一誠は
今は午後の三時くらいだ。
一誠と達也は家の近くの公園に来ている。
今日は平日、普通なら授業を受けている時間だ。
それなのになぜ、こんな場所にいるのか。
理由は単純、一誠と達也は学校をサボった。
昨日のことがあって、どうしても行く気になれなかったんだ。
ベンチに座ってただ空を眺めていると、俺と達也の頬に何か冷たいものが当たった。
氷麗『はい、飲み物買ってきたよ、お兄ちゃん」
さくら『お兄ちゃんも達也さんも大丈夫?』
氷麗とさくらだ。
実は氷麗とさくらも今日はサボっている。
達也と一誠を心配してのことだ。
昨日の一件を終えて、家に帰った後のことだ。
達也と一誠の顔を見て氷麗は何があったのかと思いさくらに電話をした。
さくらもアーシアを知っているから、昨日の出来事を話したんだが
さくらも少しショックを受けていたのだが、それ以上に達也と一誠のことを心配してくれた。
一誠『ありがとうな。それと、さくらにまで学校をサボらせてゴメンな。』
さくら『そんなこと気にしなくてもいいよ。私が勝手にサボっただけなんだから』
さくらはこう言ってくれる。
妹に心配をかけるお兄ちゃんとして失格だ!
でも、そんな優しさについ甘えてしまう!
さくらが空を見上げて言う。
さくら『アーシアさん、大丈夫かな?」
その言葉に昨日、部長に言われたことを思い出した。
この件の背後関係が分からない以上、下手に動くわけにはいかない、か。
確かにそうだ。
もし、堕天使全体が絡んでいたら悪魔と堕天使間で大問題になる。
だけど、達也はアーシアを助け出したい。
あんな悲しい顔を見たんじゃあな………。
達也達が悩んでいると
一誠『ん?』
氷麗『どうしたんですか?』
達也『この気配は』
ふいに感じた一つの気配。
真っすぐにこちらに向かってきていて、
アーシア『達也さん!』
達也の名前を呼んでこっちに走ってくる女の子がいた。
その女の子はアーシアだった!
一誠達はアーシアに駆け寄る。
達也『アーシア、無事だったんだ』
アーシア『はい! 私は大丈夫です!」
達也の手を取り微笑むアーシア。
悪魔である一誠との関りがあることもバレただろうし、堕天使に拘束されたんじゃないかと心配していた。
元気そうで何よりだ!
アーシアの無事を確認したところで、一誠はアーシアに訊ねた。
氷麗『お兄ちゃん紹介してよ。』
達也『そうだな。アーシア義妹の氷麗だ。』
氷麗『義妹の氷麗です。よろしくお願いします。』
アーシア『初めましてアーシアです。』
アーシアと氷麗が自己紹介を終えた時だった。
????『アーシア!」
女性の声が聞こえた。
見るとこちらに一人の女性が走ってくる。
アーシアの名前を呼ぶその女性は、一誠,達也も知っている人で、
レイナーレ『もう! 私から離れないでって言ったでしょうっって、一誠君それになんで達也君と氷麗ちゃんまで』
達也『レイナ!?」
氷麗『レイナさん』
そう、彼女は一誠の元カノにして、一誠を殺そうとした堕天使であり。達也の達也の幼なじみのレイナーレだ